EternalKnight
<鬼と修羅>
<SCENE029>・・・昼
短縮授業で昼前に学校が終ったので――
夏休みの計画を立てる為に俺達は今ここに集合している。
ちなみにここは公園だったりする。集まったメンバーは――
俺、聖五、冬音、春樹、真紅、風美ちゃん、琴未ちゃん、永十君だ。
「夏休みなんだからみんなでどこか行きたいよなぁ?」
「でもよぉ聖五、行くって言ってもどこ行くんだよ?」
「俺等にはそんなに金どこにもねーぞ」
「と、いうより兄さんはお金以前に補修で学校通いですから――」
「日付もありませんね」
「確かにその通りだな」
「あんだよ、風美も紅蓮も――」
「大体それだったら、冬音も似たようなもんだろ?」
「私は春樹ほど悪くないわよ!」
「はぁ……どうせ五十歩百歩だろ?」
「ちょっと……酷い言い草ね、聖五!」
「俺はお前等と違って成績優秀なんだ」
なんか見てて虚しくなって来るな……
いつものごとく、真紅と琴未ちゃんはこの勢いの会話に参加していない。
初めてきた永十君は呆然としている――
まぁ憧れ(?)の先輩のあんな姿見せられたらなぁ?
「お兄ちゃん?」
「ん……どうした真紅?」
「今年は海に行きたいって……」
「そうだな、よし……お前等、今年はみんなで海行かないか?」
すると、虚しい話し合いをしていた四人の視線が一斉に俺の方に向く。
「そうだな、やっぱ夏といえば海だろ!」
叫びを上げる春樹だが、どうせコイツの目的は――
「どうせお前の目的はナンパだろ?」
「あったりまえじゃねぇか聖五! 海でナンパせずに何がおと――」
春樹の声のボリュームが徐々に下がって行く――
原因は言うまでも無く、春樹の後ろにいる――
「へぇー、そうなんだぁ?」
鬼の形相の冬音だろう。
「あはは、一般論だよ一般論、彼女のいる男はそんな事――」
「ならいいけどぉ? ナンパとかしたらどうなるか、分かってるよね?」
青筋浮べた笑顔から発せられる殺意――
「も……もちろんですとも」
なんか震えてるぞ……完全に尻に敷かれてるよなぁ。
この際だから春樹と冬音は無視する方向で行こう……
「海もいいっすけど、カラオケにも行きたいっすよね?」
唐突に永十君が話題を切り出す……カラオケかぁ
夏じゃなくてもいいけど、確かに久しぶりに行きたいな。
「それもいいな、永十」
「でもな聖五?」
「なんだよ?」
「八人で行くのか?」
「確かに人数が多いな、普通四〜五人だしなぁ」
「んじゃ行きたい奴、手ぇあげて」
俺は参加したいし、手を上げるか。
そして手を上げたのは、俺、聖五、永十君、真紅の四人だった
「決定っすか……」
「みたいだな……風美ちゃんに琴未ちゃんはいいのか?」
討論してる二人には聞かないのかよ、聖五
「私は……音痴なんで」
恥ずかしそうに言う琴未ちゃん。
「カラオケですか、うますぎて皆さんが虚しくなってしまうと思うので」
うわー、すっげー、こうも堂々と……ネタにしても言える人いないぞ・・・
その後、色々企画を立ててみたが――
採用されるものはほぼ皆無で、日が傾いてきたので俺達は解散した。

<SCENE30>・・・夕方
家への帰り道、真紅と一緒に夕焼けを見上げていた。
「きれいだね」
「だなぁ」
背中の傷は、もうほとんど治っている――
驚異的な治癒能力だなぁ。
もう俺は、人間というカテゴリーから外れてしまったのかもしれない。
「お兄ちゃん?」
「ん? どうしたんだ」
「悲しそうな顔してるよ?」
またか、同じ心配をいったい何度させてんだよ、俺
「何かあるなら話してほしいけど、無理にとは言わないよ?」
「すまん……」
俺は真紅を守るために力を手に入れたんだ――
真紅を悲しませてどうする?
アイツは俺が死ねば、いや俺に限らず自分の知る人が死ぬと悲しむ。
だから真紅を悲しませない為には、真紅の知る全ての人を守る。
俺は……真紅にとっての正義の味方にならなきゃいけない。
無言で家に向かって歩く。
家の近くに見知らぬ(近所で見たことの無い)男がいた。
別に問題ないのだが、その男はぼろぼろのコートを着ていた。
目に留まった理由はそのぼろぼろのコートなのだが――
なぜあんなものを着ているのだろう?
何を思ったか、先ほどまで立ち止まっていた場所から突然走りだした。
その男とすれ違うとき、ついさっきまで男のいたところでハンカチを見つけた。
「なんだったんだろ、あの人?」
「さぁな、それよりあそこのハンカチ……あの人のじゃないのか?」
「へ? どれ」
真紅が近づきハンカチを拾い上げる。
「ひがし? いや苗字だからあずま、しろうかな?」
「どれどれ」
そこには――
―東 四郎―
と、書いてあった。
大学生ぐらいに見えたんだが、ハンカチに名前書くか? その歳になって?
「渡しに行ったほうがいいかな?」
「いや、もう見えないから追いかけれない」
「じゃあ交番に届けよっか?」
「そうだな」

<Interlude-四郎->・・・夜
「これで、終わりか……」
光の粒子になっていく化け物を見つめながらそうつぶやいた。
これで倒した化け物の合計は何体だろうか?
八日前に手に入れたこの力、今まで力の無い人たちを護ってきた私の力。
<――く、―り――>
「何の……音だ?」
何か聞こえた気がするが……気のせいか?
この力の正体が何なのか分からない、理解できていることは一つ。
コレの、私の両手についているクローのおかげなのだろうと――
<か―く、―りな―、み―さ――い>
今度はよりはっきりと聞こえてくいる。
なんだ? この声は?
<渇く、足りない、満たされない!、もっと満たされる相手を……>
「な……に?」
何の声だ? まさか!? この俺の両手のッ!!
突然、両手のクローは粒子に変換されて、再び構築されていく。
新たな形となって――
「どうなってるんだ、コイツは?」
【お前のおかげで、俺の力は溜まったようだ。】
コレはこのクローの声!?
【さてっと今度は、その体をいただこうか?】
体を……いただく? そんな馬鹿な事があっていいものか。
【何言ってるんだ! ふざけるな! コレは私の体だ!】
っ!!!! 手が……動かない?
【言っただろ? お前の体を《いただく》と】
「私はただ、誰かを護りたくて、化け物と戦って……」
いや……手だけじゃない、もう全身が動かない。
【そのおかげで俺はこうして《無智》から《無我》に《進化》したのだ――】
【感謝はしているぞ?】
私の意識は閉ざされていく。
そして、フカイヤミノナカ二……キエテ―――
(眠っていろ……さて、これで思う存分、強い奴と何も考えずに戦える……)

<Interlude-無我->・・・夜
「しかし、こうもあっさり体が手に入ると思っていなかった」
拳を握らせる、まだ動きづらいな……
慣れるまで行動は起こさんようにしなければな……
「さて……どうするかな?」
こいつの家に帰ってもこいつのフリをするのは面倒だろう。
人間の体だと腹も減るしな、適当に一般人でも殺して飯と寝床を稼ぐか?
俺は地面を蹴った――
なれていないので三メートル程しか飛べない。
「やはり慣らすほうが先か――」
俺は気の向くままに歩くことにした。

<Interlude-???->
「四番が進化したか、さぁここからが面白くなるところだ」
それにしても聖具に完全に同化されるとは、なんと惰弱な精神か。
「なかなかに面白い、下らん正義を振りかざせば、ああなるのは必定だ」
鼻で笑いながら言うロギアに呆れながら言った。
「よく言う……御主が定めた運命であろう?」
「確かにそのとおりだが――」
「Bクラス以上の聖具の制御は私の《運命》でも出来ん」
「つまり乗っ取られたことに対しての嘲笑か……」
「そういう事になるな」
「しかしBクラスでも永遠者に成れる程のモノでは無いであろう?」
「精神が惰弱だったにすぎん、まぁ乗っ取られたならそれで中々に面白くなるのだがな」
ただ純粋に強き者を求めるモノ、拙者と同じ行動理念か、確かに面白そうだ。
「これから先、どうするつもりだ?」
「言ってしまっては、面白くなかろう?」
「それもそうか」
「もっとも、四番が介入すれば運命も変わるだろうが――」
「扱いにくい能力だな《運命(フェイト)》も……」
「まぁ、拙者の戦闘のみの能力よりは使えるだろう?」
「まぁな……ん? どうやら、ハグレが近づいて来たようだぞ?」
「この気配、懐かしいな《修羅》か? 相手は拙者がしてこよう」
「頼んだ、俺はここにいる」
「うむ」
拙者は門を開き修羅の居る空間に移動した。

<Interlude-???->
「久しぶりだな……《修羅》よ?」
「ああ、お前だったのか《闘神》、大体300年ぶりかな?」
「それで、何をしに来た?」
すると、《修羅》は口を吊り上げて――
「ちょっと狩りに来たんだよ」
「獲物は……なんだ?」
「お前達だよ《闘神》」
「ふざけた事を……汝ごときが拙者に勝てるとでも思ったか――」
「昔の縁もある、見逃してやらんことも無いぞ?」
「ふん、貴様等と共に居た時とは訳が違うのだ、俺は強くなった!」
「ならば……試すか?」
「エーテルに還してやる!」
《修羅》……いや、ファルガの全身を鎧が覆った。
どうやら、本気のようだ――
ならば、こちらもそれ相応の力で答えるかな?
全身に純粋で強力なオーラを纏う。
「我は闘鬼、ただ剣を取り敵を断つ、剣の都よりここに我が牙となる刃を呼ぶ」
祝詞に乗せて、刀を二本取り出し構える。
「さぁ、始めようか? 闘神鬼!」
「返り討ちにしてくれるわ、修羅王!」
そして、動き出す。スタートは同時、なるほど確かに腕は上がっている。
高速で刃を振るう―
攻撃があたる直前で《修羅》は停止して、刃を振り終えた瞬間に再度動き出す。
《修羅》は、もう一刀での斬撃もかわして、懐に入り込んでくる。
「はっ!」
奴の鎧で覆われた拳が我がオーラの鎧に高速で叩きつけられる。
!? 思っていた以上の威力だ――がまだまだ甘い。
二撃目が来る前に後方に跳躍して距離を離す。
「なかなか鍛えたようだな、だが手ぬるいな」
「はったりを――いつまで強がりを続けられるかな?」
一直線に突っ込んでくる《修羅》を見て、地面を蹴り上方に跳躍。
それを見て、奴もすかさず後を追い跳躍する。
ソレをめがけて、両手の剣を投げつける。
「我は闘鬼、ただ剣を取り敵を断つ、剣の都よりここに我が牙となる刃を呼ぶ」
祝詞をあげて再び刀を呼び出す。
ファルガは、投げつけた刀を防ぐが、反動で地面に落下していく。
落下していくファルガに、もう一度刀を投げつつ祝詞をあげる。
両手に剣を握りながら着地する。
二回目の刀の投擲も防ぎ息づいたのか――
「闘神鬼、いやリューガよ、所詮この程度か――」
「安心しろ貴様を殺して俺がさらに強くなってやる!」
「言いたい事は、それだけか?」
「何?」
「いや御主、死ぬ前に何か言い残すことは無いか?」
「はぁ、状況分かってんのか? お前は俺に今から殺されてぇ、死ぬんだよ!」
「付け上がるなよ?」
「たかだか5〜600年しか生きていない御主が拙者を殺すだと?」
「そのとおりだよ、さっさと死ね!」
「何も背負っていない御主に拙者との差は埋められん」
刀を振り上げ地面を蹴り奴に近づく。
「なめるなよ、そんな分かりきった攻撃にあた――」
奴が喋っている間に速度を最高速まで上げる。
一瞬で距離はほぼゼロになり、拙者は《修羅》の体に神速で刀を振り下ろした。
「そんな……ばか…な」
「言ったであろう? 御主では拙者には勝てん……とな」
ファルガの体に縦に一筋ラインが入る。
「最後に、教えてやろう……コレが我の最強にして唯一の秘剣――」
そしてファルガの体はそこから二つに別れ――
「一刀両断だ……」
光の粒子になって消えていった。
「我が下で鍛えれば、さらに強くなれていたものを……」
突然《闘神》の力が膨れ上がる――
そういえば《修羅》は《闘神》の相反聖具だったか……
そして、莫大な力を取り込んだ我が聖具、《闘神》は《進化》する。
新たな名は《鬼神》―――

to be continued・・・

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