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薄桜鬼
不満げな女

あの女は突然、現れた。

瞬きをした、その一瞬の間に。

「へぇ・・今まで人が死ぬ様子は見たことありませんでしたけど、あまり面白くはないですね」

「っ!!」

俺達は気がつかなかったのだ、あの女が言葉を発するまで。

「そんなことよりも!!あなた方が、かの有名な新選組の方ですか!」

女が笑顔で総司に近づいていく。

「ちょ・・これ以上近づいてきたら、斬っちゃうよ?」

「あなたの剣術を見せてくださるのですか?嬉しいです!ぜひ、見せてください!!」

「・・君、死にたいの?」

「生きるか死ぬか・・天に任せてしまうのも、また面白いことですから」

女の狂った思考回路に、総司は露骨に顔をしかめた。

副長も複雑そうな顔をしている。

そのとき俺は、頬を紅潮させた女の首に傷があるのを見つけた。

・・あれほどの大きさの傷だったら、即死でも可笑しくないはずなのに。

女が狂う原因が見えた気がした。

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「お気遣いありがとうございます」

女は笑みを浮かべて、礼儀正しくお辞儀をした。

「・・私は一人で食事を取りますので」

「君のためにわざわざ食事を運ぶ僕のことも考えてくれる?」

「・・それもそうですね。ご一緒させて下さい」

雪村とこの娘の会話を聞いていれば、嫌でもわかる。

この娘は人というものが嫌いなのだろう。

だが、それに矛盾して、人を放っておけないという性質も持ち合わせている。

気を張り続けている雪村をとらんぷなるもので気を紛らわせているのがその証拠だ。

総司がじっと杏樹のことを見ている。

・・計りかねているのだろう。

この娘は、わからない。


「山南さんが腕を・・」

杏樹はどうでもよい、というような顔をして聞いていた。

「薬でも何でも使ってもらうしかないですね」

「総司、滅多なことを言うんじゃねえよ・・幹部が」

「喉が渇きました」

平助の言葉を遮った杏樹は人当たりの良い笑みを浮かべつつ、言葉を続けた。

「雪村さん、皆さんの分も一緒にお茶をつぎに行きませんか?」

「え?ああ、そうですね」

・・鋭い女だと思った。

部屋を退出する間際に、紅く光る瞳が俺達をとらえた。

興ざめをしたような、そんな濁った瞳。

二人の気配が遠ざかっていくのを確認する。


「・・本当に頭の回転が速いなあ、あの子」

「・・俺、間違いなくあのまま続けてたら"新撰組"のこともしゃべっちまってたわ・・」

あの朱い瞳が頭から離れない。

しばらくすると、杏樹で戻ってくる。


「ダメではないですか。ちゃんと騙し合いをしなくては」

「何も面白くない」

そうにやりと笑ったのだ。

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あきゅろす。
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