EternalKnight
集結
<SIDE-Leon->
宮殿に辿り着いたアルア達とアレン達を迎え、俺を含めて総勢30人の永遠者が一堂に会する。
これで、恐らく全戦力――間に合うか微妙な所である《剣皇》は数として数えない方が良いだろう。《剣皇》は大きな戦力だが、間に合うか分からない戦力を当てにするのは危険すぎる。まぁ《剣皇》を数えずとも強大な戦力である事に変わりは無い。
ゼノンの件については全員の前でアレンに報告してもらったが、やはりあのゼノンが相打ちとは言え死んだ事には大きなショックを受けた様だった。
事前に報告を受けていたが、ゼノンと相打った《刹那》の契約者が宮殿を一人で襲撃。
その迎撃の最中でグレンは最高位《創世》、アリアが準最高位《神光》として覚醒することで《刹那》の契約者を追い詰める事に成功するが、転移能力と思われる方法で逃走されてしまったらしい。
アレン達の話を聞く限りじゃその転移能力の転移先がゼノンの目の前だった、って所か――何故態々エーテルを消耗した状態でゼノンの前に転移したのかは不明だが、それ以外には考えられない。
思考を巡らせるのは終わりだ、過去は変えられない、変えられないなら深く考える必要は無い、結果を結果として受け止めるしかない。
「報告は以上って事で良いか?」
その俺の問いにアレン達は無言でうなずく事その意思を示した。
「なら今の状況を整理しよう」
とりあえず《必滅》の件は隠さなきゃいけないから――
「最高位が俺を含めて二人、準最高位が四人、それに続くSSが七人、Sも七人、Aが五人にBが四人、後は魔獣でありながら俺達に力を貸してくれるCクラス聖具の契約者。総合的な戦力で考えれば俺が知る限りの永遠者の組織としては歴代最強だと考えて間違いない」
一応その昔最高位の聖具契約者が三人で行動していたが、実際は《必滅》を入れて三つ最高位があるのだし、そもそも三人は組織とは呼べない。
「だがしかし、相手は永遠者ではなく、呪われた魔獣の群れだ――その数は無尽蔵だろうし、準最高位聖具を所持した強大な個の戦力も多く有している、そして最高位《根源》を手に入れた敵の親玉《呪詛》の契約者もいる」
今はまだ《根源》だけだがいつ《時空》を手に入れられてもおかしくは無い。時の迷宮は膨大な数を揃えられれば誰にでも攻略可能なのだから。
「最高位の数では此方が勝っているが、此方が向こうに辿り着くまでに《時空》が奴の手に落ちる可能性は消して低い訳じゃない」
それを踏まえても切札たる《必滅》を有する此方の方が最高位の数では勝っているが、だからと言って油断出来る相手では無いし、そもそも《必滅》に関してはその力を使わせたくない。
状況が状況だったし一対一でこそなかったが、本気の俺でも一度取り逃がしてしまっている上に、《終焉》の能力の特性をあっさり見抜いた事から考えても相当な知識を持っていると考えて間違いない。だからこそ、時の迷宮が攻略される事を恐れているのだが。
「まぁ、それについては急いで此方から仕掛けるしか方法がない訳だが、それとは別な問題がある。敵の聖具契約者だ」
そう問題は敵の聖具使いにある。上位の魔獣の殆どが上位聖具を所持している可能性は非常に高い。何せ前回の襲撃の時だけで俺は準最高位の聖具を持った魔獣を三人見ている。
準最高位を最低でも《呪詛》を含めて四つ確保できていてそれ以下の聖具を持っていないと言うのは考えが甘すぎるだろう。
「単純な話、相手は魔獣としての能力を持ちながら聖具と契約しているのだからその能力は普通の同じ位階の契約者を大きく上回っている事が殆どだ。その上で奴等には準最高位の聖具と契約している奴すらいる――コレを問題視しない訳には行かないだろ?」
ネロの話だと、魔獣が聖具と契約すればその基礎能力は魔獣としての性能に加えて聖具の補正分、普通の人間が契約する場合よりはその補正値は若干低いらしいが、兎も角上昇する事には変わり無いらしい。
もっとも、補正値が低いとは言え、ベースが魔獣である時点でベースが人間である此方よりも敵の方が有利であるのは間違いない。
魔獣の、特に聖具と契約し得る人間としての知能を取り戻している上位の魔獣の身体能力は強力無比だ。元の身体能力が標準よりも下回っている者では上位の聖具と契約していても尚、聖具の能力無しに魔獣と戦うことは不可能だろう。
その上位の魔獣が聖具と契約して、ある程度の基礎能力の補正と聖具の能力を行使できる様になれば、それは強大な壁となって俺達を阻む事になるのは疑う余地も無い。
しかし、永遠者にとって戦う上で重要なのは能力の相性であり、基礎性能の差は能力の相性で十分に覆しえる。が、それは逆に言えば、基礎性能で劣っている場合相性が普通よりも悪い相手と戦うのが危険である事を意味する。
「とは言え、問題視するだけなら誰にでも出来るし、何の解決にもなっていない。何か意見があるなら聞かせて欲しいぐらいなんだが、誰か良い案は無いか?」
言って、集まった仲間達を見渡しながら数秒待つが誰からも声は上がらない。まぁ、此処で良い意見が出てくるのが良かったんだが、流石に無いか。
と、言うか相手の能力が単純に高いだけだし、普通は対策のしようが無いよな……聖具の能力による身体能力の追加強化なんてのは基本自身以外に作用する場合は時間の制限があるし。
「まぁ、言い出しといてなんだが基本的に魔獣の基礎性能が高いってだけの話だから基本的に対策なんて無いに等しい。だから一つ、それ効する為にルールと作りたい。もっとも、コレは守護者のメンバーよりも協力者達に向けてのモノなんだけどな」
言いながら、今度は守護者に所属していないこの戦い限りに協力者達にそれぞれ視線を送り、右手の指を二本立てながら「二人以上でチームを組む、時間を掛けずに出来る対策なんてのはコレぐらいしかない」そう告げる。
ごく単純な話、圧倒的な差でも存在しない限り数は力となる。連携が取れていればそれに越した事は無いが、連携が無くとも互いに支援し合える仲間が居るだけで戦いというのは随分とやりやすくなる。
「しかし、二人以上でチームを組むというのは今回の戦いに協力する為に集まった私達には些か難しくはありませんかね? 連携等も出来る筈ありませんし、結果的に足りていない戦力をさらに減らす事になってしまうのでは?」
その意見にアルフィアが異議を唱える。まぁ、彼の言いたい事も分かる、分かるが敵が単体で強力な戦力を有している以上、俺の思いつく範囲には他に手は無い。
「確かに、連携が出来ないチームと言うのは互いが足を引っ張り合い総合的な戦力が下がる様に感じるかもしれないが、それでも個々に戦うよりは強力な一つの戦力になりえる。個々に戦って各個撃破されるよりは被害は少なくなる、筈だ」
敵の個々の能力が高い以上、それに抗するにはこういう手をとるのが現状では最良の筈だ。もっとも、頭数で負けている時点で本来なら取られるべき戦法では無いのは分かっている、それでも、今の俺にはこれ以上良い方法が浮かばない。
「何も常に一人の敵にチームで戦えって言ってるんじゃない、基本的に大物が現れない限りはお互いを確認出来る範囲で個々に戦ってくれて良い。必要なのは強力な敵に抗しうる戦力だ。数で負けてるのは間違いない以上、出来れば取りたくない形だしな」
「成程、確かに貴方のいう事にも一理ありますね。ですがそれならそれで、既に連携の取れている守護者の者達でチームを組み強力な聖具を所持する敵と戦い、私の様な協力者は個人で小物を屠る、と言った風に分けた方が効率が良いのでは?」
アルフィアの意見については考えなかった訳じゃない――役割が決まっていた方が動きやすいのは間違いない。だが役割を決めてその型に填めてしまえば、役割の枠を超えた行動が取りづらくなる。
唯でさえ此方は人数で劣っているのだ、状況に応じて戦い方を変えれなければ厳しいなんて物じゃ済まされないだろう。
「役割を決めた方が戦力としては安定するだろうが、こっちは仕掛ける側であって守る側じゃない。役割を決めればそれだけその枠を超えた動きは出来にくくなるんだから、役割を決めきってしまうのは良くないって判断だ」
「そういう考えでしたか。まぁ、元より疑問に思った事を聞いただけで貴方の案に反対と言う訳でもありませんでしたので、貴方の案に従いましょう」
まぁ、俺自身チームを組むって案には少し悩んだし、疑問が沸くのはごく自然な事だろう。寧ろアルフィア以外から疑問が上がらなかったのが不思議なくらいだ。まぁ、疑問の声は多くない方が楽だ。
「まぁ、そういう訳だから適当に二人以上でチームを組んでくれ。人数に上限を設ける気は無いが、手数も重要だった事も念頭においておいてくれ――っと、それからグレンにネロ、お前等は俺と組んでもらう事になるけど構わないな?」
俺の言葉に、一瞬の静寂が空間を支配する。まぁ、こうなる事は初めから分かりきっていた。あぁ、分かりきっていた事だともさ。
《必滅》の話を持ち出さずにどうやってこのメンバーを本人達と周りに認めさせるか……否、本人達は兎も角として周りにどう認めさせるのか――それが恐らくチームと言う概念を用いる上で一番苦労する事になるという事は簡単に予想できた事だった。
「いや、えっと――自分で言うのもアレなんですが、俺とレオンさんが同じチームに固まるって良いんですか? 俺の実力が伴ってるかは置いておいて、クラスだけなら最大の戦力である俺とレオンさんが同じチームって戦力のバランスとしてどうなんですか?」
静寂から数秒、最初に口を開いたのは以外にも俺が指名したグレンだった。その問いに対する回答は既に用意してある。と言うかこの回答以外に他が納得してくれる気がしないし、本当にその目的でこの編成にしようと考えたのだから否定されても困る。
「なぁ、グレン? 敵の親玉を優先的に叩きに行くチームが他と同程度の戦力しかないってどう思うよ? そもそも《根源》を手にしちまってる《呪詛》を相手取って、並みの聖具で戦いの場に立てると思うか? 無理だろ?」
「それは確かに厳しいだろうけど……でも、それだとどうしてネロも同じチームなんです? こう言っちゃなんだけど、魔獣としても四位で、聖具のクラスは正直高いとは言えない。敵の親玉に戦力をぶつけるなら他にも選択肢は多くあると思うんだが?」
そう問題はそれだ。《必滅》の話を出せない以上、あれだけ言っておいてどうやってネロをチームに組み込むか――ネロ自身は《呪詛》と戦いたがっているので問題なく了承してくれそうだが回りがそれを認めてくれるとは思えない。
それでも、これに関しては絶対に押し通さなくてはいけない。今の状態でも最上位の数は二対一だがそれもいつ《呪詛》が《時空》と契約する事で崩れるかも分からない以上、確実に《呪詛》を倒す為には隠し玉である《必滅》の存在は必要なのだ。
この戦いには《広域次元世界の意思》との契約上負けられないし、俺自身も《呪詛》のクソ野郎をぶち殺したい。だから、故に――尽くせる手は全て尽くす。
「ネロは元々《呪詛》を殺す為に俺達に協力してくれてる。連れて行くのは当然だと思うが?」
「幾らなんでも戦力的に難しいでしょ? 一応協力者、って言うか仲間なんだから、命を粗末にするのを見て見ぬ振りなんて俺には出来ない」
予想外にグレンがネロをチームに加える事を拒んでくる。文句を言ってくるのはフィリアやユフィかと思っていたんだ……思わぬ伏兵だが、だからとは言え諦めるつもりは無い――が、グレンの言葉に対する良い反論が見つからない。
「命を粗末にも何もないさ。俺を含む全ての魔獣は《呪詛》と言う呪いの源泉が生きているからこうして呪われ続けて魂をこの場所に止めているんだ。《呪詛》が死ねば全ての魔獣は消滅する――それでも、俺は奴をこの手で殺したい」
《呪詛》が死ねば魔獣というシステムは崩壊する。呪われた魂が全て解き放たれる、魔獣という器の崩壊によって――確かにその話は聞いていたが、俺の口から言っても重みは薄いだろうから言わずに黙って居たが、良いタイミングで話題に上げてくれた。
「そんな……」
ネロの決意に言葉を失ったグレンに聞かせる様に、ネロはさらに言葉を続けた。
「俺は既に一度死んでる。この命は本来あるべきじゃないんだ、だからアンタが俺を仲間って言ってくれて、心配してくれたのはありがたいが、俺はアンタ達に付いていくぜ。どれだけ足手まとい扱いされようとな」

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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