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短編集
薄桜鬼×銀魂1番外編

「兄さ、ん」


春雨第7師団の団長を務める俺と、

まだまだひよっこの雑兵の神威。


組織で話すことはおろか、廊下ですれ違う機会もない。

当たり前だ。

それほど今の俺とあいつの地位は天と地の差があったから。


「一体どうしたんだ、神威」


振り返っていつものように笑顔を浮かべた俺を弟はなんとも言えない表情で立っていた。


__久しぶりに聞く弟の声は以前より低くなっていた。

__あいつの身体を覆う包帯の数も増えていた。

会うだけで分かる。

神威は強くなった。


__反対に俺はどうなんだろう。

俺は自分が弱くなっている気がした。

以前のように、弟に__家族に接する事ができない自分が焦れったかった。


「・・今日、任務で洛陽に降りたんだ」

鳳仙の旦那は、神威に仕留め損ねた残兵を掃除しに行くよう指示したらしい。

俺を見つめる神威の瞳は、どこか濁っていた。

「その残兵達は、"親を亡くした子"を狙って売ろうとしていたんだ」

「あいつらが作成していたリストに書かれていた名は、みんな孤児だったよ。・・・ある1人を除いて」


俺は神威の言いたいことが、わかった。

わかって、しまった。


「・・神楽は、無事だったのか」

「・・うん。あいつは夜兎らしく、ものの数秒で気絶させてたよ」

「・・1人、だったんだな」

「・・あいつ__星海坊主__はどこにもいなかったよ」


ポタリ。

神威の握りしめた拳から血が垂れた。


俺は黙って神威の手を取って、握りしめるのをやめさせた。

しかし、なんて声をかけたら良いのか分からない。

分からなく、なってしまった。


「母さんは、幸せだったのかな」


苦しんででも、死ぬと分かっていても、

そんなに俺達__家族__がよかったのだろうか。


『行ってらっしゃい、』


母さん。

母さん。


"そんなにアイツ__星海坊主__がよかったの"


俺は黙って、誤作動でも起こしたかのようにボロボロと流す弟の涙を拭うことしか出来なかった。


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あきゅろす。
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