EternalKnight
<雪合戦〜それぞれの戦い〜>
<SCENE030>――朝
うーん、結局アイツ等が見つからないまま開始時間か……
っと俺もどこか隠れないと即効でゼッケン取られちまうな。
それにしてもクラスの八割強程が参加しているとは……
そんなに成績を上げたいのかよ……まぁ、気持ちはわからんでもないけど。
俺も別に加算点がなくても問題ないが、そりゃもらえるならそっちの方がいいに決まってるし。
――っとあそこの物陰、隠れられそうだな。
少し速度を上げて物陰に移動した――
――が、先客が居たようだ。
「おわっ」
突然、雪球を顔面に当てられた――
「ゼッケン貰った! 悪く思うな三枝!」
そういって誰かが俺のゼッケンを引き剥がし、走り去っていった。
「っ……」
――顔についた雪を振り払い、走り去っていった方を見据える。
あの後姿は……加藤だな……
「あぁ……なんか俄然やる気出てきたぞ、俺」
それじゃあまず作戦を立てなきゃな――
まずは、加藤をぶっ潰す。以上。決定。
そういえば俺あの時からケンカとかしてないもんな。
「舐められるのも当然か……」
紅蓮さんに憧れて……あの人を追いかけ続けることに必死だったから。
こんな気分は久しぶりだ。
昨日の《飛翔》の一言で自分らしく生きる事を思い出したっぽいな、俺。
――まぁいいや、思い知らせてやろう。
「行くか……」
俺は加藤が走り去っていった後を追いかける為走り出した。

<Interlude-茜->――朝
こんな風に遊ぶのは初めてだと思う……
普通の学生もこんな事してるのかしら?
まぁいいわ、兎も角ゼッケンを奪い取らなきゃね。
さすがに氣を使うのは不味いだろうから普通に実力だけでやってみようかしら。
「あら〜、駄目じゃない。ちゃんと隠れてなきゃ?」
「西野先生……ですか」
「アナタのゼッケンを貰うね? 隠れてなかったあなたが悪いんだから」
西野先生が構えを取る……その構えにはほとんど隙がない。
「ゼッケンを奪われるわけには行きません、相手が誰であろうと私は戦います」
「そういえば時乃さんは知らないのよね私の強さを……来たばっかりだから」
「いえ、先生の実力の程は構えを見ればわかります。私と同等といったところでしょうか?」
「へぇ、面白い事言うのね時乃さん……なら久しぶりに私も楽しめるかしら?」
「さぁ、それは神のみぞ知る、と言った所だと思いますけど?」
私も構えを取る。神経を研ぎ澄まさせる。
「ハッタリじゃないみたいね、いいわ久しぶりに本気で戦えそうな相手を見つけれて私もうれしいモノ」
西野先生が笑みを浮かべる。
「それでは始めましょうか?」
「そうね」
その声と同時に地を踏み出し、前に出た。

<SCENE031>――昼
「あー……ちょっとやりすぎたかな?」
目の前には気絶したのか加藤が倒れていた。
もちろんゼッケンはもうついていない、まぁ一個は持ったままだが……
さて、ルールだと奪い取って自分がつけてなかったらつけなきゃいけないんだよな?
早速奪い取ったゼッケンをつける。
さて、これからどうするかな……また作戦立てなきゃな。
っていうか俺って多分手を組まなくても一人で戦える気がするんだが……
翔ねぇか時乃さん以外になら勝てる気がするし。
[がさ]
「誰だ!」
すぐ近くの物陰で何かが動いた。誰か隠れてるのか?
「えっと……ゼッケン取らないでね? 翼」
その物陰から、叶が現れた。
「って、叶かよ。どうしてそんなとこに隠れてんだ?」
「えっと、どっちかって言うと私の隠れてたここに翼と加藤が来たんだけど」
「あぁ……そうだったのか」
「ところで翼? 加藤……そんなになって大丈夫なの?」
すぐ近くで倒れている加藤を見ながら叶が心配そうにつぶやく。
「正直やり過ぎたと思うけど……まぁ十分もすれば目を覚ますと思う」
「そうなんだ……まぁそれはいいとして、ねぇ翼?」
加藤のことはそれ扱いなんだ……まぁ別にかまわないけど。
「で、何だよ叶?」
「私と組んでくれない?」
「断るつもりもないな、そもそも彼氏は彼女を守るもんだろ?」
「また恥ずかしい事言って……でも良かったぁ。みんなが近くにいた手前集まってる時に言い出せなくて……」
「そうだな、男女で組んでるのってクラス公認カップル組みばっかだったし」
「私、誘いにいけなかったから翼に嫌われたかなって……」
「そんな事で嫌いにならないっての……それで、なんか作戦あるか?」
「そういうのはないけど……」
「単に俺に守って欲しいって事だな、いいけどさ」
「ホントにいい?」
「さっきも言ったろ断るつもりはないって。それに俺も仲間が欲しかったとこだし」
「そうなんだ……じゃあさ、これからどうする?」
そうだな、どうしようか……時乃さんと翔ねぇ以外になら戦っても勝てると思うけど。
さすがにあの二人だけはなぁ……
それに俺一人じゃなくて叶も居るんだし、攻め手には回れないか……
「とりあえず二人で隠れられる場所でも探そう」
「OK、わかったわ」

<Interlude-茜->――昼
右拳が迫る――
左を半歩退かせ、体をねじりながら拳をかわし、ねじった反動をバネに左掌底を叩き込む。
――が、先生はそれを上体をねじりながらそらしてかわす。
挙句そのまま流れるような動作でねじった部分をバネに左バックブローを打ち込んでくる。
かわせない!?
氣を使っていない体じゃ、反応できてもかわせない速度で一撃が叩き込まれる。
バックブローが私の頬に打ち付けられ、その衝撃が脳を軽く揺さぶる。
「つぅ……」
そのすぐ後に続くであろう追撃をかわすように後退するが追撃はなかった。
「時乃さんってホントに強いのね……視た事ない型だけど何処の流派?」
「家に伝わる武術です。先生の方こそ視た事ない型ですけど?」
「私のは空手を自己流にアレンジした挙句の我流よ、まぁとっても実戦向きなんだけどだけどね〜」
「私は久しぶりのいい相手って事ですか?」
「そうね……それより時乃さん?」
「なんですか? 周りで見学している人達も居るけど問題ないと思いますけど?」
「やっぱり気がついてたのね。わかってるならいいわ、続きはじめましょうか?」
「……行きます!」
私達は同時に地面を蹴った。

<SCENE032>――昼
あぁ……なんていうかアレは、すごいなぁ。
隠れられる場所を探していたのだが……
その途中でコレを見つけてしまい、つい見入ってしまっていた。
プロの格闘家の試合でも見てるみたいだな。
そこだけ孤立した空間かの如く、圧倒的な威圧感を放っている。
全てが計算された組み手のように見える程の攻防。
「茜ちゃんも西野先生もすごい……」
「確かにすごい……けど――」
何故か、『あんなの《飛翔》の力を使えば二人とも敵じゃないじゃないか』そんな事が思い浮かんだ。
「っ……あ」
突然、叶がよろめき倒れそうになる――
「っと大丈夫か?」
――のを慌てて俺が抱きとめる。
「ごめんね翼、平気。ちょっと立ちくらみがしただけだから」
「無理すんな、辛いなら座れる場所を探そうか?」
「もう大丈夫だけど……ってここで話してたらみんなに見つかってゼッケン取られない?」
「そうだな……移動するか、あの二人の戦いは決着付きそうにないし」
「残念ながらぁ〜もう見つかってるんだよなぁ〜」
「!?」
声のするほうに視線を移す。
「なんだ、鈴木に佐藤に田中か……」
「なんだとはなにかな? 三対二だよ? 数理的に不利な上そっちは君と聖さん……一人女性なんだよ?」
「佐藤の言うとおりだ! って言うか何んだ、さっきのいい雰囲気。昨日そんなんじゃなかったじゃんかよぉ!」
「君達ぃ〜、昨日が何の日かはぁ〜知ってるだろぉ〜?」
「黙れ、田中、その話し方うぜぇーんだよ!」
「落ち着け鈴木君、仲間割れにメリットはない」
っていうか……何でこいつ等はチームを組んでるんだろうか?
「ふぅ、まぁいいや。こいよ」
「ふっ、何の格闘技もやっていない君が、武術を嗜む僕たちに勝とうなんてね、笑わせてくれる」
「……えっ、お前等格闘技か何かやってたのか?」
「何を言うんだいぃ〜、僕はフェンシングをぉ〜やってるんだよぉ〜」
フェンシングって……剣ないじゃんか、今。
「そして私も勉強の合間に通信空手を一年程」
通信空手って……しかも勉強の合間かよ。
「俺は今まで無数の格闘技を習ってきた、その数は10を超えるっ!」
ぶっちゃけ入ってはすぐやめての繰り返しだろ? それって。
「ふっ、あまりの経験の差に声も出まい」
あぁ、あまりのお前らのアホさ加減に呆れて声もでねぇよ……
「えっと……翼?」
「あぁ、わかってる。軽く捻ってくるから」
「舐めんな、誰を軽く捻るだってぇ!」
「いや、お前等全員だっての」
「落ち着くんだ鈴木君、統計学的には男子は恋人の前でカッコをつけたがるモノだ」
「なるほど、そう言うことか……だがいつまで強がっていられるかな?」
って言うかこいつ等……本物の馬鹿か?
まぁ俺の実力知らないから仕方ないって言えば仕方ないのか……
「いくぞ、みんな!」
「任せてくれ」「さぁ〜て、行こうかぁ〜」
馬鹿三人組みはそのまま一気に俺に仕掛けてきた。
――まずは田中を片す。
重心を低くし、地を蹴り一気にこちらから距離を詰める。
「ぇ?」
フェンシングではありえないだろう懐にもぐりこむ動きに対応する事は田中にはできない筈。
距離が近づいていき、懐にもぐりこんだ。……取った!
そのまま鳩尾に右拳を叩き込み、全力で振りぬく。
「っぁ!?」
振りぬいた拳は田中の体を軽く浮かし、浮かんだ体は物理法則に逆らわず、緩やかに地面に落ちた。
[ドサッ!]
「なっ! 田中が……、翼お前一体何をした!?」
「視てただろ、ただ殴り飛ばしただけだぜ?」
「馬鹿な、人間の体を浮かすのにどれほどのエネルギーが必要か……」
「心配してやらなくてもちょっと気を失ってるだけさ。……で、お前等もこうなりたいか?」
「っ……馬鹿にするなぁ!」
怒りに任せて鈴木が突進してくる。が、それを左半歩退いてかわし、通り過ぎる鈴木の足をかけてこかす。
「ッ!?」
そのまま転倒し、雪が降り積もっている地面に顔からダイブする。
「で、後はお前だけだぜ? 佐藤」
「……君を甘く見すぎていたようだ、わかった負けを認めよう」
「わかればいいっての、ただしゼッケンは貰ってくぜ?」
「勝手にしてくれ――」
「まてよ、佐藤!」
顔面から雪に突っ込んだ鈴木が立ち上がり叫んでいる。
「俺は翼に負けてねぇ、勝手にあきらめんなよ!」
「だがしかし、彼は私達より圧倒的に強いではないか?」
「そんなもんはなぁ……俺が根性でどうにかしてやる!」
「えーっと、まだやる? ケガ……増えるぞ?」
「それでも、男には負けれない戦いがあるんだ!」
この戦いにヤツを駆り立てる、そこまでのものがあるって言うのか?
「行くぞぉ、翼ぁ!」
[ピピピピピピピピピ]
緊迫した俺達の間に間抜けな機械音が流れた……
その音の正体……それは12時にセットされたタイマー。
詰まる所、終了時間を知らせる物だった。
「時間切れ……だな」
「あ……あぁ」
鈴木が崩れ落ちていく。
「俺の、俺の成績がぁ……」
ってか負けれない理由って成績かよ。

<SCENE033>――昼
で、雪合戦は無事(?)終了したわけだが……
参加者33人のゼッケン保有数ランキングだが――
俺は保有数1枚で同率4位だった。
っていうか同率4位が13人も居るのはコレ如何に?
だがしかし、最大の謎は……雪合戦なのに血だらけなのが二人もいるのかである。
もちろん誰かは言うまでもなく翔ねぇと時乃さんなわけで――
「さて、そんじゃあ解散ね〜。因みに成績のサービスは参加者全員にしておくから〜」
歓喜の咆哮と落胆のため息がどよめきを起す――
「まぁ順位が多分に反映されるけどね〜」
――が、どちらも一瞬で先程までと逆に反転した。
そこまで成績が大事なんだろうか?
いや、まぁ……あるに越した事ないけどさ。
「そんじゃあ今度こそほんとに解散!」
さて、家に帰って、適当に――
「久しぶりに本気で戦えて満足よ、時乃さん」
翔ねぇの声がふと耳に入った。
振り向くとすぐそこで時乃さんと話をしている姿が確認できた。
「そうですか、私でよければまたお相手しますよ?」
「うれしい事を言ってくれるわね……まぁそのうちお願いするわ」
なにやら非常に仲良くなっていたりするわけだ。
なんかこう……拳で語り合って何か伝わったんだろうか?
いや、だからどうとかじゃないけどさ……
って、立ち聞きしてないでさっさと帰ろっと……
俺は今度こそ帰宅する為、校門に向かって歩き出した――
――が「待ってよ、翼ぁ〜」叶の声が背後から聞こえてきたので足を止めて振り向いた。
「どうしたんだ?」
「ねぇ翼? これから用事ある?」
「昼飯食う以外はないけど?」
「えっとね……じゃあ一緒に……どこか出かけない?」
「あぁ、それじゃあさ、せっかくだからついでに昼飯も一緒に食いに行こうぜ?」
そういいながら何の気なしに再び前を向き歩き出す。
「うん、ありがと、翼♪」
「別にお礼言われるような事してないだろ?」
「そうだけどいいの。気にしないで」
なんなんだろうか?
……別に飯食いに行くぐらい前にもあったと思うんだがなぁ?

――to be continued.

<Back>//<Next>

10/39ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!