EternalKnight
VS凶獣/第二の槍
<SIDE-Velga->
「さてお待ちかねの開戦だ、下僕共――周りの雑魚の足止めは任せる。俺と最高位達との戦いに邪魔が入らない様にしろ……あぁ無論、雑魚共に関しては殺しても構わん、好きにしろ」
王様のその言葉に、同胞達が飛び出していく。が、俺と同じ様に他にも数人、王の下に残っている者達も居る。俺以外は全員王下に数えられるメンバーで、二位、三位、七位の三人だ。
これまで関わる事が無かった故にそれぞれどういう思惑でこの場に残ったのかは謎だが、少なくとも俺が残っている理由は一つだった。
此処まで移動するのとゲートを開くのに必要だったエーテルの請求、少なくともそれが無ければ他の同胞達と同じ様に俺も飛び出していただろう。
――言われた通り、燃費が悪いながらも可能な限りスピードを出してゲートを作る為に一人でここまで移動して来たのだ、最低限使った分ぐらいは回収しておきたい。
今の状態ではエーテルの残量が心許無いのだ。雑魚であれば今のままでも十分だろうが、相手によっては厳しい戦いを強いられかねない。
こうして出遅れている以上、相手が相応に強い者でも文句は言えない――そういう意味でも王様からエーテルを貰っておきたい。もっとも、誰が相手でも厳しいだけで俺が勝つ事は揺ぎ無いのだが。
「足止めをして来いと言ったのが聞こえなかったのか? レイビー、ケビン、アルカス、ヴェルガ? 貴様等何故動こうとしない?」
そんな王様の言葉に二位が「僕等が全員動けば王は一人になってしまいます――せめて僕だけでも護衛に残らせてください」そんな風に返す。
何を言っているんだこいつは?王様は行けと言った、ならばその命令に従っていれば良いだけだろう? そもそも最高位を二つ持つ王様なら、一人になった所で何一つ問題等ないのだ。
「レイビー、俺は行けと言ったぞ? 貴様等は俺の命を聞いているだけで良いのだから下らん事等考えるな。まさか、他の連中もそんなつまらん事を言う気ではないだろうな?」
苛立たしげに王様はそんな風に言葉を紡ぐ。故に、俺は自分の目的だけ告げて速やかに敵の下に向かおうと思った。
「そんな訳ねぇだろ王様? つーか忘れてもらっちゃ困るぜ? ゲートを開く役として宮殿目指して一人で燃費悪いのも気にせず全速力で移動したんだ、報酬としてエーテルをくれるって約束だろう?」
王様は「あぁ、そんな事を言ったな、確か――」と、俺の言葉に応えながら、右の掌の上にエーテルを高密度に収束させエーテルの結晶を作り上げる。
数秒で作り上げたそれを手の中で転がしながら「ならばその報酬とやら、これで良いのか、ヴェルガ?」王様はそんな風に問うてくる。
その問いに頷いて応えると、王様はその右手の中あったエーテルの結晶を俺の方へと投げて渡しながら「ここまでご苦労だったな、ヴェルガ――引き続き雑魚の足止めを任せて良いな?」そう言って来た。
無論、言われなくてそのつもりで居た俺は、飛んできた結晶を掴んでから「王様のご命令とあらば」恭しく頭を下げて王様に背を向けて敵が居る方へと視線を向ける。
王様と残った王下三人との話に興味は無いし、目的も果した故に、俺が此処に留まる理由は何も無い。
故に俺は、まだ誰とも戦っていない敵の反応の中から、一番此処から近い位置に居る敵に目をつけて、その場所へと踏み出した。

<SIDE-Jiltm->
敵の反応がかなりの速度で此方に近づいてきている――まぁ、まず俺達の相手となる魔獣だろう。
(随分と余裕だね相棒? はっきり言って近づいてきている敵の速度は相当な脅威だと思うよ?)
とは言え、エーテルの量はそこまででもないだろ? まぁ、俺達よりは多いかもしれないが、俺達とリゼツのを合わせればまだこっちが勝ってるぐらいな訳だし、大丈夫だろ?
(その態度――君はもしかして今回の戦いでアレを試すつもりかい?)
俺達の弱点を克服する上に今までよりも格段に強く慣れそうなんだし、使うべきなんじゃないのか?
まだエーテルの反応とこっちに近づいてくる速度しか分からないからなんとも言えないけど、たぶん強敵だぜ、相手?
(初めて使う能力を実戦に持ち込むというのは好きじゃない……性能を十分に知らずに戦うのは危険だよ、ジルトム。自らの力量を把握しておく事は大事な事だ。自らを量りに敵の力を知るという意味でもね?)
なら、先ずは様子見で行くか? 速度的にお前に任せる事になるけど、行けるか《断罪》?
(どうだろうね、少し厳しいかもしれないが――まぁ、君がやるよりはマシと言う所かな?)
そう思うなら新しい能力を試しても良いんじゃないか? まだ試した事がないからなんとも言えないが、理屈の上じゃアレが一番良いと思うんだが?
(理屈の上では、だろう? まだ実際に一度も試していない以上、どうなるか分からない力は不用意に使うべきじゃない)
今までの理屈や常識を打ち破る画期的な力だが、理屈や常識を打ち破っている以上、何かしらの不具合の可能性を考慮に入れるべきだ――ってか?
(そうさ、君にも分かってるんじゃないか。だったらなんで新しい力を使いたがるんだい?)
そりゃ、今のままじゃ厳しいと俺が思ったからだよ、相棒。速さ以外は現状分からないが、その速さは少なくともお前に任せても厳しいって域だ。
厳しい戦いを強いられて、どうしようもなくなってから新しい力を使おうって話になるなら、多少の危険性があっても試しておいて悪くは無い――と、俺は思う訳なんだが。
(成程、だったらこうしよう。どうしようも無くなる前――そうだな、完全に僕が今のままでは無理だと判断したら、その時点で新しい力を試そうじゃないか)
分かった。なら行くぜ《断罪》?「《TransformationSonicform》」そう力の名を紡ぐと同時に、全身の感覚が消える。肉体の制御権を全て相棒へ明け渡した証拠だ。
明確に言うのなら本来あるべき役割の入れ替わりというべきだろう、俺は今から相棒を普段相棒がしてくれている様に支援する役目に付くのだから。

<SIDE-Rezeth->
協力して敵と戦う事になったジルトムが「《TransformationSonicform》」言霊を紡いで全身を碧の鎧で包む――と、言う事は敵が近づいてきたという事なのだろう。
俺の方じゃ全然反応は掴めないが――まぁ俺の探知能力は無いも同然だから、ジルトムが戦う準備を始めたと言う事はそういう事なのだろう。
いや、今は鎧が碧だからジルトムの聖具の《断罪》とか言う野郎なのか――まぁ、どちらでも構わないのだが。
協力して戦う事になったとは言え、別に連携してどうこうしようと言う話はしていない。お互いが全力で、互いの邪魔にならない様に戦う、俺達の取り決めはその程度だ。
故に、敵が来た際に迎え撃てる様に準備をしておく必要がある。もっとも、発動に集中を要したり、時間が掛かるのはアレ意外には無いので、もう直ぐ敵が現れると意識して気を張っておく程度なのだが。
流石に最初から切札を使う訳にも行かない――エーテルの消耗が激しい能力である以上、使い所はしっかりと見極めないといけない。
(なら一発目はどうするんだ? いつも通り《Trishula》からか?)
そのつもりだ。《Gungnir》も結構なエーテルを使うし、最初は多少命中率に難があっても《Trishula》からだろ。
(《Trishula》に難があると言うよりは他の二つが優秀すぎると言うだけだろう、命中率に関して言えば?)
だな――とか言ってる間に敵が見えてきたぜ《貫通》?
(《貫通》ではなく《神槍》だ、いい加減覚えろ。まぁ、言っても無駄な事は分かっているが……)
だったら諦めろ――つーか、相手……速くねぇか? こりゃ初弾から《Gungnir》の方が良いな。って事で《貫通》サポート頼む。
(成程、《断罪》の契約者が初めから《断罪》に任せたのはそういう事か……まぁ任せろ、お前は敵に手を翳して言霊を紡ぐだけで良い)
《貫通》とそんなやり取りをしながら、真っ直ぐに此方に向かってくる敵に向けて右手を伸ばして掌を翳し、その力を解き放つ為の言霊を紡ぐ。
「《Gungnir》」
紡ぐと同時に、翳した右手にエーテルが収束し、次の瞬間にはそれが必中の理を持つ第二の槍となって戦いの幕を開く初撃として解き放たれる。
放たれた第二の槍は、此方に迫ってくる敵を目掛けて加速する――正面から飛んでくるその一撃を、向かってくる敵はそれを当然の様に回避する。
《Gungnir》の速度が遅かった訳ではない。寧ろその速度は此方に迫ってきていた敵よりも遥かに速かった。
至近からならまた結果は変わっただろうが、少なくとも今の距離では射出から敵の元に届くまでの時間があれば回避するのはそう難しい話ではない。
そこそこ以上の速度と迫ってくる槍を認識出来る程度の動体視力かエーテル探知能力があれば事前に動く事で第一波を交わす事は不可能では無いからだ。
だが、今のは少し違う――敵は事前に回避動作に移るのではなく、直前まで引き付けてから回避してみせたのだ。それが何を意味するのかは言うまでもない。
接近してきていた速度も大概速いが、敵はそれ以上の速度まで引き出す事が出来るという事だ。だが、幾ら速かろうが《Gungnir》の前ではその速度は意味を成さない――アレは必中の槍なのだから。
敵に正面から回避された第二の槍は、敵の背後まで抜けると同時に鋭角的な軌道を描いてその矛先を反転させ、回避した敵を貫こうと今度は背中から、今まで以上の速度で敵向かって突き進む。
その第二波をも、敵は難なく回避する。背後から槍に追われる様な状態であったにも拘らず、振り向く事もせず、先程同様直前まで引き付けて回避する事で必中の槍を回避する。
だがしかし、かわしているだけではいつか第二の槍の餌食になるのは間違いない。敵に命中するまで鋭角的な軌道で追尾を続け、徐々に加速していくと言う《Gungnir》の特性上、回避は時間稼ぎにしかならない。
背後からの第二波をかわされた後も、当然の如く鋭角的な軌道で持って反転し、その矛先で三度敵の姿を捉えて更に加速しながら今一度正面から敵に向かって突き進む。
その第三波を、敵はまたも直前まで引き付けてから回避して、挙句すれ違い様に右手で第二の槍を掴み取る事で《Gungnir》の動きを止める。
無論、矛先で貫いていない以上当たったという認識が出来ない第二の槍は、掴まれたその腕から脱そうと敵の掌の中で暴れるが、開放される前に残った左腕で掴まれて、へし折られる。
それによって必中であった筈の第二の槍は、その力を失い金色の霧となって散る。
(幾らなんでも出鱈目だろ、あの野郎!《Gungnir》をあんな方法で止めるなんてありかよ!)
《貫通》の意見には同意するが、今はそれどころではない。敵と此方の距離はもう相当に縮まっている。敵の速度を考えれば近接戦に入るまで残り十秒も無い。
流石にそれだけの時間では《Gungnir》以上の性能を誇る現状最後にして最強の槍であるアレの準備時間としては心許無い。
ってことは、近接戦しながら意識を集中させてあれの準備をするしかないって事か……流石にあの速度じゃジルトムと協力しても厳しそうだが、それ以外に道がないならやるしかない。
そんな訳で準備頼むぜ《貫通》。敵は相当な化物だが、流石にアレまでは防いだりしねぇだろ?
(だと良いが……あんな出鱈目な野郎だ、アレを打てた所で絶対に勝てると言う保障は無いぞ?)
それでも、《Gungnir》が防がれた以上、俺等にはもうあれしか残ってねぇんだやるっきゃねぇよ。つーかこんな事なら一発目からアレを使ってりゃ良かったって話だよなぁ……真面目に。
(後から悔いるから後悔と言うのだ、今更言っても遅い)
そりゃそうだ――等と念で話している間に、敵はさらに此方との距離を詰めてくる。
此処に至るまで飛び道具等を使っていない所から、敵にはその類が無い、或いは特殊な使用条件等があると言う事だけは分かる――が、切札として残しているという可能性も存在するので過信は出来ない。
それでも、メインで行うのは近接戦だという事は分かる――が、そのくせ敵の手元には武器は愚か何も握られていない。
素手での近接格闘か、或いは暗器か、単に武器を実体化させていないだけか――何にしても、敵の情報が少なすぎる。
思考を巡らせている間にもさらに距離は縮まっていく。そして、敵は此方に迫りながら、呟く様に「《FrameworkTheBeast》」言霊を紡いで、自らの戦いのスタイルを明かした。

TheOverSSS――17/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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あきゅろす。
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