EternalKnight
絶望の来訪者/聖具創造
<SIDE-Curse->
カノンを除く王下の六人を集め、今後の指示を出している最中にそれは起こった。《七鍵》の内に収められた《根源》の力の脈動を感じる。これは……成程《創世》の封印が解けたのか。
しかもその場所は守護者の拠点付近だ。《終焉》は何を思ってか拠点を離れている上、ココからでは距離があるが、丁度カノンがそこに居る。奴の下へゲートを開けば守護者の拠点までは一瞬だ。
《終焉》と《創世》……《根源》にとって相性が良いのは《終焉》だが、だからこそ《創世》が経験をつける前に――覚醒直後の今この瞬間を――狙うのが最良だ。
そもそも守護者の拠点付近であるならこちらの敵、即ち《終焉》の味方である可能性が高い。ならばやはり、《終焉》と合流する前に叩くべきなのは明らかだろう。
「全員、先程までの指示は忘れろ、状況が変わった。アルカスを残して全員カノンの元へゲートで飛ぶぞ。守護者拠点付近で《創世》の復活を確認した」
《根源》や《終焉》そして《時空》と《必滅》に関しては互いに四竦みを形成しているのだが《創世》と《真理》の二つはその輪とは無関係な能力であるとされている。
《七鍵》と言う器で《根源》を制御して運用している以上、相性が良い《終焉》以外と真っ当な状態で正面から戦うのは非常に危険だと俺は考えている。最も、それも二つ目さえ手に入れれば話は別なのだが――
「あー、王様? ウチは《刹那》と付き合い長いから分かるねんけど、たぶんアイツはゲート開かへんと思いますよ?」
そんな俺の思考をトクォの声が中断させる。カノンがゲートを開かない、だと? 何を言ってるんだコイツは?
「確かに、奴の性格なら拒みそうだが――俺に従わぬ訳が無いだろう?」
そう、カノンが死ぬも生きるも俺の意志一つなのだ、命令を聞かなければ死が待っている分かっていて、命令を聞かぬ者等居る筈が無い。
「私もカノンは従わないと思いますよ、王。三つ目の最上位が見つかったとは言え、少々浮かれ過ぎではないですか? いつもの王らしくありませんよ?」
そう言ったのはダージュだ。私が浮かれているだと? 確かにココに来て急に三つ目の最上位が現れた事に少々心が浮ついているかもしれないが、いつもの俺らしくないとまで言われるのは心外だ――が、そこまで言うのなら根拠があるのだろう。
「カノンが従わないと考える理由を言ってみろ、浮ついているつもりは無いが、そこまで言うからには何か根拠があるのだろう?」
「根拠と言うか、単にカノンの性格と彼が浅慮ではないと知っているだけです。カノンが拒みそうだ、とは王も言っていましたよね? そして、ゲートを開くのはカノンがそこに存在する必要が在る訳ですから……」
どちらにしてもゲートは開けない、と言う事か。確かに冷静に考えれば分かりそうな事を見落としていた、コレは確かに浮かれていたといわれても仕方ないかもしれない。
「成程、そういう事か。確かにカノンにゲートを開かせる事は無理そうだな。態々一人で守護者拠点に向かった程の戦闘狂だ、今更味方の増援等望まないだろうよ」
しかし、そうなると近い内に《終焉》の元に二つの最上位が集まる事になるのか。こちらが一つしか最上位を持っていない事を考えると明らかに不利だ――ならば、どうする?
《創世》と合流する前に《終焉》に仕掛けるか? 否、こちらに相手の位置が分かる以上逆もまた同じなのは考えるまでも無い。
そこから考えれば、こちらから仕掛けようとすれば逃げられるのは明白だろう。何せ逃げ切って合流さえしてしまえば、《終焉》達の方が圧倒的に有利なのだ。
ならば――選ぶべき道は一つ、か。面倒だが《時の迷宮》を踏破し、その奥底に封じられている《時空》を手に入れる。恐らくそれが今選びえる最上の選択肢だろう。
そうと決まれば、早速動くべきだ。カノンに関しては《創世》の出現と共に生きて帰ってこないのはまず間違いないのだが、生きて帰ってくる事を元より期待出来るとは思っていなかったので別段支障は無い。
否、守護者の拠点付近に居ると言う事はカノンが仕掛けたからこそ《創世》は復活したとも考えられる。三つ目の最上位の復活……カノンのもたらしたその結果は、俺にとって果たして吉と出るのか凶と出るのか、その答えは今は出ていない。
最も最終的な目的を考えれば、何処にあるのか分からない《創世》を引き出してくれたのだから、俺にとってプラスと言えるのだろうが――
「カノンが当てに出来ぬのなら仕方ない。状況から考えれば俺達が取り得る選択は一つか ――アルカス、仕事だ」
「今度はなんでしょうか? 出来れば前回の様な無茶な注文はやめて頂けると、この老いぼれとしてはありがたいのですがね」
無茶、ねぇ? 二人も準最高位契約者を連れてきておいてどの口が言うのか……まぁ、今回の指示に関しては前回よりも難しいのは分かってはいるが、なんにしても俺が出す指示は変わらない。
「今から《時の迷宮》を開ける。お前にはその攻略を任せたい――心配はするな、貴様の能力なら時間は掛かるだろうが、攻略は可能だ」
「それはまた、大変な任ですな……この老いぼれにそこまで大層な事が出来るのでしょうか?」
老いぼれ、ねぇ? 見かけ上は確かに爺ではあるが、生きてきた年月は俺の方が遥かに長い筈なんだが……まぁ、そんな事はどうでもいい。
「言わなかったか、お前の聖具の能力なら可能だ、と? この俺が言うのだから間違いはない。それとも何か? 俺の言うことは間違っている、と?」
「いえいえ、滅相もございません。王の言う事なのですから間違ってはいないのでしょう。分かりました、その大任を引き受けましょう」
初めからそう言えば良い物を、回りくどい言い方をする……有能ではあるのだが、面倒な奴である事には違いない。とは言え、今の所アルカスの変わりを勤められる者が居ない以上、奴を使わざるを得ないのもまた確かなのだが。
「期限を設けるつもりは無いが出来うる限り早く攻略して来い――今は貴様にしか出来ない仕事だが、変な気は起こすなよ? お前でなくとも《時の迷宮》は踏破出来るのだ、死にたくなければ私の期待を裏切る様な事はしてくれるなよ?」
最も、攻略には膨大な数の奴隷を用いて法則をの穴を縫って踏破するか、《終焉》を用いて迷宮の機能を殺すか、と言うどちらかしかないのだが。
「了解致しました、死力を持って挑ませていただきます――それで王よ、その《時の迷宮》とやらの入り口は何処にあるのですか?」
「今しばらく待っていろ、俺もまだ《根源》を復活させたばかりなんだ」
時間と空間を司るが故、その入り口があらゆる場所に存在しえる《時の迷宮》の入り口をあらゆる場所に存在しない物として封じれたのは確率を制御する《根源》の存在があってこそだ。
そうする他に方法はまず無かっただろうとは言え、一つでも復活すれば危険な《完全なる六》を封印する方法を、他の《完全なる六》一つの力で制御するという物にした聖主の選択は正しい物ではなかった。
最も、此方としてはその聖主の過ちがあるからこそ、かなり危険な現状を回避する術が手元に残っていたのだが。
《時空》を手中に入れるのが遅れれば最高位を二人同時に敵に回してそのまま殺される可能性がある。それだけは絶対に避けなければいけない。
死は終りではないが今まで築いてきた基盤を全て無に帰してしまうに等しい、一万年近くかけてようやくココまで準備が整ったのだ、今更初めからやり直しなどと言われて納得できる筈がない。

<SIDE-Guren->
意識が覚醒する。両の手には慣れた二本の刃の感覚は無い。その代わりに、全身に漲る力と、右の手を包む何かの感触を感じ取った。コレは――
(形状が変わったが俺だよ相棒、最も、俺の本来の形状はこれだった訳だから、変わったと言うよりは元に戻ったと言うべきだろうな)
コレが《創世》、最高位の力か。確かに溢れる程に漲って全身に行渡るエーテルの量は、SSだった頃とは比べ物にならない。コレなら、今なら、どんなモノでも創れる気がする。
(流石にナンでもと言う訳には行かないが、それでも器に収まる魂さえあれば、聖具を新たに一つ作ることすら今の俺達ならば可能だ。故に、分かっているな相棒?)
当然だろ、相棒。俺達がまず何をすべきか、そんな事は考える必要すらなく決まっている。故に銀色の手甲が覆う右手を掲げて、その言葉を紡ぐ。
「Creation」
詠唱と共に、右手に構築式を完全に満たした魂の入っていない純粋なエーテルの器を創造する。何処までも赤く、紅い、見慣れた形状の刃を、たった一つの魂を収める為だけに組み上げる。その魂の名は、その魂が収まる器の名は――
「真紅!」
叫びと共に、右手に収まる純粋だったエーテルの器に魂が宿り、その存在を唯のエーテルの塊から魂の宿った聖具へと引き上げる。
【――私……助かったの? それに何だろう、今までと何か違う様な……?】
説明は後だ、真紅。今は目の前の敵を倒す事に集中したい。今まで通り、俺に力を貸してくれるか?
【良く分からないけど、そんなの当たり前じゃない。私は、守られてばっかりじゃ嫌なの、今も昔も少しでもお兄ちゃんの役に立ちたかったんだから――だから、お兄ちゃんが望むのなら、私の力は全てお兄ちゃんに委ねるよ】
だったら契約は成立だ。改めてよろしくな、真紅。
(え? 契約ってどういう事? 今までも私はお兄ちゃんの聖具だったでしょ? それに――銀さんは?)
(俺ならちゃんと居るから心配はするな。何、色々あって契約の形が少し変わっただけだ、俺達は今まで通りさ)
そう、俺達は今まで通りだ。相棒が昔の事を思い出して、真紅が聖具として独立したってだけで、俺達の絆は何一つ変わらない。
(私が聖具として独立? 銀さんが昔の事を思い出す? えっと、兎に角、私が気を失ってた間に色々あったんだね?)
(そういう事だ、先程相棒が言った様に詳しい事は後で俺も一緒に説明してやるから、今は目の前の敵に集中しようではないか――幾ら最高位に上がったからと言って、《刹那》は手を抜いて戦って良い様な相手ではないからな)
おい相棒、真紅が気になる様なワードを並べてんじゃねぇよ――最高位とか言われて気にならない訳が無いだろうが?
(そういうお前も真紅が聞き易い様に、態々俺の発言を拾ってるだろう?)
(えっと、お兄ちゃんも銀さんも落ち着いて、今は目の前の《刹那》に集中するんじゃなかったの? 聞きたい事はいっぱいあるけど、安全が確保できるまでは全部待ってるから)
真紅の念が伝わってくるのと同時に、視線の先に居る《刹那》が口元を歪ませ、楽しげに口を開く。
「カハッ、カハハハハッ、このタイミングで準最高位に続いて最高位が増えるだァ? ドンだけ俺を楽しませてくれんだァ、テメェ等はよォ?」
最高位は俺達の事だとして、準最高位って誰の事だ? 守護者のSSSはゼノンさんを除いて全員拠点に居るはずだし《刹那》はゼノンさんの事を知っているらしいから、誰かの階位が上がったか、他からの応援以外には考えられないぞ?
(確かに、我々から見て《刹那》の向こう、丁度我等と《刹那》を挟み込む形になる位置に一人、知らないSSSの反応があるな。否、この感じには覚えがある様な気がするんだが、何かが知っているモノと違うぞ?)
お前にはしては随分と曖昧な物言いだな、相棒? 確かに《刹那》の向こうにSSSの反応は感じるけど、俺は知らないぞ、こんな反応? 昔の記憶で知ってた聖具なんじゃ無いのか?
(否、違う。守護者の誰かの反応なのは間違いないんだ。だが、何かが違う気がする。例えるならそう、誰かと誰かの反応を混ぜてしまった様な――)
考えてても仕方ないだろ相棒、守護者の誰かだってんなら、顔を見れば直ぐに分かるんだ、今は悩んでも仕方ない。
(確かにその通りだな、今は――)
「オイコラ赤髪ィ、何さっきから黙ってンだァ? テメェは最高位って事で良いんだよなァ? まァ、そンだけデケェ反応で違うとか抜かさねェだろうがよォ?」
俺達を追い込み、守護者の拠点を襲撃してきた目の前の男を倒す、それだけを考えれば良い。全ての疑問は、その後に解けば良い。
「違わない、お前の言うとおり俺の聖具は最高位の一つ《創世》だ。そして聞け、カノン=アトライブ。俺の名はグレン=カズミヤ……創造主グレンだ。名乗るのが戦場でのマナーなんだろ? だったら、お前を倒す者の名を、その魂に刻み込め」
右手に握った《真紅》を突きつけながら、視線の先に居る《刹那》を睨む。その俺の視線と言葉に《刹那》は歓喜するように両手を広げて応じてくる。
「カハッ、ハハハッ、カハハハハッ! コレだ、こう言う展開を待ってたんだァ、さァ、さァさァさァ、さっさと始めようぜェグレン! 他の守護者共もだ、全員まとめて掛かって来いやァ! ンでもってよォ、もっと俺を楽しませてくれやァ!」
そこまで言い終わって、一瞬の間をおいてから呟くように《刹那》が「《Ksana》」と唱えたのが、幾つもの絶望をもたらして来た来訪者との、最後の戦いの幕開けとなった。

TheOverSSS――18/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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