EternalKnight
<崩れ始める日常>
<SCENE021>・・・昼
「はぁ……」
七壬さんが参加者だった――
と、なるとこの学園内にもまだ参加者が居ると考えてもおかしくない。
しかし、七壬さんを殺した奴は……どうやって気づいたんだろうか?
「お兄……ちゃん?」
珍しく待ち合わせ場所に俺より後に真紅が来る。
「真紅……」
仲良くなった相手が――
その日に死んだりしたら誰だって落ち込むだろう。
「七壬先輩、なんで殺されちゃったの?」
俺は知っている――
戦いの参加者だから、でもそれを教えたところで一体どうなる?
だから、ただ無言で首を横に振る。
「うそ! なんか知ってるって顔してるよ!」
そんな顔してるのか、俺は?
「俺は何も知らない、さぁ帰るぞ?」
俺は、早足で帰り道へ向かって歩き出した

<SCENE022>・・・夕方
二人とも無言で帰り道を歩いていく
!? この感覚は……
[ピシッ]
まさか?
[ピシピシッ]
またなのか?
今は、真紅が居るってのに……
あのバケモノが来るのか?
いや違う!?
《アイツ》じゃない
―――《アイツ等》だ……一匹じゃない。
「……真紅」
俺の突然の声に、少し驚いたように真紅が反応する。
「な・・・何、お兄ちゃん?」
「先に、家に帰ってくれ」
真紅が首をかしげながら「どうして?」と問い返してくる。
「忘れ物してたんだ、学園に取りに戻るよ」
「わかった、先に帰ってるね」
その言葉を確認してすぐに走り出す。
《創造》の話なら魔獣は聖具の強い力に引かれるらしい。
俺が移動して聖具を解放すれば・・・奴等は俺を追ってくるはずだ。
完全に現れる前に俺は来た道を全力で引き返した。

<SCENE023>・・・夕方
人通りの少ない公園、広さもかなりある、ここなら大丈夫だろう。
持っていた鞄を投げ捨て――祝詞を挙げる。
「ソード、オブ、クリエイション」
右手の指輪が形を崩して剣になり、右手に収まる。
(久しぶりの戦闘か? 相棒)
そうだ、死ぬわけには行かない――力を貸してくれよ相棒?
(もとよりそのつもりだ)
「さぁ、かかってきやがれ!」
相棒を構え、空中のヒビに向かって叫ぶ。
[バキッ!]
空中のヒビを突き破り――黒い巨体が空の穴から這い出した。
前回とほぼ同じ形状の黒い巨体が三つ、同時に動き出す。
まずは二つの黒い巨体が腕を振り上げる――
前と戦い方が変わってないのか?
(油断するな、まだまだ貴様は未熟なのだ)
鋭利な黒い刃が振り下ろされる。
この程度なら楽勝で――
地面を蹴り後方に跳躍する。
(気を抜くな、前から来るぞ?)
!? 残った一体の突進を寸前の所で真横に飛んでかわす。
「前に比べて頭が良くないか? コイツ等?」
(油断するなと先程から言っていたろうに)
体勢を建て直し周りを見渡す――
周囲の魔獣はそれぞれ右前方、左前方、後方
(囲まれたぞ? どうする、相棒?)
こちらが次の手を考える前に――
周囲を取り囲む魔獣は鋭利な爪が振り下ろす――
三つの爪の軌跡その終着点は……おそらく今、俺の居る地点。
コレをかわすには――垂直に飛ぶ
(魔獣の追撃が来るぞ? それはどうするのだ?)
切り札を切るしか……ないだろ?
(ほう、使う気になったか?)
死ぬ訳には……いかないんでな!
《創造》の力を発動させるのはコレが初めて……
精神力を大量に削られるらいしいが、今は四の五の言っていられない。
意識を集中させて、脳をクリアにする。
シンプルで尚且つ鋭利な殺意を纏った槍を脳内にイメージする。
「クリエイション!」
限界まで行使した脳が世界をスローにする。
唱えた瞬間、全身から何割か力が抜けた気がした。
しかし、代価に値した結果は確かにあった。
何もない空間が歪み――――槍が組み上げられていく。
殺意の象徴たる槍、ソレが構築されていく場所は……
俺の背後に居る魔獣の――頭上!
魔獣が振り下ろした腕と逆の腕を俺に向けて動かし始める。
左と右の前方の魔獣の攻撃を、《創造》を前面に構えて防ごうとする。
完全に構築し終わった槍が、打ち出される。
打ち出した槍は魔獣を倒し損ねたかも知れない。
だけど! 今ので倒せないなら……俺に勝利の可能性は無い。
故に前面からの攻撃だけに全ての神経を集中させる。
左右の魔獣の同時攻撃を《創造》で止める。
その反動で少し後方に飛ばされて、バランスを崩しながらも着地する。
「グッ……」
(我の能力は莫大に精神を消費すると言ったであろう?)
「コレは……確かに連発は控えたほうがいいな……」
(精神を鍛えれば連発も出来るようになろう)
「考えとく……」
少し目の前には体に穴の開いて粒子に還り始めた魔獣が転がっている。
いや今は、倒した魔獣のことなんて気にしない――
残る魔獣は前方の二体、どうする?
(構えていろよ?)
「分かってる!」
残った魔獣の片方が突進して来た――
ソレをかわして、周りを見る、もう一体は何処だ?
(上だ)
《創造》の言葉にあわててその場を飛び退く。
飛び退いた先には……先程突進してきた魔獣――
そして、全く無防備な背中に突進を受ける――
「グァッ!?」
強烈な一撃で俺の意識が……途絶え―――
(相棒、死なないのだろ?、貴様が護ると決めた妹の為にも?)
――るのことは相棒のおかげでなかった。
「ったりめぇだ、あきらめて、死んでたまるか!」
(そうだ、それでいい)
生きてる、死んでない、だけど……めちゃくちゃイテェ。
「てめぇ等! イッテェエだろぉがぁあ!」
《創造》を目の前にいた魔獣に全力で叩きつける――
刃は意外なほどすんなり魔獣の腹部を切り裂き――
魔獣は光の粒子になって消えていく。だけどもう一体だ!
上空から攻撃をかけてきた魔獣は今、俺の背後に居る。
背後からの追撃を受ける前に地面を蹴る――
魔獣を飛び越えて背後を取る……筈だったのだが背中の痛みで思ったほど跳躍できていない。
追撃が目前に迫る、次の一撃で死ぬ?
冗談―――こんなことで死ねるかよ!
再び意識を集中させて、脳内をクリアにする。
シンプルなそして強固な盾を脳内にイメージする。
「クリエイション!」
目の前に瞬時に盾が構築され、魔獣の一撃を防ぎ着地する。
「グッ!」
全身が重い、背中に激痛が走る……だけど!
「負けられねぇんだよ、こんくらいじゃぁさぁ!」
地面を再び蹴り、飛び上がる――
《創造》を振り上げ、最後の魔獣の頭上から一気に振り下ろした。
魔獣の頭から分断して着地する。
「はぁ……はぁ……」
(よくやったぞ、相棒)
「コレぐらい、当然だっての」
っとは言っても、全身が重いし背中も痛い……
ちょっと無理しすぎたかな?
「ちょっと休ましてくれ……相棒」
そのまま俺の意識は途絶えた。

<SCENE024>・・・夕方
「う……ん」
背中が痛い。
「あれ? 俺どうしてこんなとこで寝てたんだ?」
確か帰り道で魔獣が出てきて――
「そうか、あの後」
立ち上がる。体のだるさは残っていないけど、背中が痛い。
「今……何時だ?」
公園の脇に置いた鞄からケータイを取り出して開く。
「5時30分か、だいぶ遅くなったな……真紅、心配してるかな?」
それ以前に、服……どうしよ?
背中のとこ穴開いてるし、腕の所とかもすれてるし……
「ああ、考えてねぇで帰らないと!」
言い訳は後で考えよう、締め出されるといやだし。
俺は家に向かって歩き出した。

7月18日水曜日
<SCENE025>・・・朝
「ファァ………ッ」
目が覚める、って今は何時だ?
「って……十時半じゃねぇか!」
早く着替えて学校に……
「っ!」
背中が痛む、昨日の戦いで受けた傷か……
昨日、帰って来た俺を見るなり真紅は部屋に運んで手当てしてくれた。
その後でみっちりと絞られもしたが……
「って、なんで真紅は俺を起してくれなかったんだろ?」
ふと目線が机に向かう、書置きか?
それは予想通り書置きだった、そこには―――
―起きた? お兄ちゃん―
―昨日から寝っぱなしだったから、今日は学校に休むって伝えとくね?―
―今日は家でゆっくり休んで怪我を早くよくしてね☆―
―PS.ご飯は時間無かったから自分で作ってね♪―
なるほど、っと休めるなら休むに限る。
もう一回寝るかなぁ……そんな風に考えていると――
俺の意識は、少しずつ、睡魔に……飲まれて………

<SCENE026>・・・夕方
「起きろー」
誰だぁ? 俺の安眠を妨げる奴はぁ?
「う……ん」
「せっかく見舞いに来てやったのに寝てんのかよ?」
「ごめんね、聖兄ちゃん、お兄ちゃん? ほら起きて?」
「あぁ、起きた、……で、そいつ等は何だ?」
自分のベッドから自らの部屋を見渡す。
「みんなね、お見舞いに来てくれたんだよ♪」
真紅がいる。まぁコレは当然だ。
「「おう、紅蓮見舞いに来たぞ!」」
聖五と春樹がいる。
「私も生徒の見舞いに来ました〜」
翔ねぇもいる……
「私もお見舞いに来ました、早く元気になってください」
風美ちゃんまでいる。
「元気なようで何より、仮病じゃないの?」
冬音もいる……って、何人俺の部屋にいるんだよ!
「多いなぁ、俺のけて六人……狭くないか?」
「狭いと思う……」
「「狭い」」
「「狭いわよね?」」
「一人部屋にこれだけ入れば狭いのは当然なんですけどね?」
じゃあ……何故にみんな俺の部屋にいるんだよ?
「みんな、お前を心配してるってことだよ」
春樹にしては真面目な発言だな?
「っと元気な顔を見れたし、私達は帰るね?」
冬音と春樹と風美ちゃんが立ち上がる。
「もう帰るのか?」
「そうします、こんなに人口密度が高い場所には暑苦しくて長居出来ませんから」
「狭い部屋で悪かったな」
ちょっと傷付く……
「それでは、俺達は退散させてもらうわ、で……明日はこれるか?」
「多分、大丈夫だ」
「分かった、んじゃな」
「気をつけて帰れよ」
「あんたみたいに怪我しないから、心配しなくても」
「へいへい」
春樹たちはそう言って帰っていった。
「で、お見舞いって行っても……何すればいいんだ?」
「いや俺に聞くなよ?」
「姉貴、俺達も帰る?」
「どうしよかなぁ、せっかくだから……晩御飯を真紅ちゃんと二人で作ることにするわ」
「いいね、どうせ俺等には親いないし」
「分かった、じゃあ今から作り始めよっか、お姉ちゃん」
なんだかんだで説明してなかったが俺と真紅、聖五と翔ねぇはどちらも家に両親がいない。
俺の父さんと母さんは四年前に交通事故で死んだ。
聖五達の両親は海外主張に出てかれこれ二年は帰ってきていない……ってんなこたぁどうでもいい
「おう、旨いの頼むぜ?」
「お姉さんに任せなさい!」
胸を張って言い切った、まぁ実際俺も食ったことあるから味の方は保障されてると言っていいが。
「んじゃ、俺と紅蓮はこの部屋で待ってる」
「出来たら呼ぶね、お兄ちゃん」
「おう、頼んだぞ真紅」
「まっかせて、行くよ? お姉ちゃん!」
「はいはい、んじゃ、また後で」
そういって二人は部屋を出て行った。
「紅蓮? 聞きたいことがあるんだけど」
「何だよ?」
「その怪我さぁ、どこでしたんだ?」
「ちょっと車にはねられた」
ホントの事は言わない、巻き込むわけには行かないから。
「はねられたって、何か……別に、隠し事じゃないよな?」
「何を隠すって言うんだよ?」
「なんか、やばい事に首突っ込んで無いよな?」
「してないって」
なんか微妙に勘がよくないか?
「ならいいけどさ」
その後、飯が出来るまで聖五と他愛も無い話を繰り返した。

7月19日木曜日
<SCENE027>・・・早朝
「早起きしすぎた、暇だ」
珍しく早起きした理由は昨日寝すぎたからだ。
時計に目をやると時間はまだ五時で外は薄明るい。
「背中の痛みは引いたけど、一生消えない傷になりそうだなぁ」
まぁ俺自身は傷見えないんだけどね?
そもそも、あの一撃を受けて生きている自分が純粋にすごいと思った。
「コンクリートを貫通する一撃を受けたら普通死ぬって……」
それにしても暇だなぁ……
そういえば今日って明日が終業式だから短縮だっけ?
夏休みに入っても、戦いは続くと思う。
「夏を楽しめないかもしれんな、俺」
なんか欝だ……ってか、朝飯今日重いもんだよな。
昨日飯を作りすぎてあまり物は今日の朝飯だった筈だ。
さてと、さっさとやっちまうかぁ?
俺は夏休みの宿題を消化しながら時間を潰した。

<SCENE028>・・・朝
「「おはよ」」
すがすがしい朝の挨拶、胃がもたれてるが何故かは悟ってくれ。
「おはお〜」
やる気のない挨拶、まぁ遅く来たわけじゃないからいいけど。
「珍しく早いんだな、春樹」
「珍しいとは何だ聖五、いつもは風美のせいだって俺が言ってるだろ?」
「兄さん、あんまりふざけたことばっかり言ってると」
「何をするって言うんだよ、お前が何しようと俺は」
高らかに笑いながらぬかす春樹に、風美ちゃんは笑みを浮かべた顔で一言。
「この間、ちょっと遠出してナンパしてたこと……冬音さんに言っちゃうよ?」
春樹の顔色が悪くなって行き――
次の瞬間には地面に両手をついて土下座のポーズをとっていた。
「ごめんなさい! もうこんな冗談を二度といいませんのでなにとぞお許しを〜」
「まったく、兄さん? 許してあげるから顔を上げて、そして私に現金を献上して?」
妹に跪いて頼み込む兄、情けない図だな……ってか風美ちゃんの性格が読め無すぎる。
「ほら、バカやってないで行くぞ」
俺は歩き出した、後ろから真紅と聖五がついてくる。
「そうそう、せっかく誰も遅れずに集まったのにこんな所で時間潰すってのはどうよ?」
まったくそのとおりだ、そんなことを考えながら学園に向かった。

to be continued・・・

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