EternalKnight
<七対二>
7月16日月曜日
<SCENE016>・・・朝
目が覚めた。
「ふぁあ……」
日曜日は特に何の変哲も無かったな。
町へ買い物にも言ったけど――
「やっぱ見ただけじゃ判らないんだろうな」
相変わらず右の人差し指には銀の指輪。
そういえばあの晩以来ずっとこの状態のままだな。
ってか取れないから風呂入るときもつけたままなんだよなぁ。
「呼び出すとき、なんだったけ?」
ソード、オブ……なんだっけ?
英語だよなぁ、創造――作り出すってことはクリエイト?
いや違う、クリエイション――そう、ソレだ!
確認の方法は、実際に言ってみればいいんだよな。
「ソード、オブ、クリエイション」
銀の指輪は解けるように光の粒子になり、瞬時にシルエットを作り――剣と成る。
(何の用だ、相棒?)
「いや悪い、呼び出すときの掛け声、確認してみただけだ」
(まぁ、忘れられても困るから良いのだが)
「っと、学校行かなきゃいけないから指輪に戻ってくれ」
(うむ、祝詞は忘れんようにな?)
「分かってるって」
(ならばよい)
剣は砂の様に崩れ、光る粒子は再び俺の指に収束し指輪と成った。
「さてと、眠り姫を起しに行かないとなぁ」
俺は着替えを済ませて真紅の部屋に向かった。

<SCENE017>・・・朝
「セーフ!」
時間ギリギリで何とか教室に駆け込んだ。
「はぁ、はぁ――姉貴は、まだ来てないな?」
「はぁ……春樹のヤロー、ギリギリで――来やがって」
「毎朝大変ねぇ二人とも、また春樹がギリギリだったんでしょ?」
笑いながら言われると腹立つ――
「あの馬鹿の根性を叩き直してやってくれ、彼女のお前が言えば効果があるかも知れない」
「あたしが何を言ったって変わんないわよ? あいつは」
「だよなぁ……言ってみただけだ」
そのとき教室のドアが勢いよく開いて翔ねぇが入ってきた――
まぁクラス担任だから当然なんだけど。
「おはよーみんな、遅刻者いない?」
「全員そろっています、西野先生」
報告をしたのは七壬秋穂(ななみ・あきほ)。
このクラスのクラス委員だ。
ちなみに文武両道の優等生タイプ、仲はちょっと話せるクラスメイト程度?
「っと、紅蓮と聖五は今日もギリギリだったみたいねぇ?」
顔から今も出続けている汗見りゃ分かるか。
「まぁ間に合ってるから良いけどねぇ」
「西野先生、HR始めなくていいんですか?」
「あぁそうね七壬さん、んじゃHR始めまーす」
「起立!」
凛とした七壬さんの掛け声でクラス全員が立ち上がった。

<SCENE018>・・・昼
「聖五、冬音、学食行くぞ!」
授業が長引いたので急がないと席が無いかもしれない。
「先に行って、春樹を呼んでくるから」
そういって冬音は教室の外に出て行った。
「聞いてたな? 先行くぞ、聖五!」
「はいよぉ」
俺達は学食に向かった。
「でさぁ、着いたけど、どうする?」
「四人分の場所取っとくしかないだろぉ、聖五?」
「ってもよぉ紅蓮?」
「言わなくてもわかってる」
どうみても四人で座れそうな場所――ないよなぁ?
「おーい、お兄ちゃーん」
ん、真紅の声?
「お兄ちゃーん、こっちこっち!」
声の先には真紅と風美ちゃん――
しかも四人分の席取ってるし! ナイスだ妹よ!
真紅たちの元に移動する。
「悪いな、席とってもらってたみたいで」
「いえ、別にかまいませんよ」
「しかし、どうして俺等の分まで?」
「えっとぉ、混んできた時に回り見ても来てなかったみたいだから……」
「そっか、ありがとな二人とも」
「いえいえ、礼には及びません」
「そうだよ、お兄ちゃん」
さて、後は二人を待つだけだ
「ところで、兄さんと冬音さんは?」
「ああ、冬音が春樹を呼びに行ってんだ」
「なるほど」
ん? さっきから聖五が話しに入ってこないな。
「で、ですね先輩、来週の土日あたりどうッスか?」
って隣に座ってた一年の奴と話してる――誰だ?
「おい、聖五!」
聖五が振り返る。
「そいつ誰だ?」
「ああ、こいつか? こいつは俺と同じ部の後輩で南戸永十(みなみど・えいと)ってんだ」
「声楽部の後輩?」
「ああ、たまたま隣にいたんだ」
「先輩? この人は?」
「あぁ、こいつは俺の幼馴染の――」
「紅蓮……一宮紅蓮だ、よろしくな永十君」
俺が手を差し出すと、その手を握りながら
「よろしくッス」
っと笑顔で彼は言った。つか《〜ッス》ってなぁ?
しばらくすると冬音たちが来てその後七人で昼食をとったのだった。

<SCENE019>・・・昼
「遅いよ、お兄ちゃん!」
「悪い悪い、HR長引いちまってさぁ」
「もぉ、でもそれなら仕方ないかなぁ」
「ホントに仲のいい兄妹ですね」
突然の声――その方向を見ると、そこには七壬さんが立っていた。
「ってなんで兄弟って分かったんですか?」
七壬さんに真紅を紹介した覚えはないが……
「私、初対面だよ?」
「赤髪の人なんて滅多にいないわ」
そうか、髪の色か……
確かに俺も真紅も母さんと同じ赤髪、赤眼だ。
「二人でいたら、ほぼ間違いなく親子か兄弟でしょ?」
「確かに……」
「お兄ちゃん、ところでこの人……誰?」
「ああ、同じクラスの七壬さんだ」
「私は七壬秋穂、紅蓮君のクラスのクラス委員です、えっと」
「あっ、私は1-Gの一宮真紅です」
「よろしくね、真紅ちゃん?」
「はい、七壬先輩!」
二人は握手しながら笑いあっていた。

<Interlude-秋穂->・・・夕方
家への帰り道で考えていた。
十人の中で一人だけが生き残る殺し合い。
いや、ルールだけで言えば――
「十個の聖具の壊しあい、残る聖具はただ一つ」
「それはちがうなぁ、殺し合いさ」
突然後ろから話しかけられる!?
聞き覚えのある声―――誰?
「やぁ……七壬さん?」
ッ! 振り返った私が見たのは私のよく知る人物。
何のつもりか黒いコートで身を纏いフードまでかぶっている。
「まさか……あなたが参加者だったとはね、その服装は何のつもりかしら?」
「何、今から君を殺すんでね、君の返り血の対策さ」
なんかいつもと性格が違うように見えるわね……
「ずいぶんと余裕ね、ソレより――」
「どうして私が参加者だって分かったの?」
何か見分ける方法でもあるのだろうか?
「どうしてかって? 君が戦っている姿を見たからさ」
「昨日の魔獣二体と君との戦いをね?」
見分ける方法……やはり特別な方法なんてないみたいね――
「わかったわ、でも私は負けたりはしない、全ての聖具を破壊して戦いを終わらせる」
私は誰も殺さないし、殺させたりしない。
「不可能だ、君はここで僕に殺される」
「言ってくれるわね、コレを見てもそういえるかしら」
自らの聖具《法律》を解放する。
「そんなもので僕に勝てるとでも?」
(そんなものとは失礼ね?)
彼も聖具を解放する。
「黒い……剣」
彼の聖具は黒い色の先端が斧のようになった剣、《法律》は杖型。
接近戦型なら《法律》の敵ではない。
こちらの方が聖具の形状からして有利だろう。
「さぁ、殺しあおうか、秋穂!」
「あなたに呼び捨てにされるような覚えは無いわ!」
(あの子は気に入らないわね)
「同感よ」
《法律》の言葉に相槌をうつ。
「話し合ってる余裕なんてあるのかい?」
彼は地面を蹴り私の方へ近づいてきた。
「With law the restraint」
《法律》の能力ルールを発動する。
私の周囲五メートルは結界に包まれていく。
結界内に彼を捉える……勝った!
(彼の重力を今の限界値である五倍にします)
「わかったわ」
瞬間――彼の表情が歪む……
「ぐっ―――面白い……力だな」
「あなたにかかる重力を五倍にしたわ、その聖具を捨てて降参しなさい?」
地面がめり込んでいくその中心で彼は黒い剣を杖代わりにして、尚も立っている。
五倍の重力だから立っているのもやっとのはず。
「ふん、調子に……乗らないでくれるかな?」
「彼の周りの空気を出来るところまで、もしくは死ぬ寸前まで薄くして《法律》」
(分かりました)
「っ、そろ……そろ、遊びに……も厭きてきたな」
顔色を悪くしながらつぶやく。
「そんな発言が出来る立場かしら? あきらめて聖具を渡しなさい、私が壊してあげる」
「デス……トラク……ション」
彼がそうつぶやいた瞬間――
《法律》が組み上げた結界に黒い亀裂が入り――
いとも容易く……砕け散った。
(そんな!)
「っふぅ……中々面白い能力だね?」
「でもこの程度じゃ話にならない、死になよ」
「そんな! 結界が消滅するなんて!」
「相手が……悪かったね?」
突然彼の姿を見失う。
「どこに行ったの!」
「ここだよ――」
背後から声がする。
「残念、君はここでリタイアだ」
私が振り向く前に……
私の胸から黒い何かが、何か赤い液体とともに飛び出した。
全身から力が抜けて手に持っていた《法律》を落とす。
ひざが折れ、地面に倒れる。
同時に黒い何かが引き抜かれた。
「さて、聖具も壊すか《法律》とかいったかな?」
(秋穂ごめんなさい、巻き込んだりして――)
[バキッ!]
(あ……き……ほ)
「力が流れ込んでくる……《破壊》こいつは良いぞ、ふはは、ふはははは」
それが私が聞いた、十八年という短い人生の中での最後の言葉だった。

<Interlude-???->
「七番がリタイアか……」
「どうだった?」
「ふむ、御主の賭けた二番の勝利のようだな?」
御主なら結果は言わずとも解ろうに――
それはそうと、なかなかの狂気だ、アレはおそらく――
「我等側に引き込めるぞ?」
「その必要はない、誰が勝ち残るにせよ、残ったものは俺達の糧だろ?」
「そうか」
どっちにしても半同化しているような輩は使えんか。
「で、お前の賭けた一番はどうだ?」
「……自分からは仕掛けるつもりは無いようだな」
「そうか、しかし運命に抗うことなど不可能だ、戦わねばならぬ時は必ず来る」
「御主がそう言うならそうなのだろうな?」
なにせ御主は《運命を操る者》なのだから。
拙者が《闘神鬼》であるように。

7月17日火曜日
<SCENE020>・・・朝
今日はなぜか一限目の授業が無くなり全校集会だ。
「何なんだろう、一限目潰してまで全校集会する理由って?」
「さぁな……それにしても、今日は七壬さんいないのか?」
「ん、なんでそんなこと気にするんだ? まさか彼女に気があるんじゃ……」
「いや、違うって、集会の時いつも前に出てやってたじゃないか?」
それに昨日、真紅と仲良さそうにしてたし
「そう言われたら、そうだな……」
「二人して何話してんのよ、ほら今から話し始まるわよ?」
冬音に言われて俺達は押し黙った。
「今回は校長先生が海外に出張なさっているので生徒会長の三枝君に話してもらいます」
生徒会長が壇上に上がってマイクを取った。
「高いところから失礼――」
「今回は皆さんに悲しいお知らせがあります」
なんかあったのか?
「昨日の18時頃――」
「本校三年生の七壬秋穂さんが他殺体で発見されました」
何だって?ナナミアキホ?
「死因は背中から刃渡り40p以上だと推測される刃物で刺された事だそうです」
だって、彼女は昨日の帰り……真紅と笑顔で。
「それと現場付近で黒いフード付きのコートを着た男性が目撃されています」
刃渡り四十センチ以上? まるで短い剣……
まて、剣だと? そんなもん今のご時世持ってるだけで銃刀法違反だろ?
「それから凶器と思われる刃物は目撃された男性は持っていなかったとの事です。さらに今現在も発見されていないようです」
どこにも無い? 俺は今、剣を持っている、でも誰も気づかない。
「――ですので皆さんも、不審者には十分注意してください」
つまり……殺したのは戦いの参加者?
じゃあどうして七壬さんを殺す必要があった?
「最後に現場には《9/10》と書かれてあったそうです――」
「意味は分かりませんが」
「ッ!」
理由は分かった、七壬さんも参加者だったんだ。
つまり、これで残る聖具の担い手は俺を入れて9人。
でも、いくら勝ち残るためとは言っても、わざわざ殺す必要はあるんだろうか?
条件だけでなら聖具を壊せばいい筈、なら……なんで殺したんだ?
何のために殺したんだよ?

to be continued・・・

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