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さよならは君のとなりで


高校1年の冬から貧血が続いていた。
昔から体の強さが人並み以下であった俺にとっては、いつもよりちょっと多いなと思うだけで気にもとめなかった。


そのまま高2の夏まで放っておいたら次は度々意識がぶっ飛ぶようになっていった。
貧血の延長のような物だろうと気にしないようにしていて、気が付いたら夏休みに入っていた。

宿題はスグに終わらせておいた。
寮暮らしの人達は実家に帰郷していた。だから遊びに誘われることもなかった。

たまに外出しようとはしたが、目眩がするので休みのほとんどの日々を寮の自分の部屋で過ごしていた。




夏が終わる。
窓から入ってくる夜の風が涼しい。
アブラゼミの鳴き声が無くなり、ただツクツクホーシの声だけが未だ夏であることを主張している。
最近は頭痛が特にひどく、ベッドの上から動くことが出来ない。


頭がイタイ、体がオモイ。


俺の体どうかしちゃったのだろうか。
こんなに辛い貧血は初めてな気がする。
いったい今日は何日なのだろうか。
俺は…何日ぐらいこうしてただベッドの上で息をしているのだろう。



今が昼なのか夜なのかだけは開けっ放しの窓から辛うじて認識することが可能であった。


またこのまま今日も何事もなく一日が終わるのだろうと思っていたら、どこからか物音が聞こえてきた。
階段の昇る音だろうか?次いで声も聞こえてくる。

「玲、いるか?オレだオレ!!なんか急に玲に会いたくなったから帰って来たんだ。で両手が荷物やらお土産やらで塞がってるんだよ。開けてくれない?」


最初オレオレ詐欺かと思ったが、よく聞くと真央の声だ。

太田真央、ヤツは俺の友人であり、寮の同室者でもある。
暗い俺の友人にしては明るいヤツだ。顔も爽やかな美形だ。
スポーツ万能で、確かバスケ部のエースだとか何とかと聞いた。
運動音痴な俺からみたら羨ましい限りだ。


「玲?いないのか?…まさか寝てる?しょうがねぇな〜。まだ8時じゃねーか?」


「…ま…お。」

ごめん。真央。なんか、声が、出ないみたいだ。
喉がカラカラ掠れんだよ。


「ただいまー…って何だこの臭い?何か腐ったような…。…玲?玲!!お前いるの!?」




「ま……ぉ…」




「玲!?何だよこの臭い!!どうしたんだ!?…え?…玲?」


どうしたのだろうか?なぜか固まっている彼はいつもの元気な真央らしくない。


「玲!!どうしたんだよ!?大丈夫か!?…生きてる…よな??」


…俺、そんなに酷い風貌してるのか…。水はちゃんと飲まないと死んじゃうって言うから飲んでるけど…。まあ、体が受けつけないのか、全部吐いちゃってる気がするけどな…。


「おい、玲!!返事しろよ!!」


だから声出ないんだってば。


「ちょ…ちょっと待ってろ!!今管理人呼んでくるから!!」


…真央、相変わらず元気だなぁ。
別にこんな頭痛いのとか寝てれば治ると思うんだけど…。
体も動かねえだけだし。




…なんだろう、眠たくなってきた。
あんなに寝たのに、どうしてだろうか。まぁ、イイか。
体が寝たいから眠たくなるんだと思うしな。
とりあえずなんでも寝たら治るだろ。だから、、次に目が覚めるまで。


おやすみ。







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