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アイザキガカリ
9
 翌日、学校へ行くと相崎はやはり来ていなかった。
 昨日の帰り際に「またな」といわれたことから、もしかするとと思ったが、やはりそう簡単な問題でもないらしい。
 席につくなり裕介がやってきた。
「いっちゃん、具合どう?」
「もう平気。昨日メールみた。電話しなくてごめん」
「や、いーんだ。俺さー、昨日相崎らしきやつに、いつも来る奴ってなんて名前って聞かれて、いっちゃんの名前教えたんだ。一応言っとこうと思って」
 裕介は結構律儀なやつだ。一本芯が通っている。
 俺は派手な奴とか、情けないことだが女の子とかに対して身構えてしまうのだが、裕介は誰に対しても臆することがない。中学の頃は俺と似たような感じだったと思うのだが、いつからか裕介からはそういう部分が消えていた。
 ちょっと取り残された気もしないでもなかったが、そんな裕介を俺は少し尊敬している。もちろん本人に言ったことはないけれど。
「実はさ、昨日相崎がウチに来たんだよ」
「えええーっ?!まじで?!」
裕介が半ば叫ぶように驚いて、教室の注目が俺たちに集まった。注目を浴びてしまったことに思わず赤くなると裕介はごめん、と小さな声で謝った。
 そんな俺たちをみて何も面白いことはないと判断したのか再び教室はざわめきを取り戻す。
 それを待ってから俺は続けた。
「裕介、俺が熱だしてるって言ったんだろ?…なんかそれで見舞いに来てくれたみたい」
「へええええええ」
 裕介は目を丸くして面白いほどに感嘆の声をあげてくれる。
「そこまで仲良くなってたって知らなかった。さっすが常任相崎係」
「仲良くないよ。俺も昨日はじめて会ったんだから」
「あ、そういや相崎、いっちゃんの名前も知らなかったんだもんな。で、美少年ぶりは健在?」
 俺は相崎の背が高かったこと、そしてえらく男前だったこと(美形だったと表現するのはなんとなくはずかしかった)、彼が帰った後に母さんが興奮してたこと、夕飯のデザートに相崎が持ってきたという桃がでてきて、それをきっかけに母さんの相崎賛美がはじまってうるさかったことを説明した。
 裕介は相崎の背が伸びていたことについてたいそう驚き、自分も見てみたかったと言った。

 それで俺は相崎は裕介には直接会わなかったということに気がついた。
 途端に恥ずかしいような嬉しいような不思議な感情が沸き起こってくる。
 それを一言で言い表すなら、「優越感」というのが一番ふさわしい気がした。

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あきゅろす。
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