EternalKnight
決意
<SIDE-Leon->
知ってる反応なんだが――なんだったか名前が思いだせん。顔は思い出せるんだが、名前がどうしても思い出せない。移転した《宿》に俺を案内してくれた二人なんだけど……
(ウィルフレッドとシャルの二人だろ? この間の事なのに忘れてるってどういう事だよ……まぁ、お前の記憶力ならそんな事だろうとは思ってたが)
そう、それだ。ウィルフレッドとシャルの二人だよ。あの妙な喋り方する二人組みは。
(妙な喋り方か、確かに二人の意思疎通が出来ていなければ成立させる事が難しいであろう奇妙な喋り方はしていたが……)
そう、あの喋り方の印象が強くて顔は覚えていたのだが――名前は、残念ながら忘れてしまっていたが。まぁそれに関しては多くの出会いがあったから仕方がなかった、と言う事にしておこう。
(その多くの出会いの中で、お前がちゃんと覚えられてるのってどれくらいなんだろうな、一応守護者の首領って事になるんだから、間違えるようなマネはするなよ、レオン――信用問題になるぞ?)
その辺は大丈夫な筈だ、たぶん……だけど。
(そんな不安げにされても困るんだが……まぁ、お前が他者の名前をなかなか覚えられないのは今に始まった事じゃないしな、俺が覚えている範囲なら先ほどの様に教えてやろう)
悪いなシュウ、助かる。
『こういう時は本当に良い相棒なんだがなぁ……弄ってさえ来なければ最高の聖具だって自信を持って言いきれるんだろうが、まぁ弄ってくるのもシュウの個性だし、何より嘆いた所で何も変わらないので、これ以上は考えるだけ無駄だろう』
とかなんとか考えてる間に他の反応も近づいてきたな――数は、八人も居る。ゼノン達は五人で爺さんの元へ向かった訳だから、三人の協力者を得てきてくれた事になるのか?
まぁ、本命であった《宿》に向かった俺達がアルア達を含めて八人の協力者を得れた事を考えれば、三人でも十分な成果だろう。
(なぁおい、レオン――何か、おかしく無いか?)
おかしいって、何がおかしいん――いや待て「どうして《永劫》の反応があってゼノンの反応が無いんだ?」声に出して、自らが導き出した脳裏に浮かぶ一つの可能性を否定しようとする。
だけれど、そんな事をしても事実は何一つ動かない。分かっている、自分でも分かっているのだ。聖具と、その契約者が離れ離れになると言う、その意味ぐらい。
ゼノンには何故か分からないけど一方的に嫌われていた――そして、その理由はこの先永遠に分からないだろう。嫌われていたけど、俺は嫌いじゃなかった。そんなゼノンに会う事は、もう永劫に適わない。
契約者が聖具を手放すとは、概ね間違いなくそういう意味だ。それが準最高位の《永劫》であるのなら、尚の事だろう。
(ゼノンが敵と相打ち、残りの者が《永劫》を回収した、と言う所か……でなければ、ゼノンを討つ程の相手に残りの者達が生き残れるとは思えぬからな)
最悪を考えるのなら見逃されたって可能性も有る……何にしても大きな戦力を失った事には違いない。
セディアについても同じ事が言えるが、戦力を増やそうと行動した結果仲間を失ったというのは痛い。相手を取り逃がした事で士気の上昇に繋がるが、相打ったというのなら、全体の士気も少なからず下がる可能性が高い。
仲間の死を、戦力を失っただの士気が下がるだのと言う目で見たくは無いが、守護者の首領を任されている以上、戦力の把握や全体の士気には気を使わなければならない。
俺は、フェディスの存在を言い訳にして、こんなにも重いモノをセルに押し付けたいたのか……自分の情けなさに腹が立つ――だけど過去は変わらない、変えられない。
だったら、これ以上の後悔を重ねない様に、ただ前を見て自分に出来る最善を目指すしか無い。
それが、俺のせい命を落としたセルとセディアとゼノン、そして俺が今まで迷ったせいで失われた全ての命と……フェディスへの、せめてもの償いだ。
もう、迷わない――考え込んで動けなくなって、そうしている間にまた掛け替えの無い命が失われていくのを見たくない。
迷うのは、もう終りだ。迷って、迷い続けて後悔するぐらいなら、迷わずに動いて後悔したい。控えている決戦には、この広域次元世界全ての命運が掛かっていると言っても過言ではないのだから。
気付くのが遅すぎたと、自分でも思う。気付くチャンスは此処までに幾らでもあったのに気付けなかったのも俺の弱さだと思う。
有りもしない理想の答えを探そうと躍起になって、本当にすべき事を見逃し続けてきた。その瞬間毎の自分にとっての最善を尽くす。俺には……否――誰にも、スケールの違いはあってもそれ以上の事は出来ないのだ。
理想の答えを探すのは止めだ――俺はこれから先、俺に紡げる限りの最善の未来を紡ぐ、唯それだけだ。
(迷わないという決意をするのに随分考えを巡らせていたが、そんな事で本当に目の前にある最善を拾い続けられるのか?)
これから先迷わない為に、今決意を固めてたんだよ。だから、悩むのはコレで最後だ。少なくとも、これから先は状況が悪い方向へ転がるかもしれないタイミングで迷ったりはしないさ。
(まぁ、お前がそう言い切るのなら俺はそれを信じるだけだ。控えている戦いで、お前の決意の程を見せてもらおうじゃないか)
とりあえず、こっちに向かってきてる二組と合流出来次第、爺さんの所に行ってたメンバーに話を聞いて、それから協力してくれる奴等と守護者のメンバーの顔合わせって所か?
(それでいいんじゃ無いのか? 流石に、背中を預ける事に成るかもしれない相手の名前を知らないなんて状況は作りたく無いしな)
まぁそれも大事だけど、集まった戦力がどの程度なのかを把握しておこうと思ってな。とは言え、クラスを聞くのと保持エーテル量の確認ぐらいしか出来ないけどな、流石に。
協力してくれる連中を値踏みするつもりは無いが、無理な事を押し付けたくは無い。その為にはある程度実力を知っておく必要がある。クラスやエーテルの保持量というのはその最低限の目安になる。
(お前の思う様にやれば良いさ。俺は俺に与えられた使命を果たす為に、お前の力になるだけだからな)
それを言うなら俺達に与えられた使命――だろ、シュウ?
(久しぶりにお前に揚げ足を取られた気がするんだが……まぁ、そうだな。確かにお前の言うとおりだ、レオン。それはそうとこうして考えに耽っていて良いのか? ゆっくりと構えている時間は無いだろう?)
――と、そうだな。取り合えず合流して直ぐに顔合わせが出来る様にみんなを集めておくか。

<SIDE-Aren->
レオンさん達は――流石にもう帰って来てるか。まぁ、協力者を得る為にあちこち回っていたので当然と言えば当然なのだが。
しかし、結局あの後フェインさんと二人でサナトの能力に付いての説明を受けたが、定義が曖昧な能力である、と言う事意外殆ど何も分からなかった。
シェディさんの能力を反転させて俺達の情報を予め知っていたかと思えば、敵の攻撃能力を反転させて相手にそのまま返す様な所謂反射の様な運用法は出来ず、その癖回復能力の作用を反転させて傷口を悪化させたり体力を奪ったりと言うのは出来るらしい。
ひょっとすると《反転》と反射、そして逆転と言う事象の明確な定義づけが出来てないからなのかもしれない。
それが聖具の中で出来ていないからなのか、契約者が出来ていないからなのか、或いは定義付けが出来た所で変わらないのか、それは分からない。だが、仮に定義付ける事でその能力の幅が変質するのなら、非常に強力な能力になる事は間違い無い。
いや、流石にそうであるならサナト本人が気付いているか……此処までずっと話してきたけど、それに気付けない奴だとは思えなかったし。まぁ、何にしても俺の想像で口出しする様な事じゃないだろう。
それはそうと俺達に先行する形で《宮殿》に向かってる四人分の反応の中にアルアさんの反応が混じってるのは、気のせいじゃないよな?
《宿》に居るハグレ達だけじゃなく、アルアさん本人にも協力させるって一体どんな方法を使ったんだあの人……まぁ、その辺は考えても無駄だろうし、後で聞けば良いか――教えてくれるかは分からないが。
とりあえずは戻ったらゼノンさんの件を話さないとな。まぁ、こっちが反応を捕らえられてる時点で向こうもこっちに気付いてるだろうから、ゼノンさんが居なくて《永劫》だけが残ってる事実から察してはくれてるだろうけど……
「あれが守護者の拠点か……しかし、結構な数の永遠者が集まってるみたいだな」
「数もそうだけど、かなり凄い反応の人が居るのも気になるな、私は……一際大きい反応が二つあるけど、これってどっちがアレンさん達が言ってた今の守護者のリーダーさんの反応なんですか?」
考え込んでいる間に、ジルトムとマナハも宮殿に居る仲間達の反応を知覚出来る範囲にまで到達したらしく、此方に問いを投げてくる。
そういえば、レオンさんと同等な巨大な反応がある――が、誰の反応だ、コレ? 《宿》でレオンさんがスカウトしてきた誰かか? その割には、どこか知っている様な気もするんだが……
まぁ、マナハが言う一際大きい反応ってのはレオンさんとこの反応の事だから、見分け方を教えるなら簡単だ。
「一番デカイ反応が今の守護者の首領の反応だ、もう一つの反応には心当たりが無いから、その首領様が《宿》でスカウトしてきた奴だろうよ、たぶん」
「俺には知覚出来てないが、そんなにデカイ反応の持ち主なのか、守護者の首領ってのは? 否、最高位を持ってるってんなら当たり前なのかもな」
リゼツはリゼツで楽しげに口の端を吊り上げて笑っている「おいリゼツ、間違っても首領に喧嘩を売ったりするなよ?」とりあえず、釘は刺しておくべきだろう――効果があるかは別の問題だが。
「それぐらいは分かってるさ。まぁ、実際どうなるかは俺の気分次第だけどな? 何にしても、今は暴れられる舞台を用意してくれる奴等の頭に喧嘩吹っかける様な気分じゃないのは確かだ」
挑んだ所でリゼツが最高位のレオンさんに勝てるとは思っていないが、シェディさんに聞いたとは言え俺達が連れてきた彼がレオンさんに喧嘩を売るなんてマネをすれば俺達の立つ瀬が無い。
「結構な数って言うか30近く居ないか上位聖具の契約者……凄いな、今此処に俺を除いて六人居るってのもすげぇが、その何倍も永遠の騎士が一箇所に集まってるってのがすげぇ――こんなの見るのは初めてだ」
どうやらサナトは《宿》に言った事がないらしい――あそこになら今の《宮殿》に近い数の永遠者が居る事も良くある筈だからだ。
とは言え、俺の知る限りでは守護者のメンバーだけで30人を越えていた事は無かったので、協力者を含める永遠の騎士の仲間がこれだけ多く居ると言う状況は始めてだった。
一箇所に集まってるだけなら、破壊者に宮殿を襲撃された時に破壊者側の永遠者達が固まって進行してきていたので、その時の方が数は多かったのだが、それでも仲間がこれだけ多く居るというのは実に心強い。
しかし、恐らく控えている戦いにおける相手の数は計り知れない。これだけの数が集まって尚、勝てるかどうかは分からない。否、勝たなければいけない。この広域次元世界に住まう全ての命を救う為に――
「あぁ、そういや《宿》以外の場所でこんなに永遠の騎士が集まってるのを見るのは初めてかもな」
ジルトムは《宿》には行った事があるらしい。まぁ、幾ら有名でも行っていない奴が居るのは別におかしな事じゃないだろう。守護者の中にも《宿》に行った事無いって連中は何人か居たし。
「30近い、つーか俺等を合わせりゃ30は余裕で超える人数で仕掛ける戦いか……俄然やる気が出てきたぜ、俺は」
リゼツの実力はジルトムとの手合わせで見せて貰った。実力としては十分だと思うが如何せん性格に問題がある。まぁ、そのやる気を味方に向けないのならありがたい事この上ない。
まぁ、戦って勝てない相手かって言われるとたぶん勝てるのだろうが……とは言えそれはエーテルの保持量に差があるからでしかない。リゼツのエーテル保持量が今の俺と同等であった場合は、勝てる見込みは薄い――かもしれない。
何にしても今のリゼツの戦いへの欲求は来るべき戦いへと向いている。後はその矛先が変わらない様に放っておけば良い――等と考えている間に宮殿の入り口まで辿り着いていた。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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