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2-9
背後で、砂を踏みしめる音がした。


「…何してんだ、お前ら」


「げっ!…東堂」


突然の東堂先生の登場に悠斗は変な声を上げ、当の本人は加えていた煙草に火をつけながら近づいてくる。


「先生様と呼べ御崎。何してんだって聞いてんだよ」


「…救出劇?」


「あ゛ぁ?」


辺りを見回せば、倒れて今なお呻き続けている男たち。…うん、明らかに喧嘩の後って状況。


やはり教師としてこういうことは見逃すわけにはいかないのだろうか


「先生、あの、俺」


俺がいけないんだ


そう言おうとした瞬間だった


ぐい、と先生に手を引かれ無理矢理歩き出す格好になる


「慎哉、お前怪我してんだろ」


「へ?なんで、…っ!」


もう一度、先生が故意的に俺の腕をひっぱる。そこまで強い力じゃなかったもののその瞬間、鈍い痛みが全身を駆け巡った。思わず声をあげてしまったかもしれない。


「でも…!…マジで何ともないから」



それでも、なんていうか……人に心配されたくないっていうか…まぁ、理不尽だけど俺に危害を加えた人達はきっと自業自得だって言うんだろうし。


実際その通りだ、とは思う。俺がでしゃばった行動に出なければこんなことにはならなかった。


だめなんだよ、他人に心配されたくない


そんなのただの、子どもの意地だけど


でも、見られたくなかった。可哀想だとか思われたくなかった


だから俺は恐らく保健室に連れて行こうとするんだろう先生の行動を拒む

「何でもないから、…っホント」



「嘘つけお前。…そんな言うなら腹見せろ。さっきから腹部を庇った歩き方してる」


「はぁ!?ここでって…ちょ」



抵抗する間もなく服をめくられる。


「ぎゃー変態訴え………っっ!!」


服が擦れて激痛が走った

必然的2人の前にあばすことになった腹の傷。


あんな沢山腹のみ殴られたからそりゃ普通のダメージではないなー、とは思ってたけど。


俺の傷を見ながら沈黙する2人。


……すっげ凝視されてるからなんか痛みと同時にむず痒さも出てくる。


沈黙とその視線に我慢できなくなって、俺が仕方なく口を開いた時だった


「だから大丈夫だって「慎哉お前っ……ひっでーよこれ!痣だらけだ!!」


言葉を遮り、悠斗が叫ぶ。


「お前ってやつはホントに…!なんで騒ぐなりなんなりしてこうなる前に人呼ばなかったんだよ!」


「だって慣れてるし大丈夫かなって」


「…このっ馬鹿!」


そう言うや否や先生は俺の背中と両足に腕をくぐらせ……なんていうか、これお姫様だっこ?



「うわっ、離せ!」

「うるせぇ!御崎も一緒に保健室来い」

「お、おう」


「だから大丈夫だってって、イターー!!」


あろうことか先生は保健室まで走り出した。
一歩足を進める度振動が直に伝わり激しい痛みに襲われる

「先生、走んないで。いだ、いたたたたた」
「我慢だ」
「頑張れ慎哉!」



お前ら人ごとだと思って…!!


でも

「俺そんな必死な先生初めて見たかも」

そんな思ったことを言ったら、一瞬だけ、先生の引きつっていた眉が、少し困ったように下がった…気がした


「……そうだよ、必死になったの初めてかもな」

「それはまた…苦労しない人生だったねぇ…ってイターー!!」


今度はわざと反動が大きくなるよう走られた。
ちくしょうなんだってんだよ!!



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あきゅろす。
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