短編集 沖田に恋する妖主(薄桜鬼) それは、雨の日のことでした。 久しぶりの雨で、嬉しくなってしまった私は、雨に濡れながら、桜並木を走り回っていました。 ・・少しはしゃいでいたのです。 __人の子には、私を見ることなどできない。 そう高をくくっていました。 「宗次郎、道場の方に迷惑をかけてはなりませんよ」 「・・はい、姉上」 向かう側から、小さな姉弟が歩いてくるのが見えました。 妖怪である私が、人の子に道を譲るなど、非常に癪に障りましたが、哀しそうな彼らの顔を見ると、譲ってやっても良いと思ったのです。 「・・あれ」 彼らが通り過ぎるとき、ふと少年が私を見たような気がしました。 気のせいかと思いましたが、ふとある事実が私の脳裏をよぎりました。 __雨の日といった特別な天候であれば、人の子でも私が見えることがあると。 __今日は雨。 __人の子が私を見える条件は当てはまっている。 ちょうど良い暇つぶしになりそうだ__ そう思った私は、彼らについて行くことにしました。 [次へ#] |