EternalKnight
VS飢餓/突然の離脱
<SIDE-Stan->
「さてお待ちかねの開戦だ、下僕共――周りの雑魚の足止めは任せる。俺と最高位達との戦いに邪魔が入らない様にしろ……あぁ無論、雑魚共に関しては殺しても構わん、好きにしろ」
待って待って待ち続けたその時は、忌むべき、そして逆らう事を許されぬ魔王のその一言によって訪れた。
その言葉と同時に、堪らずに体が動き出す。永遠者のエーテルで満たされたい――その一心で、俺は回りに目もくれずに獲物に向かって動き出した。
エーテルを、エーテルを、エーテルを。俺が新生出切る程のエーテルを、唯々切望し、強く希う。
人でなくなってしまった俺が、人に戻る為には、きっとこの体を組み上げている汚らわしいエーテルを全て入れ替えなければいけない。
俺の聖具になら《飢餓》の力があれば、それも不可能では無い。呪われたエーテル等いらない、欲しいのは俺が永遠者に戻る為の穢れ無きエーテルだけだ。
今までどれ程のエーテルを奪い、またこの体を構成する汚れを吐き出して来たかはもう分からない。それでも、この体が呪われている以上、全てを入れ替え終わっていないのだ。
故にエーテルを、穢れの無いエーテルを、永遠者の肉体を構成するエーテルを、唯々切望し、強く希う。
強い相手と戦う必要等無いが、より多くのエーテルを手に入れたい。故に、俺の標的は数が多く、個々の反応が強くない相手と言うのが理想だ。
そして、その条件に合う相手を――見つける。
本音で言えばもう少し反応が弱く、数が多い方が良いのだが――見たところあの組以上に俺の求める条件に当てはまる敵は存在しない。ならば、望む最善を選ぶのは当然の事だろう。

<SIDE-Fein->
敵の反応が一つ、此方に近づいてくる。反応としてはかなり大きいが、SSSに届く程でもない。かなりの量のエーテルを溜め込んだSSと言った所だろうか?
此方の戦力がSクラスの私と、同じくSクラスのサナトルヴィア、Aクラスのリルの三人である事と、相手が魔獣としての補正も受けている事を考えるとかなり厳しい。
厳しい――が、勝てないという訳でも無さそうだ。エーテルの総量で言えば五分かやや此方が多い程度なのだから、数を利用し、上手く連携できれば勝機はある筈だ。
実際の所は敵と此方との能力の相性次第なのだろうが。とは言え、時間さえ稼げれば相性云々の問題は関係なくなる。《法典》とはそういう聖具なのだ。
(確かに俺はそういう聖具だけど、出来れば無理はして欲しくないな。要するにフェイルは使うなって事だぞ、フェイン? そもそも俺には何でお前があんなのをストレイジしてるのかがわからんのだが?)
何でって、今回みたいに門の外で戦う場合には必要だろ?
リミットが使えるのは門の中だけだし、いざと言う時にエーテルが足りないんじゃ困るじゃないか?それでなくても君の運用には大量のエーテルが必要なんだし。
(フェイルを使った時点で、お前的には最悪通り越してる気がするんだが?)
そんな訳無いだろ、古い分を削る分には問題ないよ。そもそも新しい分だって、削った所で別に死ぬ訳じゃないさ。
(いや、確かに死ぬ訳じゃねーけどもだな……否、その話はもういいわ。つーか、普通は聖具側が使用を促して、契約者側が使い渋るもんだろ、フェイルの能力は)
何を持って普通と言うのかは知らないけど、その話はもう終わりなんじゃないのか、レア?
(ちょっとした愚痴みたいなもんだから、気にすんな――結局は最悪の状況ってのにならなきゃ良い訳だしな。ちと厳しいだろうが、三人いればなんとかなるだろ)
リルの能力があれば低威力な攻撃は事実上全て無効化可能だし、無効化出来ない攻撃はサナトルヴィアの《反転》で対処出来る。
《反転》の能力に関しては少々疑問が残る所もあるが、契約者であるサナトルヴィアが出来ると言っているのだから信じる他無い。
後は、二人に時間を稼いで貰い、敵にもっとも効果的にダメージを与える方法を私が組み上げれば良い。元々そういうプランの元、私達はチームで敵を迎え撃つ事になっている。
もっとも、それは机上の空論であり、必ずしもその通り事が進むとは思っていない。あくまで最善の場合はそうすると言うだけで、状況は幾らでも悪くなりうる。故に、最悪を想定しておく必要があるのだ。
(そろそろ視認出来る距離まで相手が来てるぞ、フェイン?)
そんなレアの念に、意識を思考の泉から引き上げて、視線を敵の反応のする方へと向ける。その先に見えたのは、両の手に聖具と思わしき巨大な鉤爪を着けた男の姿だった。

<SIDE-Rel->
巨大な爪を両手に身に着けた男の人が見える――あれが、僕達が戦う敵……で、良いんだよね?
(エーテルの保持量が相当な量じゃない……と、言うか何よアレ? 私達が関わって良いレベルの相手じゃないでしょ、明らかに?)
でもいーたんと僕達とサナトさんの三人で戦うって言ってたよ?
(三人ってねぇ? 人数が三倍だって言ってもエーテルの総量だと五分ぐらいでしょ、見た感じ? 流石に厳しいんじゃないの?)
そんなの僕に言われても……いーたんが三人でやるって言ってるんだから大丈夫なんじゃないの?
(それは相手を知覚する前の話でしょ? 正直私はあんなふざけた量のエーテル持ってる化物とは戦いたくは無いわよ? まぁ、貴女がどうしても戦うと言うって言うなら私も最善を尽くすけど……)
いーたんが戦うって言うのなら私も戦うし、その逆に無理だって言うのなら僕も逃げるよ。いーたんの話は長かったり難しかったりするけど、今まで間違ってた事って無かったし。
(確かに《法典》の契約者が貴女に間違った事を吹き込んだ事は無かったわね、そう言えば――でも意外ね、貴女がそういう事を律儀に覚えてるなんて?)
ふえ? 別にいーたんの話を全部覚えてる訳じゃなくて、嘘は言われてないって覚えてるだけだよ?
(まぁ、貴女らしいといえば貴女らしいけど、少しは内容を覚えようとしなさいよ……なんだか《法典》の契約者が不憫に思えてくるから)
でも、いーたん難しい事たくさん言うし、僕にはちょっと覚えきれないんだもん。一生懸命お話は聞いてるつもりなんだけど、結局分からなかったり忘れちゃったりするし……
(でもね、リル? 《法典》の契約者が貴女に嘘を付いていないとしてもだからって彼の言う事が常に正しい事にはならないと思わない?)
うゆ? なんでそうなるの? 嘘を言わないなら全部正しい事なんじゃないの?
(私はなんで今まで貴女とちゃんと話をして来なかったのかしらねぇ……頭のちょっと弱い契約者だとは思ってたけど、此処までって分かってればもう少し話し相手になって色々教えておくべきだったわ)
ぽよ? どったの《純粋》?
(嘘を言わないって言うのは正しい事しか言わないって言うのとは少し違うのよ。結果の出ていない事象は確定していない……だから、正しいかどうかなんて確認のしようが無い――この理屈は分かる?)
うーんっと、えっと……うーん、うん――分かった、よ?
(……何が分かったの?)
ふぇ!? 何がって、えっと、その……いーたんの言ってる事は、間違ってるって事――かな?
(《法典》の契約者があのとんでもないエーテル保持量の敵を見てどう思ったかは知らないし、一概に間違ってると否定はしないけど、まぁ今はその考えでいいわ)
うゆ? いーたんの言う事は間違ってないの?
(いや、だからそれは――)
そうだ!「ねぇ、いーたん? いーたんって間違った事言ってるの?」僕が考えるより、いーたんに聞けば直ぐに分かるよね? いーたんが今まで嘘付いた事ってなかったし。
(駄目だわこの子、早く何とかしてあげなきゃ――敵はどんどん距離詰めて来てるのにこの調子って、最悪全滅するんじゃないかしら、私達……)
「は?……ぇ? ちょっと待ってリル、どうして僕が間違った事を言ってるだなんて思ったんだい?」
「どうしてって《純粋》がいーたんが嘘を僕に教えるって……」
(私、どうしてこの子を契約者に選んじゃったんだろう……いや、悪い子じゃないのは知ってるのよ? ちょっとおつむが足りてないってだけで)
「私としてはリルに間違った事を言った事は無かったと思うんだけど――いや……《純粋》が何を君に言ったのかは大体分かった」
「ホントに!? 僕なんて《純粋》が難しい事ばーっかり言うから何が言いたいのか全然分かんなかったのに」
(私、難しい事なんて言ったかしら?)
「三人じゃ今からこっちに向かってきている敵と戦うには難しいと言ってるんだね《純粋》は? あぁ、間違ってるなら間違ってるで訂正してくれれば良い、あくまで私の推察だからね」
(どうしてこういう察しが良いと言うか、私を理解してくれる人が契約者じゃないんだろうか、私は……)
ねー《純粋》? いーたんの言ってる通りで間違いないの?
(……間違ってないわ。けど、そうね――折角だから何か策はあるのか聞いてみてくれる?)
「いーたんいーたん《純粋》が何か策はあるのって聞いてるよ?」
「策も何も、当初の予定通り戦うだけだよ、元々格上に数で挑むつもりだった訳だしね――状況によっては色々と予定を変更する事になるだろうけどね」
――って、言ってるよ?
(当初の予定通り、ね……まぁ、保持してるエーテル量がとんでもないだけで必ずしも化物じみた能力だって決まった訳でもないんだし、普通に考えればそうなるわよね)
「君もそれで良いね、サナトルヴィア? 異論があるなら――」
「悪いが――俺はあんな化物じみたエーテル量の敵とは戦わない」
(え?)「は?」
サナトさんの言葉に《純粋》といーたんは同時に理解できないと言った様な声を上げた。
「あんなのと戦って勝てる訳がないだろう? 悪いが俺は降りさせて貰う。お前等の頭が言ってたよな、逃げる奴は止めないって?」
「ちょっと待ってくれサナトルヴィア。君がいれば勝機は十分に――」
サナトさんのそんな言葉に、珍しく焦った様な表情でいーたんは言葉を続けようとする。
「否、そもそも君はそんな事を言い出す様な人じゃなかっただろう?」
「……出会って間もない奴が、分かった風な事を言うなよ。そもそも逃げるなら自由にしろってのはお前等を率いる男の言葉だろうが、その通りにして何が悪い?――兎も角、俺は降りさせて貰うぜ」
そう言って、サナトさんは私達に背を向ける。
(エーテル量で言えば三人居て五分ぐらいだったのに、そこから一人欠けるなんて事になったら勝負にならないじゃない――ちょっとリル、いいから貴女も《法典》の契約者と一緒に彼を止めなさい)
けど、サナトさんは間違った事は言ってないんじゃないの?
(リル? 貴女状況を理解出来てる? 此処で《反転》の契約者が居なくなれば、私達が敵に勝てる可能性がどれだけ低くなるか分かってるの?)
ふぇ? 難しい事言われても僕には分からないよ?
「……分かった。それが君の選択であるなら、確かに私に止める権利はない。けど、君が此処から去るのなら私達はそれに協力出来ない。私達には私達の戦いがあるからね」
「それは脅しのつもりか? だとしたら無意味だな《反転》の力を持ってすれば此処から離れる等造作も無い」
でも《純粋》? いーたんはサナトさんを止めるつもりは無いみたいだよ?
(さっきのやり取りの何処を聞いて止めるつもりは無いって言ってるのよ、貴女は……)
「別に、脅しではなく事実を言ったまでだよ。無理に手伝わせても仕方ないだろうしね。戦力が一人欠けるのは厳しいけど、どうにもならない訳じゃない――筈だ。敵の能力次第ではあるけどね」
「そうか、では遠慮なく立ち去らせてもらおう――俺の分まで頑張ってくれ……とは俺が言えた立場じゃないか?」
そういい残して、サナトさんは私達から離れる様に何処かへ行ってしまった。
(え? 何? まさか《法典》の契約者も今の本気で言ってた訳? そもそもどうにもならない訳じゃないって、あり得ないでしょ、どうにかなる訳無いじゃない)
いーたんが大丈夫だって言ってるんだから大丈夫なんだよ《純粋》いーたんは嘘言わないもん。
(その話もちゃんと結論出てなかったんじゃなかったかしら――あぁ、もういい、分かったから、そこまで彼を信用してるんなら貴女の思う様にやりなさい。少なくともそれが最善の手になるだろうしね)
《純粋》のそんな声を聞いている間に、敵さんは、表情を読取れる程度の距離にまで近づいてきていた。

TheOverSSS――17/28
UltimateSeven――5/7
PerfectSix――4/6
KeyToSeven――3/7
――to be continued.

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