EternalKnight
VS凶獣/ブリューナク
<SIDE-Jiltm->
(だけど、リゼツ達が居なければ詰んでいたけど運良く何とかなりそうだ――じゃあ面白く無いと思わないかい、ジルトム?)
確かに、面白くは無いな――けど仕方ないだろ? 相手の能力を考えりゃ俺達との相性は最悪だぜ? 新しい力が続く限りは負ける事はなさそうだが、逆に勝てる見込みだって零だろ?
(試してみないと分からないさ。そもそもリゼツの切札とやらで絶対に敵を倒せるという保障も無い訳んだ、万が一の場合を想定して僕等は僕等なりに勝利を掴む為の方法を考えた方が良いとは思わないかい?)
……そうだな、このまま只管時間を稼ぐのもなんだし、野郎の能力の攻略に挑んでやろうじゃねぇか。
(そうは言っても僕等の能力もどの程度持つのか分からないんだけどね――まぁ、リゼツの切札とやらの準備が終るまでに能力が切れたら拙いのは相変わらずだし、やれるだけの事をやろうじゃないか、相棒)
まぁ、こっちの制限時間に関してはほぼ気にしなくて良いだろ――今の所負荷らしい負荷は無い訳だし、今までの力の完全上位互換な能力って認識で良いんじゃないか?
(しっかりと試しても居ないのに過信は禁物だと何度言えば分かるんだい、君は――まぁ安定しているのは安定してる様だけどね)
まぁ、気には留めて置くさ。それでどうするよ、相棒? 何か考えがあるからあの能力の攻略に挑もうだなんて言い出したんだろ?
(いいや、考えなんて僕には無いよ。唯純粋に、今のままやられるのは癪だと思っただけさ)
それって結局打つ手が無いって事じゃ……
(だから、二人で何か策を考えようと言ってるんだ)
いや、今から考えるのかよ、ってかリゼツが準備とやらに入ってから結構経ってるし、もう直ぐ準備が整うんじゃないのか?
(それは僕等には分からない事だし、さっきも言った様にリゼツの攻撃で必ず戦いが終るという保障は無い。そうなった場合結局同じ様な状況になるんだから、遅いか早いかの違いでしかないさ)
分かったよ、やりゃ良いんだろ相棒? 出来る限り色々と手は打ってみるが、あんまり期待すんなよ?
《断罪》との念話の間も続いていた、互いにダメージを与えられない攻防に何かしらの変化を与える以外に俺には出来る事は無い訳だが、一体どうした物か。
そもそも此方は相手の攻撃を完全にかわせている訳じゃない、ギリギリで回避した為に掠ったり、ダメージをほぼ受けない様にうまく防いでいるだけだ。
対して此方の攻撃は敵に掠りもしていない。そういう能力なのだから仕方ないのかも知れないが、仕方ないで納得してしまえばいつまで経っても攻略など出来る筈が無い。
(しかし、相手からは触れられるのに此方からは触れられないなんて、随分とふざけた能力だね……コレはひょっとすると何か遠距離から、触れずに攻撃出来る手段を探した方が早いかも知れないね)
ちょっと待て、相手からは触れられるって事はもしかすると……だけど、それだと拳で殴るだけのこっちと爪で引き裂いてくる敵とじゃ、こっちの方が被害が大きくなるか?
(どうしたんだいジルトム? 何か思いついたのかい?)
一応、ダメージを与えられるかも知れない方法を一つ思いついたには思いついた事には思いついた。
実際上手く行くかも分からない上にどう転んでもこっちが損をする事になるから、出来れば試したくは無いって所だな。
(成程、それで、その方法っていうのはどんな物なんだい? それを聞いてからどうするか二人で決めれば良い)
いや、敵からはこっちに触れられるって事は接触が出来ない訳じゃない訳だろ? だったら、敵の攻撃してくる部分を迎撃すれば良いんじゃないかってだけだよ。
(それはつまり、攻撃を仕掛けてくる敵の攻撃に僕等の攻撃を重ねるって事で良いんだよね?)
あぁ、そうなる。仕掛けてくるのが相手からで、それが俺達に掠ってるって事は、向こうからの攻撃なら接触出来るって事になる筈だからな。
(攻撃の瞬間に此方も仕掛けるのは何度か試して効果が無い事は分かっていたけど、確かにそれならこっちの攻撃が届きそうな気はするね。だけど――)
――あぁ、敵の攻撃にこっちの攻撃を重ねれば、相手に攻撃が通った所で相手の攻撃とこっちの攻撃がぶつかり合う訳だからこっちも相応にダメージは貰う事になる。
こっちは拳で向こうは爪だからダメージ的には相手が有利で、挙句この方法でも駄目だった場合はダメージの貰い損になるっと、問題点を挙げるならそんな感じだが、どうする、相棒?
(手としては悪くないけど、こっちが無理をする必要があるならリゼツが切札とやらを使うまで待っても良いかもしれないね。それまで僕等の能力が持つ事が前提なのが少し気になるけどね)
なら、この方法は後に回すとして、今すぐ試せる様な他の手を考える必要が在る訳だけど――そろそろ何か思いつかないか相棒? 俺は一つ意見を出したんだし、今度はお前の番じゃねぇか?
(そう言われると困るね……悪いがもう少し考える時間をくれないか?)
そう言ってる間にリゼツの切札の準備が終る様な気がするんだが?
等と相棒と念で会話を交わしながらも俺達と進展の無い攻防を続けていた敵が「何だ、何なんだよテメェは! チョコマカ動きやがって、めんどくせぇんだよ!」遂に痺れを切らした様に叫びを上げる。
チョコマカと動いてめんどくさいのはお互い様だと思うが――まぁ、そんな事はどうでも良い。此方の目的は基本的にリゼツの切札の準備が整うまで待つ事だ。
まぁ、めんどくさいと自分で言う状況下で他の能力を使って状況を変化させようとしてこない以上、恐らく敵の能力はあれで頭打ちだろうから、今以上の脅威になる事はまず無いだろう。
リゼツの切札とやらが駄目なら俺が考えた方法を実行って感じで行くしかない、まぁあまり良い手ではなにのでそうならない事を願いたい所だが。

<SIDE-Rezeth->
意識を集中させ、イメージを思い描き、持てるエーテルの大半を限界まで右腕に収束させる。一撃で解き放てるエーテルの量には限界があるが、それを無視して銀色の鎧に包まれた右腕にエーテルを収束させる。
解き放てるエーテルは一定まででも、それを支える右腕にそれだけしか収束させれない訳ではない。
解き放つ砲身たる右腕にエーテルが収束していれば収束している程、解き放たれる一撃の速度は上がる。
解き放たれる一撃には打ち出された後に必要な術式を、敵を貫き倒す事に関する術式を詰め込んでいるから、打ち出す瞬間に関する術式は何も組み込んでいないのだ。
それを支えるのが、砲身となる右腕に収束した俺のほぼ全てに近いエーテルだ。能力の行使とエーテルで強化した肉体の行使は違う、故に一撃で解き放たれる限界とは関係が無い。
一撃で解き放てるエーテルに制限がある以上、後はそれをどの程度の効率で威力や命中精度等の術式全体のバランスをとった上で転化できるかが問題となる。
その中から射出する際に必要なアクションを削って、その分のエーテルを威力と命中精度に回したのが俺の切札だ。そして、削った射出のアクションは自らの肉体で補う。
エーテルの収束と、きわどいバランスでエーテルの量を調整する必要がある術式の展開、コレが俺が切札を切る為に長い集中を要する原因だ。
とは言え、意識の全てを術式の管理とエーテルの収束に回す事は流石に危険なので、触覚を除く五感からの情報は辛うじて認識出来る程度には意識を外にも向けている。
五感に頼っているのは、エーテルの流れだの何だのについては、元々聖具のせいで期待できないというのも大きいのだが。
その外に向いている視覚から、ジルトムが善戦しているのは何となく分かるが、周囲の状況の把握に割く意識の割合は極限まで少ない為、何となく分かる程度でしかない。
正直ここまで時間を稼いでもらえるとは思って居なかった、今の切札の完成度は、過去最高と自信を持って言える出来だ。
此処まで術式が安定しエーテルを収束させられれば、もう大した集中は必要ない。後は、標的をしっかりと定めで力の名を解き放つだけだ。
正直状況に応じて術式を少しづつ弄るのが面倒な上、消費するエーテル量も半端ではないので可能ならあまり使いたくない能力ではあるが、その性能は絶対だと信じている。
故に切札、俺の扱える最強の攻撃である事は疑いようが無い。後は狙いを定めてこの一撃を放つだけなのだが……
「あれがジルトムの新しい能力か……つーかすげぇな、あの化物相手に互角じゃねぇかよ」
しかし、お互いの攻撃が当たってないのはどういう事だ? 少なくとも速さが互角ってんならそんな事にはならないだろうし、どっちかが勝ってても普通はそんな事にはならない筈だ。
いや、よくみりゃあれは……
(回避の瞬間だけ敵が加速しているな。成程、近距離での戦いなら負けないってのはそういうからくりだった訳だ)
だな、攻撃を回避する瞬間だけ加速してる。自分に接触しようとしている物よりも速く動けるって所か? 能力としては?
「何だ、何なんだよテメェは! チョコマカ動きやがって、めんどくせぇんだよ!」
痺れを切らしたように化物がそんな風に言葉を吐く――が、ジルトムの目的は俺が切札の準備を終らせるまでの時間稼ぎだ。
なぁ《貫通》俺はどのくらい準備に時間を使ってた?
(俺もお前のサポートに回って術式組むの手伝ってたから細かい所は分からないが、大体三分程じゃねぇか?)
成程、三分もあんな互いの攻撃がマトモに当たらない攻防をしてりゃ叫びたくもなるかも知れないな。まぁ、これからこの一撃のマトになる敵の事等どうでも良いか――
そして俺は、時間を掛けて組み上げた術式の名を「《Brionac》」紡ぎ、それを形成し、銀の鎧に包まれた右腕でその槍を構える。
槍の形成と同時に、ジルトムとリゼツの視線が一斉に此方に向く――恐らくこの槍に込められたエーテルを察知したのだろう。だが、この槍が形成された時点でもう遅い。
大きく体を仰け反らせ、収束させたエーテルによってその性能を極限まで高められた右腕に握られたその槍を大きく振りかぶる。
視線の先に居る敵の姿を己が瞳に焼き付けて、握られた《神の槍》によって貫かれる敵の姿を強くイメージして「いっけぇぇェェエエエエええ!」叫びと共に全力でその槍を投擲した。
――神話に曰く、その槍は意志を持つかの様に敵の下へ飛び、敵を屠り、必ず勝利をもたらす五筋の雷光とされる――

<SIDE-Jiltm->
爆発的な量のエーテルを知覚した瞬間、思わずそちらに視線が動く。その先には、青白く輝く槍を握るリゼツの姿が見えて、俺達はそれと同時に勝利を確信した。
そして「いっけぇぇェェエエエエええ!」叫びと共にその槍はリゼツの腕から投擲される。
どれだけの力を込めたのか、凄まじい初速で投げられたその槍は――しかし次の瞬間には形を失って、五つの方向へと飛び散ってしまう。
……失敗か。糞、当たって欲しくねぇ方向に相棒の読みが当たったか。だが手が無い訳じゃねぇんだ、やるぞ相棒?
(……)
――おい、聞いてるか相棒?
(失敗?――否、コレは……)
相棒の言葉に飛び散った光の一つに視線と意識を向けて、気付く。飛び散ってはしまったが、その光は輝きを失っていない。否、それは一つの槍であった頃よりも強い光を放っている様にさえ見える。
だが、こんな状態の物が一つ二つ、或いは散った五つの全てが残って居た所で、先程の一つに集まった槍の一撃に届くとは思えない。
しかし、そんな思考が脳裏に廻った瞬間、光の欠片はより一層強い輝きを放って本来貫く筈だった敵の下へと雷光の様に向かっていく。
当然の様に、その光は俺が追っていた一つの光だけ出なく、散っていった五つ全てで――その五筋の雷光は、鋭角的な軌道を描きながら凄まじい速度で敵の下へと飛ぶ。
一度散り、そこから再び敵の下へと向かった所から、それらが第二の槍同様に追尾機能を有しているのは間違いなく、その速度は徐々に加速する第二の槍の先程敵が止めて見せた時点での速度よりも速い。
そして、投擲している以上はこちらから接触する攻撃ではないので敵があの光の槍の破片よりも早く動けるという事はありえない。
コレだけの条件が揃ったリゼツの切札の真っ先に敵の下へと辿り着いた雷光の破片を、敵は右手で掴み取った――様に見えた。
だがしかし、その直ぐ後に続くように押し寄せる残り四つの破片が、右肩、左胸、腹部、左の太腿と立て続けに敵の体を容赦なく貫く。
それでも敵の体は崩れ落ちる事無く立ったままで、しかし、敵の体を貫いた四つ……否、五つの雷光の槍は、止まる事無く鋭角的な軌道でその方向を転換し、再び敵の体を次々に穿つ。
最初の光の破片は、どうやら右の掌を貫通していたらしく、その右の掌には孔が穿たれている。
さらに、雷光の槍は何度も何度もその鋭角的な軌道での方向転換を繰り返し、遂に敵の体が崩れ落ちるまで、その追尾と言う名の蹂躙をやめる事は無かった。
孔だらけになった敵の体は崩れ落ちて、その時点でもう殆どエーテルの塵になっていた。
(なんと言うか……僕等の出る幕は無かったね、ジルトム。と言うか幾ら溜めに時間が掛かるからと言って、あれは反則じゃあないのか?)
同じ意見だが、結果的に俺達は生き残れたんだしそれで良いんじゃないのか? リゼツも相当量エーテルを消費した見たいで動けないみたいだし……
(だからってあの威力、と言うかあの性能は反則だと思わないかい? 五つに枝分かれして敵を追尾し続け、倒れるまで何度も貫き続けるだなんて、あれが反則でなくてなんだった言うんだい?)
いや、確かにうそ臭い性能だったけどだな、使用者の使用後の疲弊、溜めに必要な時間なんかを考えればあんなもんだろ? 言っても俺達の新しい力だって反則レベルに強い能力じゃねぇか?
(反則的な性能の遠距離への攻撃……反則的だからこそ、実に興味深い――そうは思わないかい、ジルトム?)
……あぁ、お前は最終的にそこに行き着く訳だ。まぁ、遠距離への攻撃手段が欲しいってのは俺も同意権だけど、それは俺等の問題であって、リゼツ達になんか意見求めてどうなるもんでもないだろ?
(そうかい? あれだけの性能の術式を組めるんだ、彼等と話せば僕等も遠距離への攻撃方法の一つぐらい身につけられるかもしれないじゃないか?)
もう良い、好きにしろ――ってかもう戦いは終ったんだしそろそろ能力解くぞ、相棒? 解除した後が結構怖いが、このままずっとこの状態で居る訳にも行かないだろ?
(あぁ、それはそうだね。しかし確かにあれだけの能力強化が見込めて此処までデメリットが無いと、解除後には相当な疲労感なんかが心配されるね――主に君だけだろうが)
「いいよなぁ、お前は気楽で……」等と愚痴に近い言葉を漏らしながら、俺は《Transformation》を解除して――その瞬間に俺は意識を失った。

<SIDE-Judgement->
ジルトム? おーい?
あぁ、駄目だね気を失ってるね、コレは……能力のしわ寄せが此処に来てるのか。まぁ、能力を解除するまではデメリットなしの能力って事になるだろうから良い能力ではあるんだろうけどね。
しかし、リゼツは動けそうになくてジルトムもダウンと言う事は僕等はもうこの戦いの間戦線に復帰するのは難しい、と言う所かな。
それはまぁ良いとして、リゼツのあの力の謎に迫りたいから少しでも早く話を聞きたいんだが、まぁジルトムがこのまま目を覚まさなきゃどうにもならないし、自分だけで何か案でも考えようか……

TheOverSSS――17/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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