薄桜鬼
厄日
少女はどこか浮き世離れしていると思ったが、
「どこに行っちゃったんだろう・・」
一瞬目を離すと、隣にいたはずの少女・杏樹ちゃんは忽然と消えていた。
泊まる宿探しもそっちのけで彼女を探す私。
そんなときにまた絡まれたのだ。
「おい小僧。いい小太刀を持っているなァ」
ああ・・!今日は厄日だ・・!!
杏樹ちゃんも浪士に絡まれていないといいけれど・・
そんなことを思いながら、私はかけ出した。
「なんでこいつは死なねえんだッ!!」
先ほど私に絡んでいた浪士の叫び声が聞こえ、
それがしだいに何かを突き刺すような音に変わると共に、アヒャヒャヒャヒャ・・という笑い声が大きくなっていく。
「・・ぁ」
笑い声がどんどん近くなってくる。
びちゃり、びちゃりと何かが滴る音も。
口元を押さえるも、手の震えが止まらない。
____一体何が起きているの・・?
ぐちゃぐちゃに混乱する中で、見つかりませんようにと息を殺し続ける。
そんな異様な状況下で私は聞き慣れた声を聞いた。
「さくらの花はいつ拓く 山のお里に いつ開く
さくらの花はいつ匂う 笑う七の子 遊ぶころ
さくらの花はいつ踊る 歌う七の子 眠るころ
さくらの花はいつ朽ちる 死んだ七の子 昇るころ」
静かに歌う少女の声。
笑い声が止まる。
しかし歌い続ける少女の声は大きくなっていくばかりだ。
危ない!!歌うのをやめて、杏樹ちゃんッ!!
心の中で必死に願うも彼女の唄は止まらない。
笑い声の主は、くつくつと不気味に笑いながら、声の方角に走り去っていった。
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主人公が歌った唄は「さくらうた」というものです。
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