短編集 沖田に恋する妖主(薄桜鬼)5 「道場にたった1人だっていうのに。お前、誰と楽しそうに話してんだ?」 その言葉を聴いて、凍りつきました。 その日は雨が降っていて。 私は初めて会った日に彼がくれた手拭いを持って、宗次郎の元へと走っていって。 愚かな私はそこで思い出したのです。 __雨の日に私が見えているのは、彼だけなのだ、と。 「別に。猫と話していたんですよ。あいつ、僕に懐いていましてね」 宗次郎は淡々と話していました。 無表情で、冷たい目をして。 私は彼にそんな顔をしてほしくありませんでした。 「宗次郎」 私の声は小さくて、少し震えていました。 はっとした顔で私を見る宗次郎。 「来るなよ!!!」 泣きそうな顔で、そう言いました。 宗次郎からの【拒絶】。 私の手から手拭いが落ちるのを感じました。 「ご、ごめんなさい」 私は試衛館から飛び出しました。 もう、彼に迷惑をかけるわけにはいかない。 そう、わかっているのに。 そう思えば思うほど、彼と過ごした時間を思い出すのでした。 [*前へ][次へ#] |