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雨のち晴れ(失恋)
「カズ、俺フラレマシタ」
「…あ、そう」

てか、うん。知ってた。




ヒロミは俺の部活の先輩とつき合っていた。
というか、そう思っていたのはヒロミだけで先輩は単なる遊びのつもりだったらしい。

「一回くらいヤったからってつき合うとか、なくね?」

なんて、先輩にグチられた時は本気で殴り殺してやろうかと思ったけど。
ヒロミは本当に先輩のこと好きだったから。
やっと両想いになれたんだって、めっちゃ喜んでいる姿を見てたら、「お前、それ勘違いだよ」なんて口が裂けても言えなかった。

「俺、本気だったんだけどね。遊びとかでエッチなんてできるタイプじゃないんですけど」
「うん」
「俺だけ恋人のつもりでいたなんて、ちょー馬鹿みてぇ」
「…」
「…カズ、なんで教えてくれなかったの?」
「…え、」
「知ってたんでしょ。先輩から全部聞いたし」

涙目で俺を見つめるヒロミに、どきりとした。
動悸が速くなる。

「…だってお前、すごい嬉しそうにしてたし。あの状況で言えるわけねーじゃん」
「俺は!それでも言ってほしかったよ。こんなにっ…好きにならなくてすんだかもしれないじゃん…」
「…ごめん」

俺の思いは余計な気遣いだったのかな。
素直に謝ると、ヒロミは一瞬赤く潤んだ目を見開いて、そのあとすぐに俯いてしまった。

「ヒロミ?」
「ごめ…、カズが謝んないで。ただの八つ当たりだから」
「うん」
「…ねぇ。ちょっと泣いてもい?」
「うん、いいよ」

俺がそう言うと、肩のあたりに自分の額を載せるようにヒロミが体重を預けてきた。
多分、ここまでずっと我慢してたんだろう。
肩がふるえていた。

「っく。うぅぅ…びぇぇーーー」
「何、その泣き方」

お前、子供かよ。

しばらくそのままの体勢でヒロミが落ち着くのを待つ。
てかここ、普通に廊下だったね。
人がいなくて良かった。

「うぐぅー…ひっく。あ、鼻水ついた…」
「おい、」
「まぁいーか。カズだし」
「…」

泣きながらも、いつもの調子が戻っているように思えて、俺は少しほっとした。

「先輩かなり好みだったんだけどなー。俺には高嶺の花だったのかな」
「さー。もっといいヤツいっぱいいるだろ」
「いるかな?」
「捨てる神あれば拾う神もあるって言うし」
「んー。てか表現が古いね。ウケる」
「うるせ。あ、でも俺は狙わないでちょうだいね。ノーマルだから」
「…さぁ。どうだろ?」
「おいおい」
「あはは。うーそ」

そう言って顔を上げたヒロミは、いつものヒロミだった。

「ん。お前は笑ってろよ。泣くのとか、全然似合わねー」
「…カズって、結構タラシ系?なんか今ときめいたー☆」
「…」
「すぐ真に受けるー!」
「お前が変なこと言うからだろっ」
「ふふっ。俺、カズが友達で良かった!元気でたよ。ありがとな」
「…ん」


俺はノーマルなんだ。
だから、俺の隣で嬉しそうに笑うヒロミに少しだけ…ほんの少しだけ心が揺さぶられてしまったことは、絶対に秘密だ。






END


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