僕は日々進化する(チャラ×ダルめ)
「別れよ。」
「え、なんで。」
「だってあっくん、あたしのこと好きじゃないでしょ。」
「は!?いやいやいや…。」
ちょっと待ってちょっと待って!なにこれどういうこと。
俺、全然あなたのこと好きだけどね!ふっつーに現在進行形で好きなんですけどもねー!?
超イミフメイ。頭イタイ。
こめかみを指で押さえ、なぜこんな事になったのか原因を考えてみる。
うーん、全くわからん。
とりあえず誤解を解こうと顔を上げると、彼女はすでに前方遥かかなたを歩いていたのであった。チーン。
えーちょっとやだもー、俺の言い分は全く聞く気もないのねぇ…。
突然のジ エンド。
なに、このあっけなさ。笑える。(いや、笑えん)
てか実はこういうの何回もあって。
俺ってば見た目チャラい割りに(って自分で言うなよ乙)結構まじめだし、浮気なんかもしたことない。
自分的にはいつも優しく大事にしてきたつもりだったんだけどなー。
なのにどうして伝わらないのー。分かってくれないのー。なんでなんでなんでー?
「てな感じ!どう思う?」
「どうって…なに。」
「俺ってぇ今も感情表現ノット豊か?気持ち伝わりにくいタイプかなぁ?」
「んー、そうねー、へらへらチャラチャラしてるけど本心は決して見せない系。」
「うわあーん、なにそれひどいっ!」
過去の悲しき失恋について語ってみたわけだが返ってくる答えにとっても不服!
俺が必死に弁明している間、目の前の男は雑誌をぱらぱらとめくりながら興味なさそうに適当な相槌をうっていたのだが、しばらくすると「でもあっくんもさぁ、」とこちらに眠そうな目を向けてきた。
「なに?」
「その彼女?ずいぶんあっさりと諦めてんじゃん。泣きながら追いすがったりとかしてないわけでしょー。」
「え、泣きながら追いすがるって!あっは!なにそれ面白っ!え、え、まさかサワしたことあんのー?」
「ない。」
「だーよねー。」
そう言うと、奴はケータイを取りだし、ダルそうに画面を見つめだした。
なるほど。もう会話をする気がないようです。
はい、でたよ放置プレイ!
君、本当に俺のことどうでも良さそうだな。全くイケずな奴め!
まあ、これがサワの仕様だから仕方ないけど。
確かに俺はその後、彼女に弁解するための電話もメールもしなかった。
「だってさー、俺の回答待たずにさっさと行っちゃって、しかも一回もこっち振り向かないんだよ?向こう完全に未練ない感じじゃん。遠ざかる後ろ姿見てたらさー、なんか急激にどうでも良くなっちゃったのよねぇ…。」
俺がそう言うと、サワはちらりと視線をこちらに向けてきた。
ん、興味沸いた?てかあれー、呆れてる?
「冷めやすい奴…。さすがチャラ男って感じ?そうやって次から次へと女を食い散らかしてきたわけですかー。」
な、なんだとぉ!
「いやーだー、なにそれ偏見〜!俺好きな人はめっちゃ大事にするタイプだよぉ!てか俺ってば分かっちゃうの、相手の気持ちがー!俺のこともう好きでもなんでもない人にぐだぐだ何言ってもムダじゃん。むしろ洞察力が優れてて引き際の分かるナイスな男子じゃね?」
「ばーか、ならフラれる前に気づいて修復する努力しろよ。」
サワが笑う。
あら、なんか急に爽やかな風吹いたわ〜。
この人、基本人生ダルい系でいっつもつまんなそうな顔してるけど、笑うと目尻が下がって優しい顔になる。
この顔を見ると「やだ、あたしには心開いてくれてるのね!きゃはー☆」みたいな気分になって、ちょっと…いやかなりテンション上がっちゃうのよ!るんるん。
俺もつられてへにゃりと笑う。
そんでもってサワの指摘どーり、気づくのが遅かったんだと今なら分かる。
「そうそう、そうだよね!俺目からウロコ〜。超学んじゃった感じ!いっきに成長しちゃったかもー。」
「ほう、ようやく。」
「もー、一言多いなっ。」
俺が頬をぷくーと膨らませて怒ってるんだからアピールをしていると、なぜか頭をよしよしされた。
やだー恥ずかしいっ!
んでもって、その可哀想な子供を見るような目止めてくれる?
俺ってなんでいつもこんな扱い…。
「んで?君は何を学んだわけ。」
「あ、うん。つまりね…」
サワに続きを促され、先ほどの会話を思い出す。
つまりは、その時感じてる気持ちは思ってるだけじゃなくて口に出さないと、どんなに優しくしてたって相手には伝わらないし、不安にさせちゃうってこと。
言わなくても分かって欲しいなんて傲慢もいいとこだもんねー。
「…んーと、思いはちゃんと言葉にしなきゃねって話さ。」
「ふーん?」
そんだけ?って顔でサワが俺を見てる。
「で、こっから本題ね!よく聞いて。」
「?」
「俺ね、サワが好き。マジで好き!だからつき合って?」
学んだことは即実践。
男同士だし、障害だらけのこの恋が叶うかどうかなんてこの際どうでも良いんだー。
言わないまま、あとで後悔するのはもう嫌だから。
「え、展開早すぎてついてけないんたけど…。」
サワの声に動揺は感じられなかった。俺の爆弾発言に驚いてはいるようだけど、冷静な態度は崩れない。
でも。
でもね、平気な素振り見せるサワの耳が、超真っ赤になってるのを俺は決して見逃したりはしないのだ。
少しは可能性あるんじゃね!?なんて甘い期待に胸を弾ませどっきどきなボクなのでありましたとさ、マル。
end.
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