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キミだけを抱きしめたくて


Ep.7「夜景」


「なぁ、トトどこまで登るんだ?」

直之とりんは小高い山に続く階段を登っていた。

「う〜ん…もうちょっとじゃないかな?
ノレイン」

「っへ?」

ノレイン
それは直之がオンラインゲームで使っているHNだった。

「お返しだよ」

クルッと振り返って意地悪そうに舌を出す。

肩を竦める直之。
でも不思議と満更でもない自分に気付く。

(俺…もしかして…)

そんな思考を遮るようにりんに呼ばれる。

「着いよ〜」

そこは市街地からほんの少し北に行ったところにある、黄金橋と呼ばれる市内有数の夜景スポットだった。

「ここが噂の…」

直之がぽつりと呟く。

「来たことなかったの?」

「あぁ…ありきたりかなっと思ってさ。」

「へぇ〜ちょっと意外かも」

そう言って2人で街並みを眺める。

「…キレイね」

「………あぁ」

「どうかしたの?」

いつもと違う直之に疑問に感じ、たずねるりん。

「…俺…りんのことが好きかもしれん」

「っえ?」

予想外の言葉にりんは戸惑ってしまう。

「………」

「………」

気まずい沈黙が流れる。
ふと口を開いたのはりんだった。

「ダメだよ…」

「っえ?」

「ズルいよ…芹澤くん…こんな場所で…」

「…ごめん」

「謝るのは私よ?
ごめんなさい、今の芹澤くんの気持ちに…応えることは出来ない…」

「…そか」

「ご、誤解しないで。芹澤くんがダメだって言ってる訳じゃないから」

「…あぁ」

その後、二人は静かに街中を眺めていた…





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あきゅろす。
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