EternalKnight
<平和な日々>
7月14日土曜日
<SCENE007>――朝
窓の外から差し込む光が、俺を眠りから覚まさせた。
「んあっ……朝か」
今日は土曜、学園は午前中の四限……即ち半日のみで終わる。
どうせなら休日にして欲しいのだが、そんな不満を言ってどうこうなる問題じゃない事もわかっている。
ベッドから身を起こして、手早く着替えを済ませ大きく伸びをする。
「うっし、準備完了!」
ふと、自分の右の人差し指に目線が止まった。
「やっぱ、夢なんかじゃないよな」
否、覚悟はもう決めたんだ、相棒と共に戦うってな。それよりも今は早く真紅を起こさないと……
自分の部屋を出て、直ぐ隣の真紅の部屋の前に移動し、いつのもようにノックをする。
[こんこん]と、軽い音が鳴り廊下にも音が響く。まぁ、別にコレはしてもしなくても同じ気がするが。
「起きてるかー、真紅ー? 入るぞー!」と、そう言って俺は返事を待たずにドアを開け、中に入る。
――が、やっぱりいつもどうりまだ寝てるか……
視線の先のベッドの上で寝巻き姿の真紅が寝息をたてている。
「起きろ真紅! 今日は土曜だぞ!」
眠っている真紅に声をかけると「すぅ……土曜はぁ――Zzz……お休みぃZzz」との返事が返ってきた。
勿論、いつものことなので、返事が返ってきた所で起きていないのは承知している。
故に「それは去年までお前が通ってた中学の話だ! 起きろって!」と、先程よりも少し声を大きくして呼びかけながら、肩を掴んで揺さぶる。
それでほんの少しでも脳が働き始めたのか「Zzz……うにゅぅ……?」なんていいながら起き上がる。
そして、座ったような姿勢で「おはおー……お兄ちゃんZzz……」と、言った。が、まだ寝ぼけてるみたいだ。ちゃんと発音が出来てない。
なかなか起きないな……ならば、物理的刺激を加えて目を覚まさせるのみ――
開いた指を中指だけ折り、その中指を親指で止め、引き絞る。そして、引き絞ったそれを、真紅の額まで持っていき――
「ってい!」と、小さな叫び声を上げて、引き絞っていた中指を開放する。
すると、中指は開放され、[ペチン]と言う、微妙な音を鳴らし真紅の額にデコピンを炸裂した。
「!ッいた」
一瞬、痛みからか真紅の瞳が開かれるが、直ぐに再び閉じてしまった。
だけど、思ったより効いてるぞコレ。よし、ならばもう一発――
もう一度、真紅の額の前で、中指を引き絞り、開放する。
今度は先程より強めに、[ペチッ]という音が鳴り、真紅の額にクリーンヒットする。
すると「うにゅぅ……痛いよぉ……お兄ちゃん」と目を擦りながらむくりと真紅がベッドから立ち上がる。
「目は覚めたか?」
その真紅を見つめつつ、問いかけると「他の起こし方……無いの?」等と少し涙目で聞き返された。
しかし、そんな顔をされてもなぁ……起きなかった自分が悪いんだし。
「起きなかったからなぁ」
「うぅ……」等と、真紅が言っているが、真紅が起きた以上、俺がこれ以上ここにいる必要は無い。
「さて、それじゃあ早く着替えて降りてこいよ?」
そう言い残し、部屋を後にして、階段を下りてリビングに向かった――
「さて、パンでも焼くかな?」
トースターに食パンをセットし、コップを用意して牛乳を入れる。
しばらく待っていると――
「おはよー、お兄ちゃん」と言いながら、まだ眠そうな真紅、がリビングに入ってきた。まぁ、これもいつもの事か――
[チンッ!]と、真紅が入ってきて数秒後に、トースターが鳴り、焼きあがったパンが飛び出した。
「ひゃう!」
入ってきて直ぐに、それも完全に眠気が取れていない状態で突然鳴ったトースターの音で、真紅が飛び上がる……なんか面白いなぁ。
しかし、苦笑している俺に気づき、頬を染めた真紅に「もぉ……笑わないでよ、お兄ちゃん!」と、怒られてしまった。
まぁ、その怒っている姿も可愛いのだが――
「悪い悪い、さて……さっさと食うぞ?」
「仲いいなぁ、うらやましいかぎりだよ」
「どわ!」
瞬間、いるはずも無い第三者の声を聴いて、情けなくも声を上げてしまった。
「そんなに驚かなくてもいいだろ?」
声の主は聖五。振り向くと、いつの間にか俺の背後に立っていた。
脅かしやがって……等と思いながら、パンを口に運ぶ。
「何だよ聖五、入ってくるなら……モグモグ、せめてチャイムくらい……ムグムグ、鳴らせって……モグモグ」
「気にするな、俺とお前の仲だろ?」
ちなみに聖五(と翔ねぇ)の家は内の直ぐ隣のお隣さん、早い話が腐れ縁だ。
「親しき仲にも……モグモグ、礼儀ありって言葉……ムグ、知らんのか?」
「……そう思うなら食いながら喋るのやめろよ」
その聖五の言葉を聞き流しながら、コップに注がれた牛乳を口に運ぶ。
「ゴクゴクッ――っぷはぁ……んで、翔ねぇは?」コップに入った牛乳を一気に飲み干し、聖五に問いかける。
「ああ、姉貴ならもう行ったぞ」
「あっそ」
まぁこれも、いつもの事だし。
さて、俺はもう食い終わったが真紅はまだもう少しかかりそうだなぁ。
などと、視線を真紅に向けながら、思った。

<SCENE008>――朝
「食うのが遅いって」
結局俺が食い終わった五分程後に、真紅がやっと朝飯を済ませ、もろもろの準備をして今に至る。
俺の言葉に真紅は頬を膨らませながら「だってぇ……」と呟いていた。
「仲いいねぇ、毎度ながら」
俺と真紅の会話を聞いていた聖五がいつも通りの感想を漏らすが、それを聞き流しながら、俺は家の鍵をかける。
そして、かけた鍵をポケットにしまいこみながら聖五に時間を尋ねる。
俺の問いかけに聖五は制服の内ポケットから携帯を取り出してサブディスプレイを見て「8時丁度だな」と、答えながら直ぐにケータイを内ポケットに直した。
八時……まぁ、その時間ならまだ大丈夫だろう。
「まだ走らなくても大丈夫だな」
その俺の言葉を聴いて少し安堵したように「そうだね、お兄ちゃん♪」と、真紅が微笑みかけてくるが――
「でも早足な、お前の食うのが遅いからなんだぞ?」と、切り替えした。
その一言にまたも「うぅ〜」と、真紅が再び頬を膨らませる。
「……紅蓮、さっさと行くぞ?」
俺と真紅のプチ兄妹漫才(?)を見ていた聖五があきれたように言って、先を歩き出した。
「ういよ」「はーい」
その後を追う様に、俺達は早足でいつもの場所に向かった。

<SCENE009>――朝
「遅いぞ!」と、春樹の怒鳴り声が響く。否、いつもはテメェのが遅いだろ……こんな時だけ文句を言うなよ。
「ごめんなさい、私の食べるのが遅かったから……」と、しょんぼりした様に真紅が言うと「あぁ、真紅ちゃんは気にしなくていいって♪」等と笑顔で答え返していた。
コイツとは、聖五ほど付き合いが長い訳じゃないが、それでもかなりの長さの腐れ縁になる筈だ。
で、彼女持ち……まぁソレが冬音だから悔しくもなんとも無いが。
ちなみに、ロリコンでもある。じゃあなんで冬音と付き合ってるんだろうか? と本気で思う事もしばしばあるんだが……まぁ誰と誰が付き合おうがその辺は自由だけど。
等と、春樹について思考を巡らせていると――
「おはようございます紅蓮さん、聖五さん、真紅」と、声を掛けられる。
聖五は即座に「おはよう九門(くもん)さん」と返答し、それに若干遅れるように、俺も「ああ、おはよ風見(かざみ)ちゃん」とすばやく返答した。
因みに、ロリコン(春樹)の妹で真紅と同い年でもあり、馬鹿な春樹と違ってしっかりとしている。
と、これまた思考を巡らせていると「おい、のんきに朝の挨拶してる場合じゃない、早く行くぞ!」と、聖五が言う声が聞こえた。見れば、少し駆け足で先を行っている。
「行こ! お兄ちゃん」と、その姿を追う様に真紅が俺の腕を引きながら走り出す。
「そうだな、さっさと行くか」と、腕を引っ張られながら、俺も軽く走り出す。
「お〜い、三人とも〜。俺は無視か〜?」等と、後ろから春樹の声が聞こえてきたがあえて無視。
「はいはい、馬鹿言ってないで早く行くよわよ、兄さん」
まぁ、とにかく、俺達は学校に向かって走り出した。

<SCENE010>――朝
「到着っと」
途中までは走っていたが、それによって少し余裕が出来たので、途中からはいつも通り、五人で談笑し、その間に学校に到着した。
「時間は……20分かぁ」
三年の校舎の屋上にある時計を見ながら聖五が呟く。
「ちょっと早めだな」
しかし、コレならもう少し歩いても大丈夫だったな……まぁ早いに越した事は無いんだけど。
「そうそう、いつも誰かが遅いから。あっ、真紅ちゃんじゃないよ?」
等と横で春樹が騒いでいるので「いつも遅れてるのはテメェだろ?」と、一応突っ込んでおく。
「何言ってるんだ紅蓮? 風美もだろ?」
しかし、コイツはとぼけた顔で何をふざけたことを抜かしてやがるんだ?
「私が遅れるのは兄さんが遅いからだけど?」
「そうだよ、風美ちゃんは別に悪くないぞ?」
「そうそう紅蓮の言う通り、遅いのは全部春樹が悪いんだって♪」
と、せっかく会話が盛り上がってきたが、校舎が違う真紅と風見ちゃんとはココでお別れだ。
この学園では学年ごとに違う校舎を使用するのだ。理由は……知っている奴もいるだろうが、少なくとも俺は知らない。
「それじゃあ、放課後に校門で待ち合わせね! じゃ、風美ちゃん、行こ!」
「それでは失礼します」
それぞれそう言って、真紅と風美ちゃんは旧館の方へと走って行った。
「やっぱシスコンだなよなぁ、紅蓮って?」真紅たちが見えなくなってから、聖五が呟く。
「うるさいぞ、聖五!」
「いやいや……俺も聖五と同じ意見だな」と、春樹もうなずいている。
「やっぱそう思うよなぁ?」
と、言うか一体この掛け合いをするのは何度目だ?
「うるさいぞ……、ったく俺等もさっさと行くぞ!」
そういいながら俺達も本館に駆け込んでいった。

<SCENE011>――朝
[キーン、コーン、カーン、コーン]と、聞きなれたフレーズの音が響き、朝のHRが始まる。
事務的な連絡などがされる中、俺は昨日の事を思い出していた……聖具や魔獣について――
今、俺の右人差し指にはまっている、銀の指輪……《創造》と言う名の聖具。俺の命の恩人(人?)で、同時に今では生死を共にする相棒でもある。
「――ン君、紅蓮君!」
――って今は学校だった。
「はい!――ってなんだ翔ねぇかよ、他の先生かと思ってあせったじゃん……か」
だが、ほっと安堵したのは一瞬。翔ねぇは「ほーぉ……」と、青筋浮かべてながら俺を見て微笑んでいる。
「じゃあ、紅蓮君はぁ〜私のHRだとぉ、しっかりと聞かなくてもぉい、いと思ってるわけねぇ♪」
にじり寄るように、翔ねぇが近づいてくる。ここは何とか弁解をしなければ……不味い事になる。
「いや、別にそこまで言って――」――無いって、と言う前に「そ・れ・か・らぁ♪」と言葉を遮られる。
そしてこの流れ――しまった、またやっちまった!?
「学校で《翔ねぇ》と呼ぶなと……昨日も言ったでしょうがぁ!」
今日もまた、ハリセンで頭部に予想通りの強烈な一撃が[スパーン!]と、心地よい音を鳴らしてヒットした。
「いってぇ!」
その一撃に悶絶する俺を尻目に「連絡終わり、そんじゃねぇ♪」と、言って翔ねぇが教室から去っていく。
俺を叩いてストレス発散でもしたのか、すがすがしい笑顔で教室を出て行った。
「はぁ……」
あんなのが教師でいいんだろうか?
等と思いつつ、俺は机に突っ伏した。

<SCENE012>――昼
[キーン、コーン、カーン、コーン]と、正直今まで累計で何回聞いたか解らない音が校内に木霊する。
そんな中、机の上に突っ伏し、冬音が惰眠を貪っている。
「起きないな」そんな冬音を見ながら、聖五が呟いた。
「そうだな」と、返事しながら、考える。
しかし話を聞いてない俺がハリセンで叩かれて、爆睡してるこいつが何故注意すらされないんだろうか?
「ぜってぇ間違ってる……」と、自然に言葉が漏れる。
「姉貴の事か?」と、察しの良い聖五が問いかけてきたので無言で俺は肯いた。
それを見て「まぁ、言いたいことは言わなくてもわかる」と呟いた。
察しのいい親友を持つっていいことだなぁ。と、「聖五、そういえば部活はいいのか?」
「そうだなぁ……行ってくる」と、言い残して、聖五が教室を出て行った。
さて、どうしたものかな? 真紅も待ってるし、俺も声かけずにいくか……
「そうと決まれば俺も――」――帰ろう、と思い、ドアに手をかけようとすると、突然、教室のドアが開いた。
「冬音ねぇさん?」そう言いながら、ドアを開けて入ってきたの三瀬琴未(みせ・ことみ)。
冬音の双子の妹だったりして、顔はそっくりだが、性格がまったく違う。
……なんか頬が朱に染まっているな……理由は知らないが。
「あ、紅蓮さん、冬音ねぇさんがどこにいるか知ってます?」
「ああ、そこにいるぞ?」と、俺は冬音の机に視線を動かした。
「ありがとうございます」
そう言って、ペコリと頭を下げる――姉と違ってやっぱ礼儀正しい子だなぁ。
そう言えば、さっき出て行った聖五とすれ違った筈なんだろうが……どうして聖五に聞かなかったんだろうか?
まぁ、どうでもいいや、真紅が待てるだろうし、俺は先に帰ろう。
「んじゃ、俺は帰るから」と言い残して、俺はその場を後にする。
背中から「ありがとうございました」と、琴未ちゃんの声が聞こえたので、振り返り「別にたいした事してないよ、じゃそう言うことで」と言って、今度こそ教室を出て歩き出した。
しばらく歩いていると、教室から「もぉ、姉さん起きて! 一緒に買い物して帰る約束でしょ!」と、言っている声が聞こえてきた。
って、言うか約束してたのに爆睡かよ! 等とそんなことを考えながら、俺は校門前に向かった。

<SCENE013>――昼
校門で真紅と合流し、何処にも寄ることなくそのまま家に帰ってくる。
「帰宅〜!」
「昼飯はカレーだったよな?」と、俺の問いかけに、「そうだよ〜」と、言いながらう真紅がうなずく。
「じゃ、準備よろしく」
「はーい♪」
そう言って、真紅がキッチンに入っていった。
「さてっと、今日は何するかなぁ」と、午後の予定を考えながら、テーブルに着く。
その途中で、ふと右手の指輪に視線が移った。守る為の力……か。
「こいつの契約者になった以上戦いは避けられないよな」
《創造》の話だと聖具の中には契約者の精神を乗っ取る物もあるらしい。
話し合いが通じる相手も中にはいるらしいが、その割合が4:1じゃ前途多難だよなぁ。
俺そしては、誰かと戦うなんて事はそんなにしたいわけじゃない。でも、相手が襲ってくるようなら、それを全力で退けるつもりでは居る。
「お兄ちゃーん、出来たよー♪」と、真紅がキッチンから俺を呼ぶのが聞こえた。まぁ、カレーは既に出来てるから、直ぐに呼ばれるのは不思議でも何でも無いんだが。
「おう、今取りに行く」と、答えて、イスから立ち上がり、キッチンに入っていく。
考えるのは後だ――今は飯だ! 飯! そう、まだ考える時間はいくらでもあるのだから。

<Interlude-???->
「十人、そろったようだな」と、十人目の担い手が契約するのを見つめながら言った。
「ああ、どれが勝ちそうだと思う?」
そのロギアの問いに、素直な感想を述べる。
「一と二あたりが妥当だろう。それに五もなかなかによいな」
実際には聖具の能力の相性もあるが、総合的に見れば先にあげた三人が妥当だろう。
戦いたいモノだな、是非とも力をつけた奴等と殺し合たい。
「そうか、一本が進化したところで私の能力もほぼ意味を失うしな」
「では、何か賭けるか?」と、酔狂で言ってみたつもりだったが――
「へぇ、なかなか面白そうじゃないか」と、ロギアが我の話に乗って来た。
「お主が乗ってくるとは思わななんだ……それで、何を賭けるのだ?」
「そうだな、最後の一人と戯れる権利でどうだ?」
「面白い――乗るぞ? その勝負」
「で、誰にかける?」
「拙者は……一番だな」
「なら俺は二番でいい」
十人の中から生き残ると予想出来る者を互いに選ぶ。
「で、始めに進化するのは?」と、我の問いかけに無言でロギアが指を四本立てる。
「なるほど」
面白くなりそうだ……
「言い忘れたが《運命》で介入などするのでないぞ?」
「そんな無粋なことはしないさ、それにBクラス以上の聖具には効かんのは知ってるだろ?」
「それもそうか……」
あぁ、戦いたい。奴等と我のこの《闘神》の力をぶつけ合い戦いたい。期待しているぞ……一番のモノよ。
汝のその聖具の進化した力を我は楽しみに待っているぞ――

<SCENE014>――夜
「ふぅ……」
風呂上がりの自分の部屋で溜息をつく。
「今日は特に何も無かったか――」
十人の聖具の担い手……俺以外ってどんな奴等なんだろうか?
《創造》の話だと聖具は全てこの街にあるらしい。つまり、知り合いが聖具の担い手である可能性は十分にある。
「外出しても……大丈夫なのかな?」他は解らないが、《創造》は大丈夫だと思う。多分一目見ただけじゃ、聖具の担い手だとはわからない筈だし――
「どうするかなぁ?」と、まぁ、考えても仕方ないか……
「することもないし、宿題でもやっとくかなぁ」そうだ、もうじき夏休みが控えている以上、早くやって今年は遊びとおせる様にしないとな。
勉強をすること自体にはあまり乗り気にはなれなかったが、休みの為に宿題を消化することにした。
イスに座り机にノート類を開いて伸びをする。
「持ち分はあと10ページだ、やるぞぉー!」
特に何か意味がある訳でもないが、呟いてから問題に目を向け、問題を解く事にした。

<SCENE015>――夜
「お―――ゃん」
声が聞こえる……真紅の声?
「お兄ちゃん?」と呼ぶその声は、やはり真紅のモノだった。やっぱりそうだ、どうしたんだろうか?
「こんなところじゃなくてちゃんとベッドで寝ないと風邪ひくよ? ねぇってば」そう言われながら揺らされる、って何? こんなところ?
「おーい……ってやっと起きたよ」真紅の言葉に反応して瞳を開き体を起こす……なんで俺、こんな所で寝てるんだっけ?
枕のようにしていた腕を退かすと、その下からは問題集とノートが広げられたままだった。直ぐ近くに転がっているシャープペンの芯も出たままで転がっている。
……勉強してたら力尽きて寝ちまったのか? だめだめだな、俺。
「もう、そんなに疲れてるんだったら早くベッドで寝てね?」と、座っている俺を真紅が見下ろす形で言ってくる。ホント情けないなぁ……俺
「はいはい、ってもう11時じゃんか? お前、朝弱いのに寝なくていいのか?」
その俺の言葉に「弱くないもん!」と、またも頬を膨らませる。うーん、この癖は直したほうが良いんじゃないだろうか?
「はいはい、もう寝な、俺もコレを片付けたら寝るから」勿論片付けるは、問題をやることでなく、仕舞う方の片付けるな訳だが。
それを知ってか知らずか、真紅は「はぁい」と言って俺の部屋を出て行った。
「さてっと、俺も寝るか」そう呟いて、さっさと机の上を片付けて、俺はベッドに倒れこんだ。

――to be continued.

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