EternalKnight
<二人の戦い>
<SCENE037>・・・昼
帰り道、俺達は三人で家に向かっていく。
さっきのことを聖五と二人がかりで真紅に説明し終わると――
「あはは……まぁ二人らしいといえばらしいね」
「で、お前の成績は?」
一応兄として聞いておく。
「私の? 別にいいけど」
そういいながらカバンから成績表を取り出し手渡された。
で真紅の成績。
現国7
古文7
数学6
生物5
科学6
地理8
歴史7
英語7
体育5
家庭9
芸術5
普通にいいじゃねぇか。
「紅蓮、お前妹以下じゃんか」
「学年が違うからいいんだよ別に」
「そんなこといって、ホントは悔しいんだろ?」
「そんなことねぇよ」
「まぁいいがな」
「くっ……」
「それにしてもだなぁ、明日はどうする?」
「急に話題を変えるな、聖五」
「そんなこたぁいいんだよ、それとも他の話題なんてあるか?」
「いや無いけど」
「で、何するかだけどさぁ、なんかあるか? 二人とも」
「ない」
「ないです」
「そうか、じゃあなんかネタをひねり出せ、紅蓮!」
「無いって言ったろうが! つかお前が考えろ!」
「ない」
「お前も同じじゃねぇか、俺だってねぇよ!」
「だからさぁ、どうすんだよ?」
っ!!
「っ!!」
またか……今度は……五体もいやがる!
きついな……
「って、どうした聖五? その苦虫噛み潰したみたいな顔は?」
「いや、ちょっと用事思い出したんだが、お前こそどうした?」
って事は後は真紅を逃がすだけでいいのか。
「そういや俺も学校に忘れ物してるわ、とってくるから真紅は先に帰ってろ」
「え〜前もそんなこと言って取に行って怪我して帰ってきたじゃん」
「!? いや、まさかな」
聖五が一瞬驚いたような表情をしてつぶやく。
「車にぶつかったんでしょ?」
まさか聖五も参加者?
いや、勘違いかもしれない確認しない事には――
「紅蓮、俺も学校に用事だから一緒に行くか?」
「分かった」
「ちょっとお兄ちゃん、聞いてるぅ?」
手間が省けそうだ。
「聖五もいるし大丈夫だって」
早くここから離れないと、真紅が巻きもまれる。
「行くぞ?紅蓮」
「おう」
俺達は来た道へ走り出す。
「待ってよ!二人とも」
真紅の声が聞こえるがこの際無視することにした。

<SCENE038>・・・昼
真紅が見えないところまで来ると俺は立ち止まった。
「どうしたんだよ、紅蓮」
「なぁ聖五、聞きたいことがあるんだ」
「奇遇だな俺もだ」
俺は右手を差し出す。
「この指輪みて、どう思う?」
参加者ならこの問いで全てが分かるはずだけど……
「やっぱり、そうか」
聖五が自分の首にかかっていたネックレスを持ち上げる。
「お前もか……いや、今はそれどころじゃないな、空き地に行くぞ!」
「分かった。助かったよ、かなりの量だから俺一人じゃ無理だ」
「俺もだ、一人で五体と戦うのは無理があるからな」
「だな、いくぞ!」
「おう!」
俺達は空き地に向かった。

<SCENE039>・・・昼
「ここなら大丈夫だ」
[ミシ]
「来るぞ!」
「分かってる」
[メキメキ……]
「ソード、オブ、クリエイション!」
「開放されよ、解き放たれよ、叡智の力よ!」
俺の指輪と聖五のネックレスが形を崩してそれぞれ再構築される。
俺の手元に剣が、聖五の両手には手甲がついている――
アレが聖五の聖具か……
[バキンッ]
何も無い空間を引き裂き、黒い巨体があふれ出す。
(相棒状況を説明しろてくれ)
「んだよ?」
自分で、俺の思考を読み取れよ。
「どうした、紅蓮?」
「いや、ちょっとな……」
「ああ、なるほど」
納得してくれてようだ、そりゃそうか自分も持ってるんだから。
(なるほど、お前の友人が参加者だったのか……手を組むのか?)
人の心を詠むって便利だな。聖五については当然そのつもりでいるぞ?
(わかった、では今は目の前の敵を倒すとしよう)
魔獣五体は動かない、さてどう出るかな?
「どうする、紅蓮?」
「特攻じゃねぇ?」
「まぁ、動かないならこっちから動くしかないか……」
俺は地面を蹴り、魔獣に近づく――
すると魔獣二体が迎え撃ってくる。
二体の射程ぎりぎりで一瞬止まり攻撃のタイミングをずらす。
攻撃をかわし、動いた二体の片方に《創造》を叩きつけた――
その瞬間、残った三体の一体が俺に一撃を食らわせようと動きだす――
《創造》が魔獣の腹を切り裂く――
すぐさま、最初に動いた二体の余った方を向きながら言った――
「任せた」
「任された」
背後から聖五の声――
高速で聖五が俺に攻撃しようとした魔獣に近づく。
聖五の手甲で覆われた拳が……魔獣の腹に吸い込まれるように貫通する。
そして素早くその手を引き戻した聖五は、残りの魔獣の追撃をかわす為に――ジャンプする。
俺の方は残った方の体勢が整う前にそいつの腹にも一撃を加え、後方に飛ぶ。
俺達が着地すると二体の魔獣が光の粒子になり始め――
もう一体も腹から粒子が流れ出ている。
まともに動けそうなのは二体。
(よくも初めてで、あそこまでのコンビネーションを……)
「親友だからな」「伊達に何年も一緒にいないさ」
どうやら聖五の方も似たような質問をされたようだ。
「さぁ残りはどうする?」
「もちろんさっきと同じであいつ等も秒殺するぞ!」
「そうだな、聞くまでもなかった」
が、残った二対の魔獣は予想外の行動に出た。
「共食い……かよ」
(アレで瀕死の魔獣の力を取り入れるつもりだろう)
「マジかよ」
数秒後には目の前に多少でかくなった(全長三メートル程)魔獣が二体いた。
「グロいな」
(奴等、能力が跳ね上がっているぞ?)
「秒殺は無理かな、これじゃぁ」
「「グヲォォオオ!!」」
「しゃあねぇ、行くぞ! 紅蓮!」
「俺は右の相手をやる、左は頼んだ」
「分かった」
俺達は魔獣に向かって走り出した。

<Interlude-聖五->・・・昼
二体の大型の魔獣に向かって走っていく。
魔獣の攻撃、まず右手を大振りにした上からの一撃――
右によける――
次いで魔獣は左手で薙ぎ払ってくる。
地面を蹴り、一気に懐に入り込む――――行ける!
腹に一撃を入れて、しとめる為に右手を構える。
(マスター!)
何!?
気付いたときには魔獣の膝蹴りが目前に迫っている。
「っく……ぉ」
左手でそれを防ぎに行き、何とか間に合うがそのまま後方に吹き飛ばされる。
「今まで足技使ってきた事……無かったのにな?」
体勢を整えながらぼやく。
(相手も少しずつ進化しているようです、マスター大丈夫ですか?)
「なんとかな」
さてどうしたもんか、紅蓮も苦戦してるようだし……
視線を少し動かし紅蓮を見る。って相手に突撃してるし!
策でもあるのかな?
(マスター……私には無い様に見えますが?)
だよなぁ、っとこっちも行くか?
(何か策でも?)
いや……特にはない。
(マスター? 私の名は仮にも《叡智》ですよぉ?)
何とかなるって。
(はぁ、まぁいいでしょうマスターがそう言うのでしたら……)
「恩に着る」
そして俺達は走り出した。
魔獣の攻撃は両手を同時に使った薙ぎ払い。
上にかわせば両手を使っている今、足が届かないからガラ空きの筈――
チャンスは今しかない!
地面を蹴りジャンプして、薙ぎ払いを回避する。
そのまま相手の頭部に一撃を入れるために右の拳を振り上げる。
しかし攻撃目標の相手は、口を大きく開きこちらに向けている?
あんまり考えたくないけど、もしかして……
次の瞬間、魔獣の開いた口から炎が吐き出された。
吐き出されるより一瞬早く気がついた俺は、何とか炎をかわすのに成功する。
「ふぅ、火を吐くなんて聞いてねぇよ」
(私も知りませんでした……)
「ったく、まだまだ行くぞ」
(もちろんです、マスター)
前を見据える、魔獣がたたずんでいる。
どうやって倒すかなぁ、まじで?
(マスター、能力を使ってはどうです?)
「疲れるからなぁ、まぁそうも言ってられないか?」
全身に力を入れる。
「うぉぉぉぉぉおおおお!」
腕を包む手甲が蒼く輝く。
全身から力があふれ出す。魔獣を見据える。
「速攻で片す!」
地面を蹴り魔獣の背後に、高速で移動する。
その速度は今までの二倍強程――
魔獣は反応すら出来ていない。
突然消えた俺を探すように魔獣はうろたえる。
「じゃあな」
[バキッ!]
俺の拳が背骨すら砕き、魔獣の腹を貫通した。
「ぐおぉぉぉ」
腕を引き抜くと血潮が噴出し、魔獣は光る粒子になりながら膝を折り地面に屈した。
能力を解く。
「っく……」
(マスター!)
「大丈夫、能力の反動だ」
「紅蓮は、まだみたいだな……」
ちょっと助けにいけなさそうだぞ、こりゃ?
俺の意識はそこで途絶えた……

<SCENE040>・・・昼
全長3メートルぐらいの魔獣。
「しっかし共食いとはグロイの見せてくれたな?」
魔獣が突然突進を開始した。
(来るぞ?)
「分かってるって」
右に飛び攻撃をかわす――
つもりだったが魔獣が両手を突然広げその腕が俺にも届く。
「っ!」
《創造》を盾に防御姿勢をとる――
ダメージそのものは小さいが後方に弾き飛ばされてしまった。
体勢を整えながら着地。
(あんな攻撃をしてこようとはな……)
侮ってたらまずいなぁ?
(我が本来の力ならあの程度には遅れはとらんのだがな?)
言ってろ。
魔獣を見据える、コイツ強いな……聖五の方は――
向こうは向こうでがんばってるようだしな。
もういっちょ行くぞ?
(そうだな、止まっていては前に進まん)
もう一度魔獣に向かって走り出す。
魔獣が左手を振り上げながら右手で薙ぎ払ってくる……
横の逃げ道を潰してから縦の追撃か――まずいな?
(かわせんのか?)
そんなことはないけど……
いったん魔獣の攻撃が届かない範囲に逃げる為、急停止して後方に跳躍する。
一瞬後に横薙ぎの一撃が目の前を通り過ぎる。
「あっぶねー」
(まだだぞ? 気を抜くな)
何?
目前に炎が迫る、どこから!?
考える前に炎をかわす。
「一体どこから炎なんて……」
(相手の口からだな)
「怪獣映画かよ、ったく」
ぼやきながら姿勢を整える。
(相棒、まだやれるか?)
当たり前だっての。
(ならば、どうする?)
仕方ない、また使うか……
(ほう、使う気になったか?)
気は進まんけどなぁ。
それぐらいしかアイツに勝てる方法が見えないし。
(まぁよい……では、行くぞ?)
集中し脳内で武器をイメージする――
単純な形、それでいて殺傷能力に長けた武器――
脳内で突撃槍(ランス)をイメージする――
組み上げる場所は奴の頭上――
魔獣が突っ込んでくる、それをかわして魔獣が方向転換している瞬間に叫ぶ。
「クリエイション!」
創造した突撃槍を加速させながら打ち出す。
「貫けぇ!」
再び動き出そうとする魔獣の頭上から突撃槍が降ってくる――
[ザシュッ]
突撃槍は魔獣を頭から貫く。
魔獣は刺さっていた突撃槍の消滅と共に光の粒子になりながら倒れこんだ。
「はぁ……はぁ……コレ、やっぱりきついな」
(それだけの威力はあるだろう?)
聖五の方に視線を向ける、どうやら向こうも片付けたようだが……
「聖五!」
倒れている聖五を見つけた俺は聖五に駆け寄る。
「大丈夫か! 聖五、おい」
自分の疲れを忘れて聖五を呼びかける。
(相棒、我でコイツの聖具に触れってくれ)
「今はそれどころじゃない!」
(落ち着け、コイツに話を聞く)
「……分かった」
俺は聖五の腕を覆っている手甲に触れる。
【マスターのご学友ですね?】
始めに《創造》の声が聞こえて来た時のみたいな感じだ――
女性の声―――だな。
「あぁ、そうだ」
【マスターは能力の使用の反動で休息されています】
「そうか、安心した」
【自己紹介がまだでしたね――】
【その前にマスターとは手を組んでいただけますよね?】
「そのつもりだぞ、俺は」
【ならいいでしょう、私は《叡智》です】
「俺は――」
【紅蓮様ですね、マスターの記憶にございましたし――】
【さっきもそう呼んでおられました】
「それもそうか、おい、相棒お前も挨拶だ」
(私は《創造》だ、まぁこれから手を組むことになるのでな、よろしく頼む)
【ええ、分かりました――】
【それでは私は待機していますのでマスターをよろしくお願いします】
「まかせろ」
【ありがとうございます】
そういって《叡智》は形を崩し聖五のネックレスに戻った。
(それでは私も元に戻るとしよう)
《創造》も形を崩して俺の右人差し指に再構成された。
「さて、っと帰るか」
俺は聖五を背負って鞄を広い家に帰ることにした。

to be continued・・・

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