EternalKnight
四人の永遠者/神槍の継承者
<SIDE-Rezeth->
相手が永遠の騎士って事なら遠慮はいらねェよな《貫通》?
(いや、相手によるだろ? 戦闘に向いてない奴とかだとお前が本気で相手すると直ぐに死んじまうぜ、間違いなく? まぁ、そもそもそんなのが相手ならお前さん的には長引かせる事にメリットは無いんだろうけどよ)
良く分かってるじゃねぇかよ《貫通》? 正直俺は大分期待しちまってるからよぉ、半端な相手だと秒殺だぜ、マジな話。
(お前がそれで良いならそれで良いんじゃね? まぁ、俺としちゃエーテルが集まればそれで良いんだし、他がどうなろうと知ったこっちゃ無い訳よ? や、勿論お前が勝つ事が前提なんだけどな?)
《貫通》と話している間に、目の前の空間が歪み始める――門が出現する兆候だ。
(そういやよ、リゼツ? 今回も相手の力次第じゃ名乗ったりするのか?)
そりゃなぁ、相手を認めたら名乗るだろ、普通。それがどうかしたのか?
(いや、名乗るのは別に普通じゃねーから、寧ろ名乗る奴とか殆ど居ないんじゃね? 実際お前今までに相手に名乗られた事とか殆ど無いだろ?)
そんなもんなのか? まぁ、別に何が普通かどうかなんて気にもしねぇよ。俺は俺の思ったままに動く――それだけだ。ってのはいつも言ってるだろ? 結局なんでそんな事聞いてきたんだ、お前?
(いや、名乗るなら名前を間違うなってだけだ。いつも俺を階位が上がる前の名で呼んでるだろ? 名乗る時は今の俺の名で名乗るのを忘れんじゃねぇぞ、ってそんだけだよ)
――今のお前の名前ってなんだったけ? 階位上がった時も慣れてるからって理由でずっと《貫通》のまま呼んでたけど、あの時聞いた名前忘れちまった。
(いやおい待て、お前それ本気で言ってるのか? 馬鹿だろ、馬鹿なんだな、馬鹿なら仕方ないな、馬鹿だもんな――うん、つーかそれならお前新しく増えた能力の名前も忘れてたりするんじゃないのか?)
いや、それは覚えてるぜ? つーか何回馬鹿馬鹿言ってんだボケ、埋めるぞ!
(埋めないでお願い、じゃなくて……もういいや、一回だけしか言わないぞ、ちゃんと覚えとけよ馬鹿、俺の今の名前は《神槍》だ、神様の槍、覚えたか? つーか逆になんでこんな簡単な名前忘れてんだよ、馬鹿)
《神槍》ね、オーケー覚えた。少なくとも今回の戦いの間は忘れない、筈だ。
(筈とか付け加えるなよ、ちゃんと断言しろよ!)
ゴタゴタ言ってないでさっさと戦える状態になれよ《貫通》それとも何か、今の状態のままで永遠の騎士をお出迎えするか?
(いや、それってヤバイのはお前も一緒じゃね?)
だからさっさと戦える様にしろって言ってんだよ、それに通常形態なら埋められる心配は無いだろ? いい加減にして無いとマジで終わった後で埋めるぞ?
(久しぶりに永遠の騎士と戦えるからって興奮しすぎだろお前……まぁお前の言う通りだからちゃんと通常形態にはなるけどよ)
そんな風に言いながら、俺の手の中で転がされていた小さな金色の球体だった《貫通》はその形を崩し、右腕を覆い隠す銀色の装甲の様な皮膚となる。
人の形を辛うじて止めた獣じみた金属質の腕――コレを展開するのはどれくらいぶりだろうか、もう何年も前だった気がするが、細かい年月は覚えていない。
半開きになっていた掌を一度強く拳の形に握り締め、それを開放して今度は指を開き、もう一度拳を握りなおす――久しぶりだが感覚が狂っている様子は無い。状態は、エーテルの残量が心許無いが他は問題ない。
(と、言うか今の残量だと切札が撃てなくないか? あれは馬鹿みたいに強力な代わりに馬鹿みたいにエーテル使う技だし――構成エーテル削るつもりでやれば不可能じゃないだろうけどもさ)
あれは反則技みたいなもんだから元から使う気はねぇよ――いや、場合によっちゃ使うかもだが今は最悪二つ目使ってその間に逃げれば良いんだから問題はねぇだろ。
(逃げる、ねぇ? 相手にはエーテルを探知する能力が普通にあるのに、か?)
門を開ける速度なら誰にも負ける気はしねぇだろ? それで撹乱してやれば無理じゃねぇって――つーか逃げる事を前提で考えるのは止めろよ、よっぽどヤバい相手でもなきゃ逃げたりしねーっての。
最悪お前の言う様に構成エーテル削って切札を切れば何とでもなるだろうしな。そもそもそんな自体になったりしねぇよ――多分、だけどな。
(まぁ、テンション上がってるお前に何言っても一緒か――っと、門が開くぞ、構えろよ)
《貫通》のその言葉を受けて、腰を落としていつでも動ける様に身構える――こっちから仕掛けても良いが、今は相手の能力なんかが分からない上に近接の攻撃手段しか無いので、不用意に踏み込むのは必ずしも得策では無い。
一つ目を使っても良いが、いきなり手の内を晒すのは得策では無いし、一人だった場合それで決着が付いても面白くない。
(そうか、門の反応しか無いから相手の人数とか分からないんだよな……ってか相手が二人とかそれ以上だったらどうするんだ、リゼツ? ヤバクないか?)
なぁ《貫通》ハードルは高い方が燃えないか?
(もう良い、好きにしてくれ……はぁ、長い様で短い命だった)
そして門が開き、その向こうから五人の男女が現れた。――って五人だぁ!?
完全に想定外だった人数に、思考が止まる。そんな俺の脳裏に(あ――死んだな、俺等)全てを諦めた様な《貫通》の声が響いた。

<SIDE-Aren->
形成された門を開いた先では、金髪の青年が右腕に銀色の鎧を纏いファイティングポーズのまま固まっていた。
血気盛んで戦いの場を与えると誘えば協力してくれるだろうとシェディさんに言われていたが、よく考えれば血気盛んと言う事は俺達にも噛み付いてくると考えてもおかしくは無い、と言うか噛み付いてくると考えたほうが普通だ。
門を開いてその先で構えていた青年の姿を見たときに初めてそこまで考えが及んだのだが、何故だか青年――名前は確かリゼツ、だったか――は呆気に取られた様に動かない。
構えていた事から此方に噛み付こうとしていた事は分かるのだが、何故仕掛けてこないのかが分からない。否――仕掛けてこないのなら無駄な争いをしないで良いので此方としても助かるのだが。
まぁ、何にしてもとりあえず此方に戦う意志が無い事を伝えるべきだろう。
「構えている所を悪いが、此方に交戦の意思は無い。仕掛けてくるのなら応戦はするが俺達の目的は君と話をする事だ、それだけは先に伝えておく」
その俺の言葉に、固まっていた青年はハッとして表情をした後訝しげに此方に視線を向けてくる。まぁ、幾ら血気盛んでも流石にこの人数差で仕掛けてくる事もないだろう。あぁ、さっき固まってたのは人数差に気圧されたって所か?
(いや、人数差に気圧されるも何も此方の人数などこの世界に近づいていた段階で知られているだろう、別に我々は気配を弱めていた訳でもあるまいに、とは言え確かに構えておいて呆けるというのは何かしらの事情が伺えるが……)
「俺なんかに話しってなんだよ? つーかそもそもアンタ等俺に様があって此処まで来たのか? 態々五人で徒党を組んでよぉ? そもそも話がしただけならそんな人数は要らないんじゃねぇのか?」
人数が多いことで逆に警戒させちまったか? まぁ、どう思われた所でどうする事も出来ないんだし、話を聞いて貰えるように説得するしか無いか……
「人数が多いのには理由がある。話を聞いてくれるならそれについても説明する――そもそも話を聞くだけならそちらに損は無いと思うんだが?」
「まぁ、確かにそうだな――俺としては暴れたい所なんだが、流石に人数差を考えりゃ無謀なのは分かってる。別に死に急いでる訳でもないし、アンタの話ってのを聞くだけ聞かせてもらおうか」
血気盛んだと言われていたから一悶着あるかと思ってたが、案外物分りが良いと言うか、話が出来る奴で助かった。この様子だとすんなりと協力してくれそうだな――まぁ、説明をするのはいつもどおり、俺ではなくリズィ達なのだが。
「で、その話ってのはどんな用件なんだよ? あんたらが五人で行動してる事の説明にもなるんだったか?」
「まぁ、その辺の説明は俺じゃなくてリズィ――俺の仲間が説明する。自慢じゃないが俺は他人に説明するのがすこぶる下手でな、一応責任者みたいなもんだから、最初の交渉だけは俺がやってるんだが、途中からは丸投げさせてもらってる」
他人に分かりやすい様に説明するというのはどうも苦手だ。時間を掛ければ俺一人でも説明出来なくはないのだが、そんな非効率的な事をする意味はまるで無い。適材適所と言った所だろう。
(主よ……それは少し違う気がするぞ? と言うか何故説明の一つも出来んのだ、汝は?)
細かい事を気にするな。つーか出来ない物は仕方ないだろ、俺だって好きで説明下手な訳じゃねぇんだよ。
そんな内容の念話を《救い》と交わしている間にリズィ達の説明は始まっていた。

<SIDE-Rezeth->
リズィ達の説明を聞き終わった所で、俺は装甲に覆われていた左手の指を一本立てながら言葉を紡ぐ。
「成程、あんた等の事情って奴は良く分かった、ついでに言えば暴れられる場を提供してくれるってんなら協力しても良い――が、一つだけ条件つーか頼みがある」
彼等の話が本当であるなら、協力を惜しむ理由が無い。と、言うか基本的に探知能力が低い俺にすれば、暴れられる舞台を提供してくれるというだけで十分に魅力的な話であり、それを蹴る理由など何処に無い。
寧ろ此方から舞台を紹介してもらいたいぐらいなのだが、相手が此方に頼みに来ているというのならそれを最大限に利用すべきだろう。
「で、その頼みってのは?」
先ほどまで説明に参加せず黙っていた銀髪――リズィ達の説明ではアレンとか言われていたか?――が俺の言葉に反応する。
俺だって寧ろ協力したぐらいなのだから、無理を言うつもりは無い。唯、単純に今この瞬間にでも暴れたいと言う願望と、単純に彼等の力が気になったと言うそれだけの理由で、俺は今の俺の心に芽生えた願望を言葉にする。
「アレンって言ったか、あんた? アンタと今この場で仕合たい。命のやり取りとまでは言わないが、お互いに全力でだ」
「あー、別に構わないんだが……五人の中から俺を選らんだ理由は?」
予想外にあっさりと俺の望む返事をしてきた銀髪に少し面食ったが、相手をしてくれるというのなら是非も無い。
「アンタさっき俺に自分が責任者だって言っただろ? そういう立場に立つ奴が総じて一番強いもんなんじゃねぇのか? そうじぇねぇってんなら一番強い奴と仕合わせてくれ。誰が一番強いのかってのは重要だろ?」
「――そういう事なら、俺も黙ってる訳には行かないなぁ?」
予想外の場所から聞こえてきた声は、アレンを除く四人の内の一人――黒髪の青年、ジルトムとか言ったか――が紡いだモノだった。
「あー、なんか面倒な事になっちまったか、ひょっとして?」
その声にアレンは頭を手で押さえながら表情を曇らせている――そういえば、黒髪もアレン達に協力を求められて同行してるんだったか、そういえば?
「誰が一番強いか――確かに俺も大切な事だと思うぜ? 他の三人はどう思ってるか知らないが、少なくとも俺はお前さんと同じ意見だ」
「なぁ、ジルトムにリゼツ? 一応言っとくが、俺等の中で誰が一番強いかなんて決めるだけ無駄だぞ? どうせ宮殿に戻って他と合流したらEXとSSSが何人か居るし」
「それはさっきも聞いたけどよ、本当に強いのかよ、そいつ等? 俺は今Aクラスだがよォ? SSをこの手でふち殺した事もあんだよ、そっから高々二つ階位が違うだけだろ、大した差じゃねぇだろ?」
(一応言っておくが今の俺達はSSな、そのSS殺した時に階位上がってるからな)
うるせぇよ馬鹿、つーかそれならより余裕じゃねぇかよ?
「Aクラス? その割にはエーテルの保持量が多くないか?」
「ん? シェディさんにはSSって聞いて来たんだが違うのか?」
どっちも俺がクラスを間違えて事に食いついてくんじゃねぇよ、さっきもっと大事な話してただろうが!
「まぁそれは兎も角――SSSの強さは次元が違う、それと比べてEXクラスがどれ程強いのかは俺にも分からないが、SSSの強さは俺も身をもって経験してるんで断言出来る。だが、今は守護者の拠点に戻ってからの話をしてる訳じゃないだろ?」
断言する様に言う黒髪が言うが、他人が下す評価程当てにならない物も無いので気にしたりはしない。とは言え、先の話をしている訳じゃないという意見には賛同できる。
「そこまで言うならお前等二人で競えば良いんじゃないのか? お前等の行動を強制する権利なんか俺には無いから自由にすれば良いけど、生憎俺は守護者の一員なんでな、デカイ戦いが控えてる今、無駄にエーテルを消費する訳にはいかないんだ」
盛り上がる俺と黒髪を尻目に、冷めた様な表情で銀髪がそんな事を言い出した。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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