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発火(side後藤)

女の子が大好きだ。
可愛くて柔らかくて、けれど時々したたかで傲慢。
そんな女の子たちに振り回されて一喜一憂する自分も嫌いじゃない。

一人に絞るのが難しくて特定の彼女とは長く続かない俺だけど、それでも隣にはいつも誰かしら女の子がいた。だから俺の青春は概ね順調。
…うん、そのはずだった。
佐々木に会うまでは。

知ってしまったんだよね、人を本当に好きになるってこういうことなのかって。

佐々木は誰もが振り向くような派手な美男子ではないけれど、すっきりと整っていて綺麗目なタイプ。
まあ、あいつの魅力は外見なんかじゃなくて、もっと別の部分にあるんだけど。

曲がったことが嫌いで、自分の中で筋が通っていなければ、誰であってもはっきりと物を言う。でもTPOはわきまえている。
無愛想で口の悪い奴だけど、それは心を開いている相手にだけ見せる姿で、一人の時は割と静かに教室に佇んでいるようなタイプだ。
根は優しくて純粋なのに、なぜかそれを必死に隠してる。本人は自覚がないみたいだけどね。
無愛想の下に時折見せるちょっとした気遣いや笑顔に、ひどく心が乱れた。

相手の裏の裏をも読んで自分が有利になるように動く俺とは大違いで、いつも真っ直ぐなあいつがキレイで眩しかったんだ。
その純粋さを汚したくない、俺が守りたいといつしか思うようになったのと同時に、自分の気持ちを自覚した。


勿論、この想いを佐々木に伝える気はなくて、仲が良い友人として一緒に過ごすだけで充分だと思った。
まあ、一緒に居ればいるほど想いは募るばかりだったけど。

二年生になってクラスが別れると、以前のようにはいられなくなった。
不自然に思われない程度に遊びに誘ったり、教室に顔を出したりしてたけど、やっぱりどこか足りなくて。
自分の気持ちを改めて自覚させられる日々。

佐々木への執着の比重を減らしたくて女の子と遊びまくったけど、全然効果がなくて、むしろ寂しくなったりして、もうどうしようもなくなっていたところに井山という似非王子が現れた。

元々あいつの存在自体は知っていた。
チャラ男と言われる俺と、王子と言われるあいつじゃ、一見するとタイプが違うように思われるけど、きっと本質は似ているはず。本音を隠して生きてる人間だなとは思っていた。

だけどまさか、惹かれるものまで同じ、っていうのは想定外だったけど。

あの二人が教室で抱き合っているところをを偶然見てしまった。
なんで?俺はずっとずっと気持ちを抑えて我慢してきたのに、アイツは簡単に佐々木を奪おうとする。

しかも佐々木はあいつを拒否していなかった。
それもショックだった。
もう駄目なのかな。遅かったのかな。
俺が先に気持ちを伝えるような行動をとっていれば、今と違う状況になっていたのかな。

今更ああしたら良かった、こうしたら良かったなんて話をしても不毛だってことは分かってるのに、怒りと嫉妬で体中の血が煮えたぎった。

どうしてもこのままじゃいられなくて、探りをいれるような真似をしてみたら、どうやら俺が思っていたほど二人の仲は進展しているわけではないようだった。
でも、佐々木は明らかにあいつを意識している。

それでも。
決定的になる前に自分も動こうと決めた。
指をくわえてあいつらがくっつく様子を見ていなきゃならないなんて、そんなのありえない。

戦うよ。
あいつにだけは負けたくないし。
つーかなによりも佐々木が欲しいから。



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あきゅろす。
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