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暗殺教室
殺せんせー

どうせ1年間のつきあいだ。

この生物とは。

そう腹をくくって、簡単に説明した。

小さいときから、時々変なものを視たこと。

それはおそらく、妖怪と言われるものの類いであること。

そして、それらに絡まれてしまうことがよくあること。

「・・だから、神社に逃げ込んでいた、ということですか・・」

「はい」

「じゃあ、先ほど空中に浮いていたのは・・?」

「・・学校まで連れて行ってくれるというので」

・・会話が続かない。

俯いて膝の上に乗った妖を撫でると、妖は気持ちよさそうに目を細めた。

・・この先生は、私になんて声をかけるだろう。


「大変、でしたね」

「・・え」

頭を撫でられる感覚。

「・・人間は、自分たちと違う者を見たとき、排除しようとすることがあります」

「・・辛かったでしょう」

静かだったけれど、とても力のこもった声だった。

予想外の反応に、少し気が抜けてしまう。

「夏目さんを見ていたら分かりますよ」

「人間が嫌いですか、夏目さん」

私は答えられなかった。

「・・答えるのは、難しいですよね」

「でも、結論に至るのは・・あと少し、待ってもらえませんか」

「あと1年。この教室で過ごしてみて、もう一度考えてみませんか」

この先生は、私のことをまっすぐに見て話す。

まっすぐ、まっすぐ、私と向き合って話す。

・・否定しないのか、この人は。

・・嘘だと、気のせいだと言わないんだな。

こんなことは初めてで、少し恥ずかしい。

「・・わかりました」

・・もっと気の利いたことが言えたらなあ。


「・・この教室の生徒達はみんないい子です」

「夏目さんは、遠慮しなくていいんですよ」

「さっき、その妖と話していたときのようにね」

教室を出るときに、声がかけられた。


「・・考えて、みます」

今はそう答えることが精一杯だった。

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