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さよならは君のとなりで



まだ名前も言ってないのに俺のことが分かったのか?
…まさかな。


だが、その時のそいつの笑顔に俺は何故か恐怖心をおぼえていた。
ぱっと見は普通の美形野郎の笑顔なのに、その内に狂気じみた何かを感じたのだ。


復讐するのは俺で、あいつの心に刻み込むのも俺なのに。
なのに何故か、あいつの笑顔を見ただけで、あの屋上にいるような錯覚を覚えた。

そう、それはまるで鳥籠の中に戻ってきてしまったような感覚。


「神崎?大丈夫か?」


その担任の声に反応して月島悠斗から視線を外す。


「は、はい。大丈夫です。」

…なんだったんだ、今の。
なんだっていうんだよ…。

月島って、あんな目してたっけ?

なんでこんな、心臓がバクバクしてるんだよ。


…落ち着け。落ち着け俺。

大丈夫だ、碧だって大丈夫って言ってたじゃねーか。


俺はあいつに復讐しにきたんだ。
…ビビって、たまるかよ。





「今回親の都合で転校してきた神崎玲くんだ。みんな仲良くしてやれよ。」

担任がそう言った瞬間クラスはまた更に騒がしくなった。



「神崎ってあの神崎かよ!?」
「え〜、でも同姓同名じゃないの?だって神崎ってオタク不登校児だったじゃん?」
「はー?てかそんな奴いたか?」


…おーおー、言ってる言ってる。
てか言ってること酷くねーか?
オタク不登校児とか…、俺ってそんな風に思われてたのかよ。


「はい、みんな静かにして。じゃあ、神崎くん、とりあえず自己紹介してくれる?」


担任に言われてシーンとした中自己紹介をする。

「神崎玲です。仲良くして下さい。」

碧と一緒に考えたニュー俺設定に合わせて自己紹介をし終えた俺は、担任に言われた席へと着席した。

いや、実際には着席しようとした。

すると、月島悠斗と再び目が合った。
そして、こっちを見て一度ヘラリと笑うと隣に座っている男子生徒に耳打ちをしていた。


…なんだ??
てゆうか、耳打ちされた奴の顔が青くなってるんだが…。
大丈夫か?


「笹本先生。」


「山田か、どうした?」

…どうやら彼は山田というらしい。


「俺、目が悪いんで、神崎くんと席を変わってもらっても良いですか?」


「いまさらか?席替えをして1ヶ月以上経ってるぞ?」


そう言われて山田が何か言おうとしていると月島が割って入った。

「イイじゃん、せんせー。本人が変わりたいって言ってるんだしさ?」


「まあ、別に良いか…。神崎はかまわないか?」


…よく分からないが願ってもないことだ。
俺に断る理由はない。

これで俄然ヤツに近付きやすくなるのだからな。


「僕は構いませんよ。」


「そうか、じゃあ、月島の隣の席に着席してくれ。」



そうしてやっと自分の席に落ち着く。

…ところで月島にすごく見られているのが気になる。


チラどころではない…。
ジーーっと見られている。


…本当に、どうしたんだ?



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