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キミだけを抱きしめたくて


Ep.3「出会い」


翌日、案の定寝坊した直之。
ギリギリ仕事には間に合ったが、その分朝食やら朝のうちにやっておきたかったことは全てすっぽかすことになった。

仕事には遅れてないが、様々な要因が重なり、最初の配達が遅くなってしまった。

スタートが遅くなったがゴールは変わらない。

すなわち、その間のプロセスのスピードを上げるしかない。

的確に物を運んでいく。

(あぁ、そうか
俺はトランスポーターなのか)

っと、自己完結しながら、自嘲する。
なぜならー

(なにがトランスポーターだよ…
自分の「想い」も運べやしないくせに…)

「芹澤くん…?」

ふと名前を呼ばれる。
当たりを見渡すが、見知った顔はない。

っと、肩を叩かれる。
振り向こうとすると頬に人差し指が…

「って、何するんだよ
トト」

腕を払いのけながら言う。

「あはは〜久しぶりだね。」

「そうか?この間、メール送ってきたばかりだろ?」

「そうだっけ?」

っと、おどけて笑うトト。
ふと笑うのを止めて、人差し指を立てた。

「って言うか、外でトトはなし!」

「………」

唐突な言葉に直之は対応しきれなかった。

「クスス…」

彼女はトトこと栗林 りん
何故か外ではハンドルネームで呼ばれるのを嫌う。

「ってか、どうしたんだよ、こんなところで?」

「あぁ、学校帰り。
そういう芹澤くんは…」

「あぁ、仕事中だ。」

「そっか。
ごめんね呼び止めて。
それじゃ、またね〜」

っと、手を振りながら走り去っていく。

「相変わらず…嵐みたいなやつだな。」

そう呟くと、直之も次の配達先へ歩き始める。

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