夏目友人帳
記憶を呼ぶ声
______おぼえて、ない?
……………おぼえて、ないの?
誰かがおれを呼んでいる。
……………………ナツメのとなりに、いっしょにいたのに。
どこかで聴いたことのある声。
…ナ、ツ……メ………………。
とても眠そうで、どこか辛そうだ。
声が聞こえる方へ手を伸ばす。
何かに、触れた。
その瞬間に何かがおれの中に入ってくるのを感じた。
驚いたことに、それは声の持ち主とレイコさんの記憶だった。
いつも笑顔で自信満々で、でもどこか周りと馴染めないことを受け入れていた、レイコさん。
記憶の中をかける彼女はいつも一人で、不敵な笑みを浮かべていた。
けれど、このひとの記憶の中ではちがっていた。
………………なかないで、ナツメ。
「あんたが泣かないからっ!代わりに私が、泣いてやってるのよ!」
そうか、"ナツメ"はレイコさんのことだったのか。
…………………ナツメ、だいじょうぶよ。わたしはあなたのそばにいる。
「私は平気よっ!…1人は慣れてるもの。でも、今私が言ってる事はそうじゃないわ!!」
「私、あんたの記憶を見たわ」
「あんなに理不尽で酷いことをされたのに…心が壊れてしまうほど、苦しくて辛かったはずなのに…どうして、そんな人間相手に優しくできるのよ」
声は答えなかった。
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