短編集
沖田に恋する妖主(薄桜鬼)7
「お前も私が視えるのか・・!」
「お前・・"も"?」
「そうだっ!!今日はそいつの様子を見に来たのだ」
私の言葉を聞いておろおろする少年(と言った方が良いのだろう、男装しているし)。
その少年を不思議そうな顔をして隊士たちは通り過ぎていきました。
だめだ、このままでは彼の時の二の舞を踏んでしまう。
「こっちに来い、人の子」
「わっ私、今ダメなんですっ!!」
そう思った私は、少年の腕を引いて連れ出そうとしたのですが。
「千鶴ちゃん、1人で何しているの?」
・・一瞬、周りの時間が止まったかのように錯覚しました。
「あ、沖田さん。今、隊士の方を尋ねてきた女の子がいるんですけど」
千鶴と呼ばれた少年が私と彼を代わる代わる見つめながら言いました。
沖田と呼ばれた彼も、私の方向をじっと見つめています。
久しぶりに見た彼は、背がとても高くなっていて、反対に声は低くなっていて。
それに対して、妖の私はいつまで経っても子供のままで。
・・ああ、人の子と妖の私の流れている時間はちがうのだと、悟りました。
「ああっ!ちょっと・・」
後ろから、少年の声が聞こえてきます。
でも私は構わずに走り続けました。
「また、来てもいいだろうか」
「大丈夫、今度はもう迷惑かけない」
いつの間にか、雨が降り出していました。
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