EternalKnight
<宴〜共闘の誓い〜>
<SCENE041>・・・昼
聖五を背負って家の前まで帰ってきて俺はあることに気がついた――
「どうやってこの状況を真紅に説明しよう?」
幸い俺にも聖五にも目立った外傷はない。
しかし……俺が聖五を背負って帰ってくる――
この状況は明らかにおかしい。
「どうしたもんかなぁ」
考えても仕方ない――
コイツが突然睡魔に襲われたって事にしよう。
たぶん却下される言い訳で自分を納得させてドアを開いた。
「ただいまー」
「あ、お兄ちゃんお帰りー」
真紅がリビングから出てくる、なぜか冬音と一緒だ。
「って、お兄ちゃんなんで聖兄ちゃん背負ってるの?」
「コレはだなぁ」
「そんなことより聞いてよ紅蓮〜!」
俺達の会話に冬音が割り込んでくる――
よく解らんがとりあえずナイスだ!
「あ、聖五を降ろしてからな」
そういいながらリビングに上がりソファーに聖五を寝かし机に座る。
「で、何があったんだよ冬音?」
「それがさぁ、コレ見てよ」
そういって冬音が机に通知表(何故に?)を出した。
名前を見るとそこには《三瀬琴未》と書いてるんだが……
「えっとこれ、琴未姉ちゃんのじゃないの?」
「そうよ?」
「妹の……勝手に持ち出すなよ?」
「……許可取ったからいいのよ」
微妙な間があったが、それはなかった事にしておこう。
「で、コレがどうしたんだよ?」
「中を見てよ、中を」
「どうせ妹より悪かったーってんだろ?」
同じ歳なのに負けたのが悔しいんだろ?
「そりゃそうだけど、ある程度覚悟はしてたのよ……でもね?」
「まぁそういうなら見てみるけどさぁ」
で琴未ちゃんの成績。
現国9
古文9
数学10
生物9
科学8
地理9
歴史10
英語9
体育6
家庭10
芸術8
な……なんだ――――コレは?
聖五よりすげぇじゃねぇか!
「ね?」
「忘れることにしよう」
「お兄ちゃん、それはさすがに無理だよ?」
「まぁ、成績なんて人それぞれよ!」
「そう割り切って現実逃避するしか道は無いのか」
[ピンポーン]
「あれ、誰だ?」
「あけてくるね? お兄ちゃん」
「おう、頼んだ」
数秒後
「あ、真紅ちゃん、成績どうだった? まぁ紅蓮が無事なんだから大丈夫だと思うけど」
「はい、欠点は一つもありませんでした」
「さすがねぇ、ところで聖五いる? 帰ってきてないんだけど、もうすぐお昼だしさぁ」
「あ、いますよお兄ちゃんが背負って帰ってきたんだけどぉ」
「へ? なんかあったの?」
「それがですねぇ」
二人で話しながらリビングに入ってくる。
「聖五こんなところで寝てんじゃん」
「翔子先生きたんだぁ、私も帰ろうかなぁ……お昼も近いし」
「そうすれふぁ〜」
「何? その『お前なんてどうでもいいよ、つかとっとと帰れ!』見たいなリアクション?」
「あくびしただけだろ?」
かなり眠い、さっきの戦いで能力使ったのが響いたのかも知れない。
「眠いんで寝ることにするわ」
「眠いって、昨日遅くまで起きてたの?」
「ンな事ねぇが……眠いもんは眠いんだよ」
事情なんて説明できるわけないし……
「そんな事いって、昨日の晩は何してたのかな?」
にやけながら俺を見る、馬鹿かコイツは?
「何もしてないから」
「一人で……ダメ! 女の子の口からはこれ以上言えない」
「何ぬかすかと思えば――」
「前も言っただろ?『お前のどこが《女の子》だ!』って」
「そんな! 母さんは紅蓮をそんな子に育てた覚えはないわ!」
「誰が母さんだ、誰が! 翔ねぇ、冬音、悪ふざけはよしてくれマジで眠いんだって」
「紅蓮ノリ悪い〜」
「ホントに眠いから寝てくるぞ」
「どうぞ、どうぞ起きてきたらあなたの評判がた落ちよ♪」
「やめてくれ」
そう言い残して俺は自分の部屋に向かった。
自分の部屋に戻るなり俺はベッドに倒れこんだ。
その数秒後には俺の意識は深い闇の中に沈んでいった……

<Interlude-真紅->・・・昼
お兄ちゃんが部屋を出てもう数分が経っている。
お姉ちゃんと冬音姉ちゃんはなんかお兄ちゃんの悪口(?)言ってるみたい。
「そういえば、もうすぐお昼だっけ」
時計を見つめると短針は12を通り過ぎてそろそろ1に到達しそうだ。
「お姉ちゃん?」
「どうしたのぉー、真紅ちゃん?」
「もうお昼だよ?」
「そうなのよねぇ……よし、ここで食べていこうっと――」
「じゃあ真紅ちゃん一緒に作ろうか?」
「はい」
私は笑顔で答えた。
「ついでにあの馬鹿二人の分も作っておこうか?」
「あのー、私の分もよろしくね?」
言葉を話さずに冬音姉ちゃんを見つめる。
「何言ってるの? あんたも食べるなら手伝いなさいよ! 仮にも女の子でしょ?」
「仮にもってぇ、でも私、料理できないんだけど?」
「そうなんですか?」
「全部、琴未に任せてるし」
お姉ちゃんと私は無言で見つめあい「はぁ」と溜め息をついた。
[ピンポーン]
「あれ?誰か来たみたいだよ?」
「だれだろ、まぁいいや真紅ちゃん見てきて」
「はーい、見てきますね」
私は玄関に向かって歩いていってドアを開ける。
「あ、真紅ちゃん、姉さん来てる?」
「いますよ、今からお昼作るんですけど、琴未さんもご一緒しませんか?」
「いやそんなの真紅さんに悪いから……」
「もともと五人分作るのが六人分になるだけですし……」
「そう? って五人のうちに姉さんも入ってる?」
「はい♪」
「はぁ……じゃあ、せめて手伝わせて」
「もちろんいいですよ」
「そう、じゃあおじゃまします」
そういって琴未さんはリビングに向かっていった。
もちろん私も一緒にリビングに入っていったんだけど。
「あれぇ? 琴未」
「姉さん……私の成績表返してよ!」
「あれ、ちゃんと断り入れて借りてきたんじゃないんですか?」
「姉さん、そんな事言ってみんなに私の成績表見せたんですか?」
「あはは、まぁ良いじゃんあたしと違ってあんたの成績は良いんだから」
「嫌なものは嫌なんです! 特に……」
「特に何?」
「何でもないです……って紅蓮さん達は?」
「寝てるわよ? ついで言うとそこに私の馬鹿な弟も寝てるけどねぇ」
「西野先生……それに聖五君もみんな、私の成績見たんですか?」
「見るも何も私は始めから知ってるわよ?」
「聖五君……とかも見たんですか?」
「この家にいるメンバーじゃ聖五以外みんな見たよ?」
「そうですか……はぁ」
「まぁそんなことはどうでもいいのよ――」
「コレだけいるんだし、今日はみんなで飲み明かしましょう!」
「「……あの」」
「良いですね、翔子先生! 飲み明かしましょう!」
「二人とも? まだお昼だよ、そもそもお姉ちゃん以外みんな未成年だし」
「いいのいいの、今日はみんなこの家に泊まって飲み明かしましょ!」
「そうしましょう! じゃあもっとにぎやかな方が良いし春樹と風美ちゃんも呼びましょう!」
「いいのいいのって、教師失格なセリフな気がするんですけど……」
そんな感じで今日は家でパーティーするみたいです、大丈夫かな?

<SCENE042>・・・夕方
「んぁ・・・」
目が覚める、外は薄暗くなり時計を見ると6時を過ぎている。
昼飯も食わずにこんな時間まで寝てたらしい、腹減ったな。
俺は食料を求めてリビングに向かった。
しかしそこで俺が見たものは――
「えっと、どうなってんだ?」
机の上には豪華な料理、天井に飾り。
「お、やっと起きたの紅蓮!」
キッチンからの声……見るとキッチンでは料理を作っている。
真紅、翔ねぇ、風美ちゃん、琴未ちゃん。
この家のキッチンって四人も入れる広さだったか?
「おう、今起きたんだが、それよりコレは一体なんだよ?」
浮かんだ疑問を問いかけてみる。
「わかんないかなー、夏休みに入ったんだからパーッとやろうってことでパーティー♪」
「それが何で俺の家なんだ? 翔ねぇ」
「たまたまよ♪」
まさに一刀両断、一言で流された。
「たまたまって……で、何でリビングに誰もいないんだ?」
「買出しに行ったからね」
「まぁ今キッチンにいるメンバー見たら誰が行ってるかは見当がつく」
「ふむ、言ってみなさい」
にやけながら言いやがった。
「聖五、冬音、春樹の三人」
この三人以外、今キッチンにいるメンバーから予測不可能だし。
つかなんで家庭科10なのに春樹の奴はいないんだ?
「残念でしたぁー、まだいます」
「はずれじゃなくて追加でいるのかよ!」
「うん、そうよ?」
もう驚きつかれてきた……
「で、誰?」
「えっと聖五の後輩の……」
「永十君かい! つか名前忘れんなよ!」
「そうそう、何でも家が酒屋さんみたいで、苦労せずに簡単にお酒が調達できるわ♪」
「酒飲むの?」
「当然じゃない、宴の席でのお酒なんて考えられないでしょ?」
「――未成年とか関係ないって♪」
「西野先生、それ教員失格の一言ですけど」
ここでようやく周りからの突っ込み。
「まぁ、いつものことだし」
「ばっかみたい、まぁお酒は飲みますけどねぇ」
「で、俺は何してたらいい?」
「雑用」
「まぢ?」
「うん、大マジよ♪」
そうして宴の準備が進められていった。

<SCENE043>・・・夜
「それでは只今より第二十三回、『夏が始まる!一宮家パーティー』を開催します♪」
「二十三回って何?」
始まる前から酒が入ってやがる。
「今年が初めてですよね? コレって」
「そうだよ、風美ちゃん」
「それにしても豪勢な料理だなぁ」
「そうよねぇ」
「私達が腕によりを掛けて作りましたから」
「ってか部屋に全員は入れないならこんなに呼ぶなよ……」
「確かに、わざわざ窓開けて外に配置してまでこの人数でやらんでも……」
「まぁいいんじゃない? 料理もおいしそうだし」
「ってかなんでこの家の主の俺の許可取らずにこんなことになったんだ?」
「あんたが寝てるからでしょ?」
「まぁ、そうだが……」
「なら文句言わないの」
「っく!」
「あー、みんな静かに! 今から缶ビールどれだけ連続で飲めるか勝負するよ〜」
そんなことを教員が生徒の先頭に立ってしていいんだろうか?
「じゃあ参加する人!」
手が上がる上がった手は四つ。
春樹と風美ちゃんと冬音と企画を出した本人だ、まぁ翔ねぇだが。
「そんじゃあ前に集まって!」
「よくやるよなぁ、みんな」
聖五の元に歩み寄る。
「紅蓮、俺に用があるんだろ?」
「お前もだろ? 聖五、あいつ等はほっとこう」
「で、誰にも聞かれない場所は?」
「俺の部屋に来い」
「分かった」
俺達は宴を抜けて部屋に向かった。

<SCENE044>・・・夜
部屋に入って数分、沈黙が続いたが聖五が先に口火を切った
「俺は、お前が戦うって言うなら……」
「待て聖五! 俺はお前と戦う気はない」
「何?」
「でも、俺は……」
「紅蓮、俺達だけじゃなくアイツ等の意見も尊重すべきじゃないか?」
「そうだな、じゃあ呼び出すぞ?」
「俺も出そう」
一瞬部屋が静まり返る……
「ソード、オブ、クリエイション」
「開放されよ、解き放たれよ、叡智の力よ」
俺達の祝詞が静かな部屋の中であげられと――
それぞれの聖具がその真の姿を現す。
俺の手には銀の剣が握られ、聖五の両腕を紫紺のラインが入った純白の装甲が覆う。
(何用だ? 相棒、気でも変わって奴と戦うのか?)
そんなことはしない、もちろん話し合いだ。
(そうか……私が信じただけのことはあるな)
っと聖五がこちらを見ているな。
「話は終わったか?」
「おう、俺とお前は、手を結んで一緒に戦うんだよな?」
「そっちもOKか、もちろんこっちもだ」
「それじゃあ!」
「おう、俺とお前はこれからも仲間だ」
「そうか、よかった」
「じゃあ、話も片付いたし、《創造》」
(うむ、分かった)
《創造》は形を崩して指輪に戻る。
聖五も《叡智》もネックレス型に戻っていた。
「そんじゃあ、とりあえず今日は宴を楽しむとするか!」
「だな」
俺達は部屋を出てリビングに移動した。

to be continued・・・

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