EternalKnight
VS外神/イヴ=スティトル
<SIDE-Fenaha->
「もう一発打つくらいの時間ならあるってのよ。つー訳で、開け――《GateOfOuterGod》」
力の名を紡ぎながら、あては目前まで迫った敵に《外神》を突き出す――その一撃は空間に視覚出来ない孔を穿ち、その孔の向こう側の力を引き出す。
向こう側のどの力が出てくるのかは運任せだし、エーテルの消費量なんかは同じなのに性能に差があったりはするけれど、ドレを引き当てた所で最低でも消費したエーテルに見合う攻撃になる事は間違いない。 
《魔王》《不浄の源》《忍耐強きもの》《始源であり終末》《森の黒山羊》《ヴェールを与えるもの》《緑の炎》《這い寄る混沌》《門にして鍵》――
引き出せる力はこの何れか一柱の断片ゆー事になる。まぁ、断片ゆーても高々二人の永遠者を屠るにはそれでも十分すぎる戦力やから、全く問題はねーのだけれど。
特に近づいてきている男――ここまで近づいてきていては何が出た所でもう回避なんぞ出来はせーへん。さぁ――何が出るかなっと。
(――《忍耐強きもの》を引き当てた様です、マスター)
このタイミングで《忍耐強きもの》かいな――なんや、我ながら良い引きじゃね、それ?。
距離が開いてれば九つの中でも最弱候補やけど、近接戦においては相当な当たりを敵が近づいてきたタイミングで引くって、ツキ過ぎじゃんかよ。
まぁ、あての運が良かったか、敵の運が悪かったかは知らねーけど、当たったもんは仕方ない。
敵さんには、しっかりと《忍耐強きもの》の恐ろしさを知って貰おうかね?
そんな事を考えながら、あては《忍耐強きもの》能力を活かす為に、突き出した《外神》を引き戻して、構えなおした。

<SIDE-Chrono->
【まぁ、あての運が良かったか、敵の運が悪かったかは知らねーけど、当たったもんは仕方ない】
近接戦でなら当たりといえる枠を引いてきたか――まぁ、原因かどうかは兎も角、いつもながら相変わらずの運の無さだ。
その運の無さを乗り越えて今までも戦ってきたのだ、何が来ようと凌ぎきり、神速居合いを持って両断する、今の私がすべき事は唯それだけだ。
敵が言霊を紡いだ瞬間より、背筋に走る悪寒に似た何か、理解不能な未知を目の前にした様な感覚には囚われているが、それがどうしたというのか。私のすべき事は、決まっているのだから。
【敵さんには、しっかりと《忍耐強きもの》の恐ろしさを知って貰おうかね?】
しかし、実際に受ける前に能力がどんなものかを知る事は出来ない、か。まぁ、流石に敵がそこまで都合良く自分の能力について考察する、等と言う事も無いか――
そんな風に思考を巡らせながらも、更なる足場を形成してそれを蹴って、更に速度を上乗せしようとした、その瞬間、薄っぺらい破片の様な何かが、無数に、どこからとも無く私の周囲に現れた。
コレが敵の能力か? だが、コレは一体どういう能力だ? そもそも何故《見えて》いる? 視界を奪うには確かに《見えない》もので顔を覆っても意味は無いが――
そんな風に思考した瞬間には、無数の薄っぺらい破片が私の元に殺到してきた。殺到する無数の薄っぺらい破片は、その全てが私の顔に目掛けて集まり、優先して両の目と呼吸器を塞ぐ様に集まってくる。
だがしかし、それを一々拭っている様な暇は無い。今は唯、前に進み神速居合いにて敵を両断する事だけに集中すれば良い。そもそもコレだけの数が殺到して来る今拭った程度でどうにかなるとも思えない。
否、待て――そもそも今発動している《忍耐強きもの》とやらは近接において当たりといえるものの筈だ、それが両の目と呼吸器を塞ぐ破片だけと言うのはどうにも腑に落ちない。
更に言うなら永遠の騎士にとって呼吸器など人であった頃の名残に等しく、視界を奪った所でエーテルの反応を追えば敵を見失う事も無い、その程度のものが当たりの能力だというのか?
それ以前に、敵は魔獣としての能力で自らの聖具の能力を不可視ににした筈ではないのか? だというのなら、今私の顔を覆っているのは――能力の本質ではないと言う事になる。
では今発動している《忍耐強きもの》の能力の本質と言うのは一体何だ? ……否、分からぬなら考えても仕方ない、今は唯、一太刀に全てを乗せるのみ。
どんな能力だろうが、使用者が散れば基本的にそれまでだ。効果が永続するものも中には存在するが、展開後に直ぐに効果が消える敵の能力はそういう類のモノではない筈だ。
考えている間に、薄っぺらい破片は私の両目と呼吸器を塞ぎきる――が、エーテルの反応を追えば敵を見失う事は無い以上、立ち止まる必要も無い。
敵のカウンター等の反撃も考慮に入れるべきだが、それを行うのものがなんであれエーテルの反応は隠す事が出来ない以上、その反応を見落とす事などあり得ない。
視界が黒に奪われていようとも、敵にどんな攻撃の手段があろうとも、私が遣るべき事はただ一つしかない。踏み込み、一刀の元に敵を両断する、唯それだけだ。
エーテルで編んだ鞘に収められた《銀河》の柄を握り、最後の一歩を踏み込み、今まさに一閃を放とうとしたその瞬間、突き出した突撃槍を引き戻していた敵が、動きを見せる。
放たれるのは突撃槍の一撃――だが、その程度は恐れるに足らない。突撃槍は、先端を逸らせば回避する事は容易いのだ。それさえかわせば後は神速居合いにて敵を両断すれば事は済む。
限りなく零に近い間合いで視界を奪われた状態で、放たれた突撃槍の一撃をエーテルの感覚を頼りに《銀河》の鞘で受け流す。
(……っ!?)
僅かに伝わってきた《銀河》の何かしらの驚きが気にはなるが、このタイミングを逃すわけにもいかない。
そして私は、そのまま鞘から刃を抜き放ち、超速の一撃を解き放つ。
放たれた一撃は確かな手応えを捉えるが、僅かに浅い。エーテルの反応から見ても、深い傷とはなっているが完全に両断出来てはいない。
もう一撃、そのまま追撃をかけたかったが、神速居合いの後の隙を少しでも減らす為、私は後方へと飛んで敵との距離を開く。
両の目と呼吸器を塞いでいた薄っぺらい破片はその最中でバラバラになって剥がれ落ちていった。
視界を奪われた事で僅かに踏み込みが浅くなっていたのが両断出来なかった原因と考えるべきだろう。
だが、どの道あれだけの傷ならばそう簡単に動く事は――いや、待て何故あれだけの深手を負って何の反応もしない?
叫び声は気力で抑えればいいだけだし、痛覚を遮断する事も難しい事ではない。だがしかし《天之川》で拾っている心の声が聞こえてこないというのはどう言う事だ?
(……消された)
《天之川》をかき消されたのか。それで先程はああして驚いていたのか。となると能力は接触した聖具の能力を打ち消す、と言うものか。近接戦でと言っていたのは接触しなければ発動しないからと考えれば――
(違うのだクロノ、確かに《天之川》はあの瞬間解除された。だが発動している能力を消されたのではないのだ。我の中より能力そのものを消されたのだ。故に、強制的に能力は解除されたのだ)
能力そのものを消されただと? それは一体どういう――
(今の我には《天之川》は発動できない。《星廻り》と《星屑》もだ。……或いは、この先永遠に発動できない可能性もある――こればかりは敵を倒し聖具を破壊せぬ限りどちらなのかは分からぬ)
何……だと? では、敵の《忍耐強きもの》の能力は――
(接触した聖具の能力の封印、或いは永続的消失――といった所だろうな)
何だ、それは……封印は兎も角、永続的消失だと?
(あくまで可能性の話ではあるがな……接触しただけで発動しているかどうかを問わずに三つも奪われたのだ、可能性としては考慮しておくべきだ)
そんな出鱈目な事が……
(出鱈目だ等と、何を今更言っているのだクロノ? そもそも我の力であった天之川とて、理不尽極まりない能力であろうが――それに、あんな物が無くても汝は十分に強い。故に、恐れる必要は無い)
確かに、敵は今や神速居合いの一撃で殆ど背骨だけでその体を繋ぎとめているに等しい状態だ。私達の勝利は目前と言っていい。奪われていた視界も元に戻った……此処から負けるとは考えにくい状態ではある。
そうだ、動くなら早く動き出すに越した事は無い。永遠の騎士の中には常軌を逸した速度で肉体を修復する者達も居るのだ。
神速居合いによってもたらされた鮮やかな切れ口は、元の様に繋げば割とあっさりと繋がってしまう。敵の自己修復の速度が分からない以上、尚更攻めあぐねている場合ではない。
だがしかし、たった一度の接触で三つの能力を奪われた、未知数すぎる能力を前に、此方から攻め込む事に躊躇いが生まれる。
今まで詠めていた相手の考えを読めないのも、何が起こるか分からないと言う未知へ不安が躊躇いを加速させる――無論、躊躇って居る場合ではないのは十分に承知している。
だが、能力を三つ奪い取った《忍耐強きもの》ですら当たり程度と呼んでいた敵が出れば勝てると考えていた《魔王》とは一体どれ程のものなのか?
恐ろしい、どうしようもなく恐ろしい。今までの《緑の炎》と《忍耐強きもの》ですら未知の恐怖に苛まれたのだ。敵の言う《魔王》がどの程度の未知の感覚をもたらすのか等、想像する事すら恐ろしい。
――だがしかし、だからこそ、そんなモノを引き当てられる前に敵を完全に倒す必要がある。
私が感じた感覚を、同じ様にエリスも感じている筈だから――あの二つを超える未知を彼女には絶対に感じさせたくないから。
そして、今が敵を倒す為の最大の好機なのは疑いようが無い。故に、私が今この瞬間に成すべき事は一つしかない。
敵に近寄る事は更なる能力の喪失に繋がるかもしれない、能力の喪失よりも更に酷い状態に陥るかもしれない。
それでも、私が敗北して死ねばエリスも同じ目にあう可能性があると言うのなら――コレは私にとって絶対に負けられない戦いだ。
故に、可能な手は全て打ち、この場で――次の一合で敵を討つ。例え、この身が滅びようとも。

<SIDE-Fenaha->
当たったのは奴さんの聖具か……で、折れたり曲がったり欠けたりしてないあたり、喪失したの能力を幾つかって所かね?
(そう考えるのが妥当かと思います。それが敵の中でどどれ程の重要度の能力なのかは私には解りかねますが)
まぁ、奴さんの顔色を見るにそれなりに重要な能力を消せたんじゃねーかね。相当驚いてるし焦ってる様に見えるし。
しっかしよー聖具本体とか敵本体に強烈な喪失与えられなかったのは誤算だったなー。それがあれば腹を掻っ捌かれる様な事にはならんかっただろーにさ。
ってか《忍耐強きもの》で喪失効果を与えた次の瞬間には、男の放った一閃を受けて腹を掻っ捌かれていたんだけどさ、何なのあれ、回避できなくねーじゃないさ。
否、それ以前に背骨で辛うじて繋がっている状態を掻っ捌かれたと言うのには御幣があるかもしれねーけども。
(マスター、幾ら痛覚を遮断しているとは言え早く治療をした方が良いのではないかと……)
そりゃわかっってっけどさ、それにしてもあの一撃にはビビったなぁ、マジ抜こうとした瞬間以外見えねーんだもんさ。
発動してたのが《黒き血》が付加発生する《忍耐強きもの》じゃなきゃやばかったかもしんねーってあたり、あての今の運気は最高潮なんじゃねーかと思うんだけど、どうよ?
(あの、全く分かってらっしゃらない様子ですが?)
ノリ悪いなー《外神》ってか、そこまで心配してくれなくても平気だって?
あんだけの速度の一撃だった訳だから、切断面は超綺麗だろうから、ちょっと繋げてエーテルで治療すれば割とあっさりと元通りだと思うぜい?
(いえ、だったら早く傷口を塞げば良いではないですか。《終焉》から受けた傷と違い、此方の傷は深いですが治せない訳ではないのでしょう?)
まぁ、奴さんはまだ能力無くした事に呆然自失してるし大丈夫っしょ――つっても、流石にこのままじゃちーとエーテルが勿体ねーか。
向こうから距離開けてくれたのはありがてーね、つってもあれだけの一撃の後だから下がるぐらいしか選択肢がねーのかもしれねーけども。
(まぁ、此方にあれだけのダメージを負わせてその後追撃を仕掛けてこない当たり、その推測で合っているのではないでしょうか?)
ゆーて合ってようが合ってまいが、結果として奴さんは下がって距離取ったんだから事実なんて何でも良いだけどなーっと。
なんて考えている間に、両断されかけた胴体を繋ぎ合わせて身動きを取れる様に治療を施す。なんか思った以上にエーテルを消費してしもーたけど、まぁまだ何度か呼べる分のエーテルはあるし問題ねーっしょ。

TheOverSSS――18/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

<Back>//<Next>

84/118ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!