EternalKnight
<永久への旅立ち>
<SCENE114>・・・深夜
相棒……《EternalKnight》ってすげぇな――
(何を今更……)
四階、実質屋上からだから五階から飛び降りたのに無傷だぜ?
しかもどこも痛いとこもないし――
「グレン、ぼさっとしてるな。お前が道を説明しろよ?」
「俺の家ですよね?」
無言でアレンさんがうなずく。
「ならこっちだね、お兄ちゃん」
「……やっぱみんなに別れを告げるのは明日ですよね?」
「夜だしな……今の時間わかるか?」
「さっき時計見た時は三時でした」
「三時……って、この世界では遅いのか?」
「夜中……って言うより深夜ですね」
「そうか、なら今日はお前の家に戻って明日にでもすればいい」
「はい――」
って、言っても寝て起きても今日なんだけどな――
(細かい突っ込みをするのはどうかと思うぞ?)
まぁ、気にするな。
「それじゃ、俺の家に行きましょう」
「――でも、さっきみたいにすごい行動はしないでください」
四階から飛び降りたりするのを人に見られるのは……まずいと思うし。
「わかってる、どっちにしても夜で目立たないから問題ないだろ?」
そんなモノなのか……?
(どっちでも良い、家に戻るのではないのか?)
そうだったな。
「行きましょう、俺の家はこっちです」
そうして俺は歩きなれた道を進んでいった。

<SCENE115>・・・深夜
いつもの通りなれた道を無言で歩く。
同じ道なのに……どことなく違う道に見えるのは――
今が夜中で暗い為なのか、あるいは……もう二度と通る筈のない場所を――
無意識のうちに心に刻み込もうとしているからなのか――
誰も口を開かないまま、目的地……俺達の家についた。
――あれ?
「お兄ちゃん、電気がついてるんだけど……」
翼が……居るのか?
(それは中に入ればわかる事だろ?)
それもそうか――
俺はドアを開き……無言で中に入る。
「あ……待ってよ、お兄ちゃん!」
俺に続いて真紅も後を追ってきたようだ。
電気のついているリビングのドアを空けると……そこには――
「おう、やっと戻ったか……って!?」
リビングで待っていた聖五が驚いている……どうしたんだろうか?
「ずっと待ってましたよ? 紅蓮さん、約束しましたし――」
「聖兄ちゃん……と翼君だったよね?」
「あれ? どうして俺の名前を?」
「ちょっと待て紅蓮! どうして真紅ちゃんが生きてんだよ!」
「あぁ……そうだな、順を追って説明するか――」
「紅蓮さん、それで後ろに居る人たちの事や兄貴の事もわかりますか?」
俺の後ろには……真紅とアレンさんとリズィさんがいる。
「あぁ、全部説明する。でもそれは明日、みんなを集めてからにしないか?」
「どうしてだよ、紅蓮?」
「――二回説明するのが面倒だからな」
「って、そんな理由かよ!」
「おう、それにちょっと疲れてるんでな……休憩したいんだ」
「せっかくずっと起きて待ってたのに――」
「悪いことしたな……聖五、翼」
「まぁ、いいか。その代わり明日しっかり説明してもらうからな?」
「あぁ、わかってる」
「春樹達には連絡入れとく、場所は病院でいいな?」
永十君がいるからな――
「わかってるよ」
「で……だ、明日ってことはもちろん今日はもう寝るんだよな?」
「ソレがどうかしたか? 聖五」
「俺は帰るとして……お前と真紅ちゃんは部屋あるし翼は蓮夜さん達の部屋だろ?」
「ソレがどうかしたのか?」
「そこの二人の部屋はどうするんだ?」
――考えてなかった。
「なら……翼は俺の部屋、真紅は自分の部屋――」
「アレンさん達は親父達の部屋で、俺はソファーででも寝る」
「それでお前がいいなら俺はかまわんが? じゃあ今日は帰って寝るとするわ」
「おう、お休み」
「お休み――」
そういって聖五は部屋を出て行った。
「あの……紅蓮さん? なんなら俺がここで寝ましょうか?」
「いいって、お前は俺の部屋を使え」
「――わかりました、じゃあ俺も眠いんでそろそろ寝ます」
「――それじゃあ」
そう言って翼はリビングを出て行った。
「さて……アレンさん達はこっちです」
「別に外で待機しててもいいんだが? お前がここに居れば戻ってこれるしな」
「いいですよ。親父達が使ってた部屋空いてますから?」
「――ならその言葉、ありがたく受け取っておく」
「はい、自由に使ってください。それから真紅も今日はとりあえず自分の部屋で寝てくれ」
「うん、わかったよお兄ちゃん」
そして……この世界での最後の夜は更けていった。

<SCENE―Final―>・・・朝
「さて、コレで全員だな」
永十君の病室、見渡すと部屋の中には――
真紅、聖五、春樹、冬音、翼、永十君、アレンさん、リズィさん。
俺を含めて九人が一堂に会している。
「じゃあ、説明しようか……」
俺は、順を追って――
十人が最後の一人になるまで戦う争いの結末。
最後の参加者が生徒会長……翼の兄である蒼二であった事。
――蒼二を俺が倒したという事。
この闘いを起こした原因たる二人の事。
ソレを止めに来たアレンさん、リズィさんの事。
《EternalKnight》の事。
真紅が生き返った(?)過程など……あらゆることを喋った。
「そんなことがあったんですか――」
兄を殺した――
それを聞かされても平然としている翼は……それだけ会長が嫌いだったんだろうか?
「それで……紅蓮、お前はどうすんだ?」
聖五の問い、考えるまでもない、答えは……決まっている。
「どうもこうも決まってるさ、俺は……アレンさん達と行く」
「そうか……で、出発はいつになるんだ?」
コレも即答する――
「今日、いやこの話が終ったらすぐ……出発しようと思ってる」
「そんな! もう少しぐらいこっちに居てもいいでしょ?」
「冬音……落ち着けよ。それで紅蓮、本気か?」
「あぁ、そのつもりだ春樹。残りたくなったらいけないから――」
「何がいけないって言うんっすか? 紅蓮先輩」
「強い力を持つ俺がこの世界に残ると……魔獣が集まってくるからな」
「そっか、じゃあせめてぱーっとパーティーでも――」
俺は冬音のセリフを遮る。
「――悪い、ソレも無理だ」
「どうして!?」
「そんなイベントが……翔ねぇに気付かれないと思うか?」
「何で、別にみんなでやればいいじゃない?」
「翔ねぇに説明できるのか? 事実を?」
場が一瞬静まり返る――
「姉貴には、無理だろうな」
静寂を破ったのは聖五だった。
「――だろ?」
「そっか、じゃあ結局……お前の扱いってどうなるんだ?」
春樹の問い、まぁ……その疑問が湧くのはもっともだ。
「今回の闘いで何人か行方不明者が出ってるだろ?」
「――居なくなっても、それと同じように行方不明で処理されると思う」
「そんなのって……いいんですか!」
「いいんだよ、翼」
「もともと親父達は結婚に反対されて駆け落ちしてて親戚もいないみたいなもんだから」
親父達も死んでるしな――
「でも!」
「翼……紅蓮が決めたことだ」
「聖五、あんたはいいのかよ……」
翼がつぶやく。
「さん付けしろよ……ったく」
「翼、俺の家は誰も住まなくなる、使いたければ好きに使え」
「紅蓮、姉貴に怪しまれると思うぞ?」
(相棒……もっと考えてから発言しろ)
すいませんねぇ、はぁ……かっこ悪いなぁ俺――
「すまん、翼。家は無理そうだ、お前の家は一人暮らしだろうから――」
「ずっと……迷惑かけてる訳にも行きませんから」
「すまんな」
「誤る事じゃないですよ」
「そこ、なんか三人で会話してるみたいだけど――」
「俺ら参加できないんだが?」
「そうよ、春樹の言うとおりよ、最後なんだし……」
「そうだな、じゃあ柄じゃないけど最後に一言ずつ――」
「まず……春樹と冬音」
「なんつーか最後の一言に向いてないしありきたりな言葉だけど……幸せにな」
「私からも、二人とも幸せになってくださいね♪」
「――まだ結婚するって決まったわけじゃないんだけどなぁ?」
「そうよ、真紅ちゃんまで――」
二人して顔を赤らめていってもあんまり説得力ないっての――
「春樹、そのまま冬音と結婚して……ロリコンを治せよ?」
「余計なお世話だ、シスコン!」
「このやろ……言いやがったな!」
「あわわ、お兄ちゃん、落ち着いて」
「冗談だっての。さて次は……永十君だけど」
聖五の真似みたいだけど――
「まぁなんだ、またこんな感じで悪いけど……頑張って夢を追いかけろよ?」
「君の歌声なら……絶対に夢をつかめると思うから――」
「はいっす!」
はい、にも〜っすをつけるんだ――
「なになに、永十君って歌手になるの?」
「おい、冬音」
「まぁ、目指してるだけっすよ」
「でも……あの上手さならなんとなくわかるかなぁ」
そういえば……あの時のカラオケに冬音も来てたんだっけ?
「冬音がそんなに言うレベルなんだったら、俺も行きたかったなぁ」
「そこまで上手くないっす、それを言うなら先輩の方がうまかったっすよ?」
「何いってるの、聖五なんてね、中学までは酷かったんだら――」
「やっぱりそうなんっすか?」
「言ったろ? 初めはたいしたことなかったって?」
「いや、アレはむしろ……下手の部類に入るだろ――」
そうだったな。中学ぐらいの時は俺より下手だったのに――
結局高校入ってからは一回もカラオケの最高得点で勝ってないんだよなぁ……
「春樹、余計な事を言うな!」
「まぁ……でもアレだ」
「その聖五が上手くなったんだから……君ももっと上手くなるさ」
「ありがとうございますっす」
「次……翼だけど、まぁ強く生きろよ」
「投げやりな言い方だな、おい?」
「投げやりじゃねーよ」
「アレだ、この一言には俺のいろんな想いが詰まってだな――」
「紅蓮さん、がんばって見ます」
「そこ、まともに反応しちゃいけないって!」
「最後は、聖五――」
「わざわざ、言うこともないだろ?」
「――今更、俺はお前の選んだ道をどうこう言うつもりはねぇよ」
呆れたように言う聖五。
「なんつーか……お前とは長い付き合いだったな」
「そうだな……俺達が保育園入る前ぐらいか? 俺が引っ越してきたのは?」
そうだな、アイツが引っ越してくるまで……遊び相手が真紅しか居なかったんだよな――
「そうだったか? 詳しく覚えてねぇけどさ、引っ越して来てからずっとお前と一緒だったよな?」
「そうだな――」
「「――どれだけ離れても俺達は最高の親友だ」」
声が重なり……しばらくの静寂。
「「ぷっ……くっ……くくく」」
「そこ! 笑ってんじゃねぇ」
春樹と冬音が笑いを押しこらえている。
「だってぇ、あんた達そういう柄じゃないだしょぉ?」
「むっ……確かに、そうだけどさぁ。雰囲気ってあるだろぉ?」
「まぁまぁ、いいんじゃないか?」
「よくねぇ! まったく感動的な場面だぞ? 今のは――」
「とてもそうは思えないけどな……」
「お前等がぶち壊したんだよ!」
(最後までにぎやかだな――)
まぁ、なんだかんだで俺達は最後までこんな感じな訳で――
ソレが一番俺達らしいからだけど。
「――さて、それじゃあ、そろそろ行きましょうアレンさん」
「――もう行くのか?」
「これ以上はマジで残りたくなるかもしれないから――」
「そうか……、じゃあ門を開くぞ?」
「お願いします、真紅……行くぞ」
「――うん」
「こんどこそ、お別れだな」
「だな――」
「あぁそうそう、グレン。その気になれば少しくらい戻ってはこれるぞ?」
「へっ?」
今なんて――
「いや、この世界がある限り戻ってくることは可能だぞ?」
「はい?」
「まぁ休暇がもらえるか仕事で近くの世界まで来たらだけど――」
休暇とかあるの?
「それに彼等に会うなら……彼等の生きてる間って条件がつくけど――」
「そう……なんだ――」
「なんだよ、じゃあまたあえるっって事じゃんか」
「条件は簡単じゃないって事は覚えとけよ?」
「はい! じゃあ……《またな》みんな!」
「おう、またなと言った限りは……俺らが生きてる内に一回は戻ってこいよ!」
「そうよ、戻ってこないと承知しないんだから!」
「お前が次来るまでに……冬音と幸せになってロリコン治してやらぁ!」
「――だから、見に還って来いよぉ!」
「紅蓮先輩、俺も必ず歌手になるっすから、聞きに還ってきてくださいっすよぉ!」
「紅蓮さん。俺は……必ずあんたみたいに強く生きてみせる――」
「だから、いつかまた、見に還って来てください!」
「当たり前だよ! 俺は約束を破るような男じゃないからな!」
「私もお兄ちゃんと一緒に戻ってくるから、みんなまたねぇ!」
みんなに背を向ける――
最後にもう一度だけ振り返ろう思ったけど、未練がましいからやめた。
だって、こいつらとはまたいつか会うんだから――
そして、俺達は門をくぐった……

――EternalKnight
―――ChapterFirst
――――――TheEnd.

―Epilogue―
「行っちまったな……」
最初に口を開いたのは聖五だった。
「そうっすね――」
「さて、春樹……宣言したからには――」
「わかってるさ、俺はお前を――」
「そうじゃなくて、しっかりとロリコンを治しなさいよ?」
「うぅ……まぁ、善処するさ」
なんだか漫才みたいだな……
「聖五……さん」
ゆっくりと口を開く。
「やっとさん付けできるようになったか、翼?」
「俺に……俺に……」
言葉を、ノドの奥から搾り出す。
「勉強を教えてください!」
「はい?」
聖五……さんは素っ頓狂な声を上げた。
「いや、だから勉強を教えてくれって」
そんなに驚くことも無いだろうに――
「俺は頭が悪い、でも紅蓮さんが行ってた高校に行きたいんだ!」
自分の思ってた事をぶちまける。
「――仕方ねぇ、わかったよ。俺に出来る範囲で教えよう」
そう仕方なさそうに言った。
「ホントか!」
「ただし、家庭教師料はいただくぞ?」
「……まぁ、俺は結構金あるし」
元々家庭教師は金がかかる物だし――
「冗談だっての、真に受けるなよ。金なんか無くても教えてやるよ」
冗談……か。
「ありがとう……ございます」
「おっ、礼儀正しくなってんじゃねーか♪」
楽しそうに言う――
この人はホントに親友との別れた後なんだろうか?
あれだけの別れで満足――
そうだった、あれは離別じゃ無かったんだ。
「――俺もがんばって歌の練習でもするっすかねぇ」
そんな事を考えていると、永十さんの声も聞こえてきた。
「じゃあ、そろそろ解散といこうか?」
「だな、じゃあ……またなみんな!」
そう言って、みんなで病室を後にした。

―――to be continued
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