EternalKnight
協力者達
<SIDE-Leon->
「――ってな感じで、魔獣の親玉である《呪詛》って野郎が何事か企んでる。詳しい目的は俺にも分からないが最高位の全て手に入れてやろうとしてる事が真っ当な事の筈は無いと俺は考えてる、だから、奴の行動を阻止したい」
複数の完全なる六を同時に扱うのはほぼ不可能だ――が《呪詛》は間違いなく何かしらの手段を用意している。《根源》を得る為に奴がした事を考えると、何の手も無く完全なる六を集めようと考えるような奴ではないのは明らかだ。
だが、不完全な《根源》と最後の鍵を手に入れた後での口ぶりから察すに、手に入れて直ぐに使える様になる訳では無いらしい。
と、言うか普通ならば複数の聖具を扱うにはその全ての聖具に認められる必要がある。果たして完全なる六の全てに認められる事等できるのだろうか?
無理だと、俺は思う。そもそも仮に俺が《終焉》を奪われたとしてシュウが《呪詛》の事を認める事があるとは、俺にはとてもでは無いが思えない。やはり、何かしら聖具側の意志を無視して己の力に出来る何かがあると考えたほうが妥当だろう。
そして、部下に準最高位を持たせながら自身はそれらを使おうとしない所から鑑みるに、最上位に対してしか有効で無いとか、何かしらの理由があると考えて間違いは無いだろう。
なんにしても、《呪詛》は現時点で《根源》を所持しているという事に変わりは無い――故に、対抗できるのは同じ最上位しか居ないだろう。
その為、ココで仲間や協力者を集う理由は一つ、魔獣の王である《呪詛》には驚異的な量の配下がいる事になる。下位の魔獣は数が集まろうと有象無象でしか無いが、そこに聖具を持つ上位の魔獣が加わってくると話は変わってくる。
それと戦う為に、今は少しでも味方が欲しいのだ。
敵が魔獣であるなら、この世界の全てにとっての敵であるならば、守護者も破壊者もハグレも無く共に戦う事が出来ると思っている。敵の敵は味方と言う考え方に過ぎないけれど、コレで手を取り合えると信じている。
「《呪詛》の率いる魔獣の群れと戦う為に少しでも多くの仲間が欲しいし、一人でも多くの協力者が必要だ――だから、俺達に力を貸して欲しい。守護者とか破壊者とかハグレとかそういう柵を忘れて、今は目の前の敵を倒す為に協力してほしい」
そういって、俺の話を聞きに来ている全員を見渡してから、守護者の首領としての立場から言うのではなく、この広域次元世界に住まう一人の人として、俺は頭を下げた。
「分かった、と言うより是が非でも協力させてくれ――俺は、仲間を殺したその魔獣の親玉とやらをずっと探していたんだ。まさかこんな形で情報が手に入るとは思っていなかった」
黒い髪を短く切りそろえた顔立ちの若い――とは言え、永遠の騎士である以上その外見どおりの年齢ではないだろうが――男がそんな事を良いながら、話を聞きに来ていた他の客を掻き分けてその人の壁の中から現れた。
「っと、悪い。自己紹介がまだだったな。俺はケイジ=クルイ。SSクラス《虚空》の契約者で、見ての通りハグレの永遠の騎士だ」
言いながらケイジはその手を握手でも求めるかの様に差し出してくる。その手に応じる様に此方も手を伸ばし握手を交わす、先ずは一人。そして、最初の一人が動けば――
「だったら俺も、手伝わせてもらおうかな――本当に破壊者でも良いって言うのなら、だけどな」と、ケイジのすぐ近くにいた赤髪の男が、口元にタバコを咥えたまま一歩前に踏み出しながらそんな事を口にする。
「あぁ、因みに俺はAクラス聖具《紫煙》の契約者シークス=スウォークンって言う。あんまり好きじゃないんだが、煙撒く者シークスって名乗らされてる」
咥えたタバコから紫煙を撒きながら名乗る男に続くように、さらに二人が名乗り出る。
「ならば拙僧も手伝わせて貰おうか。守護者も破壊者もハグレもその全てが関係なく協力して戦うと言うのであれば、拙僧も心置きなく手を貸せるというもの。拙僧が聖具《悟り》の力を持って、このヴァーシュ=ボーディニル微力ながら協力させて貰う」
「貴方達と共にこの世界の怨敵と戦う事を――私、アルフィア=シバーストとその聖具《誓約》の名の下にここに誓いましょう」
一人目が名乗り出ると同時に、次々に他の永遠者達が名乗りをあげる、広域次元世界、即ち生きているモノ達すべてに影響を与える戦いだからこそ、そうなるのが必然だと俺は思っていた。だが――四人目のアルフィア以降を声が上がる事は無かった。
アルアの声も、今の所上がっていない。無茶を承知で頼んでいたつもりではあったが、四人しか集まらないとは流石に思っていなかった。或いは、四人集まっただけでも喜ぶべきなのかもしれない。
そんな風に自分に言い聞かせる様に考えていると「……アル、あたしはレオンに力を貸したい――駄目かな?」そう小さくアルアに呟きかけるベアトリスの声が聞こえてきた。
その言葉にアルアの顔が難しいモノに変わるのが分かった。そもそも今回の相手は戦いは広域次元世界全ての敵になるのだ、中立であろうとするアルアが動かない理由にはならない。
ならば考えられる理由は一つしか無い――アルアが動けば、ベアトリスも動く。コレは当然であって必然の事だ。故に――
「お前は、どれだけ危険な事に手を貸そうとしているのか分かっているのか、ベアトリス?」
確かに危険だ――はっきり言って手を貸してくれた者達も守護者のメンバーも、誰一人犠牲を出さずに勝つ事は難しいかもしれない。否、きっとそんな奇跡みたいな事は起こらない。
犠牲を出さずに事を収めるのは絶対に不可能だ。話の規模からアルアならその程度の答えには至っているだろう。だからこそ――名乗りを上げれない。
アルアなら、アルア一人だったなら、直ぐにでも力を貸してくれると言っていただろう。だがアルアにはベアトリスが居る、守りたい者が居る。
そして、だからこそアルアは名乗りを上げられない。だがそれは、アルアから名乗りをあげる場合の話に過ぎない。
「そんなの分かってるわよ。でも、一人でも多くの力が必要だってレオンは言ってる――相手が魔獣だって言うのなら、守護者も破壊者もハグレも関係ない。だから何人かの人達はレオンに力を貸すって言ってる。だったらあたし達だって協力して良いじゃない」
感情に任せて言葉を紡ぐせいか、或いはアルアの考えを察っせていないのか、ベアトリスが紡ぐ言葉の論点はすり替わっている。
「別に中立を維持する為に力を貸す事を惜しんでいる訳じゃない。私だけなら力を貸して良いとも思っている。私はなベアトリス、唯お前が心配なんだよ」
「心配されるほど子供じゃ無い――そりゃ聖具のクラスだって低いし、戦力としては心元ないかも知れない、でもあたしは力になりたい。アルが力を貸して良いと思ってるのなら、尚更。あたしを理由にしないでよ、あたしは、アルの荷物で居たくないの!」
子を想う親と、親の力に成りたいと思う子。お互いが相手の事を考えるが故の齟齬。
「私は別にお前を荷物だなどと思っていない」
「だったら、レオン達に力を貸す事を認めて。勿論アルも一緒に、ね?」
だがしかし、親は子の成長を認めなければいけない――否、子の成長を願わない親など居ない。だから、結果は既に見えている。
「お前は本当に、我侭な娘だ。私の気も知らないで……良いだろう、私も手伝いたいとは思っていたのだし、お前がそこまで言うのなら二人でレオンに手を貸そう――レオンもそれで構わんだうろ?」
「あぁ、何であれ仲間は多い方が良いからな」
もっとすんなりとアルアとベアトリスなら力を貸してくれると思っていたが、どうやら俺の予想は外れたらしい。まぁ、こういう展開になる事もある程度は予測出来ていたのではあるが……
しかし、これで六人か……欲を言えばもう少し――否、可能なら何人でも――仲間が欲しい所なのだが、だからと言ってやる気が無い連中を仲間に加えても良い事など無い。まぁ、この人数集まっただけでも良しとするべきか。
「なら、アルアとベアトリス、それからケイジにシークスとアルフィアにヴァーシュの六人は俺達についてきて欲しい、一端守護者の拠点に戻って残してきたメンバーと合流、それから《呪詛》が居る《輪廻の門》へと向かう」
「待ってくれレオン、私とベアトリスはもう少しここに残る――流石に客をこの場で放り出す訳にはいかないからな。事情は察してくれるだろうから時間は掛からないだろうが、ココに話を聞きに来ていない者達も居るのでな、今すぐには動けない」
まぁ、手伝ってもらう側なのだし、多少の事は仕方ないか。
「分かった。なら俺達は先に宮殿――守護者の拠点に戻ってるから、準備が終わり次第こっちに向かってきてくれ」
ここでアルア達を待っていると言う手も無くはない、どの道ゼノン達が爺さんの所から戻ってくるまでは動けないのもまた確かだ。だが、それならそれで、その間は協力者達を宮殿で待っている守護者のメンバーに紹介でもしていれば良いだろう。
流石に《宿》の知名度を考えれば残っているメンバーの大半にアルア達を紹介する必要も無いわけだし。
「分かった――まぁ、話を聞きに来てなかった客にも誘いは掛けてみよう、事がこれだけ大きな問題と成れば、話を聞きにこなかった連中の中に何人か協力者を探し出せるかもしれんからな」
「あぁ、任せたぞアルア。まぁ、そうと決まれば俺達も宮殿に戻るとしようか」
その言葉に、ここまでついて来ていた守護者のメンバー達とセト、そしてアルアとベアトリスを除く協力者達はそれぞれの言葉で了解の意を示してくれた。

<SIDE-Aren->
今までに無かった重みを背負いながら、俺達は《情報屋》を目指して虹色の世界を進んでいく。俺の後を追うようにリズィとフェインさんがそれに続く。誰も口を開く事なく、黙々と目的地を目指す。
空気が、重い。別に今のこの状況で明るい話題を振りまこうと思う程馬鹿でも無いが、今のこの淀んだ雰囲気は何かが間違っている気がする。
背中の重みを託してくれたゼノンさんは、口数の多い人ではなかったけれど、こんな雰囲気を良しとする人ではなかった。だが、口を開く事が出来ない――この空気を払拭するとまではいかなくても、少しでも良くなる様な言葉を言いたいのに、言葉が出てこない。
故に、黙々と《情報屋》を目指して進む事しか出来ない。こんな事では駄目だと解っていても、言葉を紡げない。きっとリズィもフェインさんも同じ気持ちで居る筈だと思うのに、この重い空気を少しでも軽くする為の言葉が出てこない。
そして――ようやく《情報屋》に辿り着いた。ここまでに交わされた言葉は、殆ど無い。だからこそ、このタイミングを逃すわけにはいかない。
「着いたか……随分とかかったな、ここまで来るのに」
どちらでも応じれるような、独り言に近い言葉を紡ぐ。これを皮切りに会話が生まれれば良いのだが……
「そうだね、随分とかかっちゃった。それよりも、100年振りくらいだけど全然変わってないね、ここの雰囲気」
「確かに、あの頃から変わってないな、ココは。えっと、フェインさんもココに来た事ってあるんでしたっけ?」
「あぁ、割と良く利用させてもらってるよ。と、言うかシェディさんとはかなり長い付き合いでね、あの人には常連扱いされてるくらいだ――とは言え、情報料が安くなったりとかは無いよ。移転をする少し前にくれば移転先の座標を教えてもらえたりするだけさ」
だけ、ねぇ? それはかなりありがたい事な気がするが。実際問題、俺達がロギアを追っていた時にも一度突然移転されて探すのにかなり苦労した覚えがあるし……
なんにしても、会話が出来たのは良い事だ。俺の振った話題に二人とも応じてくれた辺り、やはりリズィもフェインさんも今の雰囲気には思うところがあったのだろう。
ゼノンさんの事は残念だったが、何時までも引きずっている訳にはいかないのだ。これから、シェディさんに仲間を増やす為の情報を聞いて、それを元に協力してくれる仲間を探さなければいけないのだから。
「じゃあ、入り口の前で話をしてるのもアレですし、中に入りましょうか?」
「あぁ、そうだね。シェディさんの事だから、私達がこっちに向かってきてるのは随分前から知ってるだろうし、この距離ならもう知覚出来てるだろうしね。流石に、ココでは話をしてて待たせるのも悪い」
そう言いながら、フェインさんは《情報屋》の入り口である門を開いた。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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