さよならは君のとなりで
2
…気がつくとそこは白い部屋のベッドの上だった。
白は嫌いだ。息がつまる。不安になる。
まず自分の体を確認する。
体を起こすことは出来なかった。
左手は点滴に繋がれている。
とりあえず自由に動かせる右手で顔や体を確認する。
何故か顔や腕が包帯でいっぱいになっている。
…そういえば、トイレに行く途中に転んだりぶつけたりした記憶がある。
ふと横を見ると真央が眠っている。
知っているヤツがいる。
それだけで少し安心する。
「真央…。」
「…ん…。…れ…い。」
「…ありがとう。」
傍にいてくれて…。
ナースコールを押す。冷たい。無機質なスイッチだった。
病院は嫌いだ。圧迫される感じがするから。大嫌いな白ばかりだしな。
「…んー。…玲…?」
「おはよう、真央。」
「!!玲!!おきたのか!?」
「おう…。」
「体とか、大丈夫か!?ちょっと待ってろ!!今、先生呼んでっ…!」
「もう呼んだ…。」
「え!?」
「ナースコール。」
真央にそう告げると同時に足音が聞こえた。
どうやら医者が来たようだ。
「神崎さん、気分はいかがですか?」
医者と一緒にいる看護士が尋ねてきた。
あまり良い気分ではなかったのでその質問には答えず、自分は何故ここにいるのかを聞いた。
すると後から入って来た若い医者は少し困ったような顔をしながら俺が救急車で運ばれて来たことと丸2日間眠っていたことを教えてくれた。
眠っている間は真央がずっと傍にいてくれたようだ。
真央に感謝の気持ちを伝えると何故か謝られた。
俺の不調に気付けなかったことを悔いているようだ。
真央は、何も悪くないのに。俺が体の不調に気付かないふりをしていたのが悪いのにさ。
体を起こす事が出来ないと医者に訴えたら体力の低下が原因であると言われ、しばらくリハビリが必要であると言われた。
今日が8月24日だから8月31日、夏休みの終わりまでには歩くぐらいは可能にしたいと思った。
その日からはリハビリと検査の繰り返しだった。
特に検査に関しては何故か念入りにされた。
頭痛の原因だとか、転んで頭を打った時に何らかの障害を被っていないかとかだろうか。
何にせよよく分からない機械に入ったりレントゲンを撮ったりやたらと血を採られたりの毎日を繰り返した。
しかし真央が毎日お見舞いに来てくれてずっと傍にいてくれたので検査の多さに対する疑問はあっても不安はなかった。
リハビリは辛かったが、友人が傍にいる。
それだけでなんとか乗り越える事ができた。
たまに思い出したように抱きつくアレは何とかして欲しいが。
この間、何故抱きついてくるのか聞いたら「玲がどこにも行かないように。」とか意味の分からないことを言われた。
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