EternalKnight
VS破滅/Ouverture
<SIDE-Philia->
「こっちに向かって来てる反応はSSSで、私はSSだけど、ホントに予定通り展開ししても良いのね? 多分相手が相手だから、貴女も切札とやらを使う事になるわよ?」
こちらを目指して近付いてくる反応には覚えがある――元々破壊者に属していた、準最高位聖具《破滅》の所持者であるダージュ=グラオス――間違いなく、奴の反応だ。
正直な所、準最高位が相手となると私としては魔術の力を全面的に利用しなければ勝負にならない。と、いうか魔術を使ったところで勝つのは難しい。私の力は攻撃には余り向いていないのだ。
故に、せめて自分が戦いやすい場所を準備しようと考えた訳だけど、そうなると一緒に戦うマナハの足を引っ張りかねない。
彼女の聖具の切札については聞いているが、それを考えると私の能力が足を引く様な気がしてならなかった。
「いえ、そうしてもらえた方が私としても助かります。寧ろ、一度展開したら絶対に穴を開けないで欲しいぐらいです」
「でも、貴女の切札は――」
聞いた限りだと、閉鎖された空間よりも広い空間で使った方が威力はある様に感じられたのだが――
「本当に大丈夫ですから、詳しい術式の説明なんかしてるとキリが無いので説明を省いてましたけど、本当に閉じた空間でやったほうが効率は良いんです。その方が私にとって集めやすいので」
「まぁ、貴女がそういうのなら、私としても心置きなく自分が戦いやすい場を作れるから、助かるんだけどね……けど、展開しちゃうと誰も助けに来てはくれなくなるわよ?」
特に、マナハが言うように極力穴が開かないように展開すると言う事は、外からもそれだけ干渉が出来なくなるという事だ。
元より他の仲間達もそれぞれの戦いをしている訳だから、そんなに容易に他の手が開くとも思っていないが、少なくとも此処は中でも相当厳しいカードであるのは間違いない。
SS二人でSSSの相手をしろと言うのだから、割と無茶な話だと私自身が思う。
「ですけど、最初から他の方の助けを期待しても仕方ないんじゃないですか? 私達だけで出来るだけの手を打ってからでも遅くないんじゃないですか? それでも駄目な時は仕方ないと思いますけど」
「――そうね、ちょっと弱気になってたみたいだわ」
マナハの言うとおり、仲間に頼る前に、やれる事を全てやってからでも遅くない。だけど、それは少なくとも私に限った話だ。
彼女にとっては、それでは遅いかも知れない――だからこそ、彼女に確認を取ったのだが、彼女が良いと言うのなら、私としては頷く他にない。
Lv9の魔術師と言う事で守護者では幹部扱いではあったけれど、Lv9としての私の力は絶対に消滅しない事であって攻性能力としては相手がSSSともなると役に立つか怪しいレベルのモノばかりしか無い。
他の属性のLv9であれば相手がSSSだろうが問答無用で勝利を収められる様な強力な攻性能力を持っているが、私にはそれが無い。
もっとも、生き残るという点においては誰にも負けていないとは自負しているが――それはこの局面ではあまり役に立たないだろう。
不滅の存在である事は、敵を倒す事には直結しない。それでも、足止めするなりしておかなければ、他の仲間達に迷惑がかかる――だから、何とかする。
幹部扱いの私が、皆の足を引っ張るわけには行かないのだ。もっとも、善意の協力者であるマナハの力を借りている時点で、幹部を名乗るのもおこがましい気はするのだけれど……
まぁ、それを言ったらキョウヤだってトキハと一緒に敵を迎え撃つ事になっている筈なのだから、気にしない方が良いのだろう――そもそも幹部扱いが二人ともこれでは示しも何もあったものじゃない。
兎に角、私は私に出来る事をするしかない。最初から弱気で居ても仕方ない、攻撃手段が乏しいのなら、せめてマナハが全力で攻撃に集中できる様に彼女をサポートすれば良い。
少なくとも以前の戦いで、私はダージュの動きを封じる事には成功しているのだから――

<SIDE-Dirge->
以前に戦った事のある反応の元を目指して、虹色の空間を進む。
はっきりと言ってしまえば、私はこの戦いに乗り気では無い――それと言うのも、相手が絶対に倒す事が出来ないのが戦う前から分かりきっているからだ。
地属性の最高位術者、フィリア=オル=フェリアス――《無限蘇生》の異名を持つ守護者の幹部。
以前なら心躍っている様な相手だったが、一度彼女と戦った今の私からすれば、彼女と戦う事は単なる面倒事に過ぎない。
そもそも絶対に倒せないだけの相手等、面倒なだけにすぎない――彼女と一度戦って私が得た結論はそれだった。
以前は不滅の存在を謳う者の驕りを《破滅》の力で滅ぼせたなら、良い気分になれるだろうと思って居たが、一度戦い《破滅》の力では滅ぼせないと分かった今では、滅ぼす事だけが出来ない雑魚でしか無い。
事実、私には彼女を滅ぼせなかったが、その裏を掻き王を《根幹》の元へと届けると言う当初の目的は達成出来ている。
そんな中で、こんな心境で、此方から彼女の元へと向かっている理由は一つだ。
他に、彼女を相手にしようとするものが居ない――私が彼女の元に向かうのはそれだけの理由だ。
まずラクスタだが、あの女が連中の中でも後方に位置するフィリアの居る場所になど向かう筈がなく、既に手近な敵と戦い始めている。
フレドは近接戦闘に特化している特性上彼女とは相性が悪く、最悪動きを完全に束縛されて詰むので任せられない。
楽に多くのエーテルが手に入る場所を探すであろうスタンがSSが二人しか居ない場所で戦うとは思えない。
ヴェルガとケビンとレイビーは……王の言葉と同時に飛び出した連中と違い、あの場に残ていた様だが、出遅れた者に後方に位置する彼女の相手をさせるのは時間が勿体無い。
そもそもやる気がないレイブもまた、ラクスタ同様連中の中でも後方に位置する彼女の元まで向かうとは思えない。
アルカスの爺さんは……少なくとも彼女とやりあう気は無いのか、別の相手の下に向かっている。
フェナハは既にSSSクラスと戦い始めて居て、トクォは予め誰を相手取るか決めていたかの様に王の許可が下りると同時に迷う事なく他の相手の下へ向かってしまった。
故に、彼女の相手は私がしなければいけない――本当に、気は進まないが……

<SIDE-Manaha->
私のやるべき事は決まっている――ここでフィリアさんと一緒に向かってくる準最高位の敵と戦って生き残る、唯それだけだ。
もう救う事も出来ない程に滅びかけた故郷の世界が、あるがまま滅びて行くのを見守る為に、ここで魔獣となってしまった人達とその元凶である《呪詛》のやろうとして居る事を見過ごす訳にはいかない。
だから、私は戦うと決めた。その想いを遂げる為には、絶対に勝って生き残らなければいけない。
だから「――《luminosity》」私は《光輝》の力を開放してヒラヒラとしてフリルのついた白を基調とした可愛げな衣装を身に纏う。
……やっぱり好きになれない格好だけれど、コレが私が戦う為のスタイルなのだから仕方ない。
(申し訳ありません、マスター)
だから、もう良いんだってば《光輝》。仕方ないって納得してるから。
なんていつもの様に《光輝》と念話を交わしていると「それが噂のあなたの能力ね――自分には似合わないって否定してたけど、良く似合ってるじゃない? 可愛いわよ?」フィリアさんがそんな風に言って来た。
「お世辞は良いですよフィリアさん。こういうのはトキハさんぐらいの外見なら似合うんでしょうけど、私ぐらいになるともう見苦しいだけですよ……」
「……それは、地味に貴女よりもずっと見かけが年上な私に喧嘩でも売ってると解釈して良いのかしら?」
どうしてそういう話になるのだろうか? 別にそんなつもりは無かったのだけれど……
「そんなつもりは在りませんよ。確かにフィリアさんみたいな大人な外見だとこういう子供っぽいのは似合わないとは思いますけど、その分フィリアさんは綺麗じゃないですか」
正直、私としてはトキハさんの様な小さくて可愛いタイプよりも、フィリアさんの様な大人な美人の方がうらやましいぐらいだ。
そういう意味でも、こういうヒラヒラとしたフリルの付いた服と言うのは好きになれない――まぁ、別に《光輝》が悪いという訳じゃないのだけれど。
(お気遣い、ありがとうございます、マスター……)
いや、何度も言ってる様に《光輝》は気にしなくても良いって――単なる趣味の問題だから。フィリアさんは可愛いって言ってくれてる訳だし。
「そうかしら? 綺麗だなんてそんな風に言われたのは久しぶりだから、なんだかしっくりと来ないんだけど? ――なんて、話してる暇もそろそろ無くなるわね」
フィリアさんのその言葉に《光輝》との念話を打ち切って向かってくる反応に意識を向ける――まだ距離は少しあるようだけど、此処に辿り着くのは時間の問題だろう。
「始まる前に、もう一度今回の戦いにおける役割分担を確認するわよ?」
「フィリアさんが近距離と中距離への攻撃手段を持つ相手に近付いて足止めして、私は遠距離から攻撃を仕掛ける――でもどこまでが所謂中距離って範囲なのかって微妙ですよね?」
自分も一緒に倒すぐらいのつもりで撃って来なさいとも言われているけれど、それに関しては本当に問題ないのかと何度も問いただして、結論は出ている。これ以上蒸し返す話題じゃないので触れないで置こう。
「そんなギリギリのラインで戦わなくても、はっきりと遠距離っていえる範囲からで良いわよ。だけど、絶対に遠距離への攻撃手段が無いとは言い切れないから、それだけは警戒しておいて」
「わかりました。フィリアさんも、無理はなさらないでください」
「私は何があっても大丈夫よ。使い勝手は良くないけど、これでも地属性のLv9だからね――《無限蘇生》の名前は伊達じゃないわ。さ、本当にもう話してる時間もなさそうだし、始めましょうか――」
そのフィリアさんの声に、私は大きく頷く事で答えた。

<SIDE-Philia->
「さ、本当にもう話してる時間もなさそうだし、始めましょうか――」
ダージュが効果範囲内に入った事を確認してから、私は意識を集中させて、頭の中に術式を展開させる。
広さは宮殿に比べれば大した事のない程度なので問題は無いけれど、外壁の強度はマナハの注文どおりに相当無理が出来る様に強度を上げつつ分厚くなる様に術式を弄っていく。
概念攻撃を有するダージュにも簡単には崩せない程に、分厚い外壁をイメージする――破壊の概念攻撃を使用できるダージュ相手に、強度では対抗できない。
ならば、一撃で破壊できない程の厚みを用意する――私の力で常時再生する分厚い外壁――これならばダージュでも突破する事は出来ないだろう。
ダージュの位置的には恐らく気付かれると同時に引き返せばまだ逃げられる範囲かもしれないが、向こうから此方に向かってきたのだし逃げたりはしない筈だ。
この柩を展開できれば、この内側に捉えられれば、他の場所へは行かせないという意味では、少なくとも自分の役目は最低限果せたと言って良いだろう。
あくまで最低限だ……やるからには、幹部を名乗る以上は、最低限だけで終らせるつもりはない。マナハもやる気になっているのだから、私も彼女と一緒にダージュを倒せる様に最善を尽くすべきだろう。
私達を閉じ込める土の柩のイメージは既に出来上がっている――後はそれは私の持つ力で形にするだけだ。
イメージと術式に変換し、並列してエーテルをオーラに換えそれをさらに魔力へと変質させて、魔力を術式に乗せて流れ出させる――詠唱も魔方陣も刻印も使用しない魔術とはこういう物だ。
そして、意識の集中を解いて瞳を開くと、私達は真っ暗な闇に包まれていた――って、そりゃ土の壁で周囲を全部覆えばそうなるわよね、普通。
そこまで意識が回ってなかったけど、宮殿で使ってる照明とかを再現すればと考えている間に、直ぐ傍から「《ShiningBullet》」マナハがそう紡ぐ声と共に、暗闇の中に無数の光りが生まれた。
一つ一つは小さな光りでしかないそれは、それでも無数に展開されたことによって閉ざされた土の柩全体を照らし出していた。
――感心している場合じゃない、いつまでもマナハの能力の副産物の光りに頼っている訳には行かない。そもそも私の役目は、後方から射撃するマナハまでダージュの攻撃が及ばない様にする壁役なのだ。
幸いな事にダージュはその場に留まって暗闇で淡く光る光弾を眺めている。しかし、いつ動き出すか分からない以上、私は自分の役割に徹する必要がある。
考えている間に仕上げた術式を展開して、光りの弾丸に淡く照らされていただけの薄暗い空間に光りが満ちる。
――それと同時に、マナハの周囲に留まっていた光る弾丸は一斉にダージュの元へと殺到する様に打ち出された。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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