薄桜鬼
ある夜のこと
「ぎゃあああああ!!助けてくれえええ!!!」
どうやら、また【失敗作】が逃げ出したらしい。
幹部全員で探しに行く。
どうか余計なことをしてくれるなよ、と思いながら。
「にゃぁん」
甘えた声を出す杏樹の頭を優しく撫でる。
「君は寝て待っててね。すぐに終わるから」
杏樹はにゃんと返事をした。
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「きゃああ!!誰かっ誰かっ!!」
助けを呼ぶ女の声が聞こえる。
声が聞こえた方へ走ると、既に事切れた女と、女の血をすすっている【失敗作】が目に入った。
「総司!・・あいつだな」
どうやら、一君にも聞こえていたようだ。
2人で、刀をかまえながら退路をふさぐように【失敗作】へとにじり寄っていく。
気配を消しながら刀を振るう間合いをはかった。
「ぎゃああああ!!!」
今回は今までより、あまり手間がかからずに斬れた。
「・・羽織を脱がしておこう」
「そうだね、一君」
あまりにもとんとん拍子で物事が進んでいくことに少し違和感を覚えながら、たんたんと目の前の作業をこなしていく。
「総司ッ!!上だッ!!!」
一君の少し焦った声を聞いて、ああやっぱり、と思っている自分を嘲笑した。
__2体も脱走しているなんて聞いてませんよ、土方さん・・
振り下ろされる刀を防ごうと刀を構えるが・・
少し遅かった、怪我するだろうな。
瞬時に察する。
それでも最大限に刀を振るって急所は避けた。(腕は結構切られるだろうが)
目の前が"赤"でいっぱいになる。
「・・あれ?」
痛みは感じなかった。というか、どこも斬られていない。
ならば、あの"赤"は。
「総司!!杏樹がッ」
最速で【失敗作】を斬り殺して、"赤"でいっぱいのソレに近づく。
「・・・全く、馬鹿だよね・・僕を庇って死んじゃうなんて」
どんどん冷たくなっていく杏樹を抱きしめながらそう呟いた。
今、杏樹は、屯所の桜の木の下に眠っている。
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