EternalKnight
VS我欲/救済の力
<SIDE-Aren->
巨大な反応が近づいてくる。他の仲間達の元にも敵の反応は近づいては居るが、俺達の元に近づいてきている反応はかなり大きい部類に入る。
それこそ準最高位級の反応だ――と、言うか敵には準最高位が何人か居るらしいので、その内のどれかだと考える方が妥当だろう。
(準最高位か……我等だけでなんとかなると思うか、アレンよ?)
此処にいる俺達で何とかするしかないだろ――《運命》との戦いの後も力をつけ続けてきたんだ、相手が準最高位だろうとなんとかしてみせるさ。
(《永劫》と正式に契約を結べれば、相手が準最高位だろうと何の心配も無いのだがな)
……それは出来ない。コレはゼノンさんから預かってる大事な物だし、そもそも仮契約だってゼノンさんの指示で仕方なくしてくれているのだ。
【私が契約するのは、私が私を扱うにたると認めた者だけです。残念ながら貴方にその資格は無い。主殿程になれとも言いませんが、妥協ででも私が契約して良いと思える程度にはなって頂かないと】
――だ、そうだ。まぁ、仮契約だけでも戦力としては十分にありがたいんだ、相手が準最高位だろうとなんとかして見せるさ。
【あぁ、それなんですが】
それ?
【貴方達が準最高位だと憶測で決め付けている反応の事です。確かに強大なエーテルの保持量ですが、因子の力を感じませんから、限界までエーテルを溜め込んだSSと言った所だと思いますよ?】
あの反応でSSだって? どれだけエーテルを溜めてるんだよ、敵は……
(それでも相手の保持しているエーテル量は膨大だろうが、SSで有ると言うのなら順最高位と戦うよりはよっぽど勝機はあるだろう。こちらには仮とは言え準最高位の力もある事だしな)
【あまり仮契約の私を過大評価してもらっては困ります。仮契約で私に出来るのは身体能力底上げ程度ですからね――まぁ、確かに無いよりは有る方が断然良いとは思いますが】
元々アンタは俺が持ってて良い様な代物じゃないんだ、身体能力の底上げだけでも十分にありがたいさ。
【えぇ、全くその通りですね――果たして主殿は何故私を貴方に預けたのでしょうね?】
それは、自惚れじゃないけどあの場じゃ俺が一番適任だったからじゃないか? 一応あの時に居た三人の中じゃ俺が一番クラスが高かった訳だし?
【クラスの差は確かに大きいとは思いますが、私としてはあの時居た三人の中ではフェインとの契約が一番無難だったと思っているくらいですしね】
確かに、フェインさんの聖具は大量のエーテルと準備の時間さえあれば殆ど何でも出来る聖具ではあるが――否、待て大量のエーテルと準備の為の時間、だって?
【私は相当量のエーテルを保持していて、その上で能力の特性は周囲の時間の停滞と自信の時間の加速――相性と言う意味ではフェインとの、いえ、《法典》との相性は完璧だったのではと思うぐらいですし】
……確かに、相性と言う意味では俺よりもフェインさんの方が《永劫》との相性は良い様に思える――では、何故ゼノンさんは俺に《永劫》を託してくれたのだろうか?
【主殿が何を考えて私を貴方に託したのかは分かりませんが、相性を理由に契約するつもりはありません。そも、正規の契約に関しては、私が認めた者以外とは主殿の頼みだとしても結ぶ事はないでしょう】
だが、どうせ正規の契約ができないのなら俺よりもやはりフェインさんの方が良かったんじゃないかと思うのだが……それについては考えるだけ無駄という事なのだろうか?
まぁ、考えた所で答えが出るとは思えないし、何より敵がかなり近づいてきている。今はどうしてゼノンさんが俺に《永劫》を託してくれたのかよりも、目前に迫った敵の事を考えるべきだろう。
【それが懸命でしょうね――SSクラスだとは言え、そのエーテルの保持量は準最高位に届きうる。加えて相手は魔獣である筈ですから、全力でやらねばあっさりとやられてしまうかもしれませんよ?】
(否、それだと汝も危ないのではないか《永劫》?)
【それは要らぬ心配ですよ《救い》、最悪の場合は仮契約を直ぐに破棄して此処から離れるだけです。私だけならこの場から離れる事は不可能ではありませんから】
えぇっと、なんと言えば良いんだろう、この場合?
(それを聞いて余計に心配になったのだが?)
【とは言え、主殿の命ですから……そうですね、貴方の契約者の命の灯が消えるまでは、私もご一緒させて頂きましょう】
……
(どうしてアレンが死ぬ前提で話しているのだ、汝は?)
【相応に高い確率ではあると思いますが、絶対にそうなるとまでは言えませんね……否、回りくどい言い方は止めましょう。率直に言えば貴方達の勝利は殆ど間違いなくあり得ないと私は考えています】
それは、相手のエーテルの保持量が多いからか?
【それも理由の一つではあります。永遠の騎士同士の戦いにおいて特に重要なのは二つです。一つはクラスやエーテルの保持量で、次点が能力の相性――まぁ、常識的な話ですね】
(それぐらい言われなくても分かっている、確かにエーテルの保持量は劣っているだろうが、相性等実際に戦い始まるまで分からないのではないか?)
【えぇ、普通なら実際に戦わないと相性等分かる物では無いでしょう――ですが《救い》貴方の能力は違う】
(何?)
【分かりませんか? 元のエーテル保持量やクラス差を相性で埋められると言うのは、弱い側が強い側の能力の穴に対して付け込めるからこそ成立しうる――此処までは分かりますね?】
(言われなくても分かる――だからこそ分からん、一体何が言いたい?)
【貴方こそ何故分からないんです? それはつまりその穴に付け込める程に尖った、或いは特殊な能力なのだと言う事ぐらい、簡単に分かりそうな物ですが?】
(回りくどい言い回しをするでない。敵はもうそこまで来ているのだぞ?)
【――では、確信に触れましょうか? 貴方に、そんな能力があるのですか?基礎能力の差を覆せる可能性のある能力と言う物が? 借り物の力だらけの貴方の中に?】
待ってくれ《永劫》確かに《救い》の力は俺達が助けた聖具の力を借り受けた物だ。だが、それは互いに承知の上で借り受けている力だ。彼等への侮辱は【貴方達は、自らより強い聖具を助けてきたのですか?】
……何を?
【貴方達は今まで自ら以上の力を持つ聖具をも助けてきたのすか? ……直ぐに答えないと言う事は無いのでしょう? であるなら、貴方達で太刀打ち出来ない力に貴方達が助けてきた力で抗える可能性は無い】
それこそ色々な力があれば相手と相性の良い能力だって――
【何でも相性と言う言葉で解決出来ると勘違いしていませんか? 相性でどうにかなる範囲に限度があると言う事を理解なさい。重要なのはクラスやエーテルの保持量だと言われているのはそう言う事です】
(その言い方だと我等に勝ち目は無いと言っている様に聞こえるのだが? そもそもそこまで言うのなら汝には何か策があるのか?)
【いえ、特にありませんね。そも、初めから言っているでしょう貴方達では恐らく勝てない――と】
……じゃあ、そこまで言うのにどうして《恐らく》なんて曖昧に言うんだ?
【それは、単に主殿が貴方に私を託したからです。今の状況を見越して、と言う事は流石に無いでしょうが、それでも主殿が意味も無く私を貴方に託すとは思えない――故に恐らく勝てないと言ったまでです】
それはつまり《永劫》から見れば勝てる訳の無い状況に見えると言う事だろうか?
それでも、ゼノンさんが俺に《永劫》を託した以上、そこに何か意味を見出そうとして、その結果絶対に勝てないと断言できないと言うだけではないのか?
(なぁアレンよ……もし汝が今考えた事が《永劫》の言葉に繋がってるんだとしたら、我等はどうするべきなのだろうな?)
――そんなの決まってる。
(愚問だったか?)
あぁ、愚問だ。決まってるだろそんな事――そこまで馬鹿にされてるんなら、引けねぇ。俺達のプライドの為にも、俺達が救ってきた全ての聖具達の為にも、引く訳にはいかねぇ。
【別に馬鹿に等してはいないでしょう? 私は端的に事実を述べているだけです】
(馬鹿にしているだろう? 我々では迫ってきている敵に勝てないと、負けるのは目に見えていると汝はそう断言しているのだから)
【事実そうなるとしか私には思えないだけであって、馬鹿にしていると受け取っているのは貴方達の解釈でしょう?】
あぁ、確かにそうだ。だが、俺達がそう解釈している以上、アンタがどう思って言葉を発していようが関係ない、少なくとも俺と《救い》にとってはな。
だから、見せてやる……アンタが馬鹿にした借り物だらけの力って奴で、今この瞬間にも此処に近づいてきている敵を倒す事で――俺達に強さを。
【そこまで言うのなら、見届けてあげましょう。貴方達の強さと言う物を――】

<SIDE-Rave->
あぁ……めんどくさい。どうして俺がこんな事をしなければいけないのだ。
雑魚の一掃等、俺がしなくても他の連中に任せていれば十分に事足りるであろうに、何故俺まで借り出されねばならんのか?
屠った雑魚をどうしようが構わないと王は言っていたが、正直どうする気も起きない。雑魚は唯、雑魚として殺すだけだ――あぁ、否……女で有れば使い道が無い訳でもないのか?
が、今は別にそういう気分でもない。どちらかと言えば睡眠欲を満たす為に惰眠を貪りたい気分だ。
とは言え、王の命に背く事は出来ない――今の状態に唯一問題点があるとすればその一点だが、流石にそれに文句をつける気は無い。俺の欲は殆ど満たされているのだから。
否、違うか? 欲とは常に満たされない物で有るべきであり、満たされた欲は欲ではなくなる――そういう物ではないだろうか?
「……まぁ、何でも良いか」
小さく呟いて、考えるのを止める。今はただ自ら内に燻る睡眠欲を満たす為に、雑魚の掃除に勤しむとしよう。
そんな事を考えながら、一組の敵の反応へと近づいて――二人組みの敵の片方を見て、俺の中に睡眠欲を忘れさせる程の別の欲が生まれた。
完璧と言って良いかもしれない、俺の好みと言う意味で二人組みの片方――無論女の方だが――の容姿は完璧だった。
そんな相手を見つけたのなら、湧き上がってくる欲など一つしかない。先程まで燻っていた睡眠欲など完全に消え失せて、俺の内に渦巻く欲は新たに生まれたたった一つだけになる。
やりたい。
端的に言えば唯それだけだ。だが、俺をその気にさせるのに他の要素等要らない。俺は、俺の力は、俺の欲を満たす為に存在しているのだから。

<SIDE-Aren->
ある程度の距離まで近づいてきていた敵の反応が急激に加速した事に気付いた時には、遅かった。
《救い》の力で格納している聖具を展開する事すら間々ならず、敵の急激な加速を乗せた一撃目の拳は、俺の腹部に叩き込まれていた。
「なぁ兄さん、アンタそこに居る彼女のツレかい?」
俺に拳を叩き込んだ相手は俺の耳元でそう囁く。その問いに答える必要は無いと判断して「UltimateSwordOfMessiah」最初から全力で戦う為に、俺が振るえる最強の力の名を紡ぐ。
《永劫》に大見得を切ってこの様だった自分が許せない、だから最初から全開で行く。そもそも、《永劫》の言う様に相手側の方が圧倒的に上であるなら、こっちには全力で戦う以外に道は無い。
俺が紡ぐと同時に形成され始めた救世主の一振りの剣に視線を動かした敵は「デケェ剣背負ってんのにデケェ剣態々呼び出すのな?」馬鹿にした様に良いながら中空を蹴って俺から少し距離を取る。
「それはそうとお前さ、質問されたなら答えろよ?」
一気に詰められた距離が開いた事で、俺はようやく敵の全身をしっかりと捉える事が出来た。逆立った金色の髪に、褐色の肌、ボロ布の様なマントで身を包みその背には巨大な刃が背負われている。
「悪いな、生憎敵とお喋りする様な趣味は無いんだ」
「お喋りじゃねぇよ、問いに答えろってだけだ。当然だろう、この俺が聞いてるんだから?」
何だコイツは? 会話が通じないのか?
「どうして俺が敵に聞かれた事に態々答えなきゃいけないんだ? それが当然の事だ? 何を言ってるんだお前?」
「お前こそ何を言ってる? お前は俺の問いに答えるだけで良いんだよ、それ以外の意味なんて認めてねぇ。俺の世界にお前はそれだけの価値しかない」
本気で何を言ってるのか分からない。意味を認めていない? 自分の世界、コイツは何を言ってるんだ?
「もう良い――答えないのならお前に価値は無い、だからテメェは死んで消えろ。あの女は俺が貰っておいてやる。ん? あぁ、有ったな意味、俺の女の昔の男だ……と、それはまだ認めてないんだったか?」
褐色の男の口から流れ出す言葉について行けない――ついて行く必要も感じないが、一つだけ聞き逃せない言葉があった。

TheOverSSS――17/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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