EternalKnight
四人の永遠者/三人目
<SIDE-Manaha->
門を潜りながら《光輝》をイヤリング型の待機形態から杖型の通常形態に移行させ「《luminosity》」戦う準備を整える為に短く詠唱する。
唱えると同時に、私の纏うエーテルで構成された衣服は発光しながらその形状を変え、ヒラヒラとしてフリルなんかのついた白を基調とした可愛げな衣装へと変質する。
毎度の事ながらどうにかならないのかな、この衣装……永遠者である以上、外見的には若いままだけど、精神的にこの衣装は結構厳しいモノがあると私は常々思っているんだけど。
と、言うか外見が成長して無くてもアウトなんじゃないかなぁ、とは思う。私が《光輝》と契約したのって16歳の時だし……こう言う可愛いヒラヒラした服が似合うのは10歳ぐらいまでなんじゃないかと真剣に思う。
(申し訳ありませんマスター、私の能力では基礎の身体能力を引き上げるにはその様な形で強化服を出す事でしか出来ないのです)
まぁ、それは何度も聞いてるから知ってるよ《光輝》別に貴方を攻めてる訳じゃなくて愚痴みたいなモノだから気にしないで。
(それは何度もお聞きしたのですが、やはりマスターが気にしていらっしゃる様なのでですね……)
それはまぁ、格好が格好だけに気にならなくなる事は無いけど……もう慣れたし《光輝》は気にしないで。一応コレ着る度にそういう風に思い直さないとその内恥じらいもなくなっちゃいそうだからやってるだけだから。
(それなら良いのですが……)
なんて《光輝》と話をしてる間に私は門を抜けて、その先に居る四人の永遠者の姿を捉えた。――まぁ、私に会いに来たというのなら、目標が門を形成して世界外に出るのを捕捉しさえすればそうするのが当然の対応なので、それについて驚く事は無い。
構えてない、どころか聖具の反応は消してないのに武装は解いてる――って感じかな? 流石に全員が一目見て形状を判断出来ないタイプの聖具の使い手だとは思えないし。
体の一部が聖具となっている人達や、不可視の聖具なんかも可能性としてはありえるのだけれど、四人居て全員がそういうタイプの聖具を持っていると言うのは流石に無い筈だし。
(可能性が零と言う事もありませんが、マスターの仰るように、まずそう言った類のモノでは無いでしょうね。仮に一人二人そういったタイプの聖具があったとしても《luminosity》を纏っている今なら、二人程度までなら何とでもなります)
なら問題ない――かな? 一応見た感じでは誰一人構えていないし、能力を待機させている訳でも無いみたいだけど、仮にも人数差は四倍もある訳だし、此方が多少警戒していても問題は無いよね?
(そもそも此方が姿を見せて尚仕掛けてこない事から考えれば、少なくとも交戦の意志は無いと判断できます――最も未だにその目的は不明瞭ですが)
「先に言わせて貰うが、此方に交戦の意志は無いし、君が居た世界をどうこうしようとも考えて居ない。俺達は唯、君と話がしたいだけだ。とりあえず、話だけでも聞いてくれないか?」
現れた永遠者の中の、巨大な剣を背負っていた銀髪の男の人が最初に口を開く。交戦の意思は無い、と言うのは状況的にみて間違いなさそうだけど、私と話がしたいというのはどういう事なんだろうか?
もっとも、こんな場所にまで訪れている以上、何かしら重要な話があると言う事だけは間違いの無い事実だと思うのだけど……果たして今始めて顔を合わせたような私と彼等にとっての重要な話とは何なのだろう?
ここに来ていると言う時点で、シェディさんに私の事を聞いて来ている可能性は高いというのは間違いない。その上で態々シェディさんが私達の事を話すというのはどういう状況なのだろうか?
――そう考えを巡らせる前に、もっと簡単な方法がある事に気付いて私は考えを中断し「わかりました、話を聞かせてもらいましょう」もっとも簡単に答えを得られるであろう方法を実行した。

<SIDE-Manaha->
「事情は大体分かりました――確かにそんな理由が在るならシェディさんが此処に私が居る事を貴方達に教えてもおかしくは無いですね――いえ寧ろ私としては教えてもらっていないと困る所でした」
リズィさんとフェインさんの二人に事情を聞いて、私は納得しながらそんな風に言葉を紡いだ。アレンさんとジルトムさんはその二人の説明に特に口を挟む事なく静かにしていた。
「えっと、困るってどういう事? そりゃ広域次元世界を《呪詛》が支配しちゃったりしたら皆困るとは思うけど――」
「それはそうですけど、単純に私の都合です――或いは、消えてしまいそうな世界なんて誰が支配しても気にも留めないかもしれないですけど、それでもやっぱり、ほんの少しでも私の生まれ育った世界をあるがままにしておきたいと、私はそう考えてるんです」
私の生まれ育った世界は、あと100年もせずに消滅する。それは避け様の無い事実だ――致命的にエーテルの薄い世界は消滅するしかない、それがこの広域次元世界のルールだ。
それを否定する気は無いし、抗おうとも思わない。だけれど、そうであるのなら、唯あるがままに自分の生まれ育った世界の行く末を見届けたい、それが私の小さいけれどたった一つの願いなのだ。
「消え行く世界を守る為に戦う――か。 良いんじゃ無いか? 俺達には無かった考え方だけど、そういう願いがあっても良いと思うぜ?」
私の願いを聞いて、ジルトムさんがそう言ってくれる。
「えっと、誘っておいて何なんだけど、貴方が離れたらこの世界を守る人が居なくなるわよ?」
リズィさんが心配そうにそう言ってくれるが、私の心は既に決まっている。それに――
「少しの間くらい私が居なくても大丈夫だとは思います。はっきり言っても消滅寸前の世界に興味を持つ人なんてそうそう居ませんから、特に問題は無いと思います」
現に、私が故郷を守り始めて数百年、誰かの訪れがあったのは実に片手で数えられる程――と、言うか今回をあわせて五回しかない。
自分でもたまに本当に守る必要とかあるんだろうか、とか疑問に思うことはあるけれど、一応私が居なければ滅ぼされていたかもしれない事も一度だけあったので、守る意味は少なくともあるとは今では思える。
今回離れている間にそういう人がまた現れる可能性は零では無いけれど、逆に言えば今まで通り限りなく零に近い状態であると言える。
「たぶん大丈夫――それに、どんなに大切な場所でももう直ぐ消えてしまう世界と、広域次元世界全て、そのどちらかしか守れないって言うなら、私は後者を選ぶよ。私の我侭で多くの人に迷惑を掛けるのは、もう二度と嫌だから……」
もう二度と間違わないと決めた――だからこそ私はずっと故郷を見守ってきた。どれだけ自分の侵した罪から逃げ出したくなっても、見守ってきたのだ。
それを盾にして間違う事はしたくない。私の力がどれだけの役に立つか分からないけれど、それでも私は間違っていないと思える道を進みたい。私と共に居てくれる《光輝》と共に。
「そっか――うん、一緒に戦ってくれる事を選んでくれてありがとね、マナハちゃん。あぁ、そうだ協力してくれるのなら改めてちゃんと名乗らなきゃね。私はSクラス《神聖》の契約者、穢れ無き物リズィ、リズィ=フォンケインよ、改めてよろしく」
「此方こそよろしくお願いするね。私はマナハ=フェイスラン、SSクラス《光輝》の契約者の光り輝く者マナハって名乗ってるの」
私とリズィさんが名乗りあうと、それに応じて「そういう事なら、私も名乗っておきましょうか――私はSクラス《法典》の契約者フェイン=フリード。法典結晶フェインと名乗っています」フェインさんが名乗る。
それに次いで「俺は断罪者ジルトム、Sクラス《断罪》の契約者のジルトム=クトナファだ。俺もアンタと同じでさっきアレン達に誘われた所なんで立場はアンタに近い。まぁ、よろしく頼むよ」ジルトムさんも名乗る。
二人が言い終わってから一呼吸ほどの間を空けて「そして俺がSSクラス《救い》の契約者、アレン=カーディナルだ。救世主アレンって名でも呼ばれてる」最後にアレンさんが名乗りを上げる。
そして名乗り終わると同時に間髪いれずに「所で、ずっと気になってたんだが、その服は自前じゃ無いよな? 否、似合ってる似合ってないって話じゃなく、結構な量のエーテルで構成されてるから気になったんだが、どうなんだ?」そんな事を聞いてくる。
「そうだね《光輝》の能力の一つだよ。名前は《luminosity》って言って身体能力の引き上げって言う効果も付与されてるけど、基本的には唯の防御服で間違いないかな――単純に似合ってないから、私としてはあんまり着たくは無いんだけどね」
別に、似合ってるとは端から私も思っていない。《光輝》との契約がもう少し幼い頃だったのならきっと少しは絵になる様な感じだったんだけど、それは言っても仕方ないよね……
「そう? 私はマナハちゃんには似合ってて可愛いと思うわよ?」
「別に、お世辞を言われても嬉しくなんか……」
似合っていると、言われてしまった……そういえば、この服を纏っている姿を敵対してる人以外の前纏った事って無かったんだっけ?
「いえいえ、リズィの言うとおりなかなかに似合ってますよマナハさん。コレはお世辞じゃなく我々、少なくともリズィと私の本音ですよ――アレンとジルトム君がどう思ってるかは、私には分かりませんがね?」
「そんな、でもこんなヒラヒラした服はもっと小さい子が来た方が映えると思うし……」
可愛いって言って貰えた、こんな綺麗な人に……ちょっと、じゃなくて凄く嬉しい。
「もっと小さい子が着たらそれはそれで可愛いかもだけど、それを着てるマナハちゃんが十分に可愛いのは事実だよ――流石に、私ぐらいになっちゃうと似合う似合わない以前の問題になっちゃうけどね」
「いや、そんな事ないだろ。マナハちゃんが着てるのも十分可愛いけど、リズィが着ても全然いけると俺は思うんぞ?」
確かに、アレンさんの言う通り、リズィさん程綺麗な人なら寧ろ似合うのかも知れない。私が着るのに抵抗を感じてる時点でリズィさんもかなり抵抗を感じるとは思うけど――それでも似合うんじゃないか私は思う。
「つまりところ結局は着る当人とそれを見る奴の感性って事で良いんじゃないか? と、言うか水を差す様で悪いんだが、一応急いで仲間を集めて守護者の拠点に戻るつもりなんじゃないのか、俺達? 話なら移動中に出来るだろ?」
呆れた様な声音で紡がれたジルトムさんの言葉に、誰も異論を唱える事は無かった。

<SIDE-Rezeth->
最後の一人を殴り飛ばした感触が消える前に「つまんねー」ととりあえず思った事を口に出してみた。
(つまんねーって、おまっ――相手をしてくれた皆さんに失礼だとか思わねー訳?)
その言葉に《貫通》が白々しい念を飛ばしてくるが、つまらない物はつまらないのだ、他に言い様が無い。
周囲を見渡すとその光景は死屍累々――的な状況であって別に誰一人死んでは居ない、単純に俺にボコされて意識をなくしてたり動けなくなったりしてる奴が山積みになってるだけだ。
(そりゃお前、一般人さんが相手だと、ドンだけ頭数が居た所でどうしたってお前さんが有利になるのは当たり前じゃんかよ――こう、スリルっていうか戦いを楽しみたいってんならそれこそ同じ永遠の騎士に手ェださなきゃ駄目っしょ?)
そんな簡単に見つかるもんかよ、永遠の騎士なんて。特別気配が強烈だから近くに居ればわかるんだろうけどよ――流石にそれしかヒントが無い状態で他の永遠者を探すなんて無理だろ、常識的に考えて?
(常識? 今、常識とか言った? それ程俺達に似合わない言葉って無くないか?)
否、そりゃ似合って無いのは認めるけどもさ、実際無理だろ、他の永遠の騎士を探すの?
(何処かの誰かの探知能力がクッソ低いからこういう事になるんだよ、つーか誰だよ、探知能力全く無い馬鹿は?)
いや、それお前の事だから。何自分は関係ないですよ、見たいに振舞ってるんだよ。馬鹿なのか、お前?
(リゼツに馬鹿って言われちまった……凄まじくショックだわ、俺)
そんな事で一々落ち込むな馬鹿、ってかお前どんだけ俺を見下してんだよ、一応お前の契約者だよ、俺?
(いや、馬鹿に馬鹿って言われたらショックだろ、お前も?)
ちょっと他の上位聖具探すわ――で、見つかったらお前を埋める事にする。
(いやいや、馬鹿と契約してくれる心の広い聖具なんて俺しか居ないからね――つーか永遠の騎士も探せないのにどうやって他の聖具なんて探すんだよ、馬鹿かよ)
馬鹿って二回言ったな、お前。つーかさっきから馬鹿って言いすぎじゃね?
(大事な事なので二回、つーか何度も言ってみました)
「なるほど、本気で埋められたい訳だな《貫通》?」
(本気で埋められたいって思ってる奴とか見た事あんの、お前? つーか声に出して言うのはちょっと怖いから勘弁してくださいマジで――で、それはそれとして、たった今お前に朗報が入ったぞ)
朗報? また唐突だな、何だよ永遠の騎士の反応でも捕らえたのか? あぁ、すまん探知能力皆無だったっけか、お前?
(割とマジな話なんでちゃんと聞いとけって。俺は普通の探知能力は無いけど《門を開ける事》ってのに関しては敏感なんだよ。あれは外の世界とそれぞれの世界を繋ぐ穴を開ける行為だからな)
……それで?
(誰かがこの場に《門》を開こうとしてる――勿論《門》を展開してる以上相手は間違いなく永遠の騎士だ)
伝わってきた《貫通》の念は俺の待ち望んでいた知らせだった。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

<Back>//<Next>

47/118ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!