薄桜鬼 無表情の女 「お前はあの夜、何を見た」 俺がそう尋ねると、女は急に表情を無くした。 「回りくどいことはお互いやめませんか? あなた方は、はっきりと言うべきなのです。私という存在が邪魔だと」 「あなた方にとって、他人に見られてはならないものを私は見た。だから今、私はここにいる」 「間が悪く、見てはならないものを見てしまった私を哀れみ、殺すのを躊躇っているのでしょうが・・」 「そういう偽善と同情から来る行為はやめてもらえませんか」 非常に不愉快です。 そう言い切った女は、先ほどと打って変わり、酷くつまらなそうな顔をしていた。 「あなた方には、何か成し遂げたいことがあるのでしょう?そのために、問題にぶつかる度、その腰にある刀で解決してきたのでしょう?」 俺達がしてきたことをすべて知っているかのような言葉。 「その刀で、己の道を塞ごうとする存在を斬り捨ててきたのでしょう」 「ならば、今。その刀を振るうときではないですか」 女の黒い瞳が朱に染まっていく。 「さあ、その美しいあなた方の殺人剣を私に見せてください!!」 完全に朱に染まりきった瞳は、狂気で歪んでいた。 [*前へ][次へ#] |