EternalKnight
チーム
<SIDE-Leon->
やっぱり本人が言うと説得力が違うな。これでたぶんみんな納得してくれるだろう。コレだけの決意をしてるネロの行動を止めようとする奴は居ないだろう。
「そういう訳で、俺とグレンとネロの三人でチームって事で異論は無いか? 戦力云々に関して言えば、ネロにも期待して無い訳じゃないが《呪詛》の元に辿り着くまでは俺とグレンの二人が居る次点でどうとでもなる――筈だ」
とは言え《創世》を得たグレン一人では手に追えず、準最高位の中でも最強レベルの実力者だったゼノンと相打っている魔獣が居る事を考えると、一概に絶対に安全だ、とは言い切れないのだが。
まぁ、実際は足手まといなんかじゃなく最悪の状況に陥った際に切る最後の切札な訳だが……とは言え、切らないで済むならそれに越した事は無い札ではある。
《必滅》を開放しなければいけない状況が来るとすれば……否、そんな状況下で《必滅》の封印を解けば、間違いなく最高位同士の共鳴によって《真理》の封印が解けてしまう。
《真理》の封印が解けた所で《呪詛》の手に《真理》が渡る訳ではないので《呪詛》や奴が率いる魔獣達との戦いには特に影響は及ぼさないだろう。だがしかし、あの聖具は危険すぎるのだ。
何が全ての真理を司る力だ。そんな物と契約してそれを扱える者など何処にも居はしないのだ。与えられる真理の大半を拒みながら、その力を制御していた筈のゲーティですら、その魂を奴に取り込まれたのだから。
アレは契約者を己の器としか見ていない、その上で契約者を壊す事に特化した特性を持つ、何処までも最悪の聖具だ。あんな物にこれ以上多くの命を弄ばさせる訳には行かない。
それでも、あれを破壊する訳にも行かない。あんな物でもこの広域次元世界を支える柱なのだ……封じておくしかあれの被害を止める方法は無い。
「良いんじゃない? レオンの言う様に最高位が二人も居るんだから問題は無いだろうし、戦力が固まる云々に関しても言う様に親玉を相手にするんだから寧ろ固めた方が良いでしょ? 考えなしって訳じゃないみたいだし、リーダーの決定に従わない理由が無いわ」
別にレオンがリーダーじゃなくても私は賛成だけど、と付け加えながらフィリアが言う。
「そうだな、ネロが嫌がってるって言うのなら兎も角、寧ろ望んでいるってんなら問題は無いだろ? 寧ろレオンが拒んだとしてもネロが望むのなら連れて行ってやれって言ってやりたかったぐらいだ」
フィリアに続き、キョウヤも俺の案に賛成する旨を口にする。首領である俺とゼノン亡き今残る二人の幹部であるフィリアとキョウヤが認めている以上、この案が覆る事はまず無い。
もう一人の最高位であり、先ほどネロと共に戦う事に疑問を投げかけてきたグレンが納得してくれれば、何の問題も無くなるのだが――
「分かりました。そこまで言うんでしたら、文字通り命を掛けてるのなら、認めるしか無いじゃないですか」
「ありがとう、グレン。――で、他に反対意見がある奴は居るか?」
円形に並んで集まっている守護者のメンバーと協力者達を見渡すが、反対の声は他には出てこない。……これで、少なくとも対《呪詛》の準備は整った――か? 否、まだ二つやっておくべき事があるな。
「それでだ、グレン。俺には敬語は別に使わなくても良い。チームを組むって事は背中を預けるって事だ、そんな相手に敬語を使われるってのはなんだかむず痒い。どうしても砕けた言葉を使うのに抵抗があるなら別に構わないが、出来れば敬語は無しで頼む」
「分かりました。否――分かった」
よし、これで後は一つで準備は整う……が、もう一つに関してはこの話し合いが終わってからで良い。と、言うか今は少しタイミングが悪い。
「あぁ、それで良い。けど無理はして無いか? さっきも言ったが抵抗があるなら敬語のままでも良いんだぞ、無理強いするつもりは無いし」
見た感じ、そういう事には拘らない様なタイプに見えるが、もしそうでない場合はそれはそれで無理強いさせている事になる。
「否、断然こっちの方が楽だから寧ろありがたいぐらいだよ、レオン――ってせめてレオンさん、ぐらいにしといた方が良いか?」
「レオンで構わないから気にするな――で、その話はここらで打ち切るとして、他の守護者のメンバー及び協力者の皆も適当に、戦力の偏りとかはあんまり考えずに組みたい奴とチームを組んでみてくれ、出来る限り皆の意志を尊重してチームを作りたい」
もう一度集まっている守護者メンバーと協力者達を見渡しながら、俺はそんな言葉を口にした。

<SIDE-Leon->
「で、チーム分けは終わったけど、もう出発するの、レオン?」
チーム分けが終り、俺達のチームも含め全12ある各チームの戦力なんかを自分の中で纏めていると、フィリアがそんな風に声を掛けて来た。
「そうだな、協力者集めにも相応に時間を使ちまったし、そろそろ出発しようか」
個々の戦力に差が有ったりするが、その辺は完全にバランスをとる方が難しいので仕方が無い。はっきり言ってそんな事よりも皆の望む形の編成になっているかの方がよほど重要だ。
気の合う連中や普段から共に行動しているメンバーでチームを構成出来るのならそれに越した事は無い。チームとして戦力に問題がある様なら協力者の一人にそのチームのフォローに入ってもらうという構成だ。
無論フォローに入ってもらう協力者との性格的な相性なんかも考えた上での構成だ。仲間内でイザコザが発生するという事だけはまず起こらないだろう。
唯一気になるのは嘘発見器――では無くクロノを持ってしても何を考えているか分からないらしいサナトルヴィアと言う男の事だが、少なくとも爺さんの紹介である時点でそこまで深く危険視する必要も無い、と判断した。
しかし、クロノで考えを詠めないってのはどういう事なんだろうか?
能力を無力化しているだとか、そういう事なら何らかの防御能力が常に発動しているだとか、色々考えようもあるのだが、能力自体は発動しているのに何を考えているのか分からない、と言うのはどういう事なんだろうか?
考えた所で分かる筈も無いし、気まずくなるので本人に聞くわけにも行かない。そもそも思考を詠んでいたという事実が知れる事自体が拙いのだ――そうなれば彼と同じチームであるフェインとリルには悪いが、もう爺さんを信用するしかない。
チーム間での話し合いは移動中にすれば良い。足の遅い奴に合わせて移動すれば、此処から零座標……《輪廻の門》まではかなり距離があるからチームの結束を高めるには十分な時間になるだろ。
複数のチーム単位での連携なんかも出来れば戦術の幅も広がるのだが、それは流石に求めすぎ、と言う所か。
チーム単位で模擬戦でも出来れば良いのだが、流石に時間的にもエーテルの量的にもそんな事をする余裕は無いだろう。
後、今しておくべき事は――まぁ、リーダーらしい事をいうぐらいか。今から、広域次元世界全てを守る為の戦いを始めるのだから。
「チーム分けは終わった、今から決戦の地《呪詛》が待つ《輪廻の門》へ向かう。《輪廻の門》へ近づけば近づくほど、いつ戦いが始まるかも分からないから、先に言っておく」
守護者の仲間とこの戦いに力を貸してくれる協力者達の顔を見ながら、言葉を紡ぐ。
「さっきも言った様に敵は強力無比だし、数も此方より多いだろう――だが俺達は負けれない、俺達の負けは広域次元世界全てを《呪詛》に明け渡す事を意味する」
《呪詛》が最高位を全て揃えて何をしようとしているかなんて知らない。だけれどそれだけの力が在ればどんな事だって出来るだろう。
「勝てば今まで通りに世界は続き、負ければ《呪詛》による支配と言う形で世界が終わる。だからこそ、意地でも勝って生き残れ。それが……生き残ることが出来ないと言うのなら、最後の一瞬まで戦って死ね――その名は生き残った者達が必ず語り継いでくれる」
そんな力を魔獣という呪いを生み出しているモノに与える訳には行かない――絶対に。
「だが、逃げるなとも言う気は無い。命はそれぞれ自身の物だ、だから俺は、逃げる奴を非難するつもりは無い。《呪詛》が世界を支配するって言った所でどう世界が変わるかなんて俺には分からないけど、それでも生き残りたいって奴を非難するつもりは無い」
自分でも無茶苦茶な事を言っているとは思う――だけどそれが俺の本音なのだから仕方ない。言いたい事は言った、セルなんかならもっと纏まった良い言葉で全員の士気を上げれたかもしれない。でも俺にはこういう言い方しか出来ない。
「っと、まぁこんな無茶苦茶な事を言う俺と、本当に一緒に戦ってくれるか、皆?」
そんな俺の言葉に、集まった仲間達は無言でうなずきを返してくれた。
「なら、行こう――《呪詛》の野郎が踏ん反り返って待ち構えている《輪廻の門》へ!」
叫ぶように言いながら、俺は宮殿の外へと通じる巨大な門を顕現をさせた。

<SIDE-Curse->
「良く戻ったアルカス――予想よりも時間は掛かったが、まぁそれは不問としよう。お前が居なければさらに多くの時間が必要だったであろうからな」
《時の迷宮》の攻略法を伝え忘れた際はどうなるか思っていたが、思いの他早くアルカスが戻った事に俺は安堵していた。《終焉》の担い手の仲間の一人が《創世》を所持している以上、此方が《根源》だけでは些か心許無い。
「王の心遣いに感謝する――が、どうして王はあの迷宮を踏破する方法を私に知らせてくれなかったのであろうか? 結果的に自ら気付き踏破出来はしたが、王が知らせてくれていればもう少し早く戻ってくる事も可能だったのですが?」
「それについては俺が伝え忘れていただけだ。お前が迷宮に入ってから気付いた時はどうしたモノかとも思ったが、貴様が自力で踏破する方法を見つけて頭の回るより使える駒だと分かったのは、まぁ時間的損失に見合うだけの収穫だった」
その俺の言葉にアルカスが一瞬表情を歪めた様な気がしたが、まぁ気にする事では無いだろう。魔獣である者で私に逆らえるモノなど居はしないのだ。隷属の洗礼を受けた者なら、尚の事だ。
「それで、回収してきた《時空》は貴様が左手で持つそれだな?」
アルカスの左手には強大な力を感じる短剣が握られている。成程《時空》は短剣型の聖具だったか……どの道《七鍵》に取り込むので形状は関係無いが、状況によってはその形状を再現した武器を形成する場合も考えられるので、不要な知識と言う訳ではない。
《根源》が杖で《時空》は短剣か……今の所敵のモノである《終焉》が通常の剣である事を考えると些か間合いが気になる。
《終焉》に関しては《根源》さえあればどうとでもなる。逆に《時空》の能力は《終焉》には通じないのだろうが、敵が持つもう一つの最高位《創世》にはどちらも有用だ。
もっともどの道全て集める事になるので手に入れるのはやはり早い方が良いだろう。
「――はい、エーテルの反応の強さは言うに及ばずですが《時の迷宮》の最深部に置かれて居たので間違い無いかと」
待て、どういう事だ? 反応は間違いなく最上位級のモノなのは間違いない。アルカスの言うとおり《時の迷宮》の最深部に封じられていたのなら間違いない、筈だ。
では何故アルカスは声を聞いていない? 《時空》の声が聞こえたのなら態々回りくどい言い方をせずとも断言出来る筈だ。
「《時空》に触れているのにその声は聞こえないのか? いや、聞こえない筈だ、声が聞こえるのなら断言出来るだろうからな」
「正確には私の呼びかけに答えない――というべきですかな? 迷宮を踏破し発見した際に驚いてはおりましたので……それ以降は、全く反応しなくなりましたが」
呼びかけに答えないとはどういう事だ? アルカスが契約に応じる筈が無いが――と、言うよりも契約していたとしても呪いで奪い取っていたが《聖主》に長く封じられて居た《時空》ならすぐにでも契約者を求めると思って居たが……どういうつもりだ?
《七鍵》に取り込むのには《時空》との契約の手続きは必要ない――相手の聖具の意思に関係なく取り込みその力を引き出すのが《七鍵》と言う聖具の特性だ。故に取り込む聖具がどういう思想を持っているのであれ俺には関係ない。
だが、不要な機能をすべて排除してしまった為、一度取り込んだ聖具を取り出す方法は《七鍵》の破壊以外には無いのだ、もし誤って《完全なる六》では無い聖具を取り込んでしまった場合は《七鍵》を作り直さなければならなくなる。
順に《完全なる六》が目覚め始めたこの状況でそんな事になるのは非常に困る。故に、間違いは許されない。アルカスが回収してきたモノが《時空》であるのはほぼ間違いないが、それが《ほぼ》である内は《七鍵》に取り込むことは出来ない。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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