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教室から愛を叫ぶ(チャラいアホ×不本意モテ)

「俺さー、昨日男に告られちったー。」
「はあ!?まじでっ?」
「フジすげーな、女にはモテないのにね!」
「うぜー、お前まじうぜー。女にもモテてるわぼけー!」

ぎゃははと笑う声が教室内に響く。

周りは何事かと騒ぎの中心に興味を持っているようであったが、杉森は昨日のやりとりを思い出して耳を塞ぎたくなった。

(あの野郎まさか昨日のことを言っているのか?ふざけんな告ってなんかいねーよばかじゃねーのなに一人で盛り上がってんだ死ねよもう最悪だ最悪だ最悪だっ)


よし避難だな、と席を立ち出入り口に向かう杉森。
しかしなぜかあと一歩の所で身動きが取れなくなった。
いつの間にかフジこと藤谷が俺を後ろから抱き込んでいたからだ。

「な、なん…!?」
「そんな訳で、俺、今日から杉森とオツキアイするからよろー。」
「…は、」

一瞬の静寂。

「はああああ!?まじかよ相手杉森ー!?なんかガチじゃん!」
「え、え、俺も杉森なら全然イケるよ!フジなんて止めて俺にしよーよ!」

わああっと教室が歓声に包まれる。

(なぜ、なぜこうなる…)

これが男子校のノリなのか?なんでこんなことでテンション上がるんだよ。
意味がわからん。

あーなんかくらくらしてきた。
もうこのまま消えてなくなりたい。


暗転。
…なんて都合よくことが済むはずもなく。

杉森は騒がしい教室から藤谷を無理やり引っ張り出し、近くの空き教室に押し込んだ。

「え、え、杉森ったらやだ積極的!なにすんの!これからここでなにすんのっっ?」
「黙れ!ばかかお前は!一体何考えてる!?」
「え、言っていいの?」
「…や、いい!しゃべんな!!」


はあーっと長いため息を吐き出した杉森は目の前の男を睨んだ。

「…で、いつ俺がお前に告白したんだよ。」
「えー、言ったじゃん。昨日!俺のこと好きって。」
「いや、言ってねぇから。好きかと聞かれたから嫌いじゃないとは言ったが好きとは言ってない。またこの場合の好きは恋愛感情のそれではないから。つまりお前はクラスメートの中で好きでも嫌いでもないレベルの存在だということだっ。それを曲解して勝手に盛り上がったあげく、浮かれて一人で教室から出ていったんだろうが!」
「え、なに?あんま聞いてなかった。もっかい言ってー。」
「………。」

藤谷は黙っていればイケメンに分類されるタイプなのだろうが如何せん馬鹿すぎて疲れる。

「と、に、か、く!さっきの発言は誤りだということをクラスの奴らに説明してこい!」
「はあ!?やーだっ。」
「嫌じゃねーよ!」
「だって杉森狙ってる奴多いしぃ。牽制、みたいな?」
「お前本当に馬鹿だろ?そんな酔狂な奴がいるわけないだろうが…いや、そうだな居たな、目の前にな!」
「もー本人に全然自覚ないからなー。危なっかしいんだよー。」


全く噛み合わない二人であったが、藤谷の指摘は確かに正しい。
杉森は決して可愛らしい女のような顔をしているわけでも小柄なわけでもない。
しかし中性的な顔立ちにしなやかな細身の身体からは、どこか独特の色気を感じさせた。

「入学して三ヶ月たつけどさ、杉森、今まで何回呼び出しくらった?」
「(そんなイタズラ、いちいち数えてねぇよ)…あー、10回、くらいかな?」
「ブー!16回です!!」
「…まて、なぜお前が正解を知ってるんだよ。」
「あ?知ってるに決まってんじゃん!いつも見てたんだから!その呼び出しだって全部すっぽかしてるよね!まあそこはグッジョブと言っておこうか!あと通学中とかも学生はおろかリーマンにまで狙われてるとかどんだけ…この魔性っっ!!」
「おま…、まじこえーよ…。」

なぜ藤谷は通学中の杉森の様子まで把握しているのだろうか。
しかも当の本人がそのての視線に鈍感なために全く身に覚えがないことを指摘され、殊更気味が悪い。

(変な奴だと思っていたがここまでくるともはや危険を感じるレベルだな…。)

ドン引きしているのに気づいたのか、藤谷は杉森に向かってビシィッと音がしそうな勢いで指を指した。

「てか今はそこ問題じゃないから!黙ってて聞いて!」
「…は、い?」

そしていつの間にか形勢が逆転している。
よくわからない藤谷のペースに飲まれた杉森はとりあえず大人しくすることにした。

「断言する!杉森はそのうちどこの馬の骨ともわからない変態野郎によって拉致監禁される!!そして無理矢理あんなことやこんなことをされて…!ああぁー、俺の杉森が汚されてしまうー!!」
「……(なんかお前に汚される可能性が一番高い気がするけどな)。」
「だがそうなる前に俺が予防線となる!」
「いや、まじいらねーよ。そんな可能性ないか…」
「シャラーップ!」
「……ら。」

鼻息を荒くして杉森に近づく藤谷。
目が血走っていて笑えない。
こいつ、本気でやばいぞと杉森が後ずさりすると、逃がさんとばかりに肩を思いきり掴まれた。

「ひっ。」
「悪いようには、悪いようにはしないから!ね、形だけでいいから俺達付き合うということにしよ。ね?」
「嫌だ!!断固拒否する!」
「嫌じゃねーよ!拉致るぞコルァ!」
「ふざけんな、やっぱお前が一番やべーじゃねえか!」
「もー杉森ってばー。そんなことな、い、よ☆」
「今更取り繕ってもおせーよ!てか目が笑ってねーし!」


結局収拾がつかず、心配したクラスメート たちの救出により杉森は解放されたが、その後も藤谷の一方的なボディーガードという名のストーカーは続くのであった。


end.

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あきゅろす。
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