夏目友人帳
散歩
「うちには1人娘がいるんだけどね」
藤原家に向かっていく間でのことだった。
「名前はあいと言うんだけれど、少し変わっているの」
「でも悪い子ではないの。だから、あの子と仲良くしてあげて」
まっすぐと僕を見る塔子さんは笑いながらそう言った。
【変わっている】
塔子さんはそう言葉にした。
それはどういう意味なのだろうか。
もしかしたら、
もしかしたら・・!
おれと同じように、視えたりするのだろうか。
俺が藤原家で生活するようになって以来、日課が出来た。
それは、彼女__あい(そう呼べと言われた)と散歩することである。
「今日はいい天気だね」
「・・そうね」
彼女は、滋さんに似たのだろうか。
あいはとても落ち着いていて、そして何より無口だった。
しかし、彼女の方から、おれの手を握ってくるから悪いようには思われていないのだろう。
「あそこの道を進めば、とてもきれいな花畑を見ることが出来る」
「私は昼寝をする場所として、よく利用しているけどね」
「そっか、じゃあ連れて行ってくれないか」
「いいよ。ついてきて」
彼女の小さな手は、とても温かかった。
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