EternalKnight
VS凶獣/二人で一人
<SIDE-Rezeth->
(器の願望――か。つー事はあの骨格から肉体を変質させるのは聖具の能力な訳だ。そして、器とか言ってる辺り契約者は聖具に飲まれたって所か?)
そんな事よりもだ、近接戦で絶対に最強ってのはどういう事だ? 否、逆に考えれば遠距離からの攻撃にはそこまで強くないって事か?
《Gungnir》には焦ったってのはそういう意味なのかもしれない。
(そんな事よりもリゼツ、お前あれの準備の為に集中したいんじゃなかったのか? さっきから集中なんぞ全く出来てないぞ?)
……いや、冷静に考えたら会話しながら集中するとか無理じゃね?
(まぁ、確かにそうだが)
「さて――お喋りは仕舞だ。お仲間が戻ってきたみたいだぜ? なぁおい、一人じゃなけりゃ、俺と戦えるんだろう?」
敵と言葉を交わし《貫通》と念話を行っている間に、俺の放った一撃でこの場から離れていたジルトムがようやく戻ってきた、のは良いんだが――
(事実二人で戦っても厳しい、と言うか難しいのだが、こうして舐められた態度を取られると腹が立つな)
同感だ――が、手が無いのも確かだ。アレが使えれば話は難しくは無いのだが、生憎集中できるだけの時間を稼げそうに無い。
自称近接戦最強を名乗る敵を相手を近接戦しか出来ないジルトムがするのははっきり言って無理だろう。
そもそも最強かどうかは兎も角として、俺達では歯が立たない事だけは間違いない。
勝機が有るとすれば、現状アレ以外には無い訳だが、そもそもあれを打つ為には相応の時間が必要となる――その為の時間が稼げるとは思えない。
必要なのは数分の時間なのだが、その数分さえ稼げそうに無い故にこんな状況に成っている。
「今度はだんまりかよ――それとも何か? 念話で作戦会議か? まぁ、どんな狡い手考え様が無駄だけどな?」
【おいリゼツ、さっきのアレ――もう少し他に手は無かったのかよ? 障壁の展開と傷口の治癒に結構な量のエーテルを使っちまったぞ?】
それと敵にやられてたのとどっちが良い、と言う話だと思うんだが。
【仕方ねーだろ、逆に聞きたいんだが、あのまま放っておいて良かったのかよ?】
【だから、他に手は無かったのかって言ってんだろ。まぁ、過ぎた事は仕方ないとして、問題はこれからの事だよ――あの化物、一体どうする?】
他に手ねぇ? 有ったらそうしてたのは間違いない訳だから、あんな手段を取ったという時点で察して欲しい。まぁ、それは兎も角として、ジルトムの言う様にこれからが問題だ。
【一応手が無い事も無いんだが、集中できる時間が無いとその手も試せないってのが俺の現状か――そっちは?】
【時間が稼げればチャンスはあるって事か――だったら……】
この反応は、時間を稼げる方法があるのか? 例えば、短時間限定での能力のブーストなんかが有れば、確かに短時間なら稼げるかも知れない。
そういう能力は大抵効果切れと同時に何かしらのデメリットがあるらしいが、短い時間でも時間を稼げるという意味ではこの状況下ならアリだ。
【どれぐらい時間を稼げるか、そもそも時間を稼げるのかどうかすら怪しいが、こっちには時間を稼げるかも知れない手がある】
【稼げるかも知れない? どういう事だよ? 自分の能力の話じゃないのか?】
或いは、敵の動きを一定時間封じる能力ならそういう言い方もおかしくは無い、あまりに敵と使用者に差が有る場合は効果が無いからだ。
【まだ一度も使った事が無い新技って奴だよ。あの化物に張り合える程の力が出せるのか、そもそもどれくらい持続させられるのか、何も分かってない力がある。理屈の上では強くなれる――そんな能力だ】
成程、そりゃ実戦で使うのは躊躇われるか――まぁ、今はそんな事言ってる場合じゃねぇってとこか?
【それしか手は無いっぽいが、良いのか? 使った後どうなるかも分かったもんじゃないないんだろう、その調子だと?】
【まぁ気にすんな――言った様に他に手が無いなら試すしかねぇ。このままじゃどっちもあの化物にやられてジ・エンドなんだ、試さない手はねぇよ】
そんな風に念話で話を纏める俺達を待っていた化物が痺れを切らして言葉を紡ぐ。
「なぁ、何を話し合ってるのか知らねぇがよ? 流石にもう待つ必要はねぇよな? 単に時間を稼がれてるみてぇで癪に障るんだよ」
時間を稼がれてるみたいでって、まだ一分も立っていない筈だが……いや、一分なら十分に待った方か。
だが、まぁ「別に待ってくれと頼んだ覚えは無いぜ?」俺達が念話をかわしている間待つという選択を選んだのはあの化物だ。
「成程、確かにそうだな――だったら、もう待つ必要はねぇって事だ?」
怒りに表情を歪めながら言葉を紡ぐ化物に「だから好きにしろよ、お前は俺等が許可しないと何も出来ねぇのか?」ジルトムはそんな風に言ってのける。
自分を優先して狙わせる為に挑発か――能力を使ってもあの化物と戦えるかどうか未知数な状態なのに良くやるな。
――っと、俺はアレの準備の為に集中しなきゃいけないんだ。余計な事を考えるのは辞めよう。
場所は――此処で良い、距離を取ると敵に不審がられる、今はジルトムを信じるしかない。

<SIDE-Jiltm->
「成程、確かにそうだな――だったら、もう待つ必要はねぇって事だ?」
挑発としか取れないリゼツの言葉に、化物は表情を歪めて言葉を返してくる。と、言うか集中する時間が必要だとか言っといて自分で挑発するか、普通?
(本人には挑発したという意識が無い可能性があるね――特に何の意図もなく自然にああいう言葉が口から出た。そう考えるのが自然なんじゃないかな)
何にしても、敵の標的をリゼツから此方に移さなければいけない。方法は簡単だが、余り気は進まない。それでもやるしかないのだが。
「だから好きにしろよ、お前は俺等が許可しないと何も出来ねぇのか?」
単純に、リゼツ以上に強烈な挑発を俺がすれば良い、そうする事で敵の標的は俺へと移り変わる筈だ。これであの能力が大して今と変わらない様なら、俺の末路は決まった様な物だろう。
(まぁ、能力が期待した程の物じゃなかった場合は僕等は揃って彼の糧だろうね? けどまぁ、それはこのままでも同じ事さ)
「よく言った――あぁそうだな、テメェ等を待ってやる必要もテメェ等の許可を得る必要も俺には全くもってねーよ。良かったなテメェら、今から速やかに殺して俺の糧にしてやるよ?」
……これは、俺だけに標的が移ってなくないか? どっちも殺る気満々じゃねぇか、アイツ?
(まぁ、考えてみればより強い挑発を行った所で、先程のリゼツの挑発が無かった事になる訳ではないしな)
だったら俺は何の為にあんな似合わない台詞を言ったんだろうか――まぁ、リゼツだけ余計に狙われるよりはマシって所か?
何にしても、敵は殺る気満々みたいだし、こっちもそろそろあれを使っておくべきだろう。
(あんまり気乗りはしないけど、まぁ仕方ない――僕等が足並みを揃えなきゃ使えない力なんだし、状況が状況だしね)
なら――行くぜ相棒?
(分かったよ、ジルトム)
「(《Transformation-Judgementform》)」
二人で紡ぐと同時に、今までに感じた事の無い感覚が全身を包む。コレが新しい力、俺と《断罪》二つの魂を一つの肉体で共有する事で、今までの力をあらゆる意味で凌駕する領域へと到達したのが分かる。
理屈の上では《Punishmentform》の力と《Sonicform》の速さを兼ね備えている形態へと変質する力だった筈なのだが、コレはそんなモノじゃない。今までの比ではない程、力も速さも強化されているのが分かる。
そして何よりも《断罪》と二人で肉体を共有しているこの感覚が、以前までの力とは根本的に違う。二人で一つの感覚を共有して、一つの情報を二人の感覚で処理する――そんな感覚だ。
(これは、想像していた物とは随分と違うけど――)
確かに想像していた物とは違うが――
「(コレなら行ける!)」
「何が行けるんだ? あぁ、違うか、逝けるってか? だがどっちにしても無理だな、テメェは俺の糧になるんだよ……これから、直ぐになァ!」
そんな叫びと共に、獣の様な姿をした敵が此方に一気に詰め寄ってくる。だけど、その程度の速度は今の俺達の前では――
「(遅い!)」
迫ってくる敵を凌駕する速度で、此方からも接近し、詰め寄った速度を凌駕する速度で握り締めた拳を放つ。
その拳を「っ――あぁ、お前がな?」此方よりもさらに速い速度で目の前の獣が回避し、そう紡ぐ。
敵の速度が強化された此方以上の物だったのは少し残念だが、コレなら時間を稼げる。リゼツが切札を撃つまでの時間を俺達で稼げる。故に、今はこの力で十分だ。
だがしかし、敵は此方の攻撃を回避すると同時に、再び今までと同じ速度――俺達よりも遅い速度まで落ちる。
無論、そんな速度で放たれる反撃に当たる俺達じゃない。
(瞬間的な加速か、或いは別の何かの能力かな? まぁ、どちらにしても基本的に此方が速いのなら時間稼ぎとしては十分だね。この状況下なら、攻撃に転化できない速度に意味は無い)
全くもって同感だ――このまま攻撃を回避し回避され続ける茶番を続けてればいつかリゼツが切札とやらでなんとかしてくれる筈だ。
(他人任せなのもどうかと思うけどね? そもそも《Judgementform》の持続時間がどの程度か分からない以上、あまり余裕で居る訳にはいかない)
じゃあ聞くけどな相棒、今の状態が辛かったりするか? 他のフォームと比べてキツイとかそんな風に感じるか? 少なくとも俺には他よりキツイとは思わないんだが?
寧ろ今までの状態が如何に不安定だったかって思うくらいだぜ? コレが、この力が、俺達の力のあるべき姿なんだと思うが?
(まぁ、それに関しては僕も同じ意見だけどね――それでも、油断大敵と言うだろう? 今感じている負荷の少なさや安定しているという感覚が、必ずとも正しいとは限らないとは思わないかい?)
そこまで言うのなら、気には留めておくさ――確かに急に能力が解除されたらやばいしな。
等と、相棒と念話をかわしながら敵の攻撃をかわしつつ、此方からの反撃を試みるが、互いに攻撃が当る事無く時間が流れていく。
と、言うか――こうして念話する速度も上がってる、よな?
(そうだね、今の状態は言うなれば互いに契約者であり聖具でもある様な状態だから、それも関係してるのかもしれない。実に興味深いね、この能力についてはじっくり調べたい所だ)
興味持つのは構わないが、戦いが終るまではあんまり余計な事を考えるのはやめとこうぜ、相棒。いつ能力が解除されて形勢が逆転してもおかしくないって俺の不安を煽ったのはお前だぜ?
(まぁ、それはそうだけどね――二つの魂が一つの肉体を同時に制御しているにも関わらず、肉体側はより良い判断を下した方の思考を反映して動くというのは一体どういう理屈なのか、気にならないのかい?)
そりゃ気にはなるけど、そういう謎を解明するのはお前の仕事だろ? 俺なんかには何をどう考えても結論なんて出せそうにないし、考えるだけ無駄な事は考えない主義なんだよ。
それにしても、当たらないな、こっちの攻撃。向こうの攻撃はこっちに掠るなり、回避が間に合わない場合は防御するなりで最低限にダメージ抑えてるが、こっちの攻撃は掠りもしない。
どんなタイミングで仕掛けようが、絶対にそれを回避できる速度まで加速してやがるぞ、アイツ。
(そうなると、敵の能力は絶対に敵の攻撃を回避できる速度にまで加速する、とかそんな所かな?)
最初のリゼツの《Gungnir》を止めていたのは? 絶対に回避できるなら態々防ぐ必要なんて無いだろ?
確かに追尾され続けるのは良い気はしないだろうが、その能力だと付け狙い続けてくる槍が加速する分自分は加速できる訳だから掴み取ってへし折ったのは変じゃないか?
(ふむ、それにその場合リゼツの切札とやらでも手に負えない訳だから、そうであってもらっては困るね。だったら、敵に接触されない速度にまで加速する――なんてのならどうだい?)
接触されないって事は遠距離からの攻撃には対処出来ない訳か。それでリゼツの槍は手に負えない速度になる前に止めた、と。確かにそれなら辻褄は合うな。
(ふむ、しかし接触されない速度まで加速する能力か……聖具のクラスはSSSじゃないから、そんな反即じみた能力になるとは思えないし、そうなると魔獣としての能力、とやらになるのかな、アレは?)
って事はあんな化物つーか、獣じみた状態に変化させたのは聖具の能力か。魔獣としての能力ってのは一人一種類しか無いって話だし。
(だろうね。まぁ何にしても今の推測が正しければ此方の攻撃は相手には絶対に当たらない、と言う事になる訳だ。助かったねジルトム、リゼツが居なきゃ詰んでたよ、僕等)
まぁ、俺等にはこの体で戦う以外方法が無いからな……言うなれば相性最悪の相手だったって訳だ。

TheOverSSS――17/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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