EternalKnight
四人の永遠者/四人目
<SIDE-Aren->
光の槍に貫かれたジルトムが膝を折ってその場に崩れる――が、倒れるまではしない。彼を貫いた槍は突き抜ける事無く途中で勢いが止まっていたが、エーテルへと分解され霧散する事で傷口にぽっかりとした孔だけを残すだけとなった。
あのサイズの孔は拙い――治療系の能力でもあれば話は別だが、普通はあのサイズの孔を塞ぐには相当量のエーテルが要る、しかも有った所で急速に傷が塞ぐ訳ではない――その間に失血によって失うエーテルの量を考えれば、これ以上戦わせる訳には行かない。
戦闘行為さえ終わればリズィが直ぐにでも治療に開始する事で傷口から漏れ出すエーテル量を格段に減らす事が出来る。これで決着という話にならなければ俺が動かなければいけなくなる。
もっとも出し惜しみしていなかった事から考えれば、奥の手はまだ残されているだろうが、手札の何枚かは見せて貰えているので厳しい相手でもないとは思う。エーテルの残量も多くはなさそうなのも追い風だろうか? 出来れば、相手をしたくは無いが。
「そこまでだ、二人とも――」そう言いながら、構えを解かないリゼツと、傷口を押さえながらも立ち上がろうとするジルトムの間に割って入る。
傍目に見れば十分に決着がついている様に見えるが、向かい合う二人にとってそうでないのも見れば分かる。故に――二人の間に割って入った訳だが……
「退けよ銀髪、俺としても今ので決まったとは思ったが、相手がまだ動くつもりなら終りじゃねぇだろ?」
「馬鹿言うな、このまま戦っても勝負は見えてるんだからお前の勝ちで良いだろ――俺達は協力してくれる仲間を探しに来てるんだ、このまま放っておけるか」
つーか、ジルトムも何でまだ立ち上がろうとしてるんだよ……喧嘩みたいなもんなんだから、素直に諦めてくれれば話は早いってのに。
「って銀髪は言ってるが――テメァはどうなんだよ、黒髪? まだやるのかやらねぇのか? 銀髪が言った様に結果は見えてるけどな?」
また、挑発する様な真似を……どうする、不意を付いて黙らせるか? いや、他の聖具を召還出来てない以上、不意打ちは難しい、下手をすればリゼツの的が俺に移るだけだ。
「言い返してやりたい所だが、流石に此処からの巻き返しは難しそうだ――相棒に任せても避けれない技を俺が避けれるとも思えないしな……分かった俺の負けで良い降参だ。つーかそれでAクラスとかどんな反則だよ……」
そういえば、始まる前にそんな事言ってたな、リゼツの奴……エーテルの保持量とかさっきの技とか見た限りじゃととてもそうとは思えないが。
普通にSクラスって言われても少し信じがたいレベルかもしれない。シェディさんに聞いてた通りのSSならまぁ、あれぐらいの事は出来てもおかしくは無いと思うが。
「言い直すのを忘れてたが、Aクラスってのは俺の勘違いだ、今はSSクラスって事になってる――まぁ、降参って事なら俺の勝ちだな。で、そこの銀髪は勝負を投げたからこの中じゃ俺が最強って事だな。なんか、納得いかねぇが」
……やっぱりシェディさんの情報が正しかったのか――って事はさっき言ってたAクラスの時にSS倒したとかって時にクラスが上がったって所か?
今までのリゼツの経歴なんて分からないからなんとも言えないが、何がきっかけでクラスが上がったのかは俺達にとっては関係ない話だ。
「AじゃなくてSSか、それならあの能力にも納得が行く、か……まぁクラス差があるとは言え負けは負けだ、お前の実力しかと見せて貰ったぜ、リゼツ」
そう言いながら笑顔でサムズアップしてるジルトムの左の肩口には光の槍で貫かれた孔が穿たれたままになっている――お互い納得したみたいだし、早くリズィに治療を頼もう……エーテル勿体無いし。
「まだまだ余裕そうな面して良く言うぜ……まぁ、そこそこ楽しませて貰ったぜ、黒か……否、ジルトムだったか?」
「名前を覚えてもらえた様で何よりだ、リゼツ。これから暫く守護者で厄介になる間はよろしく頼むよ」
……これが友情の芽生える瞬間か。まぁ、気兼ねなく話せる相手が居た方がお互いに気楽だろうし、エーテルの無駄遣いっぽかったこの喧嘩にも意味はあった――かな? まぁ、そういう風に納得しておく事にしよう。
「リズィ、悪いんだがジルトムの治療を頼む」
「了解だよ、あっちゃん――あ、治療は移動しながらでも出来るから早く次の人の所に向かっちゃお――シェディさんに聞いた場所から移動されちゃってると大変だよ」
確かに、爺さんから聞いた場所にずっと留まってるって訳じゃねぇしな……リズィの言うとおり、さっさと移動するに越した事は無いだろう。
「分かった――って事だからそこで盛り上がってる二人、移動するからさっさと準備しろ。ジルトムの方はリズィに治療してもらえ、それが終わったらエーテル分けてやる」
「エーテル分けるって、減らすのは勿体無いんじゃなかったのか銀髪?」
「さっきの小競り合いでお前等が消耗した分だけだ――戦力を集めてるんだから、エーテルの残量が残ってない奴を連れて行っても仕方ないだろ。俺がさっきのに混ざってたら無駄になるエーテルが増えてただろうから参加しなかったってだけだよ」
突っかかって来る様に言葉を吐いてきたリゼツに説明するように告げてそれ以上相手にしない。下手に応じると、今度は俺とコイツの腕試しと言う名の喧嘩が始まってしまいかねないからだ。
「そうかよ――まぁ、貰える分にはありがたく貰うさ」
言いながら、リゼツは不機嫌そうに俺に向けた視線を逸らしたのだった。

<SIDE-Aren->
六人と言う大所帯になった俺達はシェディさんに紹介された四人目を勧誘する為に、聞いて来た世界の座標付近まで移動してきていた。
「なぁ、アンタ等が聞いてきた座標って間違って無いよな? どうも言ってる座標の世界内にコレと言って強い反応が知覚できないんだが?」
リズィの能力によって傷口を塞ぎ終わったジルトムが不思議そうに言う――確かに彼の言う様に相当接近している今も尚、永遠の騎士レベルのエーテルの反応を捕らえられたいない。だが、それで良いのだ。
「シェディさんの話だとそういう知覚能力に捕らわれない様になる能力を持ってる聖具使いって話だから不思議は無い」
「それじゃあどうやって探すってんだよ、銀髪? 俺はエーテルの反応探知する能力がかなり低いんだが、知覚出来ない相手を見つけるのは相当骨だぜ?」
探知能力低いのか、リゼツの奴――いや、それはまぁ置いておいておくとして、シェディさん曰くそれでも問題は無いのだそうだ。
性格を考えれば近づけば向こうから現れると言う話だったが、随分と聞いていた場所に迫っている今もまだ、それらしい反応を見つけられない。
そんな事を考えている間に、目標の世界への入り口となる門が目の前に展開されていた。言うまでも無く俺たちの中の誰かが門を構成した訳ではない。つまり――
全員が突然現れた門に唖然とし、その門が開き始めると同時に門から距離を取る。そしてその内より現れるであろう存在を警戒してそれぞれ聖具を展開するなどして構えを取る。
突然の事だったのでシェディさんに話を聞いていた俺やリズィ、フェインさんもそうしてしまっていたが、コレは――
「反応消してる状態で門を展開した俺が悪いのかも知れないが、そうやって距離取られて構えられると気まずいんだが……」
そう言いながら形成された門から出てきたのは、シェディさんに聞いた情報通りの、金に輝く長い髪を頭の後ろで束ねた長身の男だった。
「あぁそうか、先に名乗っとくべきべきかね? 爺さんから聞いてるかもだが、俺の名前はサナトルヴィア=ジェルラスカってんだ、長いなら頭だけとってサナトで良い。あ、聖具はSクラスの《反転》って名だ、よろしく」
シェディさんに聞いた名と同じ名を名乗りながら軽い口調で男はそう続けた。
悪意を感じさせない笑顔を崩さないその男の姿に悪寒じみた何かを感じたのは、Sクラスの聖具《反転》の契約者――そう名乗るまでの間エーテルを全く感じなかったからなのかも知れない。
今はもう、その悪寒じみた何かを感じる事は無い――エーテルの反応もSクラスとしては少ないといえる量だが感じる事が出来る。
「悪かったな、突然の事で少し唖然としちまった。守護の永遠の騎士、SS《救い》の契約者、アレン=カーディナルだ――こちらこそよろしく頼む。つーか、シェディさんに聞いてるって事は……」
「最高位の一つの《呪詛》ってのが色々悪巧みしてるって話だろ? で、アンタ等はそれを潰そうとしてる、これで大まかには間違いないよな?」
まぁ、特に間違った事は言っていない――が、シェディさんに聞いたって、どうやって聞いたんだろうか? 他への寄り道や、そこで幾らか時間を潰したには潰したが、此処から情報屋まで行って、戻って来れられる程時間を掛けた訳じゃないと思うのだが――
「まぁ、大雑把に言えばそういう事になってる。そこまで把握してる上でよろしく、って事はアンタも協力してくれるって事で良いのか?」
「あぁ、そのつもりだ――大した事が出来る訳じゃないがこの力、世界を守る為に使えるならそれに越した事は無いってな。理由はそんなもんだよ」
幾つか引っかかる点も有るが、協力者は喜んで受け入れるべきだろう。何かを企んでいた所で宮殿まで行けばクロノさんの能力でそれは明らかになる――まぁ、シェディさんの紹介の時点でそんな事を気にする必要も無いのだろうが……
「つーか、爺さんに情報貰って勧誘に行った連中は全員協力してくれる事になったんだな、事が事なんで何人かには断られると思ってたんだがなぁ……」
……なんで誘いに行った連中が全員協力してくれる事になったのを知ってるんだ? 確かに結構な人数が集まってるが、それと勧誘に行った奴等が全員が協力してくれる事になった事は関係ない筈だろ?
否、シェディさんから説明を受けてるぐらいだし、別段その程度の事はおかしく無いのか? 否、そもそもどうやってシェディさんから話を聞いたのかが謎のままだ……
答えてくれるかは分からないが、聞くだけ聞いてみるのも悪くは無いだろう。
「所で、どうやってシェディさんから俺達の話を聞いたんだ? アンタの居場所を聞いてから確かに寄り道はしてたがそこまで時間を掛けずにここまで来たと思うんだが?」
「うん? 別に大した事はしてねぇぜ? つーか別に爺さんに聞いた訳じゃなくて俺の聖具の能力を応用しただけだ――言ったよな、俺の聖具の名前《反転》つーんだけどさ。コイツの力があればエーテルを使った力を文字通り反転させる事が出来るんだよ」
エーテルを使った能力を反転させる? 何となく言いたい事は分からないでもないが、イメージとして掴みにくい。それにそれが出来たからどうだというのか?
「で、それで爺さんの能力を反転させた、って訳だ。あー……分かってないって顔だな? そうだな、そもそも爺さんの《天眼》の能力ってどんな能力なのか分かるか?」
「――色んな場所で起きた出来事を監視する能力なんじゃないのか?」
「半分正解だ、あらゆる場所で起きている事象を観測出来るってのが正解。で、その事象を爺さんが取捨選択してる。俺はその取捨選択して意味づけしてる所を反転させて情報にありついてたって訳だ――まだ分からないって顔だな……」
なんだろうか、説明を受ければ受けるほど訳が分からなくなる気がするのは気のせいなんだろうか?
「単純に言うなら爺さんが俺の居場所を知ろうとした時に《調べた》って能力に干渉してそれを反転、調べてきた相手を《調べ返した》って言うとわかるか? 後は調べるに至った動機に繋がる情報までをそこから読取れるから色々知ってるって訳だ」
《調べられた》事の反転した事象が《調べ返す》だというのが何となく納得が行かないが、言っている事は分かった。まぁ、実際にそうだと過程しなければ色々と説明が付かないし事実なのだろう。
「大体納得してもらえた様で何より――と、言いたい所だけど引っかかる所が残ってそうなのが二人と全く理解すら出来てない奴が一人居るみたいだな、どうも」
俺と俺の背後へ向けられた視線を追う様に振り返るとリゼツが考えるのも面倒だと言わんばかりの不機嫌な表情をしていた。残る四人もフェインさん以外の三人は先ほどの説明で納得したのか特に疑問を抱いている節は無い。
フェインさんに関しては俺と同じ様な疑問を抱いているのか、理解は出来ているが納得しがたいとでも言いたげな表情をしていた。まぁ、どの道宮殿に戻る間での道のりを考えればその辺について聞く時間も取れるだろう。
「まぁ、理解できてない彼にも望むなら説明するし、納得できてなさそうな二人にも望むなら説明するぜ? ちょいと定義が微妙な力だしな、俺の聖具の能力は――それよりも、一応急いでるんじゃなかったのかい、守護者の皆さん方?」
悪意を感じさせない表情を崩す事なく金髪の男が告げた言葉に、俺は「あぁ、確かに急いでるな――説明させて悪かった。気になる所は移動しながらでも聞かせてもらう」そう答えた。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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