EternalKnight
VS外神/トゥールスチャ
<SIDE-Chrono->
固まっていた十数の敵の反応は、散り散りになって一組に対して一人ずつの割合で此方に向かって動き始める。無論の事、私とエリスの二人一組の元にも敵の反応が一つ近づいて来ていた。
だがしかし、この反応は――
(まず間違いなく、相手は準最高位の様だな――まぁ、我も同じ位階ではあるし、準最高位に準最高位をあてるのは至極真っ当な判断であろう)
確かにその通りだが――準最高位聖具持ちの魔獣か……どうしてもあの化物じみた強さのカノンを思い出させられるな、その組み合わせは。流石にあそこまでの化物だとは思いたく無いが。
(アレは例外中の例外であろうよ。そも、奴に関しては魔獣化する前から既に化物じみた能力だったではないか)
だと良いんだがな……まぁ、何にしてもここには私とエリスしか居ないのだ、どれ程の敵であろうと二人で戦うしかない。
まぁ、それはいつもの事なので良いとして、この戦い……どう戦うのが正解なのか?
《星屑》は周囲で戦う他の仲間達にも被害が及ぶ可能性がある為使えないとして、やはり《天之川》による思考の読み取りに《融合》での身体強化が無難か?
――とは言え、あの組み合わせは相当にエーテルの消費が激しい。
《星廻り》はいつも通り常時展開として、可能なら《融合》を切って《箒星》と居合いで戦うというスタイルが無難か――エリスにはいつも通り銃での援護を任せれば良いだろう。
《超新星》は――使わないで済むならそれに越した事は無い。そもそもアレは実戦向きな能力では無いし、この場に私とエリスしか居ないのならば尚更だろう。
まぁ、星屑を使えない以外はいつも通りと言う所か。
「エリス《星屑》を使わない以外はいつも通りで行く――援護の方は任せた」
「いつも通りだね? 任せてクロ」
エリスの返事に頷いて、私は向かってくる相手に意識を向ける――距離はもう随分と近づいてきている流石準最高位という所だろうか? で、あれば私もそろそろ能力を使うとしよう。
「《HeavenlyRiver》」
そう短く力の名を紡ぐと同時に、見定めた敵の思考が私の頭の中に流れ込んできた。
【この距離まで来れば届くっぽいかね? まぁ、まだまだ距離は開いているし、何よりも見えねーだろうから、回避はできねーっしょ】
いきなり、随分と物騒な思考だ――が、聞こえた以上回避させてもらう。不可視だろうがなんだろうが、思考を読める私にはそんな攻撃は無意味だ。
能力の発動の瞬間に距離を取れば良い、この距離まで来ればと言う件から考えても、射程は今の距離でギリギリと考えて良い筈だ。
【つー訳だから《外神》お前さんの力で孔を開けて、向こう側の力を使わせておくれ――っと】
――来る、か?
そう思った次の瞬間、此方に向かってきていた敵は動きを止め、その手に持っている巨大な得物にエーテルを収束させながら、こちらに向けてその得物を前方に突き出した。
【って訳で、開け――《GateOfOuterGod》】
何が起こるのかは分からないが、少なくとも不可視の何かが訪れる事は分かっている、故に「一端下がれエリス、来るぞ!」エリスに敵の攻撃の到来を伝えながら、俺は後方へと飛んで敵との距離を取った。

<SIDE-Fenaha->
つー訳だから《外神》お前さんの力で孔を開けて、向こう側の力を使わせておくれ――っと
(了解しました、エーテルの収束を開始します)
「って訳で、開け――《GateOfOuterGod》」
言霊を紡ぐと同時に、私は右腕の《外神》を大きく前に突き出し、力を解放する。
次の瞬間《外神》は空間に視覚出来ない孔を穿ち、その孔の向こう側に居る存在の力の断片を引きずり出す。
んで《外神》今回は何が出たん? ってか毎回思うんだけど魔獣の能力で不可視にしたのはいいけどパッと見何が出たかあてにも分からないって微妙に不便やんね。
ゆーて、ある程度慣れてるとは言えあんな不可思議でキモイ物をもう一度見たいとも思わねーんだけども。
(引き当てたのは《緑の炎》になります)
《緑の炎》か、まぁ悪くない引きかねぇ? つーか見えねーのに緑ってどうよ? そもそも見た目が炎っぽいだけで全く炎してないからもうなんて呼ぶべきかわかんねーよ、アレ。
(では何か別に名前をつけますか?)
いや、今更名前変えるとかめんどいからパスで――ってかそれよりもさぁ?
(――えぇ、避けられましたね《緑の炎》)
一応《外神》を前に突き出すってモーションは取ったけど、これだけの距離でそんな挙動を見ただけで目に見えない攻撃を掠りもしない程完璧にかわせるもんかね、普通?
(こちらも一応準最高位ですが、相手にしても条件は同じ筈ですしね。単に警戒していると言うだけでは説明しにくい物があります。もっとも、本当に警戒しているだけと言う線が無い訳でも無いのですが)
もう一回試すのもありだけど、どれが出るかランダムなのがなぁ……普通に一回で結構な量のエーテル使うのも相手が同じ準最高位って事を考えると微妙なんよねぇ?
もっとも《魔王》でも出れば間違いなく勝てるんだけど……《魔王》なんて滅多に引き当てれないしなぁ?
(使いにくい能力で申し訳ありません)
いやいや、あては別に《外神》を攻めてる訳やないねんよ。《魔王》あたりの性能なんかコスパ的には破格やし、それでなくても十分に実戦に耐えうる能力っしょ、あれは。
(だと良いのですが――しかし、それはそれとしてマスター、この戦い、これからどうするおつもりですか?)
そうさねぇ、無駄撃ちは避けたいし、もうちょっと距離詰めるのが無難かねぇ? 距離詰めれれば大抵何が出ても相手になんかしらの影響を与えられるっしょ。
等と《外神》と念話を交わして、私は立ち止まった位置から敵との距離を詰める為に動き出した。

<SIDE-Chrono->
後方へと下がる事で目に見えない攻撃を回避する事には成功した。成功したのだが――何だ、この背筋に走る悪寒の様な感覚は?
【《緑の炎》か、まぁ悪くない引きかねぇ? つーか見えねーのに緑ってどうよ? そもそも見た目が炎っぽいだけで全く炎してないからもうなんて呼ぶべきかわかんねーよ、アレ】
目に見えなくとも背筋に悪寒が走る様な、それ程までに恐ろしい能力だったのだろうか、その《緑の炎》とやらは?
【いや、今更名前変えるとかめんどいからパスで――ってかそれよりもさぁ?】
否、違う。この悪寒はそういう物とは違う気がする。これはそう――何かもっと根本的に理解する事の出来ない未知と遭遇した時の様な……
【一応《外神》を前に突き出すってモーションは取ったけど、これだけの距離でそんな挙動を見ただけで目に見えない攻撃を掠りもしない程完璧にかわせるもんかね、普通?】
そうだ……これは永遠の騎士となる前、里の守護者として始めて魔獣と遭遇した時のあの感覚に似ている。
しかし、この場において理解不能な未知とは一体なんだ? 確かに《緑の炎》なんてものは名前の通りの物しか想像出来ないが、それだけでは存在する筈の無い物への違和感しか感じない。
【もう一回試すのもありだけど、どれが出るかランダムなのがなぁ……普通に一回で結構な量のエーテル使うのも相手が同じ準最高位って事を考えると微妙なんよねぇ?】
何が出るかはランダム、か。先ほどの悪くない引きがどうと言うのはそう言う事だったのか……否、問題はそこではない。
接触はおろか目視すら出来ていないのに強烈な悪寒の様な物を感じた《緑の炎》とやらで悪くない程度と言う評価である事が問題なのだ。
その言葉が意味するところは即ち、あれよりも弱い何かが引き起こされる可能性もあるが、アレ以上の何かが引き当てられる可能性もある、と言う事だ。
【もっとも《魔王》でも出れば間違いなく勝てるんだけど……《魔王》なんて滅多に引き当てれないしなぁ?】
《緑の炎》の存在を感じ取っただけでこれだけの影響があるのなら、それ以上の――出れば間違いなく勝てると断言する程の《魔王》とはどれ程の物なのか……想像する事すら難しい。
――とは言え、まだ此方の能力すら知らない相手に、その《魔王》とやらが出れば間違いなく勝てると断言されるのは些か癪に障る。
どんな能力であれ、それが聖具によって再現された能力であるならば、欠点の無い完璧な物等、存在する訳が無い。
聖具の能力には限度がある。力の使うのにエーテルを利用している以上、その理からは絶対に逃げられない。無敵の能力なんてのは、単なる言葉遊び等の中にしか存在しない。
【いやいや、あては別に《外神》を攻めてる訳やないねんよ。《魔王》あたりの性能なんかコスパ的には破格やし、それでなくても十分に実戦に耐えうる能力っしょ、あれは】
実戦に耐えうる、か。確かに、《緑の炎》の存在を感じて背筋に走った悪寒の様な感覚から考えれば、十分に実戦レベルの能力といえるだろう。
最悪、あの感覚事態で敵を足止めする事すら不可能ではないのではないだろう? 寧ろ弱点があるのなら、ランダムで能力が変わるという事自体が、弱点というべきなのかもしれない。
【そうさねぇ、無駄撃ちは避けたいし、もうちょっと距離詰めるのが無難かねぇ? 距離詰めれれば大抵何が出ても相手になんかしらの影響を与えられるっしょ】
距離を詰めた上で不可視の攻撃を行う事でほぼ回避不能な攻撃になる、か……相手がそう動くとすると此方はどう出るべきなのだろうか?
ある程度距離が詰まった時点で《融合》で能力を底上げして一気に距離を詰めて近接戦に持ち込むか? 相手の能力の発動までの速度を考えると厳しいだろうが、他に策が思いつかない。
或いは、距離を詰めきられる前に《超新星》の準備でもするか? いや、相手の言う『距離を詰める』がどの程度の距離まで詰める事なのか分からない以上《超新星》に賭けるのは自殺行為に等しい。
流石に動いている敵に設置型の攻撃を当てるのは難しい。それが準備に時間を要し、大量のエーテルを消耗する攻撃である以上失敗が許されないというのも容易に試せない理由ではあるのだが――
考えている時間はない――か。ならばやはり、《天之川》を継続した上で《融合》を併用して正面からぶつかるしかないだろう。そしてそうするのであれば、立ち止まっている暇は無い。
(策が無いとは言え、未知数の敵相手に正面から飛び込む――か。出来れば避けて通りたい道だが、それしかないのなら致し方あるまい)
《銀河》のそんな言葉を聞きながら「《FusionOfStarAndMoonAndSun》」力の名を紡ぎ、それによって全身が強化されていく慣れた感覚の中で、今度は足場素早く形成する。
そして「エリス、距離を一定に保って援護を頼む、攻撃が届くギリギリのラインからでいい」共に戦うパートナーであるエリスへとそんな指示を出してから、私は組み上げた足場を蹴って前に出た。
【ちょ、早っ!? 否、ゆーてもこんだけ距離があれば十分に――】
《融合》による此方の急な加速に敵が驚いているのが分かる――分かるが、相手の考えるとおり、距離を考えれば此方が詰めきる前に向こうが先に能力を使えるのは間違いない。
それでも、まだこの距離で撃って来る分にはエリスには十分回避できる余地はある筈だ。問題は私がどうやって目に見えない敵の攻撃を避けるか――という事になる。
否、何も避けるだけが手段ではない。見えないのならその存在をエーテル知覚と気配で感じ取り、受け流すなり、切り落とすなり、防御するなりすれば良い、唯それだけの事だ。
もっとも、それが簡単に出来れば苦労はしないが、それでも他に手がない以上やるしかない。出来なければ、私が一人やられて、エリスが一人で敵と戦う事になるだけなのだから。
そしてそれは、その未来は、私にとって許容できる物ではない。故に、なんとしてでも成し遂げる。成し遂げた上で、その後の一撃で目前に居る敵を倒す。
(まぁ、汝は悪運だけは強いからな。そうそう死ぬ様な事にはならぬだろうよ)
当たり前だ、死ぬつもりなんて毛頭ありはしない。あるのは唯、押し戻されて距離を再び引き剥がされるか、それ以外かの二択だけに決まっている。
等と、そんな念を《銀河》へと返しながら、更に足場を生み出してそれを蹴る事で速度を上乗せする。
【「もう一発打つくらいの時間ならあるってのよ。つー訳で、開け――《GateOfOuterGod》」】
そして、最高速で一直線に敵に向かって駆け抜ける中で、私はそんな心の声と目前で槍を突き出す女の口から紡がれるそんな言葉を聴いた。

TheOverSSS――18/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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