EternalKnight
参話-1-<エリニュエス>
<DREAM-1->
研究室に篭っていて中々会えなかった●●●●が、研究を完成させ――僕と○○○○に会う――と言ったらしい。
そんな事を聞かされて、僕は○○○○と待ち合わせ場所である、広いホールに入った。
なんでも今日は、完成したばかりのモノを僕達に見せてくれるらしい。
僕としては、そんな事はどうでも良かったのだけれど――ただ、久しぶりに会える――それだけで良かった。
○○○○も●●●●と同じ研究者なのだけれど、仕事の中での役職が違うらしい。
その為、実の所を言うと、○○○○も久しぶりに会うらしい。最近仕事忙しかったらしく、研究室に篭ったきり出てこなかったそうだ。
それが、ようやく完成したらしく、やっと研究室から出てきたのだ。
「ねぇ、○○○○? まだ来ないの?」
広いホールで待ち始めて幾分かして、僕はそんな事を聞いた。
まだ待ち始めてそう時間は経っていないと思う――それでも、久しぶりに会えるからなのか、随分な時間待っている気がした。
「もう少し待っていなさい、ネ▲。時機に来るから」
自分の中でもまだ然程時間が経っていない事を意識していたからか、僕は質問をやめて、ただ待つ事にした。
先ほどの僕達の会話の終わりから数分たっただろうか? ホールの自動ドアが開き、●●●●が入ってきた。
その姿を確認するや否や、○○○○は●●●●の下に駆け寄っていった。
「やったわね、●●! あなたなら完成させられると信じてたのよ」
そう言いながら、駆け寄った勢いをそのままに抱きつこうとした。瞬間――ホール内に、何かが突き刺さるような、否な音が響いた。
――小さな、ほんの小さな音だった。だけど、僕には確かにそれが聞こえた。
そして、その音の発信源に気がついた。だから、見てしまった。だけど何が起こったかは理解できなかった。――否、したくなかった。
それは、何で理解したくないの?――簡単だ、突き出していたからに決まっている。
それは、それは何処から突き出している?――僕から見て、○○○○の背中からそれは生えている様にも見えた。
それは、一体何なんだ?――それが何であるか解りたくない。けれどそれは……赤い液体に彩られた……漆黒の何かだった。

<SCENE021>――朝
目蓋を透過する光が、眠りから――悪夢の断片の映像から――俺の意識を引き上げた。
「っ……」
――一体なんだ? 昨日もいつも通りに窓の無い薄暗い自分の部屋で寝たはずだ。
なら、どうしてこんなに眩しいんだ? 部屋には窓が無い、故に目蓋を透過する光などが入ってくる余地は無い筈だ。
いや、現にこうして起こっているのだし、何かがあったのだろう。
――自然と左腕を目の前に動かす。それにより、光源不明の光と目蓋との間を遮る影を生み出し、俺はやっと瞳を開く事が出来た。
「お、起きたかネス」
そうして聞こえた声の主は、眩い光で姿こそ捉えられないが――ケビンだった。
――? なんでケビンが俺の部屋に入ってきてるんだ? 別に鍵が掛かってないから入ってきてる事そのものには驚かないけど……
そも、ケビンなら殺気は兎も角、部屋に近づく足音で俺は起きる筈なんだが――何で気が付かなかったんだ?
余程深い眠りにでも入ってたのか? 否、それ以前に……なんでケビンが俺の部屋に来てるんだ?
「あぁ、起きた。それで……何の用だケビン? 後、眩しいのはお前のせいだな?」
とりあえず、眩しくない様に左手で視界に影を作りつつ上体を起こす。――と、同時に眩い光が消えた。
そこで改めてケビンの姿を確認した。その手には何かが握られており、本人はサングラスを掛けていたりした。
恐らくそれが光源であり、自分は眩しくない様にサングラスを掛けていたのだろう。
「正解、因みにこの眩いばかりの光を発生する装置だがな、エーテル理論を使ってるから電力切れが無いんだ」
と、掛けていたサングラスを持ち上げる様にずらして、自慢げに言っている。――どうせこれも気晴らしに作った物だろう。
「そんなものを作ってる時間があるなら俺の頼んだモノを仕上げてくれ……」
半ば呆れ気味に俺が呟くと、ケビンがニヤリッと口を歪める――そのケビンの先程の表情から、紡ぎだす言葉の意味を予測できた。
「お前に頼まれた品だがな、完成させてやったぞ?」
そうして、ケビンが放った言葉は俺の予想通りの内容だった。
「それで、モノは何処にあるんだ?」
見た感じ、ケビンはそれらしきモノを持っていない。今は右手に先程の光を放つ装置、左手にサングラスが持たれており、荷物も無い。
「研究室だ、渡す前に色々と解説してやろうと思ってな。ココまでホワイトボードを持ってくる訳にも行かないだろ?」
と、言ってケビンは未だベッド代わりのソファーに居る俺に背を向ける。
部屋のドアを開けて外に出る直前に振り返り「準備が出来たら降りて来い」と言い残して、部屋を出て行った。

<SCENE022>――昼
「それでは、今回の講義の纏めに入る」
――眼鏡を掛けて、中指でずり落ちてきたそれを持ち上げながら、ケビンが言い放った。
と、言うか……新型の銃に追加された機能云々の説明の筈だったのに、神話まで聞かされてしまった。おかげで既に三時間を越えている。
「まずは、この銃……一挺で《エリニュス-Erinys-》、二挺で《エリニュエス-Erinyes-》だが、その名前の由来は何だった、ネス?」
って、質問してくるのかよ、しかも肝心な部分でも無いのに。――まぁ、覚えてるからいいけど。
とりあえず、ケビンのノリに会わせて返答する事にした。
「ギリシャ神話の復讐と正義を司る女神――だろ?」
――復讐は兎も角、俺達のやってる事から考えて、正義を司るなんておこがましい気もするが……
と、言うか俺自身はギリシャ神話が何であるか知らないんだが――
大方、ギリシャと言う神性……或いは土地が重要な意味を持つ神話なんだろうけど。
しかし、何でわざわざ銃に名前をつけるんだ……まぁ、聞いてもカッコいいから――って答えが返ってくるだけだろうけど。
「覚えてるようだな……」
肯くように首を大きく何度もケビンが動かしている。
――今すぐにでも訓練場で試射をしたいのだが、ケビンが解散、と言うまではココを離れる事が出来ない。
肝心な銃をまだ貰って無いし……
「それじゃあ次の質問だ。エリニュスの《デュアルトリガー-DualTrigger-》についてだが――」
今度は真面目に新規の機構の話らしい――まぁ、復習のつもりでもう一度聞くのも悪くは無い、かな。

<SCENE023>――夜
ケビンの講義が終わり、昼食を取ってから訓練場へ行き、試射を終えた後もいろいろと試した。
疲れたので訓練所を出て、研究室を通り、地上と地下をつなぐ階段を上り、殺風景な部屋を出る。
その頃には既に日は沈みきっており、世界は夜の闇に包まれて、月の光に照らされたいた。
もう夜だったのか……俺が試射を始めたのは2時頃からだから――「今、何時だ?」
「今は10時だけど?」
と――そこで、予想していなかった方向から声が掛けられた。その声から誰かはわかっていたが、そちらに顔を向けてこちらも声を出す。
「よぉセリア、コレから仕事か?」
その俺の問いかけに「えぇ、そうよ」と簡単に答えて、今度はセリアが疑問を飛ばしてくる。
「そう言うネスはこんな時間まで何をしてたのかしら? また仕事の事前調査?」
こんな時間、か……2時から10時までだから試射とその後のトレーニングだけで8時間だもんな……
確かにこの時間に俺がここに居る事なんて滅多に無いし、聞かれてもおかしくは無いか……
「否、ケビンに頼んでた新型の銃が出来たからそれを受け取って試射してたらこんな時間になっちまってな」
その俺の言葉を聞いてセリアは少し眉間に皺を寄せ、左手を顎に添えて、何か考えているような仕草を取る。
そしてしばらく――と、言っても1〜2秒程だが――黙り込み「その銃ってさぁ――」と口を開いて言葉を紡いで行く。
「ひょっとして、《エリニュス》もしくは《エリニュエス》って名前……だったりする?」
確かに間違ってはいない――が、なんでセリアが知ってるんだろうか? って、まぁ……なんとなく解かるけど一応聞いてみよう。
「そうだけど――なんで知ってんだ?」
「大方、何でかわかってそうな顔してるのに一応聞くのね……まぁいいわ」
――まぁ、それから聞いた話は大方予想通りのモノだった。
って、言うかケビンの野郎、完成してるなら名前決めに一日かけずに直ぐに渡せよ……名前なんてどうでもいいし――
しかもセリアにアイデア求めるって、せめて自分で考えろよ……とりあえず、次にあったら文句の一つでも言ってやろう――うん、決定。
――話を終えてセリアと別れ、俺は自分の部屋に戻り、殆ど無い足場慣れた足取りで渡って、ソファー(兼ベッド)に倒れこんだ。
今日は8時間もトレーニングやら何やらしてたからかなり疲れているし、訓練所にあるシャワー汗も流したので今日はもう寝る事にしよう。
最近毎日のように見る悪夢を見ないように……と、ささやかに願って、俺はそのまま意識を手放した。

<SCENE024>――深夜
何者かが階段を上ってくる音で、目が醒めた。
直ぐに上体を起こして薄暗い部屋の壁にかけられた時計に目をやると、時計の針は深夜の三時を過ぎたところを指していた。
こんな時間に……誰だ?
このアパートの二階に住んでるのは俺、セリア、ケイジの三人。
その内、セリアはこの時間だとまだ地下で仕事をしている筈で、ケイジがこんな時間まで活動しているとは考えづらい。
――依頼者か敵か……さて、どっちだろうな。
ソファーの近くに置いた《エリニュエス》を拾い上げ、左手の《エリニュス》を腰に収め、右手の《エリニュス》は握ったままにする。
足音が、部屋に近づいてくる――依頼者か? それとも襲撃者か?
俺の住まいは別にココだと隠している訳では無いので、情報屋に聞きでもすれば直ぐにココだと割れる。
故に、襲撃者が来るとしても仕方ないのだが――と、そこでドアを軽くノックする音が聞こえて来た。
――まだ油断はしないが、どうやら依頼者だと見ていいだろう。
そのノックに何の反応もせずに《エリニュス》を構えた姿勢で待機し続けていると、二度目の先程より強いノックの音が聞こえてきた。
またもそれを聞き流す――もしも相手が奇襲者であったなら、さすがにコレだけの音で反応が無いなら進入してくる筈だ――
が、二度目より更に強くなった、三度目の、最早ノックというより、壁を殴っていると取れる音がドアから聞こえてきた。
ココまでやるなら奇襲目的では無いだろうと考え、立ち上がって部屋の電気をつける。
――瞬間、視界が焼けるが、直ぐに明順応が開始され始める。完全に視界が戻るのを待って扉の向こうに「鍵は開いてる、入れ」と促した。
その声をかけて直ぐに、部屋の扉が開かれ、その向こうに黒のスーツを着込んだガタイの良い男が立ちすくんでいた。
立ちすくむ理由は無論、先程まで闇夜と月光の世界に居たからだろう。恐らく、男の視界は今現在急速に明順応急している所だ。
その間に俺は男に視線を向ける。三十歳前後に見える顔立ちに黒髪のオールバック。手にはジェラルミンケースが握られている。
――何処かの企業の重役とかに見えなくも無い。
「あんた……一体何のようでここに来た?」
とりあえず、未だに目を細めている男に声をかけてみる。その声に男は反応して、少しずつ細めた目を開きつつ答えを返してきた。
「私の主が仕事を依頼して来い、と申されまして。あなたは――名無し様ご本人……で間違いありませんね?」
主……ね。ってコトは目の前に居るこの男はただの使い……か。本人が姿を現さないってのは気に食わないな。
――と、質問には答えないとな。
「あぁ、間違いない。俺がNameLessを名乗って仕事してる。それで、無駄話は抜きにして早速本題を聞かせてもらおうか?」
言って、散乱しているモノを足で押しのけ、歩けるだけの道を作りあげる。
そして、俺が先程まで寝ていたソファーと机をはさんで向かい側にあるソファーに手を向けて「まぁ、座ってくれ」と促した。
その俺の言葉に従って男はそのソファーに座る。俺も先程まで寝ていたソファーに戻り、既に座っている男に対面するように腰を下ろした。
「さて、それじゃあ相手の名前からでもいいから、わかる情報全てを教えてくれ。有れば顔写真とかも出してくれるとありがたい」
「事前にこちらで調査してきました……資料を出させていただきます」
と、言いながら、男はジェラルミンケースを空け、その中からファイルを取り出しこちらに差し出してくる。
開いたそのケースの中には大量の金が入っていた――ざっとみて300000‡は即金で払えそうな程はある。
と、そこで差し出されたファイルを開く。コレだけの金額が事前に準備してくるあたりを見ると――相当な大物だろうか?
そうして俺は渡されたファイルを開き、中の資料を取り出した。

――to be continued.

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