[携帯モード] [URL送信]
バライロノセカイ(先輩×タラシ後輩)

恋はバラ色とは良く言ったもので。
つまんないと思っていた毎日が突然色鮮やかな世界へと変化し、何をしても楽しくてドキドキワクワクが止まらない。全く脳内麻薬ってやつは恐ろしい。

だがしかし、それって長くは続かない。
追いかけていた想い人が、いざ自分のものになっちゃうとあっという間にいつもの日常に引き戻される。

そして最後に残るのは出涸らしになってしまった恋心の後始末のみ。
そうやって繰り返される天国と地獄。

でも、ある時気付いた。
絶対俺に振り向かないヒトを好きになれば良いんじゃないか。
そしたら永遠にハッピーライフが続くってことでしょ?

めっちゃ吟味して、吟味しつくして、選んだターゲットはいっこ上の先輩だった。
ただし性別は男、だけど。


「やっべー、木内センパイ今日もイケメン…!」
「朝からうるせーよ、キモいから離れてくんない」
「さすが!嫌なことは包み隠さずハッキリ言っちゃうとか!俺には絶対マネできないすー。かっこいぃー!」
「なんなのほんとウザイんだけど。誰かコイツ処分して」

俺のことなんて心底どうでも良さそうな視線と態度と口振り。
やべー。こりゃまじで見込みないわ!
でもそうでなければ意味がない。俺の目に狂いはなかったね。

いつまでも先輩にへばりつく俺を、一緒にいた友人のケイタが無理矢理ひきはがしにきた。
ありゃ、しかもなんか先輩に謝ってるしー。

ペコリと一礼したケイタはものすごい形相で俺の首根っこを掴み先輩から遠ざけようと躍起になっていた。
仕方ないので大人しくそれに従うことにする。
もちろん先輩への挨拶は忘れない。

「センパイまたねー。浮気しちゃやだよー!?」
「シネば」

にこり、と音がしそうなほどの笑顔をつくる先輩(良い意味ではない)。
あらら、すっごい凶悪なヤツいただいちゃいましたよ。
色んな意味で夢に出てきそう!

先輩とのやり取りに満足していると、ケイタにおもっきし頭を叩かれた。痛い。

「え、なぜ」
「おまっ、ほんと死にたいの!?木内先輩とか冗談で絡んでいい相手じゃねーだろが!ばかっ!ばか夕月っ!!」

木内先輩は不良ってわけじゃないけれど全身から醸し出されるオーラにやたらと威圧感があって、周りからは一目置かれている人。
顔は超絶美形だからモテまくりだけど、とにかくクールというか他人を思いやる気持ちが皆無って感じだから特定の彼女はいたことない。(俺調べ)

「なんかー、あの人って見た目以前に存在自体が格好良くない?孤高の人って感じ」
「知らねーし。てかいつから宗旨変えしたんだよ、最悪の女たらし野郎のくせにさ」
「ちょーいちょいちょいケイタ君!キミお口が過ぎませんかね?」
「言われて当然のことしまくってんだろお前は。女子の評判、相当悪いよ」

うん、まあ、それは自覚してるし仕方ない。今後も刺されないことを祈るのみだな…て、こんなこと祈らなきゃいけない人生てなに。

「あー、幸せとはなんだろうねケイタ君?」
「夕月が求めてるのは幸せじゃなくて刺激とかスリルだろ。じゃなきゃいきなり性別飛び越えて木内先輩とか、普通いかねぇだろ。お前、少しは落ち着けよ。そんなんじゃ絶対幸せになれないからな」
「えーっ、そうなの?」
「そうだよ!ばかっ」

恋してる時の高揚感って、イコール幸せじゃないのかな。
俺がしてる恋は本物じゃないってこと?

良くわからない。

でも今回の人選はかなり良かった気がするし、今更止めらんないし?

「ま、もうちょっと頑張るし」
「どうなっても知らないぞ。警告したからな!」

いつも俺を心配してくれる優しいケイタ。
ごめんね、今度ラーメンでもおごるわ。
だから今回ばかりは許してね。


「わーいセンパーイだー。今帰りですか?」
「…ダレ?」

放課後、下校中の生徒の中に怠そうに歩く木内先輩を発見。
いそいそと駆け寄って声をかけたらこの仕打ち。
まあいつものことだけど。

「もー冷たいなあ。今日はこのあとバイトでしたっけ?」
「ストーカー、ヤメテクダサイ」
「え、ちがうよー!多分?」
「多分、じゃねーよ。ばーか」

スタスタと歩いていく先輩のあとについていこうとするが、…スピードはやっ。
そして近くにいる人たちが一斉に先輩をよけていくから、ほらアレみたい。モーゼの十戒?(てきとー)

ついてくる俺を一切気にしないし構う気なしって感じで歩いていく先輩は後ろから見ても格好良い。

どうしたら俺のもんになるのかなー。
欲しい。
やっぱりこの人が欲しいなあ。


「あーあ、俺いつになったらセンパイと仲良くなれるんだろう。てかそんな日来ると思います?」

小走りで追い付いて、とっておきの笑顔で先輩の顔を覗き込んでみた。

「…」

そんな俺を黙って見下ろす先輩。その目はまるでごみクズでも見ているよう。
どういう気持ちでいればそんな表情できるんだろうって思うほど冷たくて仄暗い目。怖いけど、ゾクっとさせるその顔が堪らなく良いんだよなー。

「センパイ?」
「お前、有名だよ。女とっかえひっかえで、オトした途端即ヤリ捨てとか?」

…あぁ、なるほど。ご存知でしたか。
でもヤリ捨てなんて。それはちょっと言い過ぎかなとは思うけど。
俺に対する周りの評価って相当ひどいな。

「で?次のターゲットは俺?ふざけんな、お前の遊びに付き合う義理はねぇ」

苛ついた様子の先輩。
いつもだったら軽くあしらわれてあとは無視がパターンなのに。今は少し雰囲気が違う、気がする。

「やだな、遊びで男にはイケないですよ?それに俺はいつでも本気ですからー」
「…へぇ、本気?」

場を和ませようとへらりと笑って見せると、先輩は目を細めて俺を見た。
先輩のまとう空気が更に冷たくなっていく。
どうやら俺は間違えたらしい。
この人の地雷を踏んでしまったみたいだ。てかどこにあったのソレ?この人難しくて本当わかんない!

「…あの、なんだかとてつもなくお怒りのご様子で?」

火に油とは分かっているのに、思ったことを口にしてしまうのは俺の悪いところだな。先輩のこと言えないや。

「お前が、本気を語るなよ」
「…」

目が据わってるし。
…やばい。殺される。

死のカウントダウンを数え始めていると、先輩の長い腕が俺にむかって伸びてきた。

あー、完全に詰んだー。

固く目をつぶって衝撃に耐えようとしていたら、がつっと後頭部を掴まれて引き寄せられた。

「う、」

本当に殴られると思った。
けど実際は違っていて、俺の唇に噛みつくようにして先輩のそれが押し付けられていた。
思わず目を見開いて相手を確認する。
そこにいるのは間違いなく先輩だ。

だよね、先輩だよね?
俺のこといつも虫けら以下の扱いをしてくるあの先輩だよね?

なんで?
急な展開に思考が追い付かないし。

「ん、んぅっ!」

目を白黒させていると、口内を先輩の舌が乱暴に侵してくる。

うわ。
やばい、喰われる!

息継ぎもまともにさせてもらえないような激しさに、苦しくて涙が出そうになる。

「ふ、げほっ!」

容赦のない扱い。
先輩が飽きて離れるまでされるがままになっていた俺。
非力、非力すぎるぞ。まじで。


「…結局お前のくだらない遊びに付き合う羽目になるとか、まじ胸くそ悪い」

俺がぜーはーしながら息を整えていると、上から超絶不機嫌な声が降ってくる。

「はあ、それは、スミマセンでした…」

コレが正解だとは思えなかったけど、とりあえず謝ってみた。

「公衆の面前でキスしたことだし、俺をオトしたって言いまくれば?それで満足なんだろお前は」
「…」

確かにここは下校途中の公道でしたね。
もう人はまばらだけど、多分数人には見られたなー。
ま、別に良いんだけど。今更だし。

答えようとしない俺に苛ついたのか、追い討ちをかけるように先輩が言い放つ。

「てかそれだけじゃ足んない?もしかして男の俺ともヤりたいワケ?はっ、笑える」

蔑むような目で見られて、背筋がぞくりとする。
あのね先輩、それ逆効果みたい。
大分落ち着いてきたし、思考も回復してきたから、反撃開始ー。

「センパイ、俺何言われても諦めませんから。まじでセンパイのこと振り向かせるし。さっきの、脅しのつもりでしょうけど全然ですよ。むしろ興奮したし。俺マゾだったのかなー。新しい扉が開いた感じ?」
「…頭、おかしいんじゃねぇの」
「でもセンパイだって興奮してたじゃん。バレてないと思った?」

先輩はどSだもんねー。
心の中で呟いてにっこりと笑いかけると、先輩は心底嫌そうに顔をしかめた。

「まじシネよ」
「…そしたらセンパイも俺と一緒に死んでくれる?」


だってほら。
誓いの言葉であるじゃない。
死が二人を分かつまで、ってさ。



end.



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!