EternalKnight
<エクソシスト〜負荷〜>
<SCENE054>――朝
虎一さんの車に乗せられて、俺と叶と時乃さんは武さんの家の前に来た。
って言うか虎一さん、高そうな車に乗ってるなぁ……いや車に詳しくないから判らないけど。
「ここで会議するんですか?」
「あぁ、ただし……地下のな」
地下の会議場、そんな物があるのか。
「さぁ、入ってきたまえ、あぁ、靴はもってな」
言われるがままに、靴を持って俺達は武さんの家に上がった。
そして……隠し扉をいくつか抜けて進むと、地下へと降りる階段が現れた。
って言うか何故に隠し扉なんか作ってるんだ……
「急な階段だし暗いから足元に気をつけて、あぁソレと判ってると思うが靴も履いてね」
言われた様に靴を履き、階段を下りていく。
確かに、地下に降りれるような造りの階段は一段の幅が狭く急だった。
「さぁ、この中だ。すでに準備は整い皆、待っているだろうからな」
大きなドアがゆっくりと開けられていく。
そのドアの向こう側から光が差し込み、光の先に広がっていた空間は――
予想していたよりはるかにく、大規模な会議場が視界全体に広がっていた。
中央には何もなく、その周囲を円形に取り囲むように配置されている座席が決闘場のように見えた。
……それはどこかで観たような決闘場を思わせる会議場だった。
何で観たんだろう?
なんかのドラマか映画あたりだったと思う。
思い当たる節は幾つかあるけど――
「さぁ、こっちだ来たまえ」
そんな事を思考していると、虎一さんは座席に向かって歩きだした。
よく見ると所々人が座ってた。
ってかアレだけしか居ないのに、こんだけ広く作った意味がわからん……
そんな事を考えていると、会議場の中央、決闘場の中心までいつの間にか来ていた。
そこで虎一さんが俺達の方を向いた。
「ここで、君の力を見せてもらいたい」
……ここで、か。どうやら本当に決闘場だったようだ。
「俺は……構いませんけど――」
叶に視線を移すと、『私も構わない』と視線で告げていた。
「いえ、大丈夫です。でもどうやって力を――」
「実際に戦えば判る事でしょう?」
すると、何処からか訛ったような発音の声が聞こえてきた。
声のした方に視点を写すと、銀髪の男が立ち上がっていた。
「……外人?」
背中には何か大きな物を背負っている。
「どうせ実力を見るなら戦ってみた方が早いでしょう?」
「ジッサイ ジツリョクガ トモナワナイヤツノ オモリハゴメンダシナ」
そこから数席離れたところにいた蒼髪の男が立ち上がり続いて告げる。
こっちは確実に外人だな、カタコトだし。いや、決め付けるのは良くないけど。
「所で虎一さん、あの人たちは?」
「海外から増援に来てくれたエクソシストだ」
「エクソシストって?」
確か、悪魔祓いだったか……
「日本で言う所の退魔師だ」
「そうなんですか。それで、俺はどうすればいいんでしょう?」
「そいうだな、それでは彼等のどちらかと戦ってくれ」
「それでは、私がお相手しましょう」
銀髪が席を離れこちらに向かって歩いてくる。
蒼髪の男が講義をするように叫んだ。
英語……もちろん早すぎて聞き取れない。
銀髪は蒼髪に振り返り何かを言った。コレも同じく聞き取れない。
そのたったの一言でなぜか蒼髪は押し黙り、そのまま自身の席に座った。
「それでは、私がお相手しましょう。退魔師殿、引き上げてもらえますか?」
「判りました。それでは茜君、聖さん、私たちは引き上げようか」
「はい、判りました」「いいえ、私はここにいます」
「ちょっと、何を言っているのよ、聖さん。ここは危険よ」
「時乃さん、コイツが居ないと俺は戦えないから」
「……そうか……それならばよしとしよう」
「そんな訳のわかんないことを認めるんですか!」
「今は彼の言う事を信じるほかあるまい」
そういいながら虎一さんは反論する時乃さんを引き連れ客席の方に戻っていった。
「さて、準備は……いいかな?」
男は背中に背負っていた何かを下ろし、被っていた布を外す。
布の中より現れたそれは、鞘に収められ引き抜かれるのを待つ得物。
「こちらはいつでもいい、さぁそちらも武器を出したまえ」
「叶……頼む」
「うん、わかってる」
叶の手が俺の手に触れる――
瞬間、俺達は淡い光に包まれ、聖具《飛翔》は俺の背に展開された。
「……なるほど、その翼が君の戦う《力》か」
「いんや違うね。コレは俺を支える《力》だ」
「さっきの娘にどんな秘密があるかは気になるが……先にその実力見せてもらおう」
そういいながら銀髪は剣を鞘から引き抜いた。
引き抜かれた刀身は洗礼された銀。そこからは美しさの中に力強さを感じる。
「まず、名乗っておこう。私の名はジョージ セイント」
「じゃあこっちも名乗っとく、俺は三枝 翼だ」
「そうか……覚えさせてもらった。それでは、行くぞツバサ」
ジョージさんが剣を構え突っ込んでくる。
(来るわよ、翼)
判ってる――
「ShadowBane」
――詠唱。瞬時に淡い光が収束し剣と成る。
完成したそれをすぐに振り、目前に迫ってきていた銀の剣にぶつける。
甲高く、短い金属同時のぶつかる様な音が響く。
「なるほど……その翼だけが武器ではないか――」
そう言って、ジョージさんはすぐに剣を弾き後退した。
「反応速度も十分、ならば少々早すぎるが次は私のアスカロンの一撃に耐えてみせるがいい」
そうジョージさんが言い放った瞬間――
(オーラの力が少しだけ刀身に集まっていく……)
――銀の剣が突然輝きを放ちだした。
アスカロン? あの剣の名前か? それとも技の名前か?
そんな一瞬の思考をしている隙に――
(来てるわよ、翼!)
――再びジョージさんが迫ってきていた。
ジョージさんが何か呟いている様に見えた。が、今は考えるな――
動きはこちらの方が早い、一撃を加えられる前に対処できる。
だが、先ほどの言い分だと、まず間違いなく何かある一撃だろう。
ならば、より安全な道を選ぶ――
剣指を結び、左腕をかざし、叫ぶ。
「Elder――」
(間に合うの?)
間に合わす!
――剣が迫る。
その銀の剣が力を発揮させるその瞬間。
「――Sign」
――それは邪悪を封ずる聖なる印にして、己が身を守る旧き印――
瞬間、俺の目の前に淡く煌く五芒星が展開され、銀の剣と衝突した。
五芒星が強大な衝撃で軋みをあげる。
(っ……駄目、構成が……不完全)
不完全だって!?
(このままじゃ……術式が……)
突破される?……いや、させない!
右腕に持っていた光剣を手放し、右手も剣指を結びかざす。
壊れるなら、二重にするまで!
「ElderSign」
障壁が軋み、術式が崩壊する瞬間。
その奥に更なる障壁が展開される――
第一の障壁を粉砕した銀剣は第二の障壁に阻まれてその勢いは殺された。
「このアスカロンの一撃を止めるとは……中々だな」
なんとか防げたか……
それにしても……おかしい、体が妙にだるい。
(っ……ぁ……)
って、どうしたんだ叶?
(力……使いすぎちゃったみたい)
何だと?
(ごめんね、ちょっとだけ休ませて――)
あぁ、判った。ちょっと待ってろ。
「すいませんジョージさん」
そういいながら俺は待ったをかける様に手をかざす。
「どうした?」
「すいません、ここまでにしてもらえませんか?」
「何かあったのかい?」
「それが――」
そう言いかけた瞬間。背に浮く《飛翔》は淡い光を放ち――
叶の姿に戻り、そのまま地面に崩れ落ちた。

<SCENE055>――夕方
あれから数時間、未だに叶は眠り続けたままだった。
ここは武さんの家の一室……純和風の部屋である。
そもそもこの建物事態が純和風なのだが。地下以外だが。
安定した寝息の音だけがこの狭い世界を支配している。
今この部屋には俺と叶しか居ない以上当然のことだが。
[♪〜〜♪〜♪〜〜〜]
ケータイの着信音が流れ出す……曲から察すに俺のケータイだろう。
俺はポケットの詰められた電話を取り出し画面を見る。
―聖五さん―
そういえば最近勉強教えてもらってなかったな……そんな事をおもいながらすぐにそれに出た。
「もしもし」
『おう、翼。今日久しぶりに教えてやろうかと思ったんだけど、何時もの時間空いてるか?』
「いえ……今日もちょっと……」
『なんだ用事アンのか? なら次は明後日になるぞ? それでもいいか?』
「あぁ、あんがとな、聖五さん」
そういえば聖五さんも四年前の聖具を使った戦いの参加者だったな……
何か叶を治す方法を知ってるかもしれない。
『わかった、んじゃ切るぞ?』
「ちょっと待ってくれ、聖五さん」
『どうした?』
「聖具について……なんだけどさ」
『……聖具か。それで、何でまたそんな話を今するんだ?』
言うべきなんだろうか? だがここで言わないと何も情報を聞けない。
「俺……今、聖具と契約してるんです」
『冗談……じゃないんだろうな、その言い方だと』
「はい」
『それで? 元聖具の契約者の俺に話を聞きたいって?』
「そう言う事です」
『……何について聞きたい?』
「力を使いすぎた聖具を元に戻す方法ってありますか?」
『…………多分だが』
聖五さんの声のトーンが低くなった気がした。
「多分なんですか?」
『あぁ確証はないけどな、オーラ……は判るな?』
「それくらい俺にもわかります」
『それを聖具に送り込むんだ、まぁ自分のオーラを聖具に分け与えるって所か』
「なるほど……確かにそれなら何とかなりそうだ……、あんがと、聖五さん」
『確証はないんだ。聖具は回復しないかもしれないぞ?』
「それでも、聖五さんはヒントをくれましたから」
『そっか……それとな翼』
「なんですか?」
『聖具を持って戦うってことは死ぬかもしれないって事だ』
「……」
『死ぬなよ?』
「はい、そう簡単にくたばるつもりはありません」
『ならいい、それじゃあ、今度こそ切るぞ?』
「はい、ありがとうございました」
[ガチャッ……プー……プー]

<Interlude-聖五->――夕方
あれから琴未ちゃんと毎日のように会っていた。
だが、今日彼女は春音の手伝いに行っているので今日は俺は一人だった。
翼に久しぶりに勉強を教えよう思い家から電話をかけると、聖具の話になっていた。
「……聖具か。それで、何でまたそんな話を今するんだ?」
今さらだ、アレはもう四年前の出来事なんだ……
『俺……今、聖具と契約してるんです』
真剣な声で翼はそう言っていた。
「冗談……じゃないんだろうな、その言い方だと」
『はい』
「それで? 元聖具の契約者の俺に話を聞きたいって?」
しかし、俺にもわかることなんてあんまりないぞ……それに元ではない。
『そう言う事です』
「……何について聞きたい?」
まぁ、せっかく俺に聞いてきたんだ、答えられる範囲なら答えてやろう……
『力を使いすぎた聖具を元に戻す方法ってありますか?』
力を使いすぎた聖具を元に戻す……か。
判れば、俺もとっくにそれをしている。
――可能性があるかも知らない事を、俺は今でも続けている。
「…………多分だが」
そう、これは恐らくの話だ。
なにせ欠かさず毎日やっていて、未だに成果は無いのだから――
『多分なんですか?』
「あぁ確証はないけどな、オーラ……は判るな?」
これが判らないと話にならないんだが――
『それくらい俺にもわかります』
「それを聖具に送り込むんだ、まぁ自分のオーラを聖具に分け与えるって所か」
正直ソレが正解かどうかは良くわからない。だから、絶対とは言えない。
『なるほど……確かにそれなら何とかなりそうだ……、あんがと、聖五さん』
何とか……ホントになるんだろうか?
「確証はないんだ。聖具は回復しないかもしれないぞ?」
そう、もう俺はそう思い始めている。
――あの日から四年、それだけかかって成果が無いのだ。仕方ない事かもしれない。
『それでも、聖五さんはヒントをくれましたから』
「そっか……それとな翼」
翼が聖具と契約したのなら、これだけは伝えなければならない。
『なんですか?』
「聖具を持って戦うってことは死ぬかもしれないって事だ」
『……』
「死ぬなよ?」
もう、永十のような被害者は出したくないんだ……
『はい、そう簡単にくたばるつもりはありません』
そうだな、こいつは簡単にくたばる様な奴じゃない。
「ならいい、それじゃあ、今度こそ切るぞ?」
『はい、ありがとうございました』
そのセリフを最後まで聞いてから、俺は電話を切った。
そのまま無言で家の外に出て、意味も無く紅い空を見上げる。
「聖賢……」
一体、翼の聖具がどれほど力を使ってそんな事になったのだろうか?
聖賢は……文字通り全て使い尽くしたのだろう。だから復活も遅いのかもしれない。
もし、翼の聖具の消耗が軽く、オーラを与えて復活したら……
聖賢。お前も、俺がオーラを与え続けたら……お前ともまたあえるよな?
そんな、答えが帰ってくるはずも無い問いかけを、俺は心に響かせた。

――to be continued.

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