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さよならは君のとなりで


月島の視線に耐えること約10分。
ようやく朝のHRが終わったようだ。




「こんにちは〜、神崎玲くん?」


あれ?普通だ。
昔の月島悠斗だ。

…じゃあ、さっきのあの感覚は何ったんだ?


…何にせよ、ビビって損したぜ。
きっと気のせいだったんだな。


「久しぶりだね〜、元気にしてた〜?」


そこで俺はあらかじめ用意しておいた台詞を吐いた。


「あの、はじめまして。名前、教えてくれますか?」


「…え?…神崎ちゃんってば、何言ってるの〜?俺だよ〜?覚えてないの〜?」


「あの、僕実は中学までの記憶なくって…、僕って確か中学までここに通ってたんですよね?その時に何か関わりでもあったのでしょうか??」


そう。記憶喪失を装うことだった。
だって、あんな酷い仕打ち受けた奴が好意持って接するなんておかしいだろ?



「…本気で言ってるの?」


「?あの…?」


「…ねぇ、冗談だよね〜?俺が神崎ちゃんに酷いことしたから怒ってそんなこと言ってるんでしょ〜??ねぇ、そうでしょ?」


…?何故こいつがこんなに必死なのかはよく分からんが、ここでほだされてしまっては俺の復讐計画が台なしだ。
ここは計画通りとぼけることにしよう。

「あの、何のことをおっしゃっているのか分からないのですが…」


そう言ってから、月島の様子を伺ってみる。


…不意に一瞬だけ、いつもヘラヘラ笑っている月島の顔から、一切の表情が消えた気がした。


しかしすぐに何事もなかったかのようにヘラヘラ笑い出したので、この時は気のせいだと思った。


「ふーん、そうなんだ〜?それは大変だったね〜??」


ヘラっとした笑顔でそう言ってのけた月島を見てイラっと来たのは言うまでもないだろう。



こいつ!!他人事だと思いやがって!!


…いや、まあ結果だけ見ると、俺の作戦にまんまと引っ掛かったって事だから、イイ…のか??

うん。
よし、そう考えたらそんなに苛々しなくてすむな。


「悠斗、何してんだ?」

俺がそんな事を考えていると、いわゆるジャニーズ顔をした男が声をかけてきた。


月島悠斗の友人で…確か名前は…、

「あっれ〜?翼じゃん〜??どしたの〜?」


そうそう、確か佐藤翼といったな。


おそらく俺と同じ可愛い系統に分類される顔立ちだ。

チビだし。
…まぁ、俺よりは高いけど…。


ただ佐藤の可愛さはあくまで男っぽさの上に成り立っている。

俺の場合は下手したら女に間違われる可愛さなので、種類が少し違うのである。




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